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昭和38年、高度成長に沸く日本国中が震撼した連続殺人事件。言葉巧みに人を騙し、殺し、日本列島を縦断しながら犯罪を重ねる男に対し、警察は史上初の全国一斉捜査を開始した。関係した女、目撃情報は多数あり、立ち回り先の遺留品や人をおちょくったハガキ……証拠の山を残しつつ、空前の捜査網をかいくぐり続けられたわけは? 78日間に及ぶ逃亡、10歳の少女が正体を見破るという予想外の逮捕劇、そして死刑執行まで、実話を元に克明に描く傑作長篇。直木賞受賞作。
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Posted by ブクログ
映画を視聴したのちに購入。 映画版よりもこちらの方が深みがあるというか、映画版の「行間」の意味が分かったともいうか。とはいえ、映画版との展開と違うところも多いが。
新装版となり、地名が実名になって読みやすくなりました。 実在の事件の詳細は知りませんが、まるでノンフィクションを読んでいるかのようなリアリティーがあります。 ここまで、人間って悪人になれるのかという印象を受けました。
綿密な記録調の文面に最初は「うへぇ…」となりますが徐々にクセになり、やがて著者の気迫に圧倒されます。何も知らず読んだだけにチャクラ全開になりました。そして私はこれ以上にかっこいいタイトルを持つ本を知りません。奇しくも先日著者の訃報が流れ、驚きました。。素晴らしい本でした。
創作部分もあるドキュメンタリー。この世の中に榎津のような人間は多く居るのだろうけど、それを実行に移す者が出てこないだけなのだろう。新約のローマの信徒への手紙にある一節「復習するは我にあり」を題名とした著者のセンスは、榎津が犯した犯罪や、それを詳細に綴った本作の内容にも増して凄いと感じた。
たまたまTVでドラマ版見て(柳葉敏郎)実話ベースということに驚き、その後 映画版見てからの読書。 復讐するは我にあり(新約聖書 ローマ人への手紙12.19) 。というフレーズにある「我」は神でなく自分自身のことだとこの犯人は思い込んでいた。という一説をどこかで目にしたような記憶があったけど、これは...続きを読む私の思い違いであろう。犯人はカトリック信者だったので、いくら信仰から離れた生活をしていたといっても、幼いころにどこかでこれは耳にしていると思うし、一連の犯行は復讐とは関係ないものであるから。 (余談ですが、「ローマ人への手紙」の「人」は「ひと」ではなく「びと」) 大人は誰も気が付かなかったのに(それどころかすっかり騙されている)小学生の女の子に気づかれた、なんて犯人は信じられなかったでしょう。初めてドラマで見たときは、この子も、、、、とサスペンスドラマの流れで最悪のパターンを想像してしまった。 別の書籍で犯人が死刑になるまでの様子について記述されたものを読んだことがあったが、これも佐木隆三だったかな
5年ぐらい前に読んだので勘違いしてるかも。 あちこち流れながら、ひたすら人を殺しまくる。映画版は何も考えずに見れてエンタメ色が強いが、こちらはノンフィクションぽさが全開で陰惨で読ませる。だけどなぜ彼という根本的な疑問が残った。
池上冬樹編・ミステリ201から。これ、名前は変えてあるけど、実際の事件を元にしたいわゆるノンフ作品なんですよね。時系列を追っているだけと言ってしまえばそれまでだけど、次に何が起こるか分からない不穏さとか、小説さながら。不謹慎ながら、普通の娯楽作品としても十分楽しませてもらいました。
事実だけが積み重なられていく構成になっている。 殺害場面もなく、もちろん犯人・榎津が心情を吐露する場面もない。 犯行後の現場の描写はあるものの、第一発見者をはじめとする証言などが語られていく。 これはノンフィクションなのだろうか。 確かに登場人物の名前は違うし、一応小説として発表されてはいるけれど、...続きを読む限りなくノンフィクションに近いもの・・・と言っていいと思う。 映画化の企画が榎津の家族から抗議を受け断念するエピソードが描かれている。 「家族まで罰するのは赦してほしい」という嘆願書だったという。 結局、映画化は残された家族の人権を侵害するとの理由で断念された。 犯人の人権、被害者の人権、そして残された加害者家族・被害者家族の人権。 そんなことを考えながら読み終えた。 逮捕され、裁判が進む中で徐々に変わっていく榎津が興味深かった。 変われるのなら、どうしてもっと前に変わることが出来なかったのか。 現実に起きた事件に基づいているからこその怖さが伝わってきた。 この世で本当に怖いのは、人間が人であることを止めてしまったときなのかもしれない。 すんなりと入ってこない部分もあったけれど、最後まで一気に読んでしまった。 犯罪小説とでも呼んだほうがいいこの手の作品は神経が逆なでされるような気がする。 それをどこかで感じながら、それでも読まずにはいられない。 いつも不思議な感覚に陥ってしまう。 ※実際にあった「西口彰事件」を題材にしている
フィクションとノンフィクションの境目が分かりにくかった。(明確な部分も少なくないけれど)やはり小説としての作品なのだろう。読んでいて最後の方は犯人に肩入れしてゆくのが不思議だったがこれは作者が意図してることなのだろうか。誰に、何に復讐するのわからないまま、己に対してなのかなと思うことにした。
今村昌平による映画は緒形拳の迫力の演技が印象に残る衝撃的な名作だった。その原作ということで今回初めて読んだが、これも衝撃を受けた。書いてあることではなく、書いてないことに。今村映画で中核をなすエピソードがほとんど書かれていないのだ。 ひとつは主人公榎津と家族の関係。特に父と妻の関係が事件の背景として...続きを読む大きく影を落としているが、原作にはその関係を示唆するような記述すらない。 ふたつめは「あさの」の母娘殺人があっさりとした記述しかないこと。今村映画では、母娘は指名手配犯人であることをわかった上で、自分たちも殺される予感を抱きながらも榎津と関係を続ける。榎津も自分のことがばれていることを知っており、それでも拒絶しきれない彼女たちを本当に殺してしまうのかという緊迫感。そしてついに二人とも殺してしまうときの衝撃。原作ではここもだましきった上での殺人、という扱いである。 つまり、これらのエピソードは今村映画の「創作」だったのだ。恐るべし。 だからといって、この原作が面白くないというのでは決してない。事件に関連した人々の、物語の本筋にはほぼ関係ない逸話を丹念に描くことによって時代を映していくかと思えば、榎津が神出鬼没に大胆不敵な詐欺を繰り返すあたりのスピード感は爽快ですらある。 久々に高木彬光の「白昼の死角」を読みたくなったが、こちらは残念ながらガラパゴスにはない。
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佐木隆三
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