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彼以前は西洋料理だった。彼がほんもののフランス料理をもたらした。
昭和35年、辻調理師学校の若き副校長・辻静雄はフランス料理の事典『ラルース・ガストロノミック』に出会い、フランス料理に魅了され、それがどういうものなのかどうしても実際に知りたいと熱望するようになった。
当時日本では材料や技術の問題から本格的なフランス料理を出す店はなく、ついに辻静雄は9週間のフランス旅行に出る。実に100軒のレストランに足を運び、その舌にほんもののフランス料理の味を記憶させ、帰国後はその味、その技術を辻調理師学校の教員、生徒たちに情熱をもって教えてゆく。
その料理への飽くなき探究心と情熱は、日本人のみならず、ミシュランの星をもつ名店の主人やシェフたちをも動かし、日本のフランス料理を格段に飛躍させた。
ポール・ボキューズをもって「シズオはフランス人よりフランス料理のことをよく知っている」と言わしめた、辻調理師専門学校の経営者、世界的な料理研究家であった辻静雄の伝記小説。
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Posted by ブクログ
この本にもっと早く出会っていたかった!と思いつつ、出会えたことに感謝。初めは1990年代の話し言葉感じなど、少々の読みにくさを感じたけど、70ページを超えたあたりから、ページをめくるのが楽しくなった。
もともとは新聞記者だったが、あることをきっかけに本物のフランス料理を生徒に教えることで日本のフランス料理のレベルを上げること、この大義に人生をかけ、大成功した人物、辻静雄のはじまりから丁寧に描かれている。
読む中で、いいと思うフレーズは数多くあったが、特に、辻さんが困難に直面する度に垣間見える、男気ある信念や懐の広さ、決断にに心うごかされることも多かった。
※登場人物、フランス料理名、食に関する書名がよく出てくるのでメモをしながら読み進めると、スムーズに読み進められると思う。(前半、メモせずさかのぼるのに時間がかかった)
Posted by ブクログ
59歳の若さで亡くなつた海老沢泰久氏。今年は生誕70年といふことです。この人の文章はいいんですよ。
何を選んでも良いが、広岡達朗や堀内恒夫などは既に取り上げてゐるので、これまた傑作の誉れ高い『美味礼讃』の登場であります。
『美味礼讃』といへば、ブリア・サヴァランの書物を思ひ浮かべますが、本書は「辻調理師専門学校」の創始者である辻静雄の評伝小説であります。わたくしも彼の著書を昔いくつか読んだことがありますが、まあフランスとフランス料理に詳しいをぢさん、くらゐの認識でありました。
しかし辻静雄がかうなるまでには、かなりの偶然といふか、運命のいたづらに左右されてゐるやうです。大学の仏文科を出たは良いが(仏文科なんてツブシのきかぬ学科をわざわざ.....)、就職試験に悉く落ちて、最終的に大阪読売が拾つてくれたとのこと。大阪読売は当時、東京から進出したばかりで、人材が不足していた事情があり、何とか引つ掛かつたのでした。
ある日、交換留学で来日してゐたアメリカの女子高生を、天王寺割烹学校へ連れてゆく仕事がありました。それが縁でその学校の校長・辻徳一の娘と知り合ひ、後に結婚する事になります。即ち、辻静雄はフランス料理の専門家でも何でもなかつたのであります。結婚後、彼は辻徳一の後継者となるべく、大阪読売の記者を辞めるのでした。
辻静雄は調理師学校に将来ありと睨み、辻徳一の協力を得て「辻調理師学校」を開校します。同時に、生涯の右腕となる山岡亨を事務長として迎へます。この人物がまた中中のもので、彼なくしてはその後の辻静雄の成功はなかつたかも知れません。
当時の料理界といふのは、後輩に料理を教へる習慣がなかつた。どつかれながら先輩の技を盗むものだつたさうです。学校で体系的に教へるなんて考へられなかつたと。それは料理人本人の自信の無さが原因なのでせう。
更に問題は、フランス料理の学校を作つても、教へる人がゐなかつた。当時はフランスまで勉強に行つたシェフでも、ろくな知識がなく好い加減な料理をフランス料理でございと披露してゐたのでした。
それなら、辻静雄本人が渡仏して、本物を勉強するしかない。義父・辻徳一の金銭的援助の元、夫婦でフランス料理行脚を始めます。フランスでは様々な知己を得て、その後のビジネスに大いに役立つことになります。
同業のやつかみからくる種々の妨害や、目をかけてゐた料理人の裏切りなど、逆境もありました。しかし辻静雄はそのたびにそれらを跳ね除けて、料理の総合カレッジを完成させてしまふのです。もはや追随できる勢力はなくなりました。
それでもこの人は、自分が成功者とは思へないのでした.....
一読して、なぜ海老沢泰久が辻静雄といふ人物に興味を持ち、評伝を執筆しやうとしたのかがわかる気がいたします。しかし海老沢泰久さんは押しつけがましい文章を書きません。一見事実をそのまま、のほほんと書いてゐるやうで、実は高度な文章作法が駆使されてゐます。
気取つた、分かりにくい癖に内容の薄い文章を好む人にとつては物足りない文章かと思ひますが、実は達意の文章とはかういふものを呼ぶのだらうとボクは思ふのです。
Posted by ブクログ
美味礼賛はこのところ読んだ中で図抜けて面白い小説。というか、小説仕立てのノンフィクションのような作品。日本にフランス料理店(しかも美味しい店)がこれだけたくさんある理由が書いてある本です。なぜフランス料理が多いのか?と疑問に思っている人は面白く読めると思うし、単に料理好きな人が読んでも楽しめると思う。ちなみに辻静雄さんの事が書いてある本。辻さんと聞いてピンと来る人、正解です。辻調理師専門学校を作った人の話ですね。
この本を読む際の要注意点としては、この本は割と分厚いし、第一章は多少冗長な所。ただ、第二章からは読む手が止まらないくらいに面白い。夜中に読むと猛烈におなかが空いてくるくらいに、料理の描写が見事。あと、きら星のごとく出てくるスター料理人達に頭が軽くクラクラしてきます。ともあれ、単にフランス料理が好きな人にも諸手を挙げてお勧めします。
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