佐木隆三のレビュー一覧
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佐木隆三『沖縄と私と娼婦』ちくま文庫。
1970年に刊行されたルポルタージュを文庫化。日本に返還される前の沖縄に佐木隆三自らが数年間滞在し、アンダーグラウンドから沖縄の今を描いた名著。
日本でありながら米国の植民地であり続ける沖縄の現実は今もなお続く。米軍基地がある限り、日本政府が自国として沖縄を完全に受け入れない限り、日本政府が米国を排除しない限り、植民地支配は続く。その原点とも言うべき統治支配下の1960年代の沖縄が生々しく描かれている。
世界の警察を名乗り、自国の利益ばかりを追求するテロ国家による様々な国の悪魔的支配に終止符を打てる政治家は居ないのだろうか。
本体価格800円
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試し読み
ネタバレ 購入済み千葉大女医殺人事件を読んだ感想
犯人だとされている椎名さんが、結婚後にいっぺんにたくさんの人と付き合い過ぎて混乱してしまったような感じをこの本を読んでとても受けました。
冤罪かそうじゃないかは、難しい気もしますが、冤罪だったからこそ最後自殺をしたという風に見ても間違いないような気がしました。 -
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事実だけが積み重なられていく構成になっている。
殺害場面もなく、もちろん犯人・榎津が心情を吐露する場面もない。
犯行後の現場の描写はあるものの、第一発見者をはじめとする証言などが語られていく。
これはノンフィクションなのだろうか。
確かに登場人物の名前は違うし、一応小説として発表されてはいるけれど、限りなくノンフィクションに近いもの・・・と言っていいと思う。
映画化の企画が榎津の家族から抗議を受け断念するエピソードが描かれている。
「家族まで罰するのは赦してほしい」という嘆願書だったという。
結局、映画化は残された家族の人権を侵害するとの理由で断念された。
犯人の人権、被害者の人権、そして残さ -
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地下鉄サリン事件の実行犯、林郁夫の実録風の裁判記録。著者は、実際に起きた連続殺人事件である西口彰事件をもとにしたかなり古い小説『復讐するは我にあり』で有名な佐木隆三。いくつも傍聴した裁判の中でも著者が最も印象に残る裁判として挙げた林郁夫裁判について一冊の本にまとめたものが本書である。ここに書かれている林郁夫の出家の経緯、犯行に及んだ経緯、そして麻原を否定して自らの犯罪を告白するに至る経緯はわれわれが知るべきことであるように思えた。
地下鉄千代田線でサリンの入った袋を先端を尖らせた傘で破り、その対応に当たった駅員二名を死に至らしめたにも関わらず、林郁夫は検察からの求刑は死刑ではなく無期懲役とな -
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ネタバレ昭和38年の連続強盗殺人事件を描いた直木賞受賞作。
福岡市で男性二人が惨殺された強盗殺人から、玉名市で少女に見破られるまで78日間の逃亡劇が、親類縁者・友人知人・同僚や目撃者と捜査関係者の証言・資料をつないで綿密に描き出された大作。全国津々浦々で多くの人を欺き続けた大胆な逃亡生活は驚愕に値する。犯行の性質上、また綿密な足跡調査のために事件関係者としての登場人物が多く、誰の話なのか、誰の主観なのか追いづらく、読みやすくはなかった。でも著者の主観や不要な感傷に邪魔されることもなく、過不足なく描かれた事件の全容と、証言・資料をもとにした各関係者の心境描写はバランスが小説として秀逸。 -
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今村昌平による映画は緒形拳の迫力の演技が印象に残る衝撃的な名作だった。その原作ということで今回初めて読んだが、これも衝撃を受けた。書いてあることではなく、書いてないことに。今村映画で中核をなすエピソードがほとんど書かれていないのだ。
ひとつは主人公榎津と家族の関係。特に父と妻の関係が事件の背景として大きく影を落としているが、原作にはその関係を示唆するような記述すらない。
ふたつめは「あさの」の母娘殺人があっさりとした記述しかないこと。今村映画では、母娘は指名手配犯人であることをわかった上で、自分たちも殺される予感を抱きながらも榎津と関係を続ける。榎津も自分のことがばれていることを知っており、そ -
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ううううめちゃくちゃハマった・・・。モデル小説恐るべし。
なんという教団内事情の詳しい説明。
用語の解説。組織図系。
そして14歳の主人公。
14歳にしては理路整然とした物言いと思考回路、行動もスマートで、邪念に惑うこともあまりなく。
なんでも卒にこなしてしまう。
最後の取調べのかわしかたなんかも見事。読んでいて気持ちがいい。
しかし違和感。
ラストがとても好き。
この物語をどこで終わらせるのか。実際には今に至るまでも終わらないこの問題、ストーリーをどこで終わらせるのか。
それによってはこの話がなにをいいたかったのかが露呈する。
私はこの終わり方は最良に思えたし、失望しなかった。
もし、はっち -
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そう言えば映画は3年位観に行って無いな…
ってな事で、佐木隆三の『身分帳』を原作に映画化したのが西川美和監督の『すばらしき世界』
結構前に出張中に読む本が無くて買った文庫本。
買ったはええが何となく勿体なくて中々読めなかった変な貧乏性
西川美和監督は好きなんでこの映画は観たいな。
原作はまさかのノンフィクションじゃったみたいで、こんなに世間は優しいのかと思うほどの内容。
山川の人柄が真っ直ぐ過ぎて誰もその気持ちを受け止められないながらも、必死に生きていこうとする姿は助けたくなるんじゃろうか…
こう言うの読むと人のルーツと言うか、生きる環境ってのは恐ろしいね。自分では選べないから、自 -
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「佐木隆三」のノンフィクション作品『復讐するは我にあり 改訂新版』を読みました。
ノンフィクション作品は久し振りですね。
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ノンフィクション・ノベルの金字塔、再び
連続殺人事件の発生から犯人の死刑執行までを克明かつ重層的に描いた直木賞受賞作。
世紀を超えた執念の全面改訂版、待望の文庫化
列島を縦断しながら殺人や詐欺を重ね、高度成長に沸く日本を震撼させた稀代の知能犯「榎津巌」。
捜査陣を翻弄した78日間の逃避行は10歳の少女が正体を見破り終結、逮捕された「榎津」は死刑に??。
綿密な取材と斬新な切り口で直木賞を受賞したノンフィクション・ノベルの金 -
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高度成長期の日本を震撼させた。連続殺人鬼、榎津巌。78日間の逃亡劇から、逮捕、裁判、死刑執行までの一人の殺人犯のノンフィクションノベル。
モデルは、西口彰事件。(昭和38、39年)
こちらは改訂版で、当時30年ぶりに全面改訂され出版されたもの。
最初の殺人事件から、全国を転々とし、その間、大学教授や弁護士などと偽り、各地で詐欺を働きながら逃亡生活を切り抜ける。
かなりの取材をされているのでしょう。詐欺の手法から、被害に遭った人達の人柄から生活まで、丁寧に時間を追いながら書かれている。
あくまで、事件そのものを追う。ノンフィクションということに重点を置いたためか、犯人の心情や行動動機などは、よく -
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【2023年89冊目】
本編を読み終わってから、「これ、実在の人物を元にしてるんか」とわかり、ちょっとびっくりしました。どうりで、刑務所での心得とか、ものすごく詳細に載ってるなとは思ったんですよね。9割ノンフィクションで、若干フィクションも入れてるのかな、くらいの話。
なんというか、認められないという辛さをものすごく突きつけられる話で、途中まで結構精神的にやられてました。信用しようとしてる人、したい人、してる人に揃いも揃って冷たくあしらわれるの、病みそう〜。
最後は「え、ここで終わるの?」と思いましたが、補遺を読んで納得といえば納得でした。補遺の文体がバラバラしてるのはどうにかならなかった -
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近代小説の原型は、一人の無名の主人公、つまり新しい人間、いわば真っさらな人間が、われわれが生きているこの現実、この社会、この日常世界の中へと、一歩ずつ強引に分入って、踏み進んで行くところを描くものだ。だから、行動があり、事件が生じ、性格が発揮される。
その結果、第一に、人間とはどういう生き物なのか、どういう存在なのか、ということについての新しい視点を得る。
第二に、真っさらな新しい人間の眼で見るために、われわれがこの自分の皮膚のように馴染んでいると思っている「日常」にも、意外に鋭いぎざぎざの断面があって、傷付けることなしには容易に人を受け容れないのだ、という新しい視点を得る。
事実、こ