佐木隆三の一覧
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ユーザーレビュー
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映画「すばらしき世界」の原案。23年のムショ暮らしを終えた初老の男の娑での生活を描く。
絶版だった作品を良くぞ映画の原案に持ってきてくれたものだと思う。
九州で生まれた孤児は少年院生活などを経て犯罪の常習、服役期間中の傷害などで合計して23年の刑期を終える。
一般社会に馴染もうとする姿勢、周囲の
...続きを読む人々の善意が描かれる。
実話に基づくフィクションという位置づけだが、補講は事実。筆者の取材と実在した人物との接点が何とも胸を打つところ。
犯罪を通じて人を描くのは佐木隆三の得意とするところ。
久々に読むとどこか新鮮な視点。
映画の題材として発掘した西川美和監督に感謝。
Posted by ブクログ
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まさか、あのように報道されていた死刑囚に、そのような一面があったとは。情報を与えられるだけである事の危うさ。足を使い、自ら知りに行くことの大切さ。勉強になった。とても面白い。
しかし、「殺人者と他の人間の違いは程度の差であって、種類が異なるのではない」は、反社会性パーソナリティ障害持ちの殺人者たちが
...続きを読む存在する現代社会では、全く同意することはできず、人間の正体など無い、としか思えない。
「感情で動くことしか出来ない人間」を越えられない限り(越えたら人ではなくなりそうだが)、何かの拍子で殺人者の側に行ってしまうのは、極々自然であろう。
Posted by ブクログ
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めちゃくちゃ面白いです。佐木隆三さんの本は、初めて手に取りました。
なんで手に取ったか、といいますと、自分の大好きな映画監督、西川美和さんが、佐木氏の「身分帳」という著書を原作にして「すばらしき世界」という作品を撮ったからであり、その映画がそらもう素晴らしかったのと、その映画製作ドキュメンタリー本
...続きを読むとでも言うべき「スクリーンが待っている」という西川さんの著書が涙ちょちょぎれるくらい素晴らしかったからです。
あの西川美和監督がこれほどまでに素晴らしいものを生み出すに至ったところのインスピレーション元である、佐木隆三、という人物はいかなる御仁なるや?という思いから、とりあえずは「身分帳」も読みたいけれど、佐木さんの最高傑作?と言われているらしい?この作品を、まずは手に取った次第、というね、そういう流れですね。
この説明、いる?とか思ったりもしますけれども、自分の思考の流れを自分で整理したいがために、書いております。
で、この「復讐するは我にあり」上巻、ですが、文句なしに面白いです。素晴らしいです。
できるだけ、事前情報を一切仕入れないで読もう、って思ってますので、おそらく2022年現在ではね、この講談社文庫の初版が昭和53年(1978年)発行のこの作品に関しては、既にあらゆる研究、レビュー、感想が書かれていると思うのですが、できるだけ何も見ずに聞かずに読まずに、この本に相対しております。
今村昌平監督?が、映画化しているらしい、という事だけは、知っております。
で、この作品って、いわゆるトルーマン・カポーティの「冷血」と同じですよねえ?ノンフィクション・ノベル、ってジャンルですよね?実際に起こった犯罪を、作者自身が綿密な取材を行って、小説化して発表したものであるぞ、と。そうですよね?この作品って、実際にあった事件を基にしてるんですよね?と思いながら読み進めております。違っていたらゴメンナサイ。
読み進めながら、スゲエ似てるな、と思っていたのは、というわけで
トルーマン・カポーティ「冷血」
髙村薫「冷血」(髙村さんバージョンの冷血が、カポーティ作品を下敷きにしているハズなので、そらそうか)
宮部みゆき「理由」
新井英樹の漫画「ザ・ワールド・イズ・マイン」
というあたりでしょうか?あのあたりの雰囲気、バンバン感じましたね。
で、感じながらも「これ、あの作品の真似やん」と思ったかというと、んなこたあ全くなく。というか、カポーティ「冷血」以外は、全部こっちが先やしなあ、とか思いつつ、他の作品群がこの作品の真似やん、とかも一切思わず、上記の作品はどれもこれも超一級に面白く超一級にそれぞれの確固とした独自さがあるよね、とか思いますね。
いやしかし、この作品の主人公、と言って良いのでしょう、連続殺人犯・榎津巌(えのきずいわお)。ホンマに不謹慎ですが、圧倒的に魅力的な人物、との思いを抱かずにはいられない。極悪人なのに。とんでもない犯罪者なのに。間違いなく、絶対的に「悪」なのに。なんなんだ?こいつの、不思議な人間的な魅力は?「人たらし」っぷりは。
これだけの犯罪を犯しながら、日本列島を転々としながらもドンドンと罪の軽重は様々なれど、こんだけ犯罪し続けることできるなあ!という驚愕。おっとろしいほどの機転の持ち主であり、そもそも、相対した人間を、男でも女でも、なーんか上手い事「この人、なんか、良い人そうやね」と思わせてしまうのであろう、圧倒的な人たらしっぷり。エゲツナイ。エゲツナイですよ。
アレですね、山下敦弘さんが監督された、川本三郎さん原作の著書「マイ・バック・ページ」。映画では松山ケンイチが演じた「梅山(本名・片桐優)」。アイツも、まあまあな悪人(人間的には小者?)であり相当な人たらしだな、とか思ったんですが、彼を数倍から数十倍凄くした感じです。榎津巌ってヤツは。
読み物としても、佐木さんの文章が、まずもって面白い。上手い。素晴らしい。榎津が、全国転々と逃げ回りながら悪事重ねていくんですが、基本的にはその被害者とその被害者をとりまく周りの人々の榎津評、あの時はあんな感じだった、という語りで物語は構成されている気がするんですが、その語りがもう、マジで面白い。微に入り細を穿つとはこのことか、という迫真の再現っぷり。
この登場人物の彼ら彼女らの言葉の再現は、佐木さんの創作なんでしょうが、「ホンマにこの人たちが語ってる」感がビシバシなんですよ。圧倒的にリアル。1978年出版の作品を2022年に読んでもなんらかの「圧倒的な現実感」を感じるって、、、どーゆーこと?とか思うんですよねえ。マジ凄い。
あと、艶聞が矢鱈と多いのも、榎津さん、どんだけ精力絶倫なんよ、、、とか思う。色男だったんでしょうねえ。こんだけ犯罪しながらも、こんだけ色事もこなす。おそるべしやでマジで。逆007・逆ジェームスボンドかっつーの、というくらいにキッチリと全国各地で色事。まじパネエ。
あと、この艶聞譚の、佐木さんの表現の仕方が、めちゃ上手い。直接「セックスしてますガンガン」とかでは、ない。上手い事上手い事、オブラートに包んで、皮肉や諧謔やコメディーを含めてのブラックユーモア的艶笑トーク。上手すぎる。
物語の超序盤なんですが、西海運輸で榎津の同僚だった、中牟田京二のもとをね、話を聞きに刑事が訪問するやないですか。そこでの、京二、京二の恋人のチーちゃんを含めての刑事との三者三様の丁々発止の会話。めちゃくちゃ面白いです。京二のエロトークの話の例えとかが、もう抜群なんですよ。凄いです。
あと、静岡県浜松市での、貸席「あさの」での、榎津がニセ大学教授のふりをしていた時の話全般。20章「爪」の辺りの書き方とかもねえ、、、ホンマに上手い。凄いです。最初に凄惨な事実を提示して、その後に時間を遡って登場人物に語らせる、あそこ。凄いんだからもう。登場人物それぞれの目線が、思考が、その流れの書き方が、もう、本当に凄い。上手い。
上巻で、全24章あるのですが、その全ての表題が、漢字一文字、という統一感も、素晴らしいですね。なんというか、圧倒的に引き締まっている。クールネスの極みだな、とかね、思いますね。
上巻読み終えた時点では、榎津巌は全然捕まらずに逃げ回っています。犯罪も犯し続けています。コレが、下巻で、どう変わるのか?早々に榎津は捕まるのか?そこから捕まった後の後日譚になるのか?それとも、下巻の最後の最後で捕まるのか?まさか逃げおおせることはないよなあ?
と思いつつ、下巻も楽しみです。本当に楽しみです。
あ、この著書のタイトルの意味、現時点では、未だ分かりません。「復讐するは我にあり」とな。我、とは誰を指しているのか?榎津だとは、思うのですが、では榎津は、なにに復讐しているのか?そもそも復讐とはなにに対しての復讐なのか?
物語の冒頭のエピグラフでは、聖書のロマ書が引用されています。この文章の意味は「人間は、どれだけ憎くても自らで復讐してはいけない。復讐するのは神に任せておきなさい」という意味だと自分は理解したのですが、それならば「復讐する我」とは、神のことなのか?榎津を神に見立てているのか?なんらか意図をもって?
とか、もう、想像が妄想が膨らむ膨らむ。いやあ、素晴らしい作品です。この感想が、下巻を読み終えたときに、どう変わるか。それがもう楽しみですねえ。読書の愉悦です。
Posted by ブクログ
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新年1冊目。一気読みした。
正直、小説とは全然思えなかった。でも、小説なんだね。
正直星とかつけたくなかったけど、私の人生に影響を与えてくれた本であるという意味で星をつけた。
すばらしき世界を観て衝撃を受け、原案小説ならば絶対に読まねばならないと購入。もっとはやく観た直後に読めばよかった、、!
...続きを読む
まず思ったことは、西川美和はすごいなということ。これだけ長い小説なのに、この小説が伝えたいことを余すことなく映像化したのは天才だと思う。
というか、小説を洗練して、映画という形で世に出したように感じる。
忘れているだけかもしれないけど、映画と違う点で印象に残っているのは、元妻と子供と山川で現場のアパートに行ったときに「俺が悪かった」とつぶやこうとしたところ。
今までの山川だったら思うことはなかったと思う。自分の度量がなかったなんて思えなかったと思う。山川のことを根気よく見守って、人間への信頼を取り戻そうとした人たちの気持ちが山川の心の壁を少し溶かしたからだと思う。
自分の非を認めるということは、自分の弱さを認めるということで、ひとりで生きて来ねばならなかった山川には出来ないことだったのではないだろうか。
なんで野菜が買えないんだろう?とか、なんですぐそんな怒っちゃうんだろう?とか、不思議だった。でも、私がいま考えている「普通」が出来ない人は当たり前にいて、出来ないから弱者に分類するのは違うんだなと思った。
難しいけど、違うんだなと思った。
なんか本当に感想を文章にするのが難しい。
普通ってなんだろう。正義ってなんだろう。社会に適合するってなんだろう。
また、後書きが興味深い。後書きあってのこの本だなと思う。西川美和が、映画は原作をそのまま表現しては意味がないというようなことを書いていたのが原作紙のもの映像化反対派としては心に残った。
感想を書くにあたって、自分がすばらしき世界を観たあとにどういう感想を書いていたのか見直した。いい意味で頭が空っぽだった時期だから、自分の感性が豊かで、物事を考えようとしていた感想だった。
今回うまく感想が出てこないことがショックだった。最近本当に冊数を重ねる読書しかしていなかったから、これからは自分の人生を豊かにするために本を読んでいこうと思う。
Posted by ブクログ
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映画で、役所広司さんの演技が素晴らしく、不遇な生い立ちと真っ直ぐな性格が犯罪を招いている様を諦めのような悲しさで観た。その後も折に触れ、映画のシーンがフラッシュバックするので原作を読まねばと手に取った。生々しいのは事実だったから。そして著者が主人公のモデルに近しくしていたから。そうならざるを得なかっ
...続きを読むた人々が排除だけされて犯罪を重ねていく世の中に自分を身を置いているのだと突きつけられている。
Posted by ブクログ
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