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「あなたは誰?」
徐々に息子の泉を忘れていく母と、母との思い出を蘇らせていく泉。
ふたりで生きてきた親子には、忘れることのできない“事件”があった。
泉は思い出す。かつて「母を一度、失った」ことを。
母の記憶が消えゆく中、泉は封印された過去に手を伸ばす──。
記憶という謎<ミステリー>に挑む新たな傑作の誕生。
「あなたはきっと忘れるわ。
だけどそれでいいと私は思う」
「また母が、遠くに行ってしまいそうな気がした。
あの時のように」
……あの一年間のことは、決して誰にも知られてはいけなかった。
『君の名は。』『天気の子』を生んだ稀代の名プロデューサーにして、
小説『四月になれば彼女は』『世界から猫が消えたなら』で
作家としても大きな衝撃を与えてきた川村元気。
各界からも反響が続々!
◆息子と母の切ない思いに、胸が熱くなりました。──吉永小百合
◆深い感動のうちに読了した。
ぼく自身の母親の思い出と重なり、他人事ではなかったのだ。──山田洋次
涙が止まらない──現代に新たな光を投げかける、愛と記憶の物語。
解説は『長いお別れ』の中島京子さんです。
※この電子書籍は2019年5月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
百花
著者:川村元気
認知症を患った母とその息子の話。
重いテーマを携え、母と息子2人の「記憶」を丁寧に描きながら進行していくのが特徴的だった。
次第に忘れていく百合子と忘れていた思い出が蘇る泉の対比的な描写に胸が苦しくなる。
誰もがいずれ訪れる死について、
大人になるということはなにか、
を問われ続けていた気がした。
時間を目で捉えることは出来ない。
けれど時の流れを肌で感じる瞬間は、確かに日常に存在している。
日捲りカレンダーを破る時、歯ブラシを交換する時、金曜日のプラスチックごみの収集。
そうして積み重ねた瞬間が日々をつくり、年齢をつくり、死へと繋がっていく。
当たり前に理解していることが、なぜかピンとこない。
遠くの空に浮かぶ雲を眺める時、水蒸気の集合体だと感じないことと似ている気がする。雲は雲であり、大人は大人で、死は死でしかない。
地続きのはずなのにどこか自分とは分断されているような。
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「その時気づいたんだよね。失っていくということが、大人になるということなのかもしれない」p266
「あなたはきっと忘れるわ。みんないろいろなことを忘れていくのよ。だけどそれでいいと私は思う」p301
あんなに嬉しかったのに、どうして忘れてしまったんだろう。p302
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病状が進行していくと共に、百合子の記憶や時間や体力が失われていく描写が印象的で、「大人=無になっていく=死」というイメージが強かったが、最後のシーンで、失うことへの優しい肯定的な意味が込められていると感じた。
失うことは手放すことであり、他者に与え、与えた先に違う形で残っていくということ。
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「花火ってなんか悲しいよね。終わったら忘れちゃうじゃん。どんな色だったとか、形だったとか」
「そうかもね‥‥‥でも色や形は忘れても、誰と見て、どんな気持ちになったのかは思い出として残る」p300
赤ん坊が、泉の人差し指をぎゅっと握った。小さな体からは想像もできない力強さで握りしめ、大きな声で泣き始める。体を震わせながら、今ここに生きていると宣言するかのような泣き声を聞いた時、泉のからだの奥底から得体の知れないなにかがこみ上げてきて涙が溢れた。担当医や看護師たちが見ているただなかで、声を漏らし、恥じらいもなく嗚咽した。p292
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子供が生まれた瞬間に、突然に親になるわけではない。それは大人になる、ということと共通しているのではないかと感じた。
大人になるとは、完成することではなく、未完成なままでもどう生きるかを選び続けること。
その選択の中で人は何かを失って気づくことがあったり、何かを手放し与えたりするということなのかもしれない。
今ある関係や時間にどう向き合うかを考えたくなる、じんわりとあたたかさが残る作品だった。
Posted by ブクログ
病に侵されている心情や描写がやるせない気持ちで溢れて読み進めていく中でとても苦しくなった。
しかし、解説にも書いてあったようにその個人は痛いほど、悲しいほど、愛おしいくらいにその人であり続ける ということ。徘徊、見たかった花火 も全ては息子を想う気持ちや母にとっての大切な思い出。
記憶を失っていく反面、息子は母親の記憶を元に、幼少期の記憶を思い出していく場面では、病と葛藤する悔しさ悲しさ、母への複雑な想いがある中2人の思い出を甦らせる母親からの2度目の愛のプレゼントのように感じた。
花火は、忘れちゃうからこそ素敵…
形は忘れても気持ちは残るということ。自然や人間の儚さ、尊さを表現されているようで、「忘れる」「失う」事が全て欠点に繋がる事では無いように思った。
⚪︎失っていくということが大人になるということ
⚪︎どの花火が良かったのか、それが何色で、どんな形だったか。全部忘れちゃう。だから、花火って素敵だなって思うの
⚪︎色や形は忘れても、誰と一緒に見て、どんな気持ちになったのかは思い出として残る
Posted by ブクログ
幼少期から両親にとっていい子でいたかった
我儘言えず本音で話せず
年に何度も会えるわけじゃないから
このままいい子ちゃんでい続けることにしよう
英語でgoody two shoesというそう
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「あと何回、あるのだろうか。十か二十か、三十を超えるということは難しいかもしれない。とうに折り返し地点を過ぎた親子であることに気づく。」
「迷子の母を探しながら、泉は思い出した。あの頃、わざと迷子になっていた。泉はいつも、母に探して欲しかった。」
「なんだか大人になったなって思った。そのとき気づいたんだよね。失っていくということが、大人になるということなのかもしれない。」
Posted by ブクログ
どんなに自分にとって大切な出来事だったとしても、色とか形とか目に焼き付けたはずのものは少しずつ見えなくなっていくし、音や声は聞こえなくなっていくし、触れられなくなるし匂いも味もしなくなる。でも、そのとき抱いた感情は自分の世界の糧になって残っていて、そしてそれがある限り、なにか不意のきっかけでそれが思い出せることもある。忘れてしまうけれど、なかったことにはならないし、その思い出を大切に思うきもちを否定する必要はないんだなあ。いつか全部忘れてしまうんだという生き方はちょっと冷たすぎるけれど、忘れてしまうことを受け入れて、将来のわたしが幸せだったと思うであろう今日を大切に生きていきたいね
Posted by ブクログ
88/100
ずっと読んでみたかった本が古本屋で売ってたからつい購入。川村元気の文章は分かりやすく、スラスラ読める。
内容が心に来る。最近私のおばあちゃんの誕生日会中におばあちゃんが急に倒れて救急車に運ばれることがあり、この小説に重ね合わせて何度も涙した。
上手な会話や意思疎通が簡単にできなくなってイラついてしまうこと、大切な人なのにその行動や言動が恥ずかしいと思ってしまうこと、理由をつけて会う優先度が高くない自分へのモヤモヤ、色んなことが重なる。
「半分の花火」は記憶がなくなっても、ずっと百合子が言っていた。一方で、泉が抱える母に対する不満はずっと無くなることがなく、大事な思い出よりもそのマイナス感情が出てくることが多かった。だからこそ、最後の反芻している部分では後悔や感謝、様々な感情が混ざりあった文章が印象的だ。
この本は内容的には重くはあるが、一輪の花や、花火、香織と泉の子供、海が見える施設、などポイントポイントが美しい描写があるので心なごやかに読み進めることができる。自分と向き合う時間になった。疲れた時に読みたい一冊。
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