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第二次大戦日米開戦後のアメリカ。オッペンハイマー、ノイマン、ボーア、フェルミ、若手のファインマン……。太平洋戦争の最中、世界と隔絶したニューメキシコの大地に錚々たる科学者たちが続々と集まってくる。
咸臨丸の船員だった日本人の血を受け継ぐ日系三世のアデラは両親にさえ物理学者の夫の仕事の内容を教えられず、住所を知らせることもできない。秘密裏に進む夫たちの原爆開発、施設内の犬と人間の出産ラッシュ。それと知らず家事と子育てに明け暮れる学者の妻たちの平穏な日々。
「新しい世界は神じゃなく、人の子がつくる」――”われは死なり 世界の破壊者となれり”
その小さな神たちが行き場を探して右往左往している。辺りは火火火火火火、赤いものがボウボウと襲いかかる。
世界は戦さの火だらけだ。火火火火火火が荒れ狂う。小さい神々は蟹のように火火火火火火に追われて逃げ惑う。
山の神も火火火火火火、川の神も火火火火火火に包まれ、樹木の神も立ったまま火火火火火火に焼け焦げていく。
焼け滅ぼされていく。
Posted by ブクログ 2023年09月27日
村上喜代子小説の中でも、好きなタイプ!
読み始めてすぐに、そう感じる。
読み終えて今、この静かな何かが心の中に広がっている。
村上・新刊と言うことで何の情報も無いまま読んだので、
てっきり日本を舞台にした、ファンタジーめいた小説家と思っていた。
どっこい!
太平洋戦争下のアメリカ。
それも舞台...続きを読む
Posted by ブクログ 2023年09月20日
元ネタは、アメリカで原爆開発に携わった若い科学者の妻が書いた『ロスアラモスからヒロシマへ』という手記だそうです。その主人公を咸臨丸から抜け出した日本人の孫娘に置き換え、彼女が婚約者の理論物理学者と共に、ニューメキシコに向かう所から始まります。主人公の一人称小説。失礼ながら著者のお年を感じさせない、若...続きを読む
Posted by ブクログ 2024年01月18日
淡々と進む不思議な魅力の小説。原爆開発の機密都市での研究者の妻たちのドラマを描く。
「ロスアラモスからヒロシマへ」という一科学者の妻の手記が原案の小説。ニューメキシコの荒涼とした土地に隔離された研究者とその家族だけが暮らす町での出来事が淡々と描かれる。
題名に古事記を入れたところは、天地創造と圧...続きを読む
Posted by ブクログ 2023年11月20日
あるアメリカ人女性(フィリス・K・フィッシャー)の『ロスアラモスからヒロシマへ 米原爆開発科学者の妻の手記』を村田喜代子氏が小説にされた作品。
読み始めから「文明の行く末」に嫌な気持ちの不安を感じながら進みます。
語り手若い女性の語り口が明るい(作者の手腕)のがちょっと救いだが、日系であることを秘...続きを読む
Posted by ブクログ 2023年10月09日
いやいや、原爆開発現場のすぐ隣で続く出産と犬病院の日常。失礼ながら、喜寿を超えての旺盛な創作意欲にただただ脱帽。タイトルも意味深。「勇者って人殺しと泥棒に長けた男たちのこと」「多くの物を持つより何も持たない方が厄介事は起こらないものだ」神と悪魔が肩を並べて一人の人間の中で共存できてしまう⁈昨日から再...続きを読む
Posted by ブクログ 2023年10月11日
予備知識なしで手に取り、読み始めて驚いた。
「古事記」の現代版だと思っていたからだ。
翻訳小説のような文体からか、少し引いた感覚で物語を捉えてしまった。
しかし、ひとりの女性の隔離された暮らしの記録、と読むとその淡々とした日常の裏に、恐ろしいことが計画実行されている現実があり、知らされない怖さを...続きを読む
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