小説 - 文春文庫作品一覧

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  • 離れ折紙
    3.8
    美術ミステリならこれを読め! 「騙すか、騙されるか」。関西の骨董業界を巡る丁々発止をテンポよく描き、人間の尽きることない欲望をあぶり出す傑作美術ミステリ。! ※本作品は 2015年12月24日まで販売しておりました単行本電子版『離れ折紙』の文庫電子版となります。 本編内容は単行本電子版と同じとなります。
  • 磔

    3.8
    1巻680円 (税込)
    慶長元年春、ボロをまとった二十数人が長崎で磔にされるため引き立てられていった。歴史に材を得て人間の生を見すえた力作。「三色旗」「コロリ」「動く牙」「洋船建造」収録。(曾根博義)
  • ハルカ・エイティ
    4.1
    大正に生まれ、見合い結婚で大阪に嫁ぎ、戦火をくぐり抜け、戦後の自由な時代の波に乗り……。人生の荒波にもまれつつも、平凡な少女は決して後ろ向きになることなく、その魅力を開花させ、みんながハルカの天真爛漫なキャラクターに引き込まれていく。やっぱ、新時代の婦人は、これくらいさばけてなあかん! 実在の伯母をモデルに、著者が新境地に挑んだ原稿1000枚の力作。ヒメノ式「女の一生」、直木賞候補の傑作長編。
  • 春から夏、やがて冬
    3.8
    スーパーの保安責任者の男と万引き犯の女。偶然の出会いは神の思し召しか、悪魔の罠か? ミステリーの限界を超えた“現代の神話” スーパーの保安責任者・平田誠は、ある日、店で万引きを働いた末永ますみを捕まえた。いつもは情け容赦なく警察へ引き渡す平田だったが、免許証の生年月日を見て気が変わった。昭和60年生まれ。それは平田にとって特別な意味があった。平田はますみを見逃すことにした。これがきっかけで二人に交流が生まれ、やがて平田は己の身の上をますみに語り始める――。 偶然の出会いは神の思し召しか、悪魔の罠か? 二人を結ぶ運命の糸は、思いもよらない結末へと繋がっていた!トリックなし。しかし、ラストで世界が反転する! “絶望”と“救済”のミステリー。 解説・榎本正樹
  • 春の庭
    3.6
    第151回芥川賞受賞作。「春の庭」 書下ろし&単行本未収録短篇を加え 待望の文庫化! 東京・世田谷の取り壊し間近のアパートに住む太郎は、住人の女と知り合う。 彼女は隣に建つ「水色の家」に、異様な関心を示していた。 街に積み重なる時間の中で、彼らが見つけたものとは―― 第151回芥川賞に輝く表題作に、「糸」「見えない」「出かける準備」の三篇を加え、 作家の揺るぎない才能を示した小説集。 二階のベランダから女が頭を突き出し、なにかを見ている。(「春の庭」) 通りの向こうに住む女を、男が殺しに来た。(「糸」) アパート二階、右端の部屋の住人は、眠ることがなによりの楽しみだった。(「見えない」) 電車が鉄橋を渡るときの音が、背中から響いてきた。(「出かける準備」) 何かが始まる気配。見えなかったものが見えてくる。 解説・堀江敏幸
  • 春の夢
    4.0
    1巻691円 (税込)
    亡き父の借財を抱えた大学生、井領哲之。大阪にあるホテルでのアルバイトに勤(いそ)しむ彼の部屋には、釘で柱に打ちつけられても生きている蜥蜴(とかげ)の「キン」がいる──。可憐な恋人とともに、人生を真摯に生きようとする哲之の憂鬱や苦悩、そして情熱を1年の移ろいのなかにえがく、青春文学の輝かしい収穫。
  • 春、バーニーズで
    3.5
    妻と幼い息子を連れた筒井は、むかし一緒に暮らしていた男と、新宿バーニーズのスーツ売り場でばったり再会する。懐かしいその人は、花柄の派手なシャツを着て、指には大きなエメラルドの指輪、相変わらずの女言葉で、まだ学生らしき若い男の服を選んでいた。当惑した若い男の姿は、まるで10年前の自分だ。日常のふとしたときに流れ出す、選ばなかったもうひとつの時間。デビュー作「最後の息子」のその後が語られる表題作にはじまる、磨きぬかれた連作短篇集。
  • ハルモニア
    4.1
    脳に障害をもつ由希が奏でる超人的チェロの調べ。言葉を解せず、道徳を持たない女性にもたらされた才能は、中堅どころの音楽家によって恐るべき開花を遂げる。しかし、難曲をこなし、自在に名演奏を再現してみせるその旋律には、自己表現が決定的に欠けていた。彼女の音に魂を吹き込もうとするチェロ奏者・東野。<天上の音楽>にすべてを捧げる二人の前に次々と起こる超常現象と奇怪な事件。崇高な人間愛と世俗の欲望を圧倒的筆力で描く文芸ホラー長篇。
  • 春を背負って
    4.1
    主人公の長嶺亨は大学院卒業後、サラリーマンをしていたが、父親の訃報をきっかけに奥秩父の山小屋を継ぐことになった。そんな亨をサポートしているのが「ゴロさん」。父親の大学の後輩で、ひょんなことからホームレス生活をしていたが、亨の父親と再会。父親の死後は亨を手伝い始めた。ある日、年配の刑事がゴロさんそっくりの指名手配のチラシを持って亨の家にやってきた。あまりにも謎に包まれたゴロさんの過去。亨の心にうまれた疑いの灯――。奥秩父の山小屋を舞台に、山を訪れる人々が抱える人生の傷と再生を描く、感動の山岳ヒューマン小説。監督・木村大作、主演・松山ケンイチで感動の映画化!
  • 繁栄の昭和
    3.5
    文壇のマエストロ、超斬新な短編集 迷宮殺人の現場にいた謎の小人、 人工臓器を体内に入れた科学探偵、 窃盗団に身をやつした貴公子、 ツツイヤスタカを思わせる俳優兼作家……。 メタフィクションとノスタルジー、奇想に満ちた妖しげな世界に、どこまでも誘われてください。 ツツイワールド大爆発! 【目次】 繁栄の昭和 大盗庶幾 科学探偵帆村 リア王 一族散らし語り 役割演技 メタノワール つばくろ会からまいりました 横領 絵の教室 知床岬 高清子とその時代
  • はんざい漫才
    3.0
    女三十一歳、寄席ではじける! スキャンダルの傷をもつ漫才コンビが神楽坂倶楽部に出演することに。席亭代理・希美子にも人生の決断の時が。寄席ミステリ第三弾!
  • 半分、青い。 上
    4.4
    1~2巻968~1,018円 (税込)
    心は、空を飛ぶ。 片耳を失聴したヒロイン、スズメの愛と勇気の物語――。 高度成長期の終わり、岐阜県の小さな食堂に生まれたスズメ。 小学生の時に病気で左耳を失聴してしまうが、我が子を愛してやまない両親と、 同じ日に同じ病院で生まれた幼馴染のリツに支えられ健やかに成長する。 高校を卒業したスズメは少女漫画家を目指し上京し、 人気漫画家・秋風羽織のもとで仲間と修業に打ち込むが……。 最注目の「連続テレビ小説」を小説でお楽しみ下さい
  • ハートフル・ラブ
    3.6
    『イニシエーション・ラブ』著者が放つ珠玉のミステリ7篇 日本推理作家協会賞候補となった「夫の余命」のほか、名手の技が冴える驚愕ミステリ連発! 最新書き下ろし収録のオリジナル短篇集。
  • バイアウト 企業買収
    3.4
    金儲けを第一主義に、敵対的TOBなどで世間の注目を集める相馬ファンド。相馬との念願の取引にこぎつけた外資系証券会社の広田美潮だったが、買付を依頼された銘柄は、皮肉にも幼い頃自分を捨てた父の音楽会社だった。また相馬だけでなく他三社がTOBを仕掛けてくる異常事態発生。生き残りをかけた熾烈な戦いが始まった。金儲けは悪か? 企業の価値とは何か? 日本経済の希望を書き続ける著者渾身の長編小説。
  • 売国
    3.5
    1巻784円 (税込)
    検察、宇宙、陰謀――真山仁の真骨頂! 日本が誇る宇宙開発技術をアメリカに売り渡す「売国奴」は誰だ!? 検察官・冨永と若き研究者・八反田遙。陰謀渦巻く骨太社会小説。 テレビ東京系ドラマスペシャル 『巨悪は眠らせない 特捜検事の逆襲』(出演 玉木宏 仲代達矢ほか)原作。 気鋭の特捜検事、冨永真一。 宇宙開発の最前線に飛び込んだ若き女性研究者・八反田遙。 ある汚職事件と、親友の失踪が二人をつなぐ。 そして炙り出される、戦後政治の闇と巨悪の存在。 正義を貫こうとする者を襲う運命とは!? 雄渾な構想と圧倒的熱量で頁を捲る手が止まらない! 真山仁の超弩級謀略小説。 解説・関口苑生
  • ばくりや
    3.6
    1巻611円 (税込)
    あなたの「能力」を、あなたにはない誰かの「能力」と交換いたします――。北の街の路地裏に「ばくりや」という店がひっそりあった。女に異常に好かれる三波は、その力を交換すべく店を訪ねたが……。その他、就職先が必ず潰れる、ささいなことでも泣けるなど、能力を交換した人々の悲喜劇を描く異色の連作短篇集!
  • ばにらさま
    3.6
    二度読み必至! 伝説の直木賞受賞作『プラナリア』に匹敵する、 光と闇が反転する傑作短編集。 1,「ばにらさま」  僕の初めての恋人は、バニラアイスみたいに白くて冷たい……。 2,「わたしは大丈夫」 夫と娘とともに爪に火をともすような倹約生活を送る私。 3,「菓子苑」 気分の浮き沈みの激しい女友だちに翻弄されるも、放って置けない。 4,「バヨリン心中」 余命短い祖母が語る、ポーランド人の青年をめぐる若き日の恋。 5,「20×20」  主婦から作家となった私は、仕事場のマンションの隣人たちと……。 6,「子供おばさん」 中学の同級生の葬儀で、遺族から形見として託されたのは。 以上6編を収録。 日常の風景の中で、光と闇を鮮やかに感じさせる凄み。 読み進むうちにぞっと背筋が冷えるような仕掛け。 「えっ」と思わず声が出るほど巧みな構成。 引きずり込まれる魅力満載の山本文緒文学! 2021年10月に惜しくも逝去した著者最後の小説集。 解説=三宅香帆 ※この電子書籍は2021年9月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • バブル・バブル・バブル
    3.0
    パルコ系クリエーターとして、バブルをど真ん中で経験したヒキタクニオが 自らの仕事と恋愛、青春の日々を回想するドキュメンタリーノベル。 1967年、故郷の福岡を出て東京へ。大学在学中にイラストレーターとしてデビューし、 やがて大規模なグラフィック展覧会「80 sグラフィックパワー展」の顔ぶれに20代で抜擢され、 パルコ系クリエイターの仲間入りを果たす。 それがきっかけで、汐留の国鉄跡地に造られることになった 大型ライブハウス&ディスコ「サイカー PSYCHER」の内外装を任され、 さらにゲームファンタジア渋谷の外壁や店内アートを担当する。 時はバブル全盛時代。数々の変人たちと出会いながら、 充実した仕事の毎日を送る一方で、同郷の恋人と別れてモデルと結婚。 絶頂の日々を過ごしつつも、確実に時代の変化を感じていた――。 解説 日比野克彦 バブル当時、著者が出会った人々 空間プロデューサー、コンセプチャー、デザイナー、 女性のアート系プロデューサー、新進気鋭の映画監督、 広告代理店の営業マン、超能力者、老舗ホストクラブの男、 ヤクザの3人組、銀座で豪遊するキング・オブ・バブル社長、 アニメ「ちびまる子ちゃん」を平成のサザエさんに仕立てた男……
  • バベル
    3.5
    新型ウイルスの出現によって、日本中がパニックに―― ある日突然、同棲している恋人が高熱で意識不明の重体となり、 救急車で搬送される。彼に付き添い続けた悠希にも、魔の手がしのびより……。 感染爆発が始まった原因不明の新型ウイルス「バベル」に、人間が立ち向かう術はあるのか? 日本政府はある対策を講じる決断をする。 近未来の日本を襲った緊迫のバイオクライシス・ノベル! 毎年インフルエンザの季節が到来するとマスクの人が増え、自分の周囲にインフル患者が出た途端に緊張感が高まりますが、この小説は、インフルどころではない最強のウィルスが日本国内に発生してしまうという、「もしかして、ひょっとしたらありえるんじゃないか」という危機感さえ感じさせる緊迫した内容となっています。 極小サイズだけど、人間を恐怖のどん底に陥れる「ウィルス」によって、日本は恐ろしい事態に陥ります。追い詰められた人々は、どのような手を打つのでしょうか? 読み始めたら、最後まで止まることができません。
  • 番犬は庭を守る
    3.8
    とてつもなく過激で痛快、そして悲惨――とにかく無類に面白い。 ページをめくる手が止まらない傑作長篇! 原子力発電所が爆発し、臨界事故が続発するようになった世界。そこでは、放射能汚染による精子の減少と劣悪化が深刻な問題となっていた。 優良精子保有者である「種馬」の精子は民間の精子バンクが高額で買い上げ、その一家には一生遊んで暮らせる大金が転がり込んでくる。 一方で、第二次性徴期を迎えても、生殖器が大きくならず、セックスのできない不幸な子どもたちは「小便小僧」と呼ばれていた。 「小便小僧」として生まれたウマソーは高校を卒業後、警備保障会社に就職をするが、 市長の娘に恋をした罰として、使用済みの核燃料や放射性廃棄物で溢れる、廃炉になった原発を警備することになる。 やがてウマソーの性器は徐々に失われ……。 超格差社会の最底辺を生きるウマソーは、次々と襲いかかる悪夢にどう立ち向かっていくのか。 岩井俊二が全身全霊を込めて書ききった、壮大で豊饒なエンタテインメント。 解説・金原瑞人 ※この電子書籍は2012年1月に幻冬舎より刊行され、文藝春秋より2020年1月に刊行した文庫版を底本としています。
  • 晩鐘 上
    3.0
    1~2巻652~702円 (税込)
    佐藤愛子九十歳・奇跡の話題作、待望の文庫化! 老作家・藤田杉のもとにある日届いた訃報――それは青春の日々を共に過ごし、十五年間は夫であった畑中辰彦のものだった。 「究極の悲劇は喜劇だよ」 辰彦はそういった。 それにしても、どうして普通じゃ滅多にないことばかり起るのか。 当時の文学仲間たちはもう誰もいない。 共に文学を志し、夫婦となり、離婚の後は背負わずともよい辰彦の借金を抱え、必死に働き生きた杉は、思う……。 あの歳月はいったい何だったのか? 私は辰彦にとってどういう存在だったのか? 杉は戦前・戦中・そして戦後のさまざまな出来事を回想しながら、辰彦は何者であったのかと繰り返し問い、「わからない」その人間像をあらためて模索する。 枯淡の境地で、杉が得た答えとは。 『戦いすんで日が暮れて』『血脈』の系譜に連なる、かつて夫であった男と過ぎし日々を透徹した筆で描く、佐藤愛子畢生の傑作長編小説。
  • バーニング・ワイヤー(上)
    4.3
    人質はニューヨーク! リンカーン・ライム・シリーズ 電力を操作して殺人を繰り返す凶悪犯を追うリンカーン・ライム。だが天才犯罪者ウォッチメイカーの影が…人気シリーズ第9弾。
  • パチンコ 上
    4.8
    全米図書賞最終候補作!オバマ元大統領も絶賛 日韓併合下の釜山沖の小さな島、影島。下宿屋の娘、キム・ソンジャは、粋な仲買人のハンスと出会い、恋に落ちて身籠るが、実はハンスには妻子がいた。妊娠を恥じる彼女に牧師のイサクが手を差し伸べる。二人はイサクの兄が住む大阪の鶴橋へ。しかし過酷な日々が待ち受けていた――。全世界で共感を呼んだ大作、ついに文庫化! ※この電子書籍は2020年7月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • パラレル
    3.6
    1巻550円 (税込)
    妻の浮気が先なのか、それとも僕が勝手に会社を辞めたせい? とにかくゲームデザイナーの僕は失職し、離婚した。長年の親友でキャバクラ大好き・顔面至上主義者の津田と、別れた後もしきりにメールをよこす元妻、そして僕の新しい恋人……錯綜する人間関係と、男と女の微妙なくい違いを絶妙な距離感で描く、長嶋有初の長篇。タランティーノ監督の映画をイメージして書いたという斬新な構成と、思わず書きとめたくなる名言満載の野心作!
  • パンドラ・ケース よみがえる殺人
    3.8
    「悪趣味だな。仲間で最初に死んだ人間の十三回忌に開くタイムカプセルなんて」。昭和四十六年、雪の温泉宿に集まった八人の大学生は、卒業記念のカプセルに、思い思いの品を納めた。「あたしがきっと最初だわ」と呟いた半田緑は、五年後に失踪。十七年後、七人が彼女の箱を開けると、中には干涸びた指と指輪。その三日後、仲間の一人が首無し死体に! 塔馬双太郎は仲間と事件に挑む。高橋克彦ならでは、“思い出したくない過去の、懐かしく甘美な恐怖”を堪能できる傑作長篇!
  • パン屋再襲撃
    3.9
    堪えがたいほどの空腹を覚えたある晩、彼女は断言した。「もう一度パン屋を襲うのよ」。それ以外に、学生時代にパン屋を襲撃して以来、僕にかけられた呪いをとく方法はない。かくして妻と僕は中古のカローラで、午前2時半の東京の街へ繰り出した……。表題作のほか「象の消滅」、“ねじまき鳥”の原型となった作品など、初期の傑作6篇を収録した短編集。
  • パーク・ライフ
    3.3
    昼間の公園のベンチにひとりで座っていると、あなたは何が見えますか? スターバックスのコーヒーを片手に、春風に乱れる髪を押さえていたのは、地下鉄でぼくが話しかけてしまった女だった。なんとなく見えていた景色がせつないほどリアルに動きはじめる。『東京湾景』の吉田修一が、日比谷公園を舞台に男と女の微妙な距離感を描き、芥川賞を受賞した傑作小説。役者をめざす妻と上京し働き始めた僕が、職場で出会った奇妙な魅力をもつ男を描く「flowers」も収録。
  • 光あれ
    3.5
    1巻719円 (税込)
    原発、シャッター通り、描けない未来……この町で男は生きつづける。 3・11のはるか前に描かれたもう一つの“現実”。 相原徹は、生まれ故郷の敦賀――原発に税収と雇用を頼る街から出ることなく子供時代を過ごし、仕事を得、家庭を持った。 未来を描けないこの街での窒息しそうな日々を、水商売の女や妻子の間で揺れ惑いながら生きる徹が、最後に見極めた人生とは。 地方都市で生きることの現実をあぶりだす、著者の新境地。 解説・東えりか ※この電子書籍は2011年8月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 光と影
    -
    将来を嘱望された陸軍大尉の小武は右腕負傷の憂き目にあう。偶然にも同じ傷で同期の寺内と病院で一緒になるが、小武は切断、寺内は腕を残した施術となった。廃兵となった小武はしだいに転落の気分を味わうが、いっぽうの寺内は……。カルテの順番という小さな偶然がわけた人生の光と影を、的確なタッチで構築した直木賞受賞作に、人間の皮肉を巧みに描き出した「宣告」「猿の抵抗」、若く美しい女に潜む戦慄をあつかった「薔薇連想」の三篇を加えた卓抜な作品集。
  • ひかりの剣【電子特典付き】
    3.5
    1巻1,100円 (税込)
    『チーム・バチスタの栄光』でお馴染みの面々が、メスの代わりに竹刀で鎬を削る。 医療ミステリーの旗手が放つ鮮烈な青春小説! 1988年、バブル真っ盛りの頃。 いずれ医療の世界で悪戦苦闘する医学生も最初は医学の素人で、普通の大学生のようにサークル活動に部活に励んでいた、そんな時代。 桜宮・東城大剣道部の猛虎・速水晃一と天下の官僚養成大学、東京・帝華大の臥龍・清川吾郎もまだ医学生で、剣道部員だった。 医学部剣道部の象徴的大会「東日本医科学生体育大会」(東医体)。 この大会の覇者は将来、外科の世界で大成するという言い伝えがあった。 優勝校に送られる「医鷲旗」をめぐって、速水と清川による伝説の闘いが繰り広げられる。 解説・國松孝次(元警察庁長官) 【電子特典】 全電子版共通の「あとがき」、付録(「海堂尊・全著作リスト」「作品相関図」など)のほかに、本書には以下の文章を収録。 電子版あとがき 『ひかりの剣』 【関連小文】1 「ジェネラル・ルージュの伝説」自作解説より『ひかりの剣』 【関連小文】2 「夢はいつか叶う」 【関連小文】4 「すべては剣道場から始まった。」 【関連小文】5 「大学道場で剣道 体にたたきこむ」
  • 飛族
    4.3
    日本海のはずれ、朝鮮との国境に浮か養生島。 かつては漁業で栄えていた離島で暮らす三人の老女のうち、ナオの死で、いまはイオとソメ子のふたりが取り残されている。 九十二歳でひとり暮らしのイオの娘、ウメ子も六十五歳になった。 イオは海女をなりわいとして、八十五歳までアワビを獲るほど、心身ともに丈夫ではあるけれど、娘のウメ子としては心配でならない。 二十五年前の海難事故で命を落とした夫を供養するイオとソメ子。 異国からの密漁船による侵略や、地球温暖化など、不吉な未来を予感しながら、泰然と暮らしを守り続ける老女たち。 そんな島に、おそろしい台風が近づいてきて……。 名作映画「八月の鯨」のように、海辺での厳しい暮らしとシンプルに生きようとする姿に胸を打たれる。 いまの時代こそ、こんな世界に浸りたくなる。谷崎潤一郎賞受賞作品。解説・桐野夏生 ※この電子書籍は2019年3月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 羊と鋼の森
    4.3
    第13回本屋大賞、第4回ブランチブックアワード大賞2015、第13回キノベス!2016 第1位……伝説の三冠を達成! 日本中の読者の心を震わせた小説、いよいよ文庫化! ゆるされている。世界と調和している。 それがどんなに素晴らしいことか。 言葉で伝えきれないなら、音で表せるようになればいい。 高校生の時、偶然ピアノ調律師の板鳥と出会って以来、調律の世界に魅せられた外村。 ピアノを愛する姉妹や先輩、恩師との交流を通じて、成長していく青年の姿を、温かく静謐な筆致で綴った物語。 解説は『一瞬の風になれ』で本屋大賞を受賞した佐藤多佳子さん。 豪華出演陣で映画完成! 外村青年を山崎賢人、憧れの調律師・板鳥を三浦友和、先輩調律師・柳を鈴木亮平、ピアニストの姉妹を上白石萌音、萌歌が演じています。2018年6月8日公開。 「才能があるから生きていくんじゃない。そんなもの、あったって、なくたって、生きていくんだ。あるのかないのかわからない、そんなものにふりまわされるのはごめんだ。もっと確かなものを、この手で探り当てていくしかない。(本文より)」
  • 人殺し(上)
    -
    1~2巻550~660円 (税込)
    糖尿病検査に家から遠く離れた京都の病院を選んだのは、作家、井崎の計算である。古い友人が勤務ばかりでなく、からだの関係がある酒場の女、瑛子が、入院する前の日を私にちょうだいと言ったのも理由のひとつだった。青年でもなく老年でもないというのは、何か中途半端である。井崎は疲れていた。疲れているという感じは他人には説明のしようのないものだった……。年齢の重みが人の心に与える苦渋と、香ばしい人生の漿果の甘露を思う存分啜り味わう快楽の交差する著者会心の傑作。
  • 火と汐
    3.8
    八月十六日、京都“大文字”の夜。興奮にざわめく人混みのなかを、一つの情事が進行していた。しかしその最中、人妻は送り火に見とれる男の前から姿を消した。 同じ時、油壺と三宅島の間では、人妻の夫が参加するヨットレースがおこなわれていた。女を見失い、呆然と東京に戻った男の耳に飛び込む夫のヨットでのクルーの死亡事故、そして男の家のすぐ近所で人妻の遺体発見。鉄壁のアリバイ崩しに挑む本格推理「火と汐」。 ほかに「証言の森」、「種族同盟」(映像作品「黒の奔流」原作)、「山」の計四篇を収録。 ※この本は1976年2月に刊行された文春文庫の新装版です。 解説・大矢博子
  • ひとひらの雪(上)
    4.0
    1~2巻600円 (税込)
    妻子ある建築家・伊織祥一郎は、部下である笙子と4年に及ぶ愛人関係にある。妻子とは別居状態だが、仕事は順調で業界での名声も得て、それなりに満足のいく生活をしている。そんなある日、亡き友人の妹で、美貌の人妻・霞と15年ぶりの再会をはたす。ふたりは惹かれあい、人目を避け情事を重ねてしまう。現代的な魅力をもつ笙子と和服美人の霞、ふたりの間で揺れる伊織だが……。快楽と不倫の深淵に漂う、おとなの愛のかたちを描いて評判を呼んだベストセラー。
  • 瞳のなかの幸福
    4.0
    私は、私の幸せを失いたくない―― 長く付き合った恋人から婚約を破棄され、仕事に打ち込む日々を送っていた妃斗美の前に、偶然、金色の目をした「幸福」が現れて……。 ※この電子書籍は2019年2月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • ひとり旅立つ少年よ
    4.4
    『音もなく少女は』『その犬の歩むところ』に続く感動作 悪党が狙う大金を奴隷解放運動家に届けるべく少年は一人でアメリカ縦断の旅に。非道の中の人間の尊厳を描き続ける巨匠の会心作。
  • 火の航跡
    4.0
    1巻1,100円 (税込)
    名手・平岩弓枝による長編ミステリー小説。六本木に事務所を持つ有名カメラマン・城重文夫がある日突然姿を消した。呆然とする新婚の妻・久仁子は、知人の協力を得て夫の行き先を探し始めたところ、夫が向かったと思われるギリシアで事務所で働いていた女性が遺体で見つかる。彼女と夫の間には恋愛関係があったのか? 彼女を殺したのは夫なのか? そして久仁子は、有田焼の里で窯業を営む夫の実家を訪ねたことで、いままで知らされてなかった夫の家族の陰の歴史に向き合うことになる。東京、佐賀、ギリシア、マイセン、メキシコと夫の影を追い続けた久仁子が探し出した驚愕の真実とは? 細やかな心理描写と巧みな構成で読む人をうならせる著者円熟期のサスペンスロマン。 ※この電子書籍は1980年1月に刊行された文春文庫の新装版を底本としています。
  • 火花
    4.1
    NHKでドラマ放送スタート!(出演・林遣都、波岡一喜、門脇麦) 第一五三回芥川賞を受賞し、二〇一五年の話題をさらった「火花」が文庫化。 受賞記念エッセイ「芥川龍之介への手紙」を併録。 売れない芸人の徳永は、天才肌の先輩芸人・神谷と出会い、師と仰ぐ。 神谷の伝記を書くことを乞われ、共に過ごす時間が増えるが、やがて二人は別の道を歩むことになる。 笑いとは何か、人間とは何かを描ききったデビュー小説。 第一五三回芥川賞を受賞し、累計発行部数283万部を誇る傑作が待望の文庫化!
  • 響灘 そして十二の短編
    -
    休みでもとってみるか。家族サービスでなし、ゴルフでもなし、休暇の理由はとくに会社には言わずに……。一見ごくありふれたサラリーマンが思いついた、わずか二日間の旅の行き先は暖流と寒流がぶつかりあって、波が立ち、音をたてるという響灘だった。六年前に別れた愛人から電話をもらった男は、二日だけ休暇をとって、そこを訪ねることにした。──不思議な海が二人だけの景色となって騒いでいる──。再会した男と女の一夜を美しく描いた表題作と、家族をテーマにした連作短篇十二篇。
  • ひまわり事件
    3.6
    1巻827円 (税込)
    老人ホーム「ひまわり苑」と「ひまわり幼稚園」はお隣同士。妻を亡くし「苑」に入居した益子誠次は、幼稚園児と一緒にひまわりの種を植えた。経営が同じ「苑」と「園」には実はさまざまな不正の疑いがあるが、老人と子供たちは非力ゆえになかなか糾(ただ)すことができない。しかしある日、訳ありの「苑」の入居者・片岡さんがとうとう決起、誠次と子供たちと一緒にバリケード封鎖を敢行する。老人と子供が手を組んだとき、奇跡は起こるのか? すべての世代に送る「熱血幼老小説」。
  • 火村英生に捧げる犯罪
    3.7
    臨床犯罪学者・火村英生と推理作家・有栖川有栖のかけあいが楽しい「作家アリス」シリーズの短篇集。「とっておきの探偵にきわめつけの謎を」──火村英生のもとにprof. Rを名乗る者から送られてきた犯罪予告めいたファックス。トリックの小さな綻びから犯罪が露呈する表題作ほか、過去の影におびえる男の哀しさが余韻を残す「長い影」、殺された男の側にいた鸚鵡(おうむ)が真実を暴く「鸚鵡返し」など、ごく短い掌篇から短篇まで珠玉の作品が並ぶ1冊。
  • 姫君
    3.8
    「母が首を吊ったのを見つけた時、ぼくが、まだ五歳だったのは幸せなことだ。十歳だったら泣きわめいていただろうし、十五歳だったら心の病気にかかってた。今だったらどうだろう。きっと笑ってた。二十歳。もう、ぼくは、人が、おかしくなくても笑うということを知っている」(本文より)。人が人を求める気持ち、コトバにできない寂しさを描いた短篇集。人を愛することで初めてうまれる恐怖、そんな“聖なる残酷”に彩られた、忘れがたい物語。
  • 姫椿
    3.6
    やはり今晩にしよう──男の悲壮な決意は──自殺。手広く不動産屋を営んできたが、あっけなく去ったバブルは彼に多額の負債を残した。策は尽き、家族を守るための最後にして最善の手段を胸にひめつつ、ふと思い立って訪れた町で一軒の古い銭湯を見つける……。ありふれているようで多様な個性に富んだ市井の人々の表情。輪郭をうしなった魂が、この著者ならではのあふれる愛情をふきこまれ、しだいにくっきりとした力をとり戻していく表題作など、八つの短篇を収録。
  • 秘める恋、守る愛
    5.0
    家族3人がそれぞれに抱える秘密 娘の一恵が留学するミュンヘンに訪れた直樹と妻の由希恵。直樹は若き日のドイツでの恋に心を囚われ、妻は寂しい心の隙間を別の男で埋めようとし、娘は守るべき愛を見つけていた。 7日間の旅が秘密を抱える家族のあり様を変えていく。 数多の愛の詞を手掛けた著者が描く、大人の愛のかたち。 巻末に書き下ろしの「出会い」も収録。 ※この電子書籍は2020年4月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 110番のホームズ 119番のワトソン 夕暮市火災事件簿
    3.5
    第一回「バディ小説大賞」受賞作! 刑事と消防士の最熱イケメンバディ降臨。 夕暮市消防署の消防士の棉苗上亮は、刑事の穂村彗星と火災現場で出会う。 どんな難事件も解決する彗星は「火事場の奇人(シャーロック)」と呼ばれていた――。 彗星の信条は「焦げ付いた空間から、真実というダイヤモンドを拾い上げること」。 二人の出会いと、反発しあいながらも、互いに成長していく姿を描く。 文春文庫とエブリスタがタッグを組んだ、バディ小説大賞の第1回受賞作。 *第1回バディ小説大賞受賞作「BURN OUT ROOM」が「ROOM1 ジャワ・ハイツ203号室」と改題され、新たに「ROOM2 スィート・ウィリアム・ガーデン 熱帯館」と「ROOM3 HBカレー工場」が加筆されています。
  • 百花
    3.8
    「あなたは誰?」 徐々に息子の泉を忘れていく母と、母との思い出を蘇らせていく泉。 ふたりで生きてきた親子には、忘れることのできない“事件”があった。 泉は思い出す。かつて「母を一度、失った」ことを。 母の記憶が消えゆく中、泉は封印された過去に手を伸ばす──。 記憶という謎<ミステリー>に挑む新たな傑作の誕生。 「あなたはきっと忘れるわ。 だけどそれでいいと私は思う」 「また母が、遠くに行ってしまいそうな気がした。 あの時のように」 ……あの一年間のことは、決して誰にも知られてはいけなかった。 『君の名は。』『天気の子』を生んだ稀代の名プロデューサーにして、 小説『四月になれば彼女は』『世界から猫が消えたなら』で 作家としても大きな衝撃を与えてきた川村元気。 各界からも反響が続々! ◆息子と母の切ない思いに、胸が熱くなりました。──吉永小百合 ◆深い感動のうちに読了した。  ぼく自身の母親の思い出と重なり、他人事ではなかったのだ。──山田洋次 涙が止まらない──現代に新たな光を投げかける、愛と記憶の物語。 解説は『長いお別れ』の中島京子さんです。 ※この電子書籍は2019年5月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 氷山の南
    4.5
    1巻1,001円 (税込)
    新しい海洋冒険小説の誕生! アイヌの血を引くジンは、南極海での氷山曳航計画を担う船シンディバード号に密航し、露見するもなんとか滞在を認められた。ジンは厨房で働く一方、船内新聞の記者として乗船者たちを取材して親交を深めていくが、やがてプロジェクトを妨害する「敵」の存在が浮かび上がる――。21世紀の新しい海洋冒険小説。 解説・沼野充義 ※この電子書籍は2014年9月に文藝春秋より刊行された文春文庫版を底本としています。
  • 氷雪の殺人
    5.0
    官僚組織の複雑怪奇さ、エリートたちの強固さ、北朝鮮ミサイル――日本人にとっての「覚悟」とは何か。 現代社会に生きる全ての読者に壮大な感慨を呼び起こしてくれる、内田康夫堂々の代表作! 北海道・利尻島に美しくそびえる利尻富士で、不審死したひとりのエリート社員。 警視庁刑事局長の兄・陽一郎から調査を頼まれた浅見光彦は、ある女性から 託された謎のメッセージとCDから事件の真相に迫ってゆく。 次第に見えてくるのは、防衛庁という巨大組織に生きる人々の苦悩と正義、恐ろしさ。 警視庁を背負うエリートである兄・陽一郎は光彦とともに 「彼らの正義」を動かすことができるのか? 個人の正義と国家犯罪がぶつかるシーンの緊迫感、家庭と恋人を大切にしていた男の無念の死を思い、「大義」を真摯に論じる浅見光彦の必死の姿は感動を呼ぶ。 著者の代表作の新装版です。
  • 標的
    3.9
    1巻850円 (税込)
    特捜検事・冨永VS.初の女性総理候補 。 話題の「正義と権力」シリーズ第三弾! 東京地検特捜部検事・冨永真一のもとに、初の女性総理候補・越村みやび厚労相に関する情報提供者が現れる。 超高齢社会に突入する日本。福祉行政の隙間で利権を狙う者、政界の権謀術数、ぶつかり合う検事と記者それぞれの正義。 息もつかせぬ物語の結末は!? 『コプラティオ』『売国』に続く「権力と正義」シリーズ第三弾! 解説・鎌田靖 ※この電子書籍は2017年6月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 氷平線
    4.0
    『ホテルローヤル』で第149回直木賞を受賞した桜木紫乃のデビュー作品集! 真っ白に海が凍るオホーツク沿岸の町で静かに再会した男と女を描く『氷平線』。酪農の地を継ぐ者たちの悲しみと希望を、牧草匂う交歓の裏に映し出した『雪虫』(オール讀物新人賞受賞作)――。北海道の農村を覆う閉塞感と、そこに生きる男女の虚無的で乾いたセックスを鮮烈に描いた、読む者の魂を熱く震わせる全6篇を収録。桜木紫乃の原点はここにある。
  • 憑流(hyoryu)
    3.5
    名家・朝比奈家が迎えた長男の嫁・苑香(そのか)。結婚後、長男は輝くようなオーラが強まりツキと運に恵まれる一方で、苑香にとって邪魔な者が、なぜか次々と姿を消していく。結婚を懸念していた祖母が急逝、母は特定できない疾病に罹り、家族同然の使用人も突然去った。一家に起こる悲劇の連鎖。妹の真希だけがいいしれぬ違和感を覚え、じっとり絡みつく恐怖に怯える。体に金色の帯模様をもつあの女は、一体何者なのか? 誰が味方かわからない、傑作心理ホラー長篇!
  • 漂流裁判
    -
    1巻468円 (税込)
    「強姦致傷および強姦罪──被告人を懲役三年六月に処する。」喫茶店ウェイトレスの知子からレイプで訴えられ、一審で有罪判決をうけた紺野喜一。真っ向から対立する二人の主張を、紺野の担当弁護士・深水耕介が丹念に確かめていくと、知子には他に男が、紺野には婦女暴行の前科が。転々とくつがえる知子の証言、事件の背後にチラつく喫茶店のマスター、店の常連客、厳格な知子の母親……男女の密室の“真実”に迫りきれるか!? 手に汗にぎる傑作法廷小説!
  • 漂流者
    3.6
    折原一の傑作群「――者」シリーズ、今回の舞台は“洋上の密室”だ。妻と担当編集者の3人でダイビングに出かけた人気推理作家、風間春樹。潜水中の事故で助けを求めたが、不倫関係にあった2人に見捨てられる。風間は流れ着いた島から自力で無人ヨットに辿り着いたが――。航海日誌、口述テープ、新聞記事等に仕組まれた恐るべき騙しのプロット。衝撃のエピローグまで一気読み必至!
  • 漂泊者のアリア
    3.0
    1巻480円 (税込)
    “歌に生き恋に生き”た世界的に名を馳せたオペラ歌手藤原義江。英国人の貿易商を父に、下関の琵琶芸者を母に持った義江の波瀾の人生を描いた直木賞受賞作。(田辺聖子)
  • ひるの幻 よるの夢
    4.3
    孤高の老作家への作家秘書の秘めた想い……表題作、若い男より老人の持つ乾いた匂いに惹かれる愛人……「静かな妾宅」、義理の息子への激しい肉欲……「秋桜の家」、あらゆる美に執着する醜い男……「彼なりの美学」、年下の青年の力強い手の感触に惹かれてゆく中年女性……「シャンプーボーイ」。単純な性愛だけではない、男女のひそやかで強烈なエロティシズムの世界を描いた6篇を収める。きめ細かに官能の世界を描き続けてきた著者ならではの短篇集。
  • ヒート アイランド
    3.8
    1~4巻649~743円 (税込)
    渋谷で会員制ファイトパーティーを開き、トップにのし上がったストリートギャング雅(みやび)。頭(ヘッド)のアキとカオルは、仲間が持ち帰った大金を見て驚愕する。それはヤクザが経営する非合法カジノから、裏金強奪のプロフェッショナルの男たちが強奪したばかりの金だった。大金をめぐって、少年たちを追う強奪犯、強奪犯を追うヤクザ、そのヤクザを追う別の組……息詰まる攻防を描いた傑作長篇ミステリー。アキを主人公とするシリーズ第一作。
  • 美食倶楽部
    -
    モデルクラブの女社長・祥子の人生最大の楽しみは食べること。齢下の恋人はいるものの、膨大な金と時間を食べ歩きに費やしている。ある日、中年の建築家・丸岡と知り合い、食べ物に無頓着な丸岡の態度に心魅かれるのだが──食の華やぎを随所にちりばめた表題作。地方出身であることにコンプレックスを覚える女性が、結婚を機に都会の象徴としてあこがれた町に引っ越すことになる。そこは一軒家で、地元意識の強い老齢の女性と同居するのが条件だった──傑作中篇「東京の女性」。
  • 天才たちの値段 美術探偵・神永美有
    3.4
    「その絵がもし贋物なら、見た瞬間、苦みを感じ、本物なら甘みを覚えます」。美術品の真贋をその舌に感じる味覚で見抜く美術コンサルタント・神永美有。 短大の美術講師・佐々木昭友にもたらされた、「ボッティチェッリの『秋』が発見された」との情報、半信半疑で出かけた佐々木だが、同席した神永は絵を見た瞬間、強烈な甘みを感じたという。「秋」はイタリア・ルネッサンス期の巨匠の真筆なのか、それとも手の込んだ贋作なのか?  ボッティチェッリ、フェルメールから正倉院御物、江戸時代の涅槃図まで、美術にまつわる謎を解く5篇。 解説・大津波悦子
  • 注文の多い美術館 美術探偵・神永美有
    3.2
    人気の美術ミステリー、シリーズ第3弾! 舌に感じる味覚で美術品の真贋を見分ける美術コンサルタントの神永美有と美大の准教授・佐々木昭友、佐々木の元教え子で芸術家の卵・イヴォンヌのトリオが大活躍。 函館戦争で戦死した先祖を悼んで榎本武揚から贈られた、隕石を鍛えなおして作られたというサーベル。刀身の成分を調べてみると、隕石に含まれていたはずのニッケルが検出されず、偽の流星刀と断定された。だが、サーベルを前にした神永の舌はこの刀の意外な部分に甘みを感知していた(「流星刀、五稜郭にあり」)。 佐々木が密かに思いを寄せていた教え子・琴乃が結婚。いやいやながら結婚式に出席した佐々木の前で、琴乃は嫁ぎ先の家宝、支倉常長が持ち帰ったというローマ法王の肖像画を偽物と断じた。真贋の判定を託された佐々木は?(「B級偉人」)。 そのほか、志賀島の金印と同時代の「銀印」が京都から出土した。果たして本物か?(「銀印も出土した」)。北海道の農家から見つかったモザイク画は、本当にカエサルの時代のものなのか?(「モザイクで、やーらしい」)。ペリーが日本に持ち込み、将軍に披露したという蒸気機関車の模型は本物か。鍵を握るのはスケッチブックに残された「sen.T」の署名(「汽車とアスパラガス」)。神永が味覚で美術本の真贋を見極めるきっかけが明かされる青春記(「春のもみじ秋のさくら」)。
  • ビッグデータ・コネクト
    4.1
    いま、そこにある個人情報の危機を描く警察小説 公立図書館の私企業との提携を進めるエンジニアが誘拐された。サイバー犯罪捜査官とはぐれ者ハッカーのコンビが個人情報の闇に挑む。
  • ビッグ・ドライバー
    3.9
    息つくひま一瞬もなし! 巨匠の最新作品集 突然の凶行に襲われた女性作家の凄絶な復讐――表題作と、長年連れ添った夫が殺人鬼だと知った女性の恐怖を描く中編を収録。
  • ビッグ・ノーウェア(上)
    4.0
    1950年、正月――共産主義の脅威に怯えるLA。異常殺人を追う若き保安官アップショー。アカ狩りで名声を狙う警部補コンシディーン、暗黒街の始末屋ミークス。策謀と欲望の迷宮で翻弄される三人の男たちは、暗い道の果てに何を見るのか? 傑作「LAコンフィデンシャル」前夜を描く<暗黒のLA四部作>第2作。
  • 美味礼讃
    4.3
    彼以前は西洋料理だった。彼がほんもののフランス料理をもたらした。 昭和35年、辻調理師学校の若き副校長・辻静雄はフランス料理の事典『ラルース・ガストロノミック』に出会い、フランス料理に魅了され、それがどういうものなのかどうしても実際に知りたいと熱望するようになった。 当時日本では材料や技術の問題から本格的なフランス料理を出す店はなく、ついに辻静雄は9週間のフランス旅行に出る。実に100軒のレストランに足を運び、その舌にほんもののフランス料理の味を記憶させ、帰国後はその味、その技術を辻調理師学校の教員、生徒たちに情熱をもって教えてゆく。 その料理への飽くなき探究心と情熱は、日本人のみならず、ミシュランの星をもつ名店の主人やシェフたちをも動かし、日本のフランス料理を格段に飛躍させた。 ポール・ボキューズをもって「シズオはフランス人よりフランス料理のことをよく知っている」と言わしめた、辻調理師専門学校の経営者、世界的な料理研究家であった辻静雄の伝記小説。
  • BKBショートショート小説集 電話をしてるふり
    3.9
    たった5分で見えていた景色が変わる! よくナンパをされる私は、スマホで父親と話すふりをして避けていると……(「世にも奇妙な物語」でドラマ化された表題作)、老夫婦が営む喫茶店で話の上手な友が(「いつも悪いな」)など、ブラックジョークに笑い、思わず涙し、展開に驚く。 たった5分で見えていた世界がガラリとかわる、極上のショートショート、たっぷり50編! BiSHのモモコグミカンパニーとの特別対談も収録。
  • ビーンボール スポーツ代理人・善場圭一の事件簿
    3.2
    今シーズンオフのFAの目玉となったプロ野球投手・結城憲吾の代理人としてマスコミをにぎわす男、善場圭一。「選手の評価は年俸で決まる」と言い切るその姿勢は球界関係者から嫌われているが、悪役に徹して盾となることで、選手からは絶大の信頼を寄せられている。結城のFA交渉が大詰めを迎えたとき、善場はスポーツマネジメントの大手、グリーンパークのやり手女社長に呼び出され、ある依頼を受ける。それは、東都ジェッツの元4番打者、瀬司の行方を探してほしいというものだった――。『ノーバディノウズ』『球界消滅』で話題となった本城雅人が、ストーブリーグにおける陰の主役の知られざる実態をあぶりだしつつ、その裏に描かれる駆け引きを、プロ野球選手たちの身に降りかかった事件を通して描くスポーツミステリー! 【本書は、2011年に文藝春秋より刊行された『オールマイティ』を改題したものです。】
  • PINK
    3.3
    『そろそろ時間切れです。心の準備をして下さい』。メイに奇妙なメールが届いてから、夫がまるで別人のように変わってしまった。しかも夫はその後、殺人容疑で逮捕。芦屋マダムで新興宗教の教祖・奈津実の占いには「ピンクのものに気をつけて」と出た。そんな最中、アイドルの“PINK”が歌うヒット曲を作ったのが義妹の婚約者と判り…。次々と現れては解けていく“ピンク”の謎。浮かび上がった驚愕の真実とは! 震災後の神戸を舞台に喪失と再生を描く、極上ミステリ。
  • ファイアボール・ブルース
    3.4
    1~2巻490~520円 (税込)
    女にも荒ぶる魂がある、闘いたい本能がある! 女子プロレス界に渦巻く陰謀を描く傑作長篇ミステリー。 「ファイアボール」と呼ばれる女子プロレス界きっての強者・火渡抄子、といまだに一勝もできない付き人の近田は、外国人選手の失踪事件に巻き込まれる。 新人のリンチ事件、事務所の独立問題……トラブル続出の中、後楽園ホールの試合が近づいてくる。 女子プロレス界に渦巻く陰謀と、女の荒ぶる魂を描く長篇ミステリー。 解説・鷺沢萌
  • ファインダーズ・キーパーズ 上
    3.8
    『IT』『シャイニング』で知られるモダン・ホラーの巨匠キングが、小説への愛をこめた渾身のミステリー! キング初のミステリー『ミスター・メルセデス』の続編登場。 少年ピートが川岸で掘り出したのは札束と大量のノートの入ったトランクだった。父が暴走車によって障害を負ったピートの家では、毎晩のように両親がお金をめぐって喧嘩をしていた。このお金があれば家族は幸せになれるに違いない……。 だが、その金は冷酷な犯罪者モリスが、隠遁の大作家ロススティーンの家を襲って奪ったものだった。モリスはロススティーンの小説に執着を抱いていた。だから大事なのはノートの方――そこには巨匠の未発表の文章が大量に記されていたのだ。しかし別件で逮捕されたモリスは獄中に。ついに出所したモリスは、隠しておいた「宝」を取り戻しに川へ向かったが……。 少年に迫る犯罪者の魔手。そこに助けの手をのばしたのは、探偵事務所をたちあげた退職刑事ホッジズと仲間たちだった。 ※この電子書籍は2017年9月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • ファザーファッカー
    4.2
    私は、よく娼婦の顔をしていると言われる。 今までに、ホステスを含めた何種類かの職業を経験したという話をすると、「もしかしてあれも?」と売春をほのめかした聞き方をよくされるのだ。十六歳で家出して、野宿から始めた生活ではあったが、ぜったいに売春だけはしなかったのに。 ところが、私は思い出した。十五歳のとき、私は娼婦だったのだ。売春宿のおかみは私の実母で、ただ一人の客は私の育ての父だった……。 養父との関係に苦しむ多感で早熟な少女の怒りと哀しみと性を淡々と綴り、読む者の心を揺さぶった自伝的小説。 衝撃の出版から25年、著者が凄絶な過去を公表し、生身をさらして生きることで、性的虐待の後遺症に苦しむ女性たちに「me,too」と精神科医を受診する勇気を与えたという。 解説は、当時「被害当事者側から書かれた貴重な作品」と評価した精神科医の斎藤学氏。 25年後のあとがきがついた、完全版で登場!
  • ファースト クラッシュ
    3.7
    初恋、それは身も心も砕くもの 父が引き取った少年が、高見澤家に波紋を呼ぶ。三姉妹も母も心をかき乱されて――。現代最高の女性作家が贈る芳醇な恋愛小説。 ※この電子書籍は2019年10月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • ファーストラヴ
    3.9
    夏の日の夕方、多摩川沿いを血まみれで歩いていた女子大生・聖山環菜が逮捕された。彼女は父親の勤務先である美術学校に立ち寄り、あらかじめ購入していた包丁で父親を刺殺した。環菜は就職活動の最中で、その面接の帰りに凶行に及んだのだった。環菜の美貌も相まって、この事件はマスコミで大きく取り上げられた。なぜ彼女は父親を殺さなければならなかったのか? 臨床心理士の真壁由紀は、この事件を題材としたノンフィクションの執筆を依頼され、環菜やその周辺の人々と面会を重ねることになる。そこから浮かび上がってくる、環菜の過去とは? 「家族」という名の迷宮を描く傑作長篇。 第159回直木賞受賞作。 ※この電子書籍は2018年5月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 不安な演奏
    3.3
    ラブホテルで盗聴したテープを心ときめかせて聞いた雑誌編集者の宮脇平助は、それが死の演奏への序曲だと知った。そして映画監督の久間隆一郎とともに、事件を追及しはじめる。柏崎、甲府、東海道、尾鷲、九州……謎解きの旅から、次第に選挙違反の黒いネットワークと殺人事件との結びつきが浮かび上がる傑作推理長篇。巻末に、独自の視点で清張作品を読み解いた、みうらじゅん氏による「解説 清張地獄」を収録。
  • フィニッシュ・ゲートから
    -
    「ランナーとは走る者を言う。現世の何を背負おうとも、ただ純粋に真っ直ぐ走り続けられる者だけをランナーと呼ぶのだ」。東京マラソンを舞台に、友情と、遠い日の恋心を優しく紡いだ中編。文春文庫『シティ・マラソンズ』収録。
  • 風葬
    3.8
    釧路で書道教室を開く夏紀は、認知症の母が呟いた、耳慣れない地名を新聞の短歌の中に見つける。 父親を知らぬ自分の出生と関わりがあるのではと、短歌を投稿した元教師の徳一に会いに根室へ。 歌に引き寄せられた二人の出会いが、オホーツクで封印された過去を蘇らせる……。 密漁、マフィア、拿捕……桜木ノワールの原点というべき作品、待望の文庫化!
  • 風味さんのカメラ日和
    3.4
    あなたのワケあり写真は、心のワケを写している── 天然なイケメン講師がカメラと迷える心を指南します! 書き下ろしカメラ女子小説 東京で働いていたが、最近地元にもどった風味(ふうみ)は、幼馴染の頼みで、初心者のためのデジカメ教室に通うことに。 いつもボケた写真を撮ってしまう老人、寂しくない写真を撮りたい中年女性、楽しそうに見えない記念写真に悩む喫茶店経営者などが集まった教室で、講師は、カメラマンとして挫折した、天然なイケメンの知念大輔。 それぞれの生徒たちが写真に対して抱えている問題は、実は心が大きく反映したものだった。 大輔は、技術的なアドバイスをしながら、図らずも生徒たちの心の迷いにも踏み込んでいく。 ちょっと役立つ、風味の「カメラ撮影用語解説」も収録。 イラスト・高橋由季
  • 風味絶佳
    3.8
    作家生活20周年におくる、恋愛小説の最高傑作 「甘くとろけるもんは女の子だけじゃないんだから」。恋の妙味を描く珠玉の6篇。20年目のマイルストーン的作品集。谷崎賞受賞作 70歳の今も真っ赤なカマロを走らせるグランマは、ガスステイションで働く孫の志郎の、ままならない恋の行方を静かに見つめる。 ときに甘く、ときにほろ苦い、恋と人生の妙味が詰まった小説6粒。
  • 不運な女神
    3.5
    1巻559円 (税込)
    「いいことの数は決まっていて、誰かが余計に手にすれば、誰かがあぶれる」。駆落ち相手に逃げられたり、死んだ夫の連れ子と姑に手を焼いたり、20歳も年上の妻から奪った男をふたたび若い女に奪われたり、幸せな結婚を望んだのに一家三代でシングルマザーになってしまったり、元夫が新しい家族と隣のマンションに越してくることになったり……。男運に恵まれない8人のヒロインたちが、恋に翻弄されつつも、健気に何かを掴み取る姿を描いた連作短篇集。
  • FOXY
    3.8
    モデル志望で上京したものの、金を騙し取られ、無一文になった千華・19歳。銀座の高級クラブ「セビリア」の社長に拾われた千華は、店のナンバーワンホステスの繭子から「体を売らずに男から金を引き出す」様々なテクニックを教わり、次第に売れっ子へとのし上がっていくが…。色気と狡知の限りを尽くして身一つで戦い、男たちに貢がせる銀座の女たちの気迫と虚実。著者の人気ホステス体験を生かし“座るだけで10万円”の世界がじっくり体験できる、迫真の小説!
  • 不穏な眠り
    3.6
    仕事はできるが不運すぎる女探偵・葉村晶。 NHKドラマ化で話題の人気シリーズ! ミステリ専門書店でアルバイトとしながら、〈白熊探偵社〉の調査員として働いている葉村晶に今日も事件の依頼が……。 「水沫(みなわ)隠れの日々」 終活で蔵書の処分を頼んできた女性のもう一つの依頼は、死んだ親友の娘を刑務所から連れてきてほしいということだった。刑務所から女性の元に向かう道で、娘は拉致される。 「新春のラビリンス」 大晦日の夜、解体直前の〈呪いの幽霊ビル〉の警備をすることに。ヒーターが壊れ、寒さの中一夜を明かした葉村は、女性事務員から連絡が取れない男友達の行方を調べてほしいと頼まれる。 「逃げだした時刻表」 葉村の働くミステリ専門店でGWに〈鉄道ミステリフェア〉を開催することになった。展示の目玉として借りた弾痕のあるABC時刻表が盗難にあう。本の行方を追ううちに思わぬ展開に。 「不穏な眠り」 相続で引き継いだ家にいつのまにか居座り、そこで死んでしまった女の知人を捜してほしいという依頼を受けた葉村。女を連れ込んだ男の家を訪ねたところ、男の妻に危うく殺されかける羽目に。 解説・辻真先
  • 不機嫌な果実
    3.6
    「……クローゼットの中から極上の下着を選び出した時から、麻也子の不倫は始まっているのである。レースや絹に触れながら、麻也子は超能力者のように、今夜ベッドの中で行なわれるだろうことを予想する」。結婚6年目、夫の拒絶にささやかな復讐心をおぼえたヒロインは慎重な冒険──昔の男と逢う──に踏みだす。男女の虚実を醒めた視線で描き、反響を呼んだ話題作。石田ゆり子(TVドラマ)、南果歩(映画)主演の映像化も大ヒットした恋愛譚の新機軸。
  • 復讐するは我にあり
    3.9
    昭和38年、高度成長に沸く日本国中が震撼した連続殺人事件。言葉巧みに人を騙し、殺し、日本列島を縦断しながら犯罪を重ねる男に対し、警察は史上初の全国一斉捜査を開始した。関係した女、目撃情報は多数あり、立ち回り先の遺留品や人をおちょくったハガキ……証拠の山を残しつつ、空前の捜査網をかいくぐり続けられたわけは? 78日間に及ぶ逃亡、10歳の少女が正体を見破るという予想外の逮捕劇、そして死刑執行まで、実話を元に克明に描く傑作長篇。直木賞受賞作。
  • ふしぎの国の犯罪者たち
    4.0
    「犯罪というゲームにそなわっているスリル、ゾクゾクとするような快感に、ぼくたちはすっかり魅せられてしまったのだ」──職業や本名も明かすことを禁じられている奇妙なバーの客たちのあいだで、ある相談がまとまった。襲撃不能・絶対安全の現金輸送装甲車を作り上げたと喧伝する警備保障会社にひと泡ふかせてやろうと、現金輸送車襲撃を計画したのだ。人生最大のゲーム“犯罪”に足をふみいれてしまった大人たちの“犯罪遊戯”を描く連作長篇。
  • 不思議の国の野球 チェンジアップを16球
    -
    GYマークのついた帽子をかぶった白兎に誘われて「不思議の国(ジャイアント・ランド)」に迷い込んだ“マスミ”の姿をブラックな笑いで描く「不思議の国のマスミ」、すべての野球選手に段位を与えようとした計画の意外な結末を描く「幻の『四番サード長嶋八段』」他、「マスコミ江川裁判」「風雲児落合博満武勇伝」などSF、時代小説、純文学等さまざまな手法を駆使する風刺と諧謔とユーモアに満ち満ちた奇想天外プロ野球パロディ集。東京ドームに行くより楽しめます。
  • 富士山頂
    4.1
    気象庁の長年の悲願だったレーダーにようやく大蔵省の予算がついた。これが実現すれば、正確なデータが迅速に入手でき、より正確な気象予報ができる。しかし、激しい乱気流が渦巻き、天候の変わりやすい富士山の頂にどうやって重い資材を運び、レーダーを建設し、東京の気象庁まで無事にデータを送り届けるのか。2年間でレーダーを完成させなければならない。気象庁とメーカーの戦いはこれからだ。現場の担当者・技術者たちの苦闘を描き出す、異色の山岳小説。
  • ふたご
    3.7
    「お前の居場所は、俺が作るから。泣くな」 ピアノだけが友達の孤独な少女の夏子は、異彩の少年・月島と出会い、振り回され、傷付きながらもその側にいようとする。 やがて月島は唐突に「バンドをやる」と言い出した。 彼は、夏子の人生の破壊者でも創造者でもあった。 大切な人を大切にすることが、こんなに苦しいなんて--。 異彩の少年に導かれた孤独な少女。その苦悩の先に見つけた確かな光。 直木賞候補となった鮮烈なデビュー小説。 「生生しくて、切なくて、痛くて、何度も胸を揺さぶられた。この小説が好きだ。好きだ、と叫び出したくなる」 宮下奈都(解説より) 【藤崎彩織】 1986年大阪府生まれ。2010年、突如音楽シーンに現れ、圧倒的なポップセンスとキャッチーな存在感で「セカオワ現象」と呼ばれるほどの認知を得た四人組バンド「SEKAI NO OWARI」でピアノ演奏とライブ演出、作詞、作曲などを担当。研ぎ澄まされた感性を最大限に生かした演奏はデビュー以来絶大な支持を得ている。2017年に発売された初小説『ふたご』は直木賞の候補となるなど、大きな話題となった。他の著書に『読書間奏文』がある。 ※この電子書籍は2017年10月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 二つの山河
    3.6
    【第111回直木賞受賞作】 かれらも祖国のために戦ったのだから――。 大正初め、徳島のドイツ人俘虜収容所で例のない寛容な処遇がなされ、日本人市民と俘虜との交歓が実現した。真のサムライと讃えられた所長・松江豊寿の生涯を通して、国境を越える友愛を描いた「二つの山河」ほか、二篇収録。
  • ふたつめの月
    3.8
    契約社員からようやく本採用になった矢先、解雇をいいわたされた久里子。心から喜んでくれた両親の手前、出社するふりをしては日中ぶらぶらと暇をつぶす毎日を送っていた。ある日、偶然すれ違った元同僚の言葉に不審な点が──もしかして私、自分から辞めたことになってる? いくつかの事件に巻き込まれ、謎の老人や犬たちとの出会いによって成長していく久里子の様子が頼もしい、読後感あたたかなミステリー。『賢者はベンチで思索する』の続編。
  • 復活祭
    3.8
    1巻968円 (税込)
    〈失われた10年後、あの男たちが帰ってきた! そのとき裏切られた女は……〉 80年代後半、土地と株の高騰に沸いた東京。 バブルの絶頂期の都会を舞台に、若き「持たざるもの」の青春の暴走と破滅を描いた名作『生誕祭』。 ボリュームを感じさせない疾走感と、入り乱れる男女の愛憎、最後まで敵味方のわからないコンゲームは、北方謙三氏からは「バブルという、現実に社会や人を狂わせた時代を、象徴的に描ききっている。時代の狂気を背景にすることによって、ノワールとも呼ぶべき新しいジャンルを主張」と評された。 そして10年後、再び主人公の彰洋と彼の敬愛する美千隆が動き出した。 バブルが崩壊して10年、彼らが運命を狂わした女たち――麻美と早紀がすべてを失ってから10年の歳月を経て、どん底だった日本の経済は一部の産業の復活の兆しがみえている。 インターネットという実態のないものに金が集まる、いわゆる“ITバブル”時代が到来したのだ。 「失われた10年」の雌伏後も彼らの夢は変わらない。 マンハッタンにでかいビルを建ててやる――そのために選んだのが、IT産業だ。 関連企業を立ち上げて目指すのは株式公開、その株の価値を上げて売買を行うだけで、実態を伴わない億単位の金が動く。 バブル時代と同じように、彰洋と美千隆は新会社メディアビジョンを興すと休息もないままに動き回り、上昇は成功していくかに見える。 しかし二人がかつて裏切り、現在はしがないクラブの雇われママの麻美はそれを許すはずがない。 自分のパトロンであり詐欺師の桜田、そして彰洋の恋人だった早紀にも誘いをかけ、ふたりの儲けを掠め取る計画を開始する。 IT時代の寵児たちをも連想させる重要人物と、複雑な心情をお互いに抱く男女たち。 いずれ土地バブルと同じようにはじける運命の時代の中で、勝ち抜くのはいったい誰か? 馳星周王道の裏切りと哀しみが躍動する、一級のエンタテイメント作品。
  • 浮遊霊ブラジル
    3.9
    「死にたい。死んでるけど」 ユーモラスで優しい世界にたゆたう人々。 ・給水塔と亀/定年退職し帰郷した男の静謐な日々を描く川端康成文学賞受賞作。 ・地獄/「物語消費しすぎ地獄」に落ちた女性小説家を待ち受ける試練。 ・浮遊霊ブラジル/初の海外旅行を前に急逝した私は幽霊となり旅人たちに憑いて念願の地を目指す。 (上記ほか4篇収録) 本書で第27回紫式部文学賞を受賞。 自由で豊かな小説世界を堪能できる珠玉の短篇集。 解説・戌井昭人
  • 冬の光
    3.5
    四国遍路の帰路、冬の海に消えた父。 家族、男女関係の先に横たわる人間存在の危うさを炙り出した傑作長編。 企業戦士だけれど、子煩悩だった父。だが父は、二十年間ひとりの女性を愛し続けていた。 一度は夫の裏切りを許し、専業主婦として家庭を支えて生きてきた母は、父の退職後に発覚した事実に打ちのめされる。 それなりに安定した幸せな家庭を作ってくれた父が、四国の遍路を終えた時、冬の海に飛び込んだのは何故なのか。 家庭の外にもう一つの世界を持っていたその心中とは? 次女の碧は職場に休暇願いを出し、父の最後の旅を辿ろうと決めた。 日本の標準的で幸せな一人の企業戦士の、切なく普遍的な人間心理。 四国遍路のリアルな光景を辿るうち、読者も自身の人生、男と女の根源的関係に思いを馳せることになるに違いない。 変容し続ける作家・篠田節子の到達点。 解説・八重樫克彦
  • 冬山の掟
    3.6
    遭難をめぐり、人間の本質を深くえぐった、新田作品の初期短編集! 冬山では午後になって新しい行動を起こすな―― 山で発熱した者のためにこのルールに背いて、吹雪の中をさまよう一行と、 その身を案じる家族の懊悩を描く表題作のほか、 「地獄への滑降」「遭難者」「遺書」「霧迷い」など、遭難を材にとった迫力溢れる山岳小説全十編。 解説・角幡唯介 ※この電子書籍は1978年7月に文春文庫より刊行された文庫の新装版を底本としています。
  • 芙蓉の人
    4.2
    日々の暮らしに欠かせない天気予報。明治期に、この予測をより正確なものにするべく命を懸けた夫妻がいた。野中到(いたる)・千代子夫妻――到は私財を投じて富士山頂に気象観測所をたて、前人未到の冬期観測を実施。「一人であれば、夫は必ず死ぬであろう」と考えた千代子は、夫を支えるため後を追って山頂に登るが……。世界遺産に登録された霊峰・富士山を舞台に、日本の未来のために初めて富士登山に挑んだ、実在の夫婦の感動物語! 2014年7月26日からNHK総合で連続ドラマ化(全6回)。
  • フライ・トラップ JWAT・小松原雪野巡査部長の捜査日記
    3.0
    O県警生活安全部「JWAT(ジェイワット)」は女性と子供の安全を守る特別チーム。一員である巡査部長・小松原雪野は、夜の公園で保護した高校生・隼人の証言に不信感を抱く。見知らぬ男たちに襲われたという彼は、なにかを隠しているようなのだ。路上強盗事件や、脱法ハーブとそれを入り口とした麻薬禍を追ううち、彼女は少年たちの中に潜んだ闇の存在に気がつく。だが、それは悪夢のはじまりにすぎなかった──。高嶋哲夫がスリリングに描く、書き下ろし新感覚警察小説!
  • フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち
    4.0
    株式市場で、巨大な詐欺が行われていた!? 何故か株を買おうとすると値段が逃げ水のようにあがってしまう。その陰には巨大詐欺と投資家を出し抜く超高速取引業者の姿があった。 ※この電子書籍は2014年10月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • フラミンゴの家
    3.9
    町の下半身と揶揄される「さかえ通り商店街」で実家のスナックを手伝うバツイチ男・正人。元妻が入院したため、幼い頃に別れた反抗期の娘と暮らすことになり、同棲中の恋人も追い出したのだが、簡単に親子の距離は縮まらない――。家族の再生に悪戦苦闘するヘタレ男が涙と笑いを誘う、芥川賞作家の傑作長篇。
  • 振られた刑事
    3.0
    惚れていたバーのホステスが殺された。生前、急に冷淡なそぶりにかわった彼女に、なにが起こっていたのか? 捜査陣からはずされた刑事が、ひとり真実を追う表題作のほか、不倫と殺人容疑の狭間でアリバイ工作を画策する家庭の皮肉な幕引きを描いた「喪服の仲」、清楚な女子大生の自殺をテーマに、日常に見え隠れする人間の闇をしずかに解き明かす「悪魔の明日」など、全九篇を収録。人間ドラマの悲喜劇にやさしい視線を注いだ、推理ミステリーの名手による魅惑の短編集。
  • フランダースの帽子
    3.6
    あのころ知りあいのだれもがなにかしらのウソをついて暮らしていた―― 長く潜伏したあとでひょっこり姿をあらわした、良く似た姉妹による巧妙なウソ。 郵便受けに届いた1枚の葉書が呼び起こした、弟との30年前の秘密。 「語りとは騙りのことである」とうそぶく読書会の主宰者。 賢治の童話やフランドル派の絵画に秘められた寓意。 そして、記憶を失った青年たちと、自らの物語に生きる老婦人たち――。 消えゆく記憶の彼方、不在の人物の輪郭から、おぼろげに浮かび上がる6つの物語。 解説・東直子
  • フルハウス
    3.6
    1巻427円 (税込)
    “家を建てる”が口癖だった父は、理想の家族を夢みて、払える金もないのに、いきなり立派な家を建てた。しかし成人した娘たちも、16年前に家を出た妻も、その家に寄りつかない。そこで父はホームレス一家を家に招き、ニセモノ家族と一緒に暮らし始めるのだが……不気味な味わいの表題作は、泉鏡花文学賞を受賞。ほかに、不倫する女が体験する、不倫相手の妻の奇矯なふるまいを通して、家族の不在をコミカルにえがく「もやし」を収録。才気あふれる2短篇。
  • フルーツパーラーにはない果物
    3.9
    かわいい形をしていて誰にでも好かれるけれど、すぐに飽きられるイチゴのような女の子。でも、こんな自分になりたかったわけじゃないのに――。今の自分がどこか好きになれない、メーカー勤務の四人の女性たち。二十代後半の彼女たちが出会った、人生を変えるかもしれない恋愛と友情を描く連作短篇集。 解説・倉本さおり

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