作品一覧

  • 姉の島
    4.0
    1巻950円 (税込)
    泉鏡花文学賞受賞作。年寄り海女と水産学校卒の孫との異色海洋冒険小説。天皇海山列、春の七草海山、海底につきささる戦時の潜水艦。円熟した作家がユーモアのある名うての文体で挑む傑作長編。解説・綿矢りさ
  • 美土里倶楽部
    3.7
    1巻2,420円 (税込)
    昨日までそばにいた夫は一体どこに行ってしまったのだろう……。 夫を亡くしたばかりの美土里は、彼の忘れ物をきっかけに、同じ境遇の三人の女性と知り合い……。 「未亡人倶楽部」の四人が過ごした一年を描く傑作長編。
  • 新古事記
    値引きあり
    4.2
    1巻1,609円 (税込)
    第二次大戦日米開戦後のアメリカ。オッペンハイマー、ノイマン、ボーア、フェルミ、若手のファインマン……。太平洋戦争の最中、世界と隔絶したニューメキシコの大地に錚々たる科学者たちが続々と集まってくる。 咸臨丸の船員だった日本人の血を受け継ぐ日系三世のアデラは両親にさえ物理学者の夫の仕事の内容を教えられず、住所を知らせることもできない。秘密裏に進む夫たちの原爆開発、施設内の犬と人間の出産ラッシュ。それと知らず家事と子育てに明け暮れる学者の妻たちの平穏な日々。 「新しい世界は神じゃなく、人の子がつくる」――”われは死なり 世界の破壊者となれり” その小さな神たちが行き場を探して右往左往している。辺りは火火火火火火、赤いものがボウボウと襲いかかる。 世界は戦さの火だらけだ。火火火火火火が荒れ狂う。小さい神々は蟹のように火火火火火火に追われて逃げ惑う。 山の神も火火火火火火、川の神も火火火火火火に包まれ、樹木の神も立ったまま火火火火火火に焼け焦げていく。 焼け滅ぼされていく。
  • 村田喜代子の 本よみ講座
    -
    1巻2,200円 (税込)
    小説からノンフィクションまで、自作も含め国内外のさまざまな作品を取りあげ、執筆のいきさつや作品の背景を考察することによって、読書の楽しみをもう一歩深める実践的な術を伝える。取りあげられた作品は、『ネバーホーム』『やんごとなき読者』『エリザベスの友達』『チェルノブイリ原発事故』『唱歌の社会史』『おーいでてこーい』『いつか深い穴に落ちるまで』『長崎の鐘』など多数。
  • 村田喜代子傑作短篇集 八つの小鍋
    3.9
    1巻750円 (税込)
    生きることのたくましさと可笑しさと 九州を主な舞台に、生きることのたくましさをおおらかなユーモアで描きつづけて四十五年。黒澤映画『八月の狂詩曲』の原作になった「鍋の中」(芥川賞)、「白い山」(女流文学賞)、「真夜中の自転車」(平林たい子賞)、「蟹女」(紫式部文学賞)、「望潮」(川端康成文学賞)など、各種文学賞の折り紙つきの傑作短篇八つを一冊に。 解説:池内紀
  • 新編 尻尾のある星座
    -
    1巻946円 (税込)
    かみつかれても、引っかかれても、引きずられても、どうしても憎めない! 四十歳を越えて初めて飼ったシベリアンハスキーのルビィ、二代目のラブラドールのユーリィ。二匹の愛犬と過ごした幸福な日々を通して、生き物の生と死を描き出す珠玉のエッセイ集。
  • 人の樹
    -
    1巻1,029円 (税込)
    樹は何を想い、そこに立つのか― 人と樹が織りなす不思議な物語の世界へ 「深い夜の木」 など全18編を収録! 生命(いのち)と魂を紡ぐ珠玉の連載短編集!
  • 蕨野行
    4.4
    1巻520円 (税込)
    押伏村には、六十歳を越えると蕨野という丘へ棄てられる掟がある。だが、死を待つ老人たちは悲惨で滑稽な集団生活を送りながらも、生への意志を逞しくしていく。死してなお魂は生き永らえるのか? 棄てられた姑と嫁の心の対話を通して、人間の「生」の本質に鋭く迫る、平成日本によみがえる衝撃の棄老伝説。 恩地日出夫監督、市原悦子主演で2003年に映画化。 解説・辺見庸
  • 飛族
    4.3
    1巻800円 (税込)
    日本海のはずれ、朝鮮との国境に浮か養生島。 かつては漁業で栄えていた離島で暮らす三人の老女のうち、ナオの死で、いまはイオとソメ子のふたりが取り残されている。 九十二歳でひとり暮らしのイオの娘、ウメ子も六十五歳になった。 イオは海女をなりわいとして、八十五歳までアワビを獲るほど、心身ともに丈夫ではあるけれど、娘のウメ子としては心配でならない。 二十五年前の海難事故で命を落とした夫を供養するイオとソメ子。 異国からの密漁船による侵略や、地球温暖化など、不吉な未来を予感しながら、泰然と暮らしを守り続ける老女たち。 そんな島に、おそろしい台風が近づいてきて……。 名作映画「八月の鯨」のように、海辺での厳しい暮らしとシンプルに生きようとする姿に胸を打たれる。 いまの時代こそ、こんな世界に浸りたくなる。谷崎潤一郎賞受賞作品。解説・桐野夏生 ※この電子書籍は2019年3月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • エリザベスの友達(新潮文庫)
    4.1
    1巻605円 (税込)
    戦後、命からがら娘と日本に引き揚げた初音さんは今年九七歳になる。もう今では長女の顔もわからない。病が魂を次々と剥いでゆくとき、現れたのは天津租界でのまばゆい記憶だ。ドレスに宝石、ミンクを纏い、ある日はイギリス租界の競馬場へ、またある日はフランス租界のパーマネントに出かけ、女性たちは自由だった――時空を行き来しながら人生の終焉を迎える人々を、あたたかく照らす物語。(解説・岸本佐知子)
  • 焼野まで
    4.5
    1巻720円 (税込)
    子宮体がんを告知された主人公は、放射線センターでエックス線照射を受ける。治療法に反対する娘、肺がん闘病中の元同僚、放射線宿酔の夢に現れる今は亡き女性たち。数々の文学賞に輝く著者による、実体験をもとに病と魂の変容をめぐる傑作長編。
  • 掌篇歳時記 春夏
    3.3
    1巻2,090円 (税込)
    麋角解(さわしかのつのおつる)、東風解凍(とうふうこおりをとく)、桃始笑(ももはじめてわらう)――あまりにも美しい、四季を彩る"季節の名前"。古来伝わる「二十四節気(にじゅうしせっき)七十二候(しちじゅうにこう)」に導かれ、手練れの十二人がつむぐ匂やかな小説集。
  • 八幡炎炎記
    3.8
    1巻1,408円 (税込)
    炎々と天を焦がす製鉄の町・北九州八幡を舞台にした著者初の自伝的小説。敗戦の年に生まれたヒナ子は複雑な家庭事情のなか、祖父母のもとで焼け跡に逞しく、土筆のように育っていく。
  • 火環
    4.1
    1巻1,496円 (税込)
    昭和日本を支えた鉄都に火の如く渦巻く人間模様── 煙が炎々と天を焦がす製鉄の町・北九州八幡。複雑な家庭事情のなかで、祖父母や親戚たちの見守りを受け、焼跡に土筆のように逞しく育ったヒナ子は中学生に。やがて映画と本に夢中になり、脚本家を夢見て上京をもくろむが……。愛欲の煩悩やみがたく制裁で街を追われた仕立て屋の叔父、炭坑で地獄をみてきた堅固な人生観をもつ祖母ら、名もなき人たちが煩悶しながら戦後の激動を火のように生きる、前作『八幡炎炎記』に続く著者初の本格自伝的小説・完結編!
  • ゆうじょこう
    3.9
    1巻693円 (税込)
    貧しさゆえ熊本の廓に売られた海女の娘イチ。廓の学校〈女紅場(じょこうば)〉で読み書きを学び、娼妓として鍛錬を積むうち、女たちの悲哀を目の当たりにする。妊娠する者、逃亡する者、刃傷沙汰で命を落とす者や親のさらなる借金のため転売される者もいた。しかし、明治の改革の風を受け、ついに彼女たちはストライキを決意する――過酷な運命を逞しく生きぬく遊女を描いた、読売文学賞受賞作。
  • 光線
    4.0
    1巻621円 (税込)
    東日本の大地が鳴動した数日後、ガンの疑いが現われる。日本列島の南端の町で、放射線治療を受ける1ヶ月余のあいだ、震災と原発をめぐる騒動をテレビで繰り返し見つめつづけた。治療を終え、ガンが消えた身体になった著者は、「自分も今一度生きよう」と心に決める――。一国の災厄と自らの身に起きた変動を、見事に文学へと昇華した稀有の連作小説!
  • 屋根屋
    3.9
    1巻1,672円 (税込)
    雨漏りのする屋根の修繕にやってきた工務店の男は永瀬といった。木訥な大男で、仕事ぶりは堅実。彼は妻の死から神経を病み、その治療として夢日記を付けている。永瀬屋根屋によれば、トレーニングによって、誰でも自在に夢を見ることができるという。「奥さんが上手に夢を見ることが出来るごとなったら、私がそのうち素晴らしか所に案内ばしましょう」。以来、二人は夢の中で、法隆寺やフランスの大聖堂へと出かけるのだった。

ユーザーレビュー

  • ゆうじょこう

    Posted by ブクログ

    両親により貧しさのために遊郭に売られた少女が読み書きを覚え言葉を通して自分の世界を広げていく姿は健気で美しくて希望を感じます。そしてその希望は社会の理不尽さや大人達の搾取によって容赦なく踏みにじられていく。10代の少女達がそんな現実をどう受け止めたんだろう、とても痛ましく思いました。
    1万円札でお馴染みの福沢諭吉。女性にも教育を!と立ち上がってくれていたのかと思いきや「娼婦は人間以下」と語る場面には心底がっかりし、時代の残酷さを感じました。

    どなたかのレビューで東雲さんを壇蜜さんをイメージしながら読んでいました、という方がいらっしゃいましたが私は木村多江さんでした。

    0
    2025年10月17日
  • 蕨野行

    Posted by ブクログ

    棄老...姥捨......という一見むごい風習を描きながら、読めば「ヌイよい」「お姑よい」と、遠い二人の心の対話が不思議な浮遊感を生む。そのままするすると物語に惹き込まれていく。
    山野には異界への入り口があるみたいだ。順繰りに訪れる死。夢と夢のあわいをまどろみ、生きとし生けるものへの慈しみをよぎって、読み終わる頃にはむごくも哀れでもない充足と祝福が見えてくる。
    枯れたものが土に還りまた次の命を結ぶ円環。こんなふうに満ち足りた老い先を迎えられたらと放心してしまう。この方の描く老いはなぜこうも憧れを起こさせるのかな。

    0
    2025年09月29日
  • 美土里倶楽部

    Posted by ブクログ

    倉田美土里(くらた みどり)は、夫の寛宣(ひろのぶ)(80歳)を亡くして未亡人となった。
    彼女のまわりには、何となく未亡人が集ってくる。
    まだ夫を失ったことがないので、共感するとか、分かる、というふうにこの小説を読む事はできない。
    けれど、もうそれなりの歳なので、勉強させていただいた。もちろん、自分が先に逝くという場合もあるかもだけど。

    長年連れ添った夫を亡くした場合、若いカップルが相手を失ったような瑞々しい喪失感や号泣というものは伴わないであろうと思う。
    美土里の友人・山埜くら(やまの くら)によれば、長年一緒に過ごした夫婦には「夫婦ぐせ」というものがあり相手をなくして時間が経つにつれ、だ

    0
    2025年08月05日
  • 美土里倶楽部

    Posted by ブクログ

    もしも私より先に夫が亡くなったら、もう一度、この本を読もうと思った。
    自作(?)のお経を家族で読むシーンもステキだが、夫を亡くした女性たちの日々、最後に渡り鳥のハチクマを見に行くシーンは、本当に素晴らしい。
    「仲のよかった夫婦は、片方が死んでもいつまでも泣き暮らすことはない」
    は名言だと思う。後悔がないからなのか。
    美土里倶楽部、みたいな倶楽部、「その時」が来たらあるといいな。
    この本にもまた門司港が登場。ますます行ってみたい。

    0
    2025年08月01日
  • 新古事記

    Posted by ブクログ

    「新古事記」(村田喜代子)を読んだ。
    
村田喜代子さんよくぞこのタイトルを見つけてくれました。
見事だよ。
    
オッペンハイマー所長を中心に研究◦開発を続ける所員たちは自分たちが手がけているその対象物ゆえにか強度のストレスを抱え、そして何も知らされていない妻たち(とペットの犬たち)はそのストレスを一身に受け止めながらも凪いだ日常を送る。
    
そんな妻の一人日系三世アデラの祖母のノートには海を渡ってきた祖父の国の創世神話が記されていた。
    
神ならぬヒトの手によって産み出された新たな火によってもう一度泥濘の中から新しい世界を創世する顛末はまさに新古事記なのだ。
    
凄まじき業火を産んだロスアラモスという

    0
    2025年06月08日

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