「山口瞳は,大人の男としての教科書だ」
そういう風に思う.
どうも,こういった人を好むのは,「おじんくさい」とか「年をごまかしているのでは」なんて言われるきっかけになってしまいそうだけれども,良いものは良い.
丁度,山口瞳が亡くなった1995年は,日本がとても大変な年だった.年明け早々,神戸で大きな
...続きを読む地震があり,そして東京では3月に地下鉄サリン事件が起こった.そんな中,山口瞳は亡くなった.
大好きなアンクルトリスと江分利満氏が重なって,そしてなおかつそこに山口瞳がかぶって,何か一つ時代が終わってしまったような気がした.20歳そこそこの若造でさえ何か感じる物があった.
それから,山口瞳の著作を一通り読むに至った.
でも,小説や連載のエッセイより,より濃いエッセンスのあるサントリーの新聞広告がまとめられてはいなかった.待望のシリーズをまとめた物が書籍になったのである.
古い人間と言われるかもしれない.でも,心に染みるのである.何度読み返してみても,古くない.
亡くなって20年以上経ってしまったけれども,心をうつ文章を読むことが出来る本だ.