磔

吉村昭

慶長元年春、ボロをまとった二十数人が長崎で磔にされるため引き立てられていった。歴史に材を得て人間の生を見すえた力作。「三色旗」「コロリ」「動く牙」「洋船建造」収録。（曾根博義）

• カテゴリ: 小説・文芸
• ジャンル: 小説 / 国内小説
• 出版社: 文藝春秋
• 掲載誌・レーベル: 文春文庫
• ページ数: 304ページ
• 電子版発売日: 2022年07月15日
• コンテンツ形式: EPUB
• サイズ(目安): 2MB

[ブクログ · ★★★★★]

この短編集には、磔の他、三色旗、コロリ、動く牙、洋船建造が掲載されている。吉村があとがきに寄せているように、この短編集の特徴は、磔が吉村にとって、初めての歴史小説であったこと。また、この短編集までが中短編集で、これ以降は、多くの吉村記録文学を連ねた長編に移るターニングポイントなのである。短編集と言えども、これまでに読んできた歴史記録小説と向き合う姿勢は変わりなく、資料に基づき事実を丁寧で描き、さらに内面を見事に浮き立たせていく。初めての歴史記録小説とは思えないタッチである。

[ブクログ · ★★★★☆]

著者の歴史小説の原点となる作品群。中でも「コロリ」がコロナ禍で起こりうる世相を予見していたかのよう。沼野玄昌、知りませんでした...。
天狗党の悲哀を描いた「動く牙」もいい。時代を経ても人の本質は変わらないことを突きつける一冊。

[ブクログ · ★★★★☆]

克明な記録に近い内容。普通の作家のように作中人物の心理描写はほとんどないながら、その場に居合わせて記録したかのように深く書きとめられている作家の技量はすごいと思う。

[ブクログ · ★★★☆☆]

あとがきによれば、吉村昭初めての歴史小説であるらしい。
だが、すでに完成されている。
その後の、著者の歴史小説を読むと、更に完成度が増していることが分かる。
初めての歴史小説で、この完成度は驚きである。

[ブクログ · ★★★☆☆]

何話か入っていたが、印象に残ったのは「磔」と「コロリ」。吉村昭さんらしい、その場に居合わせたようなリアルな内容でした。
印象が薄く退屈な話もあったので、吉村作品にしては評価は低め。