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Posted by ブクログ
両親により貧しさのために遊郭に売られた少女が読み書きを覚え言葉を通して自分の世界を広げていく姿は健気で美しくて希望を感じます。そしてその希望は社会の理不尽さや大人達の搾取によって容赦なく踏みにじられていく。10代の少女達がそんな現実をどう受け止めたんだろう、とても痛ましく思いました。
1万円札でお馴染みの福沢諭吉。女性にも教育を!と立ち上がってくれていたのかと思いきや「娼婦は人間以下」と語る場面には心底がっかりし、時代の残酷さを感じました。
どなたかのレビューで東雲さんを壇蜜さんをイメージしながら読んでいました、という方がいらっしゃいましたが私は木村多江さんでした。
Posted by ブクログ
三冊続けて少女を主人公にした女性作家の作品を読む。
原田マハ「永遠をさがしに」、高田郁「あきない世傳 金と銀 源流編」、そして村田喜代子さんの本作。
前の二冊は一気読みでしたが、この作品はじっくりと。少女漫画的な設定やストーリーの前二作とは密度が全く違います。
明治初年、薩摩の先の硫黄島から熊本の廓に売られた15歳のイチ。辛い運命の中でも靭さ逞しさを感じさせます。取り巻く脇役たちもズッシリとした存在感を感じます。そしてなんといっても、イチが毎日通う女紅所(廓の中の学校)で書き残して行く、仮名ばかり、訛りだらけの日記が秀逸です。
村田さん、初読みです。浅学にして全く知らなかったのですが、芥川賞、平林たい子賞、川端康成賞、野間文芸賞と数多くの受賞歴を持たれる実力派なのですね。そしてこの作品は読売文学賞。
とても充実した読書でした。
Posted by ブクログ
明治中期、硫黄島で生まれ育ち、当時全国有数の花街だったという熊本のなかでも最上格の廓に親によって売られたイチの1年ばかりの日々。明治の空気か女紅場のような一応の教育施設もあり、そこでイチはお師匠さんの指導のもと自分の気持ちを文章にすることに没頭する。そこここにその文章がはさまれるんだけど、硫黄島のことばそのままに文字になったようなその文章にイチの素直な喜怒哀楽がほとばしっているようで、昔が舞台の物語に生き生きとした勢いをつけている。
ことさらに遊女の不幸を語りたてることなく、おそらくそうであったように、当時その場にいれば誰もが生きていた毎日として描かれているのも好感。イチ自身は最上格の遊郭で最上位の花魁・東雲さんに面倒をみてもらうというなかでも恵まれた状況にあり、その一方で挿話的に転売されたり、病んでいつの間にかいなくなったり、妊娠する女たちの模様も描かれる。こんなんで遊女としてやっていけるのかなと思うようなイチの直情さが、それぞれの出来事に対して反応する様子をとおして深々と遊女たちの過酷な生き方が伝わってくる。
最後は遊郭を出たイチだけど、この後どうやって生きていけるだろうか。父親によって二重に借金を背負わされたこと以外は、これといって過酷な目に遭っていないようだし、周りについていくかのように遊郭を出たイチの先行きが不安。
Posted by ブクログ
明治の熊本の遊郭を舞台にした作品。
「吉原炎上」やら、荷風その他の男性作家の作品と大きく違う。
硫黄島から、両親に売り飛ばされた娘、イチ。
その境遇は苛酷だけれど、「かわいそうな女性」と、ヘンに美化されない。
その体の上に起こる様々な状況、生々しい身体感覚も、意外とドライに描かれる。
だからこそ、心を動かされる。
イチの一本気な性格によるところもあるのかもしれない。
イチの人柄は、彼女が女紅場で師匠の鐵子さんに出す日記によく表れている。
皮肉なことに、彼女は遊郭に売られて、始めて文字を覚えた。
それ以来、書くことに憑かれたようになる。
鐵子さんも没落士族の娘で、かつて遊郭に売られた身。
イチたちを案じつつも、見守るしかないこの人も、教養のある人ながら、娼妓であったことで社会的に蔑まれてきた。
野生児のようなイチと、鐵子さんがつながる。
このことによって、物語が終盤、大きく動いていく。
読んでいて、わくわくするところだ。
イチの売られた娼館、東雲楼は、熊本きっての名店。
楼主も、それほど阿漕な人ではなく、比較的娼妓を大事に扱う。
娼妓同士の諍いも少ない。
えげつないプロレタリア文学は、これでもか、といわんばかりに、その悲惨さを強調するところだが、この作品ではそうではない。
だからこそ、最後に娼妓たちがストライキをして出ていくところが胸を打つ。
暴力に余儀なくされて逃げるのでなく、自らの考えで出ていくことを選び取っているように感じられる。
夜通しの「遊女の大行進」を、応援したくなってくる。
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