佐木隆三のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
沖縄が日本に復帰してから10年が経った1982年に出た本だ.
おそらく,その頃には内地では「戦後」なんてもうとっくに終わったこと,みたいな感覚が広がっていたんじゃないかと思う.
当時,僕は小学校3年生.「はだしのゲン」は読んでいたし,父から沖縄戦の話もぽつぽつ聞いてはいたけれど,それはあくまで「歴史」の話で,現実味は薄かった.戦争って,どこか遠くの世界の出来事で,半分フィクションみたいに感じていた.
2〜3年に一度,まだ祖父が生きていた頃に,父の兄弟や親戚を訪ねて沖縄に行く「ちょっと退屈な旅行」があった.58号線沿いの看板は英語だらけで,どこの家に行っても軍服姿の肖像画が飾られた仏壇があっ -
- カート
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試し読み
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Posted by ブクログ
映画「すばらしき世界」の原案。23年のムショ暮らしを終えた初老の男の娑での生活を描く。
絶版だった作品を良くぞ映画の原案に持ってきてくれたものだと思う。
九州で生まれた孤児は少年院生活などを経て犯罪の常習、服役期間中の傷害などで合計して23年の刑期を終える。
一般社会に馴染もうとする姿勢、周囲の人々の善意が描かれる。
実話に基づくフィクションという位置づけだが、補講は事実。筆者の取材と実在した人物との接点が何とも胸を打つところ。
犯罪を通じて人を描くのは佐木隆三の得意とするところ。
久々に読むとどこか新鮮な視点。
映画の題材として発掘した西川美和監督に感謝。 -
Posted by ブクログ
ネタバレめちゃくちゃ面白いです。佐木隆三さんの本は、初めて手に取りました。
なんで手に取ったか、といいますと、自分の大好きな映画監督、西川美和さんが、佐木氏の「身分帳」という著書を原作にして「すばらしき世界」という作品を撮ったからであり、その映画がそらもう素晴らしかったのと、その映画製作ドキュメンタリー本とでも言うべき「スクリーンが待っている」という西川さんの著書が涙ちょちょぎれるくらい素晴らしかったからです。
あの西川美和監督がこれほどまでに素晴らしいものを生み出すに至ったところのインスピレーション元である、佐木隆三、という人物はいかなる御仁なるや?という思いから、とりあえずは「身分帳」も読みた -
Posted by ブクログ
ネタバレ新年1冊目。一気読みした。
正直、小説とは全然思えなかった。でも、小説なんだね。
正直星とかつけたくなかったけど、私の人生に影響を与えてくれた本であるという意味で星をつけた。
すばらしき世界を観て衝撃を受け、原案小説ならば絶対に読まねばならないと購入。もっとはやく観た直後に読めばよかった、、!
まず思ったことは、西川美和はすごいなということ。これだけ長い小説なのに、この小説が伝えたいことを余すことなく映像化したのは天才だと思う。
というか、小説を洗練して、映画という形で世に出したように感じる。
忘れているだけかもしれないけど、映画と違う点で印象に残っているのは、元妻と子供と山川で現 -
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ネタバレ役所広司さんの写真のカバーがかかってて、それが本来のカバーよりちょっとサイズが小さくて、「カバーが二重にしてあるな」って気づくしかけなのかな?と思いました。「身分帳」という小説は、随分前に出版されて、その後絶版になっていたようだ。このたび掘り起こされて、映画化に伴い、また本が出版されたということのようだけど、それによって、初版の「身分帳」に関係者の ”その後” が追加されたことによって、このルポの重みがいや増し、感動を呼ぶ…という感じになっている。
もともとの「身分帳」は、人生の大半を刑務所で過ごした 主人公の田村氏が、刑期満了で出所し、日々を危なっかしく過ごしていく様子がリアルに描かれたもの -
Posted by ブクログ
[揺れた人]1995年3月に発生した地下鉄サリン事件の実行犯の1人であり、オウム真理教の「治療省大臣」だった林郁夫。ある罪に関する取調べ中に、「サリンをまきました」と突如告白したその男は、裁判を通して自らが犯した罪への反省をのべ、教祖であった麻原彰晃(本名:松本智津夫)に対する「対決」を挑む。彼とその裁判を徹底して追跡した作品です。著者は、『復讐するは我にあり』で直木賞を受賞した佐木隆三。
松本智津夫が法廷で沈黙を貫き通したことにより、「真実は闇の中」という見方が定着した感のあるオウム真理教に関する事件ですが、本書のあとがきで述べられるように、少なくともその一端を林郁夫という男が明らかにし