あらすじ
映画監督西川美和が惚れ込んで映画化権を取得した、
『復讐するは我にあり』で知られる佐木隆三渾身の人間ドラマ!
映画『すばらしき世界』(2021年2月公開)原案。
復刊にあたって、西川美和監督が書き下ろした解説を収録。
人生の大半を獄中で過ごした前科10犯の男が、極寒の刑務所から満期で出所した。
身寄りのない無骨者が、人生を再スタートしようと東京に出て、職探しを始めるが、
世間のルールに従うことができず、衝突と挫折の連続に戸惑う。
刑務所から出て歩き始めた自由な世界は、地獄か、あるいは。
伊藤整賞を受賞した傑作ノンフィクション・ノベル。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
山川の身分帳の量を知るだけで問題多し人物なのがわかる。刑期を終え満期釈放出所した山川が癇癪を起こさないか心配でしかたがなかった。子供の頃は放浪での補導、いつから神経質で癇癪な性格になってしまったのか…
スーパーの主人の優しさが救いになりました。悩んだ時に親身になってくれる人、相談できる人がいると気持ちが落ち着く気がします。
Posted by ブクログ
映画「すばらしき世界」の原案。23年のムショ暮らしを終えた初老の男の娑での生活を描く。
絶版だった作品を良くぞ映画の原案に持ってきてくれたものだと思う。
九州で生まれた孤児は少年院生活などを経て犯罪の常習、服役期間中の傷害などで合計して23年の刑期を終える。
一般社会に馴染もうとする姿勢、周囲の人々の善意が描かれる。
実話に基づくフィクションという位置づけだが、補講は事実。筆者の取材と実在した人物との接点が何とも胸を打つところ。
犯罪を通じて人を描くのは佐木隆三の得意とするところ。
久々に読むとどこか新鮮な視点。
映画の題材として発掘した西川美和監督に感謝。
Posted by ブクログ
新年1冊目。一気読みした。
正直、小説とは全然思えなかった。でも、小説なんだね。
正直星とかつけたくなかったけど、私の人生に影響を与えてくれた本であるという意味で星をつけた。
すばらしき世界を観て衝撃を受け、原案小説ならば絶対に読まねばならないと購入。もっとはやく観た直後に読めばよかった、、!
まず思ったことは、西川美和はすごいなということ。これだけ長い小説なのに、この小説が伝えたいことを余すことなく映像化したのは天才だと思う。
というか、小説を洗練して、映画という形で世に出したように感じる。
忘れているだけかもしれないけど、映画と違う点で印象に残っているのは、元妻と子供と山川で現場のアパートに行ったときに「俺が悪かった」とつぶやこうとしたところ。
今までの山川だったら思うことはなかったと思う。自分の度量がなかったなんて思えなかったと思う。山川のことを根気よく見守って、人間への信頼を取り戻そうとした人たちの気持ちが山川の心の壁を少し溶かしたからだと思う。
自分の非を認めるということは、自分の弱さを認めるということで、ひとりで生きて来ねばならなかった山川には出来ないことだったのではないだろうか。
なんで野菜が買えないんだろう?とか、なんですぐそんな怒っちゃうんだろう?とか、不思議だった。でも、私がいま考えている「普通」が出来ない人は当たり前にいて、出来ないから弱者に分類するのは違うんだなと思った。
難しいけど、違うんだなと思った。
なんか本当に感想を文章にするのが難しい。
普通ってなんだろう。正義ってなんだろう。社会に適合するってなんだろう。
また、後書きが興味深い。後書きあってのこの本だなと思う。西川美和が、映画は原作をそのまま表現しては意味がないというようなことを書いていたのが原作紙のもの映像化反対派としては心に残った。
感想を書くにあたって、自分がすばらしき世界を観たあとにどういう感想を書いていたのか見直した。いい意味で頭が空っぽだった時期だから、自分の感性が豊かで、物事を考えようとしていた感想だった。
今回うまく感想が出てこないことがショックだった。最近本当に冊数を重ねる読書しかしていなかったから、これからは自分の人生を豊かにするために本を読んでいこうと思う。
Posted by ブクログ
映画で、役所広司さんの演技が素晴らしく、不遇な生い立ちと真っ直ぐな性格が犯罪を招いている様を諦めのような悲しさで観た。その後も折に触れ、映画のシーンがフラッシュバックするので原作を読まねばと手に取った。生々しいのは事実だったから。そして著者が主人公のモデルに近しくしていたから。そうならざるを得なかった人々が排除だけされて犯罪を重ねていく世の中に自分を身を置いているのだと突きつけられている。
Posted by ブクログ
役所広司さんの写真のカバーがかかってて、それが本来のカバーよりちょっとサイズが小さくて、「カバーが二重にしてあるな」って気づくしかけなのかな?と思いました。「身分帳」という小説は、随分前に出版されて、その後絶版になっていたようだ。このたび掘り起こされて、映画化に伴い、また本が出版されたということのようだけど、それによって、初版の「身分帳」に関係者の ”その後” が追加されたことによって、このルポの重みがいや増し、感動を呼ぶ…という感じになっている。
もともとの「身分帳」は、人生の大半を刑務所で過ごした 主人公の田村氏が、刑期満了で出所し、日々を危なっかしく過ごしていく様子がリアルに描かれたものである。身寄りのない田村氏に、身元引受人の弁護士、アパートの近所のスーパーの主人で町内会長、同じアパートに出入りする新聞配達の若者たちが関わり、彼と社会をつなぐ役割をする。
長い刑務所生活で、カッとなりやすい自己を分析し、なんとか重大な犯罪を犯すのを踏みとどまる田村氏だが、やはりそう簡単にはいかず、せっかく自分を心配してくれて、手を差し伸べてくれている人がいるのに、変な態度で人の思いを踏みにじってしまったり、信頼を裏切るようなこともしてしまう。読んでいて、ハラハラしたり、悲しかったり、それでも彼を見限ることなく関わろうとする人たちに、感心させられたりする。
田村氏は凶悪犯罪を犯した人に違いなく、もし現実にこんな人が自分の身近に住んでいたら恐ろしいとは思うのだが、なんというか、時々すごく「まっとうなこと」を言うし、もしかしたら彼が正しくて世の中が間違っているのでは、と考えてしまうようなところがある。だからこそ、周りの人も彼をほおっておけなかったり、この人を題材に小説を書こうと思ったりした、というわけだ。
とにかく自分を曲げることができず、かたくななまでに「道理を通そう」としたために、わやくちゃな人生になってしまった、という感じで、文字通りドラマチックな人生なのだ。
あわわわ・・・あわわわ・・・と、彼の波瀾万丈な人生に巻き込まれたような感覚に陥りながら読み進め、文庫本のページ数をけっこう残したまま「身分帳」は終わる。
↓このあとネタバレ注意
そしてページをめくると、主人公の田村氏が福岡で孤独死し、作家が警察から呼ばれる、っていう「後日談」が展開される。
ここで私はもう、胸がいっぱいになって、号泣でした。
田村氏は殺人という、許されざる犯罪を犯したことには違いないが、一生懸命生きた。「幸せになる権利があったか」「許されていいのか」とか、そういう考えが、不思議と浮かんでこない。とにかく一生懸命に生きた、ただそれだけだ。
時がきて、その命が尽きるまで、人は、一生懸命に生きるしかないのだ。
後日談はその後もいろいろと続く。昭和が終わり、戦後の厳しい時代を生きた人ひとたちも、もうこの世からいなくなっていく。刑務所も変わる。人権意識も根付く。田村氏が生きた、暴力団が影響力をもっていたり、町内会長が近所の人達のトラブルを仲裁したりする時代ではなくなった。でも人は生きていく。
「生きる」ということを、ストレートに、まざまざと、精魂込めて書いた、すごい物語だと思った。
Posted by ブクログ
読み終わったあとにノンフィクションと知って驚愕。
身分帳の後ろに収載されてる行路病死人を読んでるうちに、あれ?っとなり少し混乱した。まさかノンフィクションとは。
無知も甚だしく恥ずかしいのだが、「復讐するは我にあり」という名前は聞いたことがあったが佐木さんの作品だった。またこの身分帳は西川美和監督の元で映画化されている(アマプラで見れる)2020年、超最近である。
複雑な気持ちが交差してなかなか言葉にはできないが。戦後親から捨てられ孤児院に馴染めず悪い道に入っていく過程、獄中での生活態度、自分の主張は何があっても曲げられず執拗に自分の中の正義を正そうとするところ等々。読んでて苦しい。幼少期に何があっても100%で守ってくれる存在がいるってだけで幸せなんだな。多分彼は愛ある環境で生活できていたら絶対違う人生になっていたと思う。それくらい環境っていうのは大事なんだなと思う作品だった。出所後、絶対にうまくやっていけないと思われたが、周りの人たちの温かさや、本人の努力があって最後まで普通の社会で生きていけた事は立派であるという他ない。精神的病を持ちつつ独りで生きていく事は大変だ。彼は社会に出てもがきながらホントによくやったと思う。
手に取るように彼の事が立体化して浮かびあがってくる作品だった。
翌日。アマプラですばらしき世界を見た。こちらも秀作だ。骨子となるところは原作に忠実に再現されていて、心の動きは挿入されているエッセンスに散りばめられている。原作には書かれていなくても普通の社会を生きる毎日の中で沢山辛いこともあっただろう。元いた場所には戻らないため歯を食いしばって生活されてたんだなと苦しくて切ない気持ちになった。
Posted by ブクログ
映画を見て原作が気になり購入。
本全体が読みやすい。原作と映画を比較することでどのように現代版として馴染ませたのかが分かって興味深い。
個人的には後半の「行路病死人」が面白かった。
Posted by ブクログ
とても不器用な生き方をしている主人公。でも、憎めないキャラクターで、私自身は嫌いではないかも。
もっとうまく立ち回れないものかなぁと、ヤキモキしながら読み進めました。
役所広司さんが好きで映画も先に見ましたが、本の方が好きかも!
Posted by ブクログ
映画を先に観て良かったので本も読んでみました。
西川美和監督がこんなに面白い本が絶版状態にあるとはと書かれていますが、本当に面白く一気に読み終えました。
主人公である山川一さんは再犯を繰り返し、出所後も上手く世間とは関われません。
真面目で几帳面、人情に厚く、礼儀正しく優しくもあり、とても魅力的な人です。
そんな裏表のない彼の周りには人が集まります。
ですが曲がった事が許せない性格だからか中々思うように事が運びません。
その生き様に目が離せなくなります。
映画と本、両方ともおすすめです。
Posted by ブクログ
映画「すばらしき世界」を観て、原作を読みたくなった。
映画とは違い、もう少し多く主人公の出所後の生活が描かれており、小説の世界を楽しむことができた。
生きづらさという点において、前科者であるからということより、この主人公の性格が占める部分が大きいのだろうが、育った環境や境遇のせいもあり同情する部分は少なくはない。
最後に追加されている「行路病死人」では、主人公のモデルとなった人物のリアルな部分を知ることができ、小説の主人公よりもヤクザものであったのではないかという印象を持った。
おそらく自分の人生では関係を持つことはないであろう世界の人の話で面白かったと同時に、実際にそのモデルとなった人物と付き合いながらこの小説を書いた作家の労力と迫力に感心もした。
Posted by ブクログ
戦争が無ければ、違う人生だったかもしれない。
何事にも、一途に真っ直ぐに生きてきた人。その人生な向かいあって、一冊の本にした作家。その他様々な人たちが、取り巻きながら、本当に生きたと言えるかも。仮想の力が無けれ生きて行けない現代人は、生きていると言えるのか。
Posted by ブクログ
ほんの少し何かが変わればこんな人生にならなかったのではと思われる。
ほんの少し何かが変われば誰もがこんな人生になる可能性がある。
無難に生きることは簡単なのか難しいのか…
Posted by ブクログ
人生のほとんどを獄中で過ごした山川一。
刑期満了で出てきてから、色々な人に支えられながら過ごす日々。
淡々と『山川一』を読む。
読むうちに熱くなっていきます。
優しい人たちに支えられて、時には真面目で頑張りすぎるために空回りする。
身分帳の後に書かれている『行路病死人』は、山川一が亡くなった後のストーリーとなります。
これも…感動しました。
必ず『すばらしき世界』観ます!
Posted by ブクログ
殺人罪で刑務所の服役を終えた山川の出所後の人生。
山川の人となりや考えかた、人との交わり方を深く鮮明に描き出していて迫力がある作品でした。
著者が他人を描くのにこれほど迄に山川になりきれるものなのか?と思うくらいに様々な場面で山川の心情がこちらにも伝わってきました。
ただ最後がこの終わり方?九州に就職の面接に行くのに、大家から立ち退き料を貰い、借金を返そうとする場面で終わり?
どうやって収集をつけたら良いのか分からない終わり方だった…。
Posted by ブクログ
すごく面白かった。復讐するは我にありよりこっちの方が断然好き。札幌高裁の人が偲ぶ会に来たところで何故かめっちゃ泣けた。佐木隆三さんは本当にすごい。
西川美和さんよ本当にありがとうと思う。映画も観たい。
Posted by ブクログ
佐木隆三によるノンフィクション・ノベル。1990年に単行本が刊行、93年に文庫化されたが、絶版状態になっていた。
2020年に西川美和監督による「すばらしき世界」の原案とされたことを受けて、同年、復刊された。
20年発行のこの文庫版には、本編の他、後日談にあたる『行路病死人』、文芸評論家による解説に加えて、西川が復刊にあたって寄せた一文も収録されている。
舞台は昭和61年2月。
男がいる。受刑10犯である。13年という長い年月を獄中で過ごした男が出所する。東京の弁護士が身元引受人となる。男は極寒の旭川から列車に乗って東京に向かう。
最初の事件は「はずみ」のようなものだった。キャバレー店長をしていた男は、ホステスの引き抜きでトラブルになり、刀を持ったヤクザ者に襲われた。その刀を奪って逆にヤクザ者を斬り殺してしまった。
その後、服役中に受刑者や看守と幾度もトラブルを起こし、刑期は延びた。処遇困難者として各地の刑務所を渡り歩いた。
どうにか出所まで漕ぎつけ、今度こそ刑務所に舞い戻ることなく、社会で生き抜こうと思っている。
身寄りはない。持病がある。すぐには働けない男は、生活保護を受けながら、生活を立て直そうと奮闘する。
「身分帳」というのは、刑務所で受刑者の入所態度や経歴、行動、家族関係などを記していく書類である。受刑中に事件を起こせばさらにそこに記載される。
本書は、ノンフィクション・ノベルなので、男にはモデルがいる。実際の「身分帳」の記述を差しはさみながら、男の来し方行く末が小説として綴られていく。
療養しながら、今後を考える。車の運転手ならば口があるだろうが、服役中に運転免許証が失効している。仮免許扱いで技能試験に通れば再発行と言われたものの、そう簡単には合格しない。教習所に通いなおすことを勧められるが、何しろ金がないのである。
そんなこんなの日々に、アパートの住民や、町内会長も務める近所のスーパーの店長との交流がある。
ケースワーカーに勧められて独身者向けのパーティにも出てみる。
別れた女房とも再会する。
九州で極道をしている弟分に招かれて、かの地までの旅も楽しんだ。
大事件が起こるでもない、淡々とした筋運びだが、何だか読まされてしまう。
男は幾分頑ななところはあるが、基本、前向きに人生と取り組もうとしている。しかし、何だか、どこかが噛み合わない。
そもそも出生が軍人と芸者の間の子で、幼い時に施設に預けられている。そこを抜け出し、進駐軍のキャンプでマスコットのようにかわいがられた。一時は米軍関係者の養子になれそうだったが、うまくいかず、取り残された。以来、極道の道に入り、という人生だった。
要領が悪いというわけでもない。多少のずるさも持ち合わせている。頭も悪くはない。周りにそれなりに親切な人もいる。けれどもどうにもうまくいかないのである。
とはいえ、悲惨な話とばかりも言い切れない。端々に、どこか男の「かわいげ」が滲む。
手をかけて、よじ登ろうとするけれども、ひょいとは登れない。
全体としては頑張っているのにうまくいかない残念な顛末なのだが、生きていくってしょうもなくてうまくいかなくて、でも愛おしいよね、という思いがわいてくる。読みながら、男と並走するような気分になっていくのだ。
併録の『行路病死人』のタイトルを見て、「ああ、やっぱりうまくいかないのか」と嘆息する。そう、その通り、この”行路病死人”はこの男なのである。
但し、いわゆる「行き倒れ」というほど悲惨な末路ではなく、殺されたわけでもない。持病の悪化による病死である。
こちらは小説の要素はなく、ほぼノンフィクション。連絡を受けて親交があった著者が死亡した男の野辺の送りをする顛末である。著者は葬式を上げ、偲ぶ会も開く。『身分帳』は文学賞も受賞し、そこそこ売れた本ではあっただろうが、それだけではない。やはりそこには生身の人間のつながりがあったように感じられる。著者の視線の温かさが作品に滲み出ているのだろう。
男の人生には「戦争」が色濃く影を落とす。
正確には孤児ではないが、その人生は戦争孤児とも通じるところがあるだろう。
時代を背負うその人生を西川は現代に置き換えて映画にしたという。こちらも機会があれば見てみたいところだ。
西川の解説には、生前、男は『身分帳』を映像化するとしたら誰に演じてほしいかと問われ、照れながら「高倉健かなぁ・・・」と語ったとある。こんなところも憎めないところだろう。
さて実際、演じたのは役所広司。男はキャスティングに満足しただろうか。西川が、胸の内で男に語る言葉がじんわり沁みる。
Posted by ブクログ
3.7点
映画すばらしき世界からこの原作を知った。
原作はモデルを元に事細かく描写していて、映画を観て更に深く知りたい自分にはよかった。
ただ、細かい分乱雑な印象がありまとまりに欠ける。
その点では映画版は現代にうまくアレンジし、きれいにまとまっている。
巻末の西川監督のコメントも良かった。
Posted by ブクログ
役所広司が主役を務めた映画の脚本家のあとがきで、今は刑務所ももうこの当時の監獄法は改正されて、モデルになった田村さんという人からみれば信じられないほどの“好待遇”なんだそうだ。だからといってもちろん入りたいわけではないが、入ってしまったら、出てきてからの人生が並大抵では普通には送れなくなることは変わらないんだろう。
たしかに、もっと融通効かして少し折れることができるなら、もっと楽に行けるのにという感じはなくはないが、こういう人は少なからず居るし、自分にもそういう部分はある。
弁護士でもないし、ケースワーカーでもない自分にも何かできることはあるのかどうか、考えてみたいと思った。
Posted by ブクログ
こればかりは購入しました。
西川美和監督の、すばらしき世界、観たかったけど、行けなかったから。
山川の人生。無骨で真っ直ぐで、
うまいことできない人生。
それだけに、人の心を、私の心をうつ人生。
Posted by ブクログ
読み応えありです。若い頃、映画館で「復讐するは我にあり」を観ました。震えました。緒形拳さん演じる主人公が場当たりに殺人を犯して、日本中を逃げると言うストーリー。緒形拳さんの演技が脂が乗り切っていて、凄い。その後、この物語にモデルがいることを知りました。その時に原作を読もうと思いましたが、なんだか怖くて読めませんでした。今回初めて著者の作品を読みました。キッカケは西川美和さんにより映画化されたと言うことです。著者のイメージは犯罪者と真摯に向き合い、数多くの裁判を傍聴した小説家と言うイメージ。前置きが長くなりましたが、面白かった。人生の大半を少年院・刑務所で過ごした主人公が、更生を誓い、それを応援してくださる方々にも恵まれながら、持って生まれた性格などから思うようにいかない様子が「身分帳」を絡めて描かれています。筋を通す性格・直情型の性格。喧嘩すらしたことのない私自身にも、そんな傾向があります。主人公の生きづらさが、多少は理解できるような気が勝手にしています。興味深いのは後日談と言える作品と解説と西川美和さんの文章です。著者の他の作品も読んでみたくなりました。
Posted by ブクログ
終戦後の混乱期に、戸籍もない境遇に生まれ必然的にヤクザ者になり服役する、、山川は決して愚鈍ではないし、むしろ賢さゆえにうまくいかないジレンマみたいなものを感じる。周りの人も多分もうこんなやつ知らん!って突き放すのだけれど、やはり放って置けないような人間味を感じる。善人とか悪人とか単純な話ではなく、誰もがどっちの要素も持っている。終戦が遠いものになりつつある今、これを読んでよかったと思った。
Posted by ブクログ
そう言えば映画は3年位観に行って無いな…
ってな事で、佐木隆三の『身分帳』を原作に映画化したのが西川美和監督の『すばらしき世界』
結構前に出張中に読む本が無くて買った文庫本。
買ったはええが何となく勿体なくて中々読めなかった変な貧乏性
西川美和監督は好きなんでこの映画は観たいな。
原作はまさかのノンフィクションじゃったみたいで、こんなに世間は優しいのかと思うほどの内容。
山川の人柄が真っ直ぐ過ぎて誰もその気持ちを受け止められないながらも、必死に生きていこうとする姿は助けたくなるんじゃろうか…
こう言うの読むと人のルーツと言うか、生きる環境ってのは恐ろしいね。自分では選べないから、自分で変えて行くしかないけどそんなに甘くはないよな人生。
という事で西川美和監督のすばらしき世界は観たいな。
2021年36冊目
Posted by ブクログ
刑務所から出所して社会生活を送ろうとするが
中々馴染めず苦労しする話しだが、
幼い時の境遇には同情するが、激情する性格は
ハラハラする。母が恋しく探していたのだろう。
周りの人がいい人で何とか暮らせていたが、もっと生きていたら、犯罪を犯さないでいただろうか、
疑問である。
Posted by ブクログ
引き込まれはした。共感はできないけど。
いろんな人がいる。いろんな人の正義はある。自分は間違っていない、と思うことは怖い。正確なジャッジは誰ができるんだろう?
Posted by ブクログ
【2023年89冊目】
本編を読み終わってから、「これ、実在の人物を元にしてるんか」とわかり、ちょっとびっくりしました。どうりで、刑務所での心得とか、ものすごく詳細に載ってるなとは思ったんですよね。9割ノンフィクションで、若干フィクションも入れてるのかな、くらいの話。
なんというか、認められないという辛さをものすごく突きつけられる話で、途中まで結構精神的にやられてました。信用しようとしてる人、したい人、してる人に揃いも揃って冷たくあしらわれるの、病みそう〜。
最後は「え、ここで終わるの?」と思いましたが、補遺を読んで納得といえば納得でした。補遺の文体がバラバラしてるのはどうにかならなかったのだろうか。「事実しか書けない作家さん」ということで、リアルな部分を表している、ということなのだろうか。
映画にもなったようですが、元の話が決して明るい終わり方ではないのでどう落とし前をつけているのかはちょっと気になるところですね。
Posted by ブクログ
思ってたのと少し違ったな、、映画の予告見た時はかなり興味をそそられたのだが。。
ただ作品が仕上がってないのにも関わらず、出版され、されに映画化されたところは凄いなーと素直に思った。
別所さんの演技は読み終わった後でもやっぱり見てみたい。
Posted by ブクログ
近代小説の原型は、一人の無名の主人公、つまり新しい人間、いわば真っさらな人間が、われわれが生きているこの現実、この社会、この日常世界の中へと、一歩ずつ強引に分入って、踏み進んで行くところを描くものだ。だから、行動があり、事件が生じ、性格が発揮される。
その結果、第一に、人間とはどういう生き物なのか、どういう存在なのか、ということについての新しい視点を得る。
第二に、真っさらな新しい人間の眼で見るために、われわれがこの自分の皮膚のように馴染んでいると思っている「日常」にも、意外に鋭いぎざぎざの断面があって、傷付けることなしには容易に人を受け容れないのだ、という新しい視点を得る。
事実、この「身分帳」では、主人公が社会復帰しようとしても、「日常」というものには、何か透明の厚いバリアー、鉄条網の棘のようなものがあって、そこに分け入ろうとしても入れず藻掻く姿が描かれる。
ふと、われわれは質問を抱く。犯罪を犯すに至る主人公の性格が歪んでいるから、日常や社会と一致しないのか。それとも、日常や社会の方が歪んでいるから、この自分は「浦島太郎です」という、単純に人間的であろうとする者と一致しないのか。
真っさらな人間が「日常」と遭遇する、悲劇が描かれる。