国内小説 - 文春文庫作品一覧

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  • スナックちどり
    3.6
    さびしさを包みあう、女ふたり旅。 四十歳を目前にして離婚した「私」と、親代わりに育ててくれた祖父母を亡くしたばかりの、幼なじみで従妹のちどり。孤独を抱えた二人は、一緒にイギリスの西端の田舎町・ペンザンスに小旅行に出かける。淋しさを包みあう二人の間に、三日目の夜、ある「事件」が起きる……。日々を生きる喜びが心にしみわたる傑作小説。
  • 素晴らしい一日
    3.6
    「わあ、奇遇だなあ。二年ぶり?」「お金、返して」。三十路目前でゲットした恋人に逃げられ、勤務先は倒産、貯金残高は減るばかり。ドツボにはまった幸恵は、昔付き合った男・友朗に貸した金を取り立てて、人生を立て直そうと考えたが……(「素晴らしい一日」)。卓抜なユーモアがたまらないオール讀物新人賞受賞作を含め、憂きことばかりの人の世をもがきながら生きるダメ男とイコジ女たちにエールをおくる、傑作ビタースィートコメディ。平安寿子のデビュー作!
  • スポットライトをぼくらに
    3.5
    「寂しい大人になりたくない」吉谷美鈴。 「馬鹿な大人になりたくない」雨宮達彦。 「ぼくは一体、どんな大人になりたいんだろう」と、本書の主人公・秋庭樹。 中学2年の4月、進路指導調査書を白紙で提出したことを、担任からとがめられ、樹は自分の将来について、否応なしに考え始める。 実業家である父親は、小さな建設会社を足場に、高利の貸付、土地の売買、レストラン・スナックの経営などで成功をおさめていたが、地元の人からはよく思われてない。 父が経営する店の一つ、トップレスバー〈フラワーヘブン〉の踊り子・ナンシーさんの踊りを見て以来、彼女のことが気になって仕方がない――。 幼なじみである、成績抜群なのにどこか冷めている達彦・病弱な母に変わって家庭をやりくりする美鈴。地方都市の小さな町を舞台に、中学2年生の幼馴染み3人組が、迷い、悩み、成長していく姿を瑞々しく描く。 文庫化を機に、19年ぶりに大幅改稿。5年後の3人を描いた中篇「フラワーヘブン」を特別収録。あさのあつこの原点ともいえる、傑作青春小説。
  • すみれ
    3.2
    「私がはじめて頭ではなく、心で書いた小説です」 そう作者が語る、今年度最高の感動作! 「一九九六年の秋から一九九七年の冬にかけて、レミちゃんはわたしたちと一緒に暮らした。」 ――十五歳のわたしの家にとつぜんやってきて、一緒に棲むことになった三十七歳のレミちゃん。 むかし作家を目指していたレミちゃんには「ふつうの人と違う」ところがあった……。 季節の移り変わりとともに描かれる人の人のきずな、人間のみにくさと美しさ。 そして涙がおさえられない最後が待ち受ける。 いま筆力を最も高く評価されている、日本文学の正統な担い手による最高傑作。
  • スワン・レイク
    -
    久しぶりに叔母を訪ねたサツキ。信州の小さな町でバーを営む叔母は、何でも話せる唯一の存在。でもこの厳寒期に突然きた理由は話していない。きっかけは、一本の古いビデオテープだった…。3年前交通事故で夫を亡くしたサツキが、人生を新たにやり直そうと20年勤めた会社を辞める際、引き出しの奥で見つけたビデオ。そこに映っていたのは…。今、小雪が舞う中その場所へ。これは「忘れられない香り」の記憶をテーマとして競作されたアンソロジーの一篇です。
  • 青春とは、
    3.3
    1970年代、普通の高校生だった私たち 定年退職しシェアハウスに越してきた独身の乾明子。 借りたままの本や名簿から、映画を見ているかのように地方の共学の公立高時代が蘇る。胸キュンもスマホもなく地味なだけ。でもなぜあんなにオカシかったのだろう。 これまでの青春小説がとりこぼしてきた部分を掬った、すべての大人に贈る青春小説。  解説・タカザワケンジ ※この電子書籍は2020年11月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 生誕祭(上)
    4.3
    1~2巻774~825円 (税込)
    バブル真っ盛りの東京。ディスコでバイトをしている彰洋は、地上げの神様・波潟の愛人になった幼なじみの麻美と再会する。麻美から青年実業家・齋藤美千隆を紹介され、齋藤の下で、手段を選ばぬ土地の買上げや地上げをすることに。一時は大金を動かす快感に酔いしれるが、周囲の人間の欲がからみあい、次第に身動きが取れなくなっていく。一方麻美も、波潟と齋藤の双方から裏切られていることに気づき……。金に対する人間の果てない欲望が産み出す破滅を描く傑作長篇!
  • 青年は荒野をめざす
    4.1
    未知の荒野を目指して歩く男を描いた五木寛之の代表作。 ジャズ・ミュージシャンをめざす二十歳のジュンは、新宿のジャズ・スポットで 「お前さんには、何か欠けたものがあるんだよ」「あんたは苦労がたりない」と 言われ、外国へ飛び出した。 横浜港からシベリアへ渡り、そこからモスクワ、ヘルシンキ、ストックホルム、 コペンハーゲン、パリ、マドリッド、リスボン・・・。ジャズとセックス、ドラッグ、 酒、そして暴力にいろどられた放浪の旅は続く。 世界とは? 人間とは? 青春とは? そして音楽とは? 走り続ける60年代の若者たちを描き、圧倒的な共感をよんだ名作。 解説は植草甚一
  • 聖夜
    3.6
    この心の震えは、祈りに似ている―― 眩しい少年期の終わりを描いた感動作。 学校と音楽をモチーフに少年少女の揺れ動く心を瑞々しく描いたSchool and Musicシリーズ第一段。 物心つく前から教会のオルガンに触れていた18歳の一哉は、幼い自分を捨てた母への思いと父への反発から、屈折した日々を送っていた。 難解なメシアンのオルガン曲と格闘しながら夏が過ぎ、そして聖夜――。 小学館児童出版文化賞受賞作。 解説・上橋菜穂子
  • セイロン亭の謎
    3.2
    セレブ一族と神戸の異人館が交錯する傑作ミステリー 紅茶輸入業を営む一族の女社長が殺された。中国語メッセージの謎、神戸異人館の美しい邸宅、歴史ロマン。魅惑の平岩ミステリー。
  • 瀬戸内少年野球団
    3.0
    1~2巻495~550円 (税込)
    戦争が8月に終った。日本は負けた。ぼく、足柄竜太は八歳。国民学校の三年生――貧しかったけれど、日本が猥雑な活気に満ちあふれていたあの頃。ぼくたちの生き甲斐と楽しみは、野球と流行歌と映画だった。淡路島の少年少女たちが、ボールもバットもミットもないところから、オンナ先生の指導で野球チームを結成して大活躍。敗戦期を野球に夢を託してすごした子供たちと担任の女教師の心のふれあいを、売れっ子作詞家が熱い思いをこめて描く、感動の長篇野球小説。
  • Seven Stories 星が流れた夜の車窓から
    3.5
    豪華寝台列車「ななつ星」をめぐる7つのストーリー 豪華寝台列車「ななつ星」での旅を舞台に、7人の人気作家が紡ぐ極上の小説と随想。あなたなら、この旅に誰と一緒にでかけますか? ※この電子書籍は2020年11月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 彼方のゴールド
    4.0
    1巻850円 (税込)
    老舗出版社「千石社」で営業部から総合スポーツ誌に異動になった目黒明日香、26歳。勝ち負けにこだわるスポーツへの苦手意識が強かったが、仕事は次から次へとやってくる。野球にバスケットボール、水泳、陸上……ライターやカメラマンとともにアスリートの努力と裏側を取材するうちに、スポーツの魅力と、伝える仕事の面白さを知っていく。 解説・大矢博子。 ※この電子書籍は2019年10月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • スクープのたまご
    3.9
    1巻743円 (税込)
    入社2年目の女性編集者が週刊誌に配属された! 殺人事件に、アイドルのスキャンダルに、東奔西走のお仕事小説。 老舗出版社・千石社の入社2年目社員、信田日向子24歳。 体調を崩した同期社員のかわりに、急遽「週刊千石」編集部へ異動が決まる。 「絶対無理!」 怯える気持ちを押し隠し、未解決の殺人事件やアイドルのスキャンダル写真のたれ込みなど、ハードな取材に挑戦する日向子。 日向子は毀誉褒貶かまびすしい週刊誌の仕事に、自分なりの意義を見出していくことができるのか? 週刊文春編集部に徹底取材! 同じ千石社の女性誌編集部を舞台にした『プリティが多すぎる』が2018年10月からドラマ化! 話題のお仕事小説です。 解説・大矢博子
  • プリティが多すぎる
    3.5
    1巻641円 (税込)
    総合出版社で文芸部門を志望していたのに少女向けファッション誌に配属された南吉くんこと新見佳孝、26歳。女の子の憧れが詰まった誌面は勝手が異なり失敗の連続だが、先輩編集者にカメラマン、スタイリスト、十代の少女モデルたちのプロ精神に触れながら次第に新見は変わっていく――。舞台裏のドラマを描くお仕事成長物語!
  • そこへ届くのは僕たちの声
    3.5
    次々起こる不思議な出来事は、どこへ向かう? 涙あふれるラストまで一気読み必至!! 中学生のかほりは2年前の震災で不思議な「声」に助けられる経験をしていた。ちまたで植物状態の人間を覚醒させる能力の存在が噂になるのと同じ頃、連続誘拐事件が発生。元刑事、ライターらが謎を追ううちに「ハヤブサ」なる存在が浮かび上がり……。すべての謎が明らかになったとき、起こる奇跡に涙する感動の青春小説。
  • ソナチネ
    3.4
    生と死とエロス――。著者の真骨頂! 刹那の欲望、嫉妬、別離、性の目覚め……。 著者がこれまで一貫して描き続けてきた人間存在のエロス、 生と死の根幹に迫る圧巻の短篇集。 ピアニストの佐江は、教え子の少女のホームコンサートで、 少女の叔父だという男と出逢う。 音楽堂の暗い客席で、少女の弾くソナチネのメロディに合わせるように、 佐江と男は視線を、指先をからませていく……。(「ソナチネ」) 「鍵」「木陰の家」「終の伴侶」「ソナチネ」「千年萬年」「交感」「美代や」の7編を収録。 「恋愛とはきっとこういうものなのだ。人生のあらゆる出来事に繋がっている。」(千早茜、解説より)
  • その峰の彼方
    3.7
    飽くなき挑戦の果てに辿り着いた奇跡とは!? 感動の超大作 厳冬のマッキンリーを単独登攀中に消息を絶った津田悟。 最愛の妻は出産直前、アラスカを舞台にした新規事業がようやく端緒につくという大事な時期に、 彼はなぜ無謀ともいえる単独行に挑んだのか。 親友の吉沢ら捜索隊は壮絶な山行の末に津田が全てを賭けた挑戦の真実を知る。 山岳小説の最高峰がここに!
  • 空に咲く恋
    3.7
    家出した超イケメンの由紀が出会ったのは、花火店の跡取り娘ぼたん。 勝気な彼女に惹かれていくが……。夏を彩る青春恋愛ストーリー。 花火屋の実家を飛び出し、放浪の旅の末、新潟・山古志村に移り住んだ女性アレルギーのヘタレ男子・由紀(よしき)。 ある日、花火店の跡取り娘ぼたんと出会う。 自信のない自分とは違う、勝気な彼女に段々と惹かれていき――。 花火師は目指すライバル同士の恋のゆくえは? 逆風に負けず、恋に仕事に全力投球! 爽やかな青春恋愛物語。 ※この電子書籍は2017年7月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 空の声
    4.0
    まだテレビ中継がなかった時代――。 玉音放送を担当し、NHK「話の泉」の司会で国民的人気を博したアナウンサー・和田信賢。 彼は戦後初めて日本が参加する夏季オリンピックに派遣されることが決まる。 念願だったオリンピック中継だが、無頼な生き方を貫いた和田は、 長年の無理がたたって体調を崩していた。 「どうしても、オリンピックを中継したい」 その一心で、男は、大会の舞台・北欧ヘルシンキへと向かう。 現地から「日本人を鼓舞する」中継を続けるも次第に病は重篤になり、ついに――。 戦争に敗れ自信を失った日本人に、夢と誇りを抱かせてくれたヘルシンキ五輪。 スポーツ小説の名手・堂場瞬一が、選手以上にその生きざまに惹きつけられたという 主人公の魅力とは? ※この電子書籍は2020年4月に文藝春秋より刊行された 単行本の文庫版を底本としています。
  • それもまたちいさな光
    3.7
    デザイン会社に勤める悠木仁絵は35歳独身。いまの生活に不満はないが、結婚しないまま1人で歳をとっていくのか悩みはじめていた。そんな彼女に思いを寄せる、幼馴染の駒場雄大。雄大と宙ぶらりんな関係のまま恋愛に踏み込めない仁絵には、ある理由があった…。2人の関係はかわるのか? 人生の岐路にたつ大人たちのラブストーリー。「オール讀物」掲載と同時にTBS「開局60周年記念番組」としてラジオドラマ化した、異例のコラボレーション企画原作。
  • 存在の美しい哀しみ
    3.8
    死の床に臥した母から異父兄の存在を知らされた榛名(はるな)は、母が亡くなったのを機に、兄の住むプラハに向かった。妹であることを隠し、ガイドとして兄を雇って、初めての対面を果たす。そこで初めて知ったのは、両親の過去であり家族の真の姿だった──。榛名、母、異父兄といくつも視点を変えながら、家族の歴史と真の姿を万華鏡のように美しく描き出す、感動の長編。
  • 象牙色の眠り
    3.8
    まどろむような京都の邸宅街で富豪の家族をおそった殺人事件。屋敷に住むのは美しい未亡人とその私生児、前妻の生んだ長男と長女。家政婦の瑞恵がみるかぎり、贅を尽くした邸内には家族の絆も存在しないが、恐ろしい殺され方をするような現実的な人間もいない。歪んだ心理がうみだすサスペンスと意外な結末。
  • ゾーンにて
    3.8
    福島第一原発から半径20キロ圏内は、警戒区域となった。人が立ち入ることのできない場所〈ゾーン〉に棲むものたち。 現代の巫女・田口ランディが、極限に生きる命の輝きを描く「魂身の」中篇集。
  • 大獄 西郷青嵐賦
    3.8
    1巻730円 (税込)
    私は西郷隆盛を一番書きたかった! 西郷隆盛は薩摩藩主の島津斉彬に仕え、天下のことに目覚め、一橋慶喜擁立のため暗躍するが、安政の大獄により全てを失うが……。 ※この電子書籍は2017年11月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 退職刑事
    4.0
    定年退職した元悪徳刑事が、離婚で別れた息子のヤクザがらみのトラブルを知り、窮地を救うために奔走する「退職刑事」。息子を自殺で失った退職間際の刑事が、担任の女教師を追いつめる「レディ・Pの憂鬱」。胃ガンで死期を前に辞職した刑事が、迷宮入りした“幼女神隠し事件”の解明に執念を燃やす「神隠しの夜に」──警察組織を離れ一般人となった後も、身に染みついた刑事魂が疼き、自らドロ沼にはまっていく退職刑事たち“人生最後の事件”とは? 警察小説全5篇。
  • タイニーストーリーズ
    3.7
    短篇の名手・山田詠美による宝石箱のような小説集。アメリカ人兵士との恋愛を描く「GIと遊んだ話」から、街に立つ電信柱がその心情を語る「電信柱さん」まで21種のまったく異なる感情の揺らめきが、それぞれにまばゆい光を放つ。恋愛小説、性愛小説、家族小説、戦争小説、喜劇、悲劇とあらゆる小説のエッセンスがぎっしり詰まった、小さくて最高にリッチな1冊。ささやかなのに心をとらえて離さない、極上の物語たち。
  • 退廃姉妹
    3.9
    1945年、焼け野原の東京。敗戦で2人取り残された美人姉妹の有希子と久美子。食べるため、家を守るために彼女たちが選んだのは、自分の家を進駐軍の慰安所にし、肉体を武器に、失ったものをアメリカ人から奪い返すこと! 特攻帰りの男との恋に生きる姉、アメリカ兵と手痛い初体験をし、うら若い娼婦となる妹、姉妹の家に転がり込んだ秋田美人の祥子、銀座の「夜の女」だったお春。優雅なあばずれ女たちの破天荒な“戦後”をあざやかに描く会心作。伊藤整文学賞受賞。
  • タイムスリップ・コンビナート
    3.8
    海芝浦に向かう「私」を待ち受けるのは浦島太郎、レプリカント、マグロの目玉…。たどり着いた先はオキナワか? 時間と空間はとめどなく歪み崩れていく。言葉が言葉を生み、現実と妄想が交錯する。哄笑とイメージの氾濫の中に、現代の、そして「私」の実相が浮び上がる。話題騒然の第111回芥川賞受賞作の他、二篇を収録。
  • 太陽がイッパイいっぱい
    3.8
    大学が「おもんない」と行くのをやめた、三流大学4回生の青年イズミは、バイト先の解体業者でスカウトされ<マルショウ解体>の一員に。組員は、マッチョ系問題児カン、赤面症の美青年クドウ、リーマン崩れのハカセら、見るからにけったいな9人。「ボケ!」「チンカス!」が挨拶代わりという奴らだが、マジメに働き、マジメに恋をし、仲間を思いやることを忘れない。人生どん底でイッパイいっぱいな仲間から、イズミが学んだものとは? ガテン系ナニワ青春小説!
  • 太陽と毒ぐも
    4.1
    「角田光代の隠れた傑作」といわれる、 不完全な恋人たちの、キュートでちょっと毒のある11のラブストーリー。 リョウちゃんは、あたしのたいせつな恋人は、 あたしの前で口を開いた洞窟なのだ。 そうしてあたしは未だその入り口で立ちすくみ、 その一番奥に何があるのか見極めるための 一歩を踏み出せないでいる。   ──「お買いもの」より ハッピーエンドから始まる恋人たちの幸せな日常。 どこにでもいるようで、でもちょっとクセのある11組の恋人たち。 買い物依存症、風呂嫌い、万引き常習犯、迷信好き……。 この恋愛短篇集は、極端な恋人たちを描きながらも、 いつしか、読む者の心の奥に眠らせていた記憶を呼び覚ます。 文句なしの面白さと怖さに震える、長年偏愛されてきた傑作です。 「だが、だからこそ、物語が進むにつれて、そのおかしさが物悲しさへと変わっていく。 どうして、この人は、このままで許してもらえないのだろう。 どうして、最初は許されていたものが、許されなくなってしまうんだろう。(中略) 相手の中の「どうしても許せない部分」が、自分の過去、コンプレックス、傷、そしてそれらに飲み込まれずに生き続けるためにまとってきたたくさんの鎧と関係していることに気づいていくのだ。 作中で「裸んぼで暮らせたら問題なかったんだろうな」という言葉が出てくるが、この物語たちは、裸んぼではいられない、過去を、痛みを、コンプレックスを、すがるものを切り離せずに着膨れながら生きていくしかない人間のかなしみを見つめた作品なのだ」(解説より 芦沢央) ※この電子書籍は2007年6月に文藝春秋より刊行された文庫の新装版を底本としています。
  • 太陽の棘
    4.3
    この著者にしか描けない、沖縄と美術の物語! 終戦後の沖縄。米軍の若き軍医・エドワードはある日、沖縄の画家たちが暮らす集落――ニシムイ美術村に行きつく。 警戒心を抱く画家たちだったが、自らもアートを愛するエドは、言葉、文化、何よりも立場の壁を越え、彼らと交流を深める。 だがそんな美しい日々に影が忍び寄る――。 実話をもとにした感動作! 「原田マハ氏は、小説家の優れた才能と人間的な温かさにより、どんなに善意の人間であっても、理解できない事柄があることを明らかにした。私は日本人が書いた沖縄をテーマとする小説で『太陽の棘』がいちばん好きだ。」 ――佐藤優(解説より)
  • 高丘親王航海記
    4.6
    澁澤龍彦没後30年。遺作となった伝説の傑作幻想小説が、いま新たな装いで! 平城天皇の皇子に生まれ、嵯峨天皇即位すると皇太子に立てられるも、父上皇と天皇との諍い(薬子の変)により廃された高丘親王。出家し弘法大師の直弟子となった親王は、東大寺大仏の再建に尽力するなど重要な働きを果たすが、晩年に至り朝廷に入唐求法の願いを出し、唐へ渡った。 親王の真の願いは、幼き日に父帝の寵姫藤原薬子に教えられ、憧れていた天竺を訪れることだった。 貞観七(865)年正月、高丘親王は唐の広州から海路、天竺へ向かった。鳥の下半身をした女、犬頭人の国など、怪奇と幻想の世界を遍歴した親王はやがて旅に病み、その心に去来したものとは……。 無類の面白さと、静かなる気品に満ちた傑作幻想小説。著者の死後に読売文学賞が与えられた。 高橋克彦さんの傑作解説も再収録!
  • 鏨師
    3.0
    無銘の古刀に名匠の偽銘を切って高価な刀剣にする鏨師。その並々ならぬ技術を見破る刀剣鑑定家。火花を散らす名人同士の対決に、恩愛のきずながからむ厳しい世界をしっとりと描いた第41回直木賞受賞作「鏨師」のほか、「神楽師」「つんぼ」「狂言師」「狂言宗家」など、著者が得意とする芸の世界に材を得た、平岩弓枝の世界のエッセンスが味わえる珠玉の初期作品集。あとがきに収められた、直木賞受賞時の初々しいエッセイと師匠・長谷川伸の暖かい序文も、平岩ファンには必読。
  • 尋ね人の時間
    3.3
    1巻440円 (税込)
    第九十九回芥川賞受賞作。「ある日、気がつくと、自分の内部に昔はたしかにあった筈の主体としての<われ>が失われていたのだ。わが心のうちなる岡にのぼって、いくら自分の名を呼んでみても、いたずらにただ山彦がかえってくるばかり。<われ>に置き去りにされて抜け殻になった<われ>のがらんどうの中を、うそ寒い風が通り過ぎて行くばかり。そうは思いませんか。小説“尋ね人の時間”とは、自分捜しの物語なのかもしれない」(あとがきより)
  • 正しい女たち
    3.6
    1巻690円 (税込)
    容姿や年齢、結婚、セックス、お金とプライド… 本音の見えづらい関心事を正しい姿という共通のモチーフで鮮やかに切り取る短編集。 不倫に悩む親友にわたしがしたこと(「温室の友情」)、 同じマンションに住む女に惹きつけられる男(「偽物のセックス」)、 残り少ない日を過ごす夫婦の姿(「幸福な離婚」)――。 偏見や差別、セックス、結婚、プライド、老いなど、 口にせずとも誰もが気になる最大の関心事を、正しさをモチーフに鮮やかに描く短編集。 解説・桐野夏生 ※この電子書籍は2018年6月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 立ち上がれ、何度でも
    4.0
    1巻880円 (税込)
    「強さ」を求める二人の熱き青春小説! 小学校でのいじめを経て成長した二人はプロレスのリングに上がる。天性のスターか不遇のヒーローか。想いを乗せたゴングが鳴る。 ※この電子書籍は2018年8月に文藝春秋より刊行された単行本『ストロング・スタイル』を加筆・改題した文庫版を底本としています。
  • 旅の闇にとける
    4.0
    物語が生まれ、動きはじめる 心の割れ目から、じわじわと切なさがこみあげてくる…。不意に訪れる恐怖と、意外な人からもたらされる優しさと。地球を旅する物語。
  • ためらいもイエス
    3.6
    仕事が好きだ。会社に連泊するのも、冷めかけたピザを仕事仲間と食べる夜食も。仕事は自由をくれた。わたしの人生に男はいらない。仕事漬けの日常を気に入っていたはずの三田村奈津美、28歳(じつは処女)に突然訪れた人生初のモテ期! 3人の男を前に、棒に振った思春期を取り戻せるか? 強すぎる母から逃れようと、人生を迷走する3姉妹の次女として、頑なな努力を続けた日々を卒業できるか? 愛すべき恋愛音痴のための、可笑しくて切ないラブストーリー。
  • タンノイのエジンバラ
    3.9
    1巻550円 (税込)
    人が一日に八時間働くというのが信じられない。八という数字はどこからきたのだろうか。なんだか、三時間でいいんじゃないかもう……(「夜のあぐら」より)。なぜか隣室の小学生の娘を預かることになった失業中の俺のちぐはぐな一夜を描く表題作。真夜中に実家の金庫を盗むはめになった三姉妹を描く「夜のあぐら」。ロードムービーの味わいの「バルセロナの印象」。そして20代終わりの恋をめぐる「三十歳」。リアルでクールな、芥川賞受賞後初の短篇集。
  • ターミナルタウン
    4.2
    1巻1,018円 (税込)
    静原町はターミナルタウンとして鉄道と共に発展してきたが、乗り換え路線の廃止により、ほぼ全ての列車がこの駅を通過するようになってしまった。鉄道と共に衰退しつつあった町にある時再興の兆しが現れる。見えないが「ある」タワー、不思議な「隧道」の存在――誰も見たことのない「町興し」がいま始まる。解説・伊藤氏貴
  • 大岩壁
    3.8
    立ちはだかる世界最大の壁……。緊迫の山岳小説 ヒマラヤで“魔の山”と畏怖されるナンガ・パルバットで友を亡くした立原。決着を付けるべく、再び難攻不落のその頂に挑むが……。 解説・市毛良枝(俳優)
  • 大地の子(一)
    4.4
    1~4巻652円 (税込)
    松本勝男は、敗戦直後に祖父と母を喪い、妹と生き別れた。戦争孤児となった少年は、死線をさまよう苦難を経て、中国人教師に拾われ、中国人「陸一心」として育てられる。しかし、成人した一心を文化大革命の波が襲う。日本人の出自ゆえにリンチを受け、スパイの罪状で労働改造所送りに。終わりのない単調な重労働に明け暮れる日々、一心が思い起こすのは、養父・陸徳志の温情と、重病の自分を助けた看護婦・江月梅のことだった。NHKでドラマ化された山崎豊子の感動巨編。
  • 第二音楽室
    3.9
    学校×音楽シリーズ第一弾。 音楽が少女を、優しく強くあたたかく包んでいく。 校舎の屋上にある音楽室に集まる鼓笛隊の落ちこぼれ組を描いた表題作など、少女が語り手となる四つの物語。 嫉妬や憧れ、恋以前の淡い感情、思春期のままならぬ想いが柔らかな旋律と重なり、あたたかく広がってゆく。 学校と音楽をモチーフに少年少女の揺れ動く心を瑞々しく描いたSchool and Musicシリーズ第一弾。 解説・湯本香樹実
  • ダイヤモンドダスト
    3.8
    火の山を望む高原の病院。そこで看護士の和夫は、様々な過去を背負う人々の死に立ち会ってゆく。病癒えず逝く者と見送る者、双方がほほえみの陰に最期の思いの丈を交わすとき、時間は結晶し、キラキラと輝き出す……。絶賛された第100回芥川賞受賞作「ダイヤモンドダスト」の他、理想の医療に挫折し、タイ・カンボジア難民キャンプ地での特異な体験に活路をもとめる医師と末期癌の患者として彼の前に現れたかつての恋人との日々を描いた「冬への順応」など短篇四本を収録する。
  • ダナエ
    3.8
    惜しまれながら逝った著者の傑作中篇集 若くして成功した画家・宇佐美の描いた肖像画が、切り裂かれたうえ硫酸をかけられた。犯人は「これは予行演習だ」と告げるが――
  • ダブル・ファンタジー(上)
    3.7
    1~2巻569円 (税込)
    35歳の奈津は売れっ子脚本家。仕事は順調だが、マネージャーである夫の支配的な態度に萎縮し、精神的にはギリギリの日々。そのうえ奈津は人一倍性欲が強く、躯の奥から溢れる焦りと衝動になんとか堪えていた矢先、敬愛する56歳の演出家・志澤とメール交換を始めたのを機に、女としての人生に目覚めていく。志澤の、粗野な言葉遣いでの“調教”にのめり込む奈津。そして生と性の遍歴が始まった…。柴田錬三郎賞ほか文学賞三冠受賞。文壇に衝撃を与えた迫力の官能長篇!
  • ダブルマリッジ
    4.1
    1巻880円 (税込)
    知らないうちに重婚状態になっていた!? 『言ってはいけない』『上級国民/下級国民』の著者が放つ国際司法サスペンス! 桂木憲一は自分の戸籍謄本に仰天した。婚姻欄に妻・里美と並んで「ロペス・マリア」なるフィリピン人女性の名前が。 いつの間に重婚に? そもそも日本では重婚は禁止では? そこには、日本が経済発展の中で置き忘れた「新日系フィリピン人」問題が絡んでいた。 国際司法の穴を突く、事実に基づいく驚愕の物語。 解説・水谷竹秀 ※この電子書籍は2017年12月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • だりや荘
    3.5
    両親の事故死を機に東京を引き払い、信州で暮らす病弱な姉・椿のそばへ越してきた妹・杏とその夫・迅人。両親の気配があちこちに残るペンションを引きついで、3人のおだやかな日常が始まった。椿にはやさしい男友達・新渡戸さんがおり、ある日働きはじめたゾクアガリの青年・翼もペンションに新風を吹き込んでくれる。しかし、そこでは優しさに搦めとられた、残酷な裏切りが進行していた。精緻な描写と乾いた文章が綴るいびつな幸福。うつくしくて痛い愛の行方は……。
  • だれかのいとしいひと
    3.6
    転校生じゃないからという理由でふられた女子高生、ジミ・ヘンドリックスのポスターを盗みに元カレのアパートに忍び込むフリーライター、親友の恋人とひそかにつきあう悪癖のある女の子、誕生日休暇を一人ハワイで過ごすハメになったOL……。どこか不安定で、仕事にも恋に対しても不器用な主人公たち。何度傷ついても、もう二度と恋なんかしないと思っても、まただれかを愛してしまう……切ない8つの恋の形を描く短編小説集。
  • 断弦
    4.0
    没後30年、ますます鮮やかな人間ドラマ! 地唄の名人である盲目の父親と、アメリカに渡った娘との凄まじい愛情の確執、芸へのひたむきさを描いた著者初の記念的長編。
  • ダンシング・マザー
    3.0
    戦前に久留米で生まれた逸子。 手先が器用な彼女は縫い上げた衣装を身に纏い、地元のダンスホールの華となる。 そこで知り合った男と一緒にダンス講師になることを夢見て長崎へ行くが、 結婚を機に運命は暗転する。 『ファザーファッカー』の著者が、母親の視点から、 娘への性虐待を黙認する女の人生を綴った渾身作。 解説・内田紅甘 ※この電子書籍は2018年11月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 小さな場所
    3.7
    まだ小さな世界しか知らないぼくに、大人たちはこの広い世界の秘密や真実を教えてくれた 台北の猥雑な街、紋身街。狡猾で強欲なだらしない大人たちに囲まれて、少年は世界の広さを知る。切なく心に沁み入る傑作連作短編集。 本書を編集しながら何度も笑いました。気づけば、泣いていました。この物語に出合うために自分は大人になったのかもしれない。ここは温かくて、時に残酷な、生きることへの問いと答えが詰まっています。どうか、現代を生きる子供たちへ、かつて子供だった大人たちへ。この物語が届きますように。――文庫担当編集者 ※この電子書籍は2019年11月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • チエちゃんと私
    3.7
    イタリア雑貨の買い付けをしながら一人暮らしをしていた私の家に、七歳下の従妹チエちゃんがやって来た。率直で嘘のないチエちゃんとの少し変わった同居生活は、ずっと続くかに思われたが…。家族、仕事、恋、お金、欲望。現代を生きる人々にとって大切なテーマがちりばめられた、人生のほんとうの輝きを知るための静謐な物語。
  • 地下の鳩
    3.4
    暗い目をしたキャバレーの客引きと、夜の街に流れついた素人臭いチーママ。情けなくも愛おしい二人の姿を描いた平成版「夫婦善哉」。 大阪最大の繁華街、ミナミのキャバレーで働く「吉田」は、素人臭さの残るスナックのチーママ「みさを」に出会い、惹かれていく(「地下の鳩」)。 オカマバーを営む「ミミィ」はミナミの人々に慕われている。そのミミィがある夜、客に殴り掛かる(「タイムカプセル」)。 賑やかな大阪を描いて人気の著者が、街の「夜の顔」に挑んだ異色作。 ※この電子書籍は2014年6月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • ちがうもん
    3.0
    自分の気持ちがうまく言えない。もどかしい、くやしい。そんなことが、こどものとき、ありませんでしたか? これは、あなたの物語です。 1960年代、まだダサかった日本。関西の田舎町。3歳の少女はなぜ「特急こだま」の玩具を買ってもらったのか。4歳の少女はオバサンが何をしているのを見たのか。6歳の少女は夏休みにどんな初体験をしたのか……。こどもだったからこそ鮮明に焼きついた記憶。大人のためのリアルな童話とも言うべき短編集。
  • 父とガムと彼女
    -
    小学4年生のある日まで、忙しい母にかわって学校の送り迎えをし、自分の世話をしてくれた初子さん。脚本を書きあぐねていた父と、家計をささえていた母。母が実家に行ったきりになったときは、父と初子さんと私で数か月暮らしたこともあった。そしてある日を境にふいに消えてしまった。父が亡くなり、通夜ぶるまいの席で再会した初子さんは……。これは「忘れられない香り」の記憶をテーマとして競作されたアンソロジーの一篇です。
  • 地の果ての獄(上)
    2.0
    1~2巻495円 (税込)
    明治十九年秋、薩摩出身の有馬四郎助が看守として赴任した北海道月形の樺戸集治監。石狩川のほとりにあるこの監獄は、十二年以上の受刑者ばかりを集めた、まさに悪党どもが年貢を納めるにふさわしい地の果ての牢獄だった。正義感あふれる青年看守がそこで見た奇怪な事件と、牢屋小僧、五寸釘の寅吉といった受刑者たちの数奇な過去の数々。使い捨ての労働力として受刑者を使役し、道路建設や炭鉱開発にあたった薩長閥政府の功罪を抉り、北海道開拓の裏面史を描いた歴史長篇。
  • 中陰の花
    3.7
    自ら予言した日に幽界へ旅立ったウメさんは、探し物を教えてくれる“おがみや”だった。臨済宗の僧侶である則道はその死をきっかけに、この世とあの世の中間=中陰(ちゅういん)の世界を受け入れ、みずからの夫婦関係をも改めて見つめ直していく──現役僧侶でもある著者が、生と死を独特の視点から描いて選考委員全員の支持を集めた、第125回芥川賞受賞の表題作。人口2万人の小さな町で、人目をしのんでひっそりと働き、暮らす女の日々を描く「朝顔の音」を併録。
  • 駐車場のねこ
    4.0
    1巻800円 (税込)
    「オール讀物」新人賞受賞作「姉といもうと」を含む傑作短篇集。 幸田文の『流れる』に憧れる家政婦の姉と、指がないが活動的でラブホテル受付をする妹。 つぶれたスナックの女性店員たちが開いた競馬場での同窓会。 職人気質のクリーニング店主と常識外れの若い女性客。 駐車場の猫に餌をあげている布団屋の妻と、“役者のような美男子”の夫……。 おもわずほほえんでしまうユーモア。人間観察からあふれでる、生きることへの“姿勢の良さ”がにじみ出る。 解説・森絵都「どんな個性も大らかなユーモアをもって包みこむことで、マイナスをもプラスに転化させる。これぞ嶋津マジックだろう」 何気ないやりとりから生れる違和感がクセになる、オリジナリティ溢れる全7篇。 ※この電子書籍は2019年9月に文藝春秋より刊行された単行本『スナック墓場』の文庫版を底本としています。 文庫化にあたり、改題しました。
  • 注文の多い料理小説集
    3.9
    小説の名手たちが「料理」をテーマに紡いだ とびきり美味しいアンソロジー。 うまいものは、本気で作ってあるものだよ―― 最高級の鮨&ワイン、鮪の山かけと蕗の薹の味噌汁、カリッカリに焼いたベーコンにロシア風ピクルス…… おやつに金平糖はいかがですか? 物語の扉をそっと開ければ、今まで味わった事のない世界が広がります。 「エルゴと不倫鮨」柚木麻子 「夏も近づく」伊吹有喜 「好好軒の犬」井上荒野 「色にいでにけり」坂井希久子 「味のわからない男」中村航 「福神漬」深緑野分 「どっしりふわふわ」柴田よしき 【本書登場の逸品たち】 塩むすびと冷たい緑茶 ハルピンのイチゴ水 全粒粉のカンパーニュに具を挟んだサンドイッチ きときとの富山の海の幸・ゲンゲ汁 生クリームと栗の甘煮のパンとアイスコーヒー 食堂のカレーライスと福神漬 星屑のような白い金平糖
  • ちょいな人々
    3.4
    1巻590円 (税込)
    「カジュアル・フライデー」に翻弄され、慣れないファッションの冒険に乗り出した課長の悲喜劇を描いた表題作、大真面目で奇矯な発明が世の中を混乱させるおもちゃ会社の顛末「犬猫語完全翻訳機」と「正直メール」、熱狂的阪神ファンが彼女の実家に結婚の挨拶に行くと、彼女の父は熱烈なる巨人ファンだった…「くたばれ、タイガース」など、ブームに翻弄される愛すべき人々を描くユーモア短篇集。あなたの溜まったストレスに効く1冊!
  • 蝶

    4.4
    三島由紀夫、中井英夫、澁澤龍彦らの系譜を継ぐ“美の幻視者”皆川博子の一頂点を示す珠玉の短篇集! 男がインパール戦線から帰還すると、妻は情夫と同棲していた。二人を銃で撃ち下獄した男は、出所後、小豆相場で成功。北の果ての海に程近い「司祭館」に特攻帰りの下男とともに暮らす。ある日、そこに映画のロケ隊がやってきて……。戦後の長い虚無を生きる男を描く表題作ほか、現代最高の幻視者が綴る、詩句から触発された8つの短篇。 「空の色さへ」はポオル・フォル、「蝶」は別所真紀子、今井豊、音羽和俊、「艀」「龍騎兵は近づけり」は横瀬夜雨、「想い出すなよ」はロオド・ダンセイニ、「妙に清らの」はハインリッヒ・ハイネ、「幻燈」は薄田泣菫、「遺し文」は伊良子清白の詩歌が引かれている。 解説・齋藤愼爾
  • 鳥葬の山
    4.1
    1巻519円 (税込)
    土日返上で働きづくめの夏木は、思い切って二週間の休暇をひねりだし、チベットに出かけた。ラサの町で、ハゲワシに人間の死体を処理させる鳥葬を見て圧倒されたが、帰国後、夜毎の夢に現れる奇怪な光景の謎は? 表題作ほか、読むほどに怖くなる「頭の中の湿った土」に「閑古鳥(かっこう)」、爽やかな驚きがあなたを襲う「羊の宇宙」、超能力の持ち主同士の見えない闘いを描く「超高層ハンティング」など、夢枕ワールドを満喫できる、大満足の短篇集!
  • 町長選挙
    3.4
    病院といえば町営の診療所ただ1つ、という都下の離れ小島に赴任することになった、トンデモ精神科医の伊良部。一人じゃ淋しいと、看護師のマユミちゃんも一緒だ。ところが島は住民の勢力を二分して、町長選挙の真っ最中。伊良部を自陣営に取り込もうとする住民たちの現ナマ攻勢のエスカレートに、さすがの伊良部も圧倒されて……なんと引きこもりに!? 「オーナー」「アンポンマン」「カリスマ稼業」も収録。『イン・ザ・プール』『空中ブランコ』に続くシリーズ第3弾!
  • 調律師
    3.5
    仙台在住の著者が3.11を描く現代小説 ある出来事がきっかけでピアノの音を聴くと「香り」を感じるという「共感覚」を獲得した調律師、鳴瀬の喪失と再生を描く連作短編。
  • 沈黙のひと
    4.0
    吉川英治文学賞受賞、小池文学の最高峰! 亡き父が遺した日記には娘への愛、家族との不仲、そして恋人との心の交流が記されていた。生と死、家族を問い直す魂を揺さぶる傑作!
  • 月島慕情
    4.0
    「あたし、あんたのおかげで、やっとこさ人間になれたよ」吉原の年増女郎・ミノにふってわいた結婚話。しかし、身に余る幸せに浸る間もなく、思いもかけない真実が叩きつけられる。ミノが選んだ道とは…。過去をかかえた女の、哀切あふれる恋を描いた表題作「月島慕情」。ワンマン社長とガード下の靴磨きの老人の生き様を描いた、傑作「シューシャインボーイ」。ほか、市井の人々の優しさ、矜持を描いた珠玉の短篇集。著者自身が創作秘話を語る「自作解説」も収録。
  • 月と蟹
    3.9
    注目度ナンバー1の著者による少年小説の傑作! 「ヤドカミ様に、お願いしてみようか」「叶えてくれると思うで。何でも」──家にも学校にも居場所が見つけられない小学生の慎一と春也は、ヤドカリを神様に見立てた願い事遊びを考え出す。100円欲しい、いじめっ子をこらしめるなどの他愛ない儀式は、いつしかより切実な願いへと変わり、子供たちのやり場のない「祈り」が周囲の大人に、そして彼ら自身に暗い刃を向ける……。鎌倉の風や潮のにおいまで感じさせる瑞々しい筆致で描かれ、少年たちのひと夏が切なく胸に迫る長篇小説。 第144回直木賞受賞。
  • 月のしずく
    3.7
    三十年近くコンビナートの荷役をし、酒を飲むだけが楽しみ。そんな男のもとに、十五夜の晩、偶然、転がり込んだ美しい女──出会うはずのない二人が出会ったとき、今にも壊れそうに軋みながらも、癒しのドラマが始まる。表題作ほか、青少年の鑑のような高校生が、ふと足を踏み入れた極道の世界で出会ったヒットマンとの、短くも充実した日々──「銀色の雨」。子供のころ、男と逃げた母親との再会をイタリアを舞台に描く「ピエタ」など、“浅田マジック”が冴える全七篇。
  • つまをめとらば
    3.7
    第154回(2016年)直木三十五賞 女という圧倒的リアル! 直木賞受賞作 去った女、逝った妻……瞼に浮かぶ、獰猛なまでに美しい女たちの面影はいまなお男を惑わせる。 江戸の町に乱れ咲く、男と女の性と業。 女が映し出す男の無様、そして、真価――。 太平の世に行き場を失い、人生に惑う武家の男たち。 身ひとつで生きる女ならば、答えを知っていようか――。 時代小説の新旗手が贈る傑作武家小説集。 男の心に巣食う弱さを包み込む、滋味あふれる物語、六篇を収録。 選考会時に圧倒的支持で直木賞受賞。遂に文庫化! 解説・瀧井朝世
  • ツリーハウス
    4.1
    じいさんが死んだ夏のある日、孫の良嗣(よしつぐ)は、初めて家族のルーツに興味を持った。出入り自由の寄り合い所帯、親戚もいなければ、墓の在り処もわからない。一体うちってなんなんだ? この際、祖父母が出会ったという満州へ行ってみようか──。かくして、ばあさんとひきこもりの叔父さんを連れた珍道中が始まる。満州、そして新宿。熱く胸に迫る、小さな中華料理屋「翡翠飯店」三代記。伊藤整文学賞受賞作。
  • 劔岳〈点の記〉
    4.2
    日露戦争直後、前人未踏といわれ、登ってはいけない神の山と恐れられた北アルプス、劒岳(つるぎだけ)。正確な地図をつくるため、この山頂に「三角点を埋設せよ」との至上命令を受けた測量官、柴崎芳太郎。たいへんな悪路と悪天候、かさばる器材の運搬、地元の反感などの困難と闘いながら、柴崎の一行は山頂を目ざして進む。同じく劒岳の初登頂をめざす、アマチュアの日本山岳会隊の動きに、上官からの圧力はさらに増して…山岳小説の白眉といえる傑作。映画原作!
  • 貞操問答
    3.6
    1巻519円 (税込)
    父が亡くなり困窮する南條家の美しき三姉妹──演劇に熱をあげ浪費ばかりする長女・圭子、聖母のような清らかさと娼婦のエロスを備えた次女・新子、蠱惑(こわく)的魅力で男を翻弄する「ベビー・エロ」の三女・美和子。生計を助けるため家庭教師となった新子は、妻子ある雇い主と心を通わせてしまう。夏の軽井沢、メーヴェリンや資生堂の化粧品、銀座のデパートやバー……昭和初期の風俗を巧みに取り入れ、波瀾に満ちた愛の行方を描いた、テレビドラマ化話題作!
  • 鉄騎兵、跳んだ
    3.6
    オール讀物新人賞を受賞した佐々木譲さんのデビュー作『鉄騎兵、跳んだ』。モトクロスに青春を懸ける青年、貞二の挫折、恋、多感な時期の葛藤を描き、当時の選考委員にも絶賛された瑞々しい作品です。他にも『246グランプリ』『パッシング・ポイント』『ロウアウト』など全5編を収録。これが佐々木譲の原点だ!
  • 鉄で海がよみがえる
    4.0
    “鉄炭ダンゴ”でメバルや海藻が劇的に増えた! 磯焼けで荒れ果てた海も、鉄の力で生命力溢れる海の森へと生まれ変わる。海洋の豊かな森はCO2を固定化し、地球温暖化対策の切り札となる可能性をも秘めている。世界的な海洋学者ジョン・マーチンの鉄仮説を、新たな視点で検証し、実践した異色の本。震災後、大注目を集める著者の新たなる挑戦! 「一漁師の真摯な探求心に脱帽! 生命の大循環をつかさどる鉄の話はぞくぞくするような興奮に満ちている」──養老孟司
  • テティスの逆鱗
    3.9
    1巻641円 (税込)
    華やかな美貌で売る女優、出産前の身体に戻りたい主婦、完璧な男との結婚をねらうキャバ嬢、そして、独自の美を求め続ける資産家令嬢。美容整形に通い詰める4人は、どんどんエスカレートし、やがて「禁断の領域」にまで達する――。終わりなき欲望を解き放った女たちが踏み込んだ、美容整形という天国と地獄。その戦慄の風景、女の心模様に震撼する、美と恐怖の異色作!
  • てのひらの闇
    3.8
    著者の新たな到達点を示す長篇ハードボイルド 20年前に起きたテレビCMの事故が、二人の男の運命を変えた。男は、もう一人の男の死の謎を解くべく孤独な戦いに身を投じる……
  • てらさふ
    3.0
    自分がまがいものであることは承知の上で、スーパースターになって2010年代を疾走することを夢想する堂上弥子(どうのうえやこ)。 耳の中で鳴る音に連れられ、どこかに行きたいというきもちがつねにうねっていた鈴木笑顔瑠(すずきにこる=ニコ)。 北海道の小さな町で運命的に出会ったふたりの中学生は、それぞれ「ここではないどこか」に行くため、一緒に「仕事」で有名になることを決める。その方法は弥子が後ろに回り、ニコが前面に出るというもの。最初の仕事は読書感想文コンクールでの入選。弥子が書いてニコの名前で応募した感想文は見事文部科学大臣奨励賞を受賞、授賞式にはニコが出席した。 ふたつめの仕事は、史上最年少で芥川賞を受賞すること。ニコの曽祖父の遺品の中にあった小説を弥子がアレンジして応募した小説「あかるいよなか」は、芥川賞の登竜門となる文芸誌の新人賞を受賞する。作品はその後順当に芥川賞にノミネートされるが、それは「てらさふ」仕事を続けてきた、ふたりの終わりのはじまりだった――。 てらさふ――とは「自慢する」「みせびらかす」こと。「てらさふ」弥子とニコがたどり着いた場所とは? 女の子の夢と自意識を描きつくした、朝倉かすみの野心作。 解説・千野帽子
  • 天使たちの肖像
    -
    1巻440円 (税込)
    妻子も安定した仕事も捨てて“蒸発”し、運輸会社の運転手となった曾木。社長の愛人のフィリピン女性・セべリアから、社長のもう一人の愛人・川西槙子の幼い娘を身代金目的で誘拐する計画を打ち明けられ、その話にのる。金のためではない。無一文で炭鉱で働いていた遠い日の自分と、社長から約束のお金をもらえないと家族が待つ国に帰れない、というセべリアの境遇に、共鳴するものを感じたからだ──男の生きざまを鮮烈に描く長篇ハードロマン!
  • 天然理科少年
    4.1
    「ぼくたちは、ずっと友だちだったんだよ」 放浪癖のある父に連れられ、転居を繰り返す岬。山の中学校で出逢った賢彦との3日間の邂逅と別離。時空を超える、みずみずしい物語
  • てんのじ村
    3.3
    大阪は通天閣の下に、漫才師、奇術師、浪曲師といった芸人たちがあつまり住む一郭“てんのじ村”があった。戦前、戦後、そして高度経済成長期と、大阪芸人の活躍の場が、寄席からラジオ、テレビへと移りゆくなか、時代の波にとり残された八十二歳と五十五歳の漫才コンビ。しかし、その二人に、たった一度だけ華やかなテレビのスポット・ライトが当てられる日が来たのだが──。身を寄せあって生きていく善意の人々の哀歓を、しみじみと描いた第91回直木賞受賞作。
  • 天の刻(とき)
    4.2
    自殺はしないが、いつ死んだってかまわない──。世間に背を向けるわけでなく、かといってヴィヴィッドな後半生を望むわけでもない。みずからの積極性を放棄した、しかし魅力的な女たち。40代も終わりにさしかかろうとする女性が、思いがけず、恋愛の極みへと誘われていく。古い日本家屋やたるんだ初老男の肉体、果汁したたる枇杷の爛熟した匂いに導かれた官能の一瞬に、彼女たちは何を見ているのか。エロスとタナトスが、絶妙の筆致で融合された極上の恋愛作品集。
  • 出会いなおし
    3.7
    1巻719円 (税込)
    気まずさも、衝突も、痛みも超えて、人は何度も出会いなおせる。 「愛する勇気をもらえる一冊」 ――中江有里 イラストレーターの時子は、かつて共に仕事をした編集者のナリキョさんから、仕事の依頼をふたたび受ける。年を重ねて時子が得た感慨とは。(「出会いなおし」) ほろ苦い思い出のある小学校の同窓会に出て知る、意外な事実。(「むすびめ」) 人々の出会いと別れ、そして再会を描く珠玉の六篇をおさめた短篇集。 解説・中江有里 ※この電子書籍は2017年3月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • ディアスポラ
    4.0
    “事故”により日本列島が居住不能となり、日本人は世界中の国々に設けられた難民キャンプで暮らすことを余儀なくされた。チベットのラサから2000キロ離れたここ、メンシイにも日本人の難民キャンプがある。国連職員としてキャンプを訪れた“私”の目に映ったのは、情報から隔絶され、将来への希望も見いだせないまま、懸命に「日本人として」生きようとする人々の姿だった――。3・11に先駆けること10年、破滅的な原発事故で国土を失った日本人を描き、日本人のアイデンティティを追究した予言的傑作「ディアスポラ」をはじめ2篇を収録。
  • 凸凹デイズ
    3.9
    凪海(なみ)は弱小デザイン事務所「凹組」の新米デザイナー。同僚は天才肌の黒川、仕事に信念のある大滝の2人きり。チラシやエロ雑誌のレイアウトをこなす毎日に、老舗遊園地のリニューアルデザインのコンペという一大チャンスが舞い込んだ。凪海はずっと暖めてきたキャラクター、デビゾーとオニノスケのイラストを描く。コンペのライバルはやり手美女社長が率いる気鋭のデザイン事務所だが、事態は意外な方向へ…。コミカルでちょっと切ない青春仕事小説!
  • デッドエンドの思い出
    3.9
    幸せってどういう感じなの? 人の心の中にはどれだけの宝が眠っているのだろうか――。時が流れても忘れ得ぬ、かけがえのない一瞬を鮮やかに描いた傑作短篇集
  • 問いのない答え
    3.2
    1巻850円 (税込)
    会ったことはないのに、つながっている。 さまざまなひとたちをつなぐ、ささやかな絆。 何をしていましたか? ツイッターに投げられた質問に思い思いの答えを返す人たち。 問いの全文が知らされるのは答えが出揃ってから―― 小説家のネムオが震災後に始めたそんな言葉遊びが、 さまざまな男女の人生を丸くつないでゆく。 この著者にしか書けない、静かだけれど力強い長編小説。 解説=藤野可織 ※この電子書籍は2013年12月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 東京、はじまる
    3.6
    1巻1,001円 (税込)
    日本銀行本店や東京駅など、近代日本を象徴する建物を矢継ぎ早に設計した、 明治を代表する建築家・辰野金吾。 下級武士から身を立てるべく学問に励み、洋行して列強諸国と日本の差に焦り、 帰国後はなんと恩師ジョサイア・コンドルを蹴落として 日銀の建築を横取りする……! 周囲を振り回しながらも、この維新期ならではの超人・金吾は熱い志で 近代日本の顔を次々を作り上げていく。 日銀の地下にある意外な仕掛け、東京駅の周辺にかつて広がっていた海の 蘊蓄など、誰もが見慣れた建築物の向こうに秘められたドラマを知ることもできる。 ベストセラー『家康、江戸を建てる』の著者が 「江戸を壊して東京を建てた」辰野金吾を描く、大きく楽しい一代記! ※この電子書籍は2020年2月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 東京ワイン会ピープル
    3.0
    1巻754円 (税込)
    今秋映画化。一杯のワインが彼女の運命を変えた!? 自慢のワインを持ち寄り楽しむ宴。そこは愛と欲望と打算が渦巻く場でもあった。人気コミック原作者によるもうひとつの『神の雫』。 ※この電子書籍は2017月11月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 東京新大橋雨中図
    4.5
    最後の木版浮世絵師といわれた光線画家・小林清親の波瀾に充ちた半生と江戸から明治に移りかわる風俗、庶民の生きざまをあざやかに描いた第百回直木賞受賞の長篇。(田辺聖子)
  • 透光の樹
    3.6
    「心に決めていたんです……わたし、郷さんの娼婦になるって」加賀平野の清冽な自然に抱かれる鶴来町で、25年を経て再会した男女。テレビ業界駆け出しの青年は制作会社社長となり、セーラー服ではにかんでいた少女は、母となりやがて離婚、借金をかかえる病床の父のもとへ戻っていた。迸る性愛に突き動かされながらも、魂の奥底を求めあい、逢瀬を重ねる二人。人生の後半で燃えあがる奇跡の恋愛を描き、第35回谷崎潤一郎賞受賞を受賞。秋吉久美子主演で映画化の話題作。
  • 遠い国からの殺人者
    5.0
    1巻478円 (税込)
    「男の人が倒れている」110番通報の女の声には妙ななまりがあった──。マンションで死んでいたのは大学を中退した無職の若い男。姿をくらましたのは同居していた外国人ストリップ・ダンサー。彼女の身に一体何が起こったのか。彼女はなぜ真の素性を偽らなければならなかったのか。「じゃぱゆきさん」と呼ばれた外国人女性たち、経済大国ニッポンの底辺に生きる彼女たちの姿が、法廷での関係者の供述から次第に明らかにされていく。感動の直木賞受賞作品。
  • 遠い接近
    4.5
    松本清張の軍隊経験が垣間見られる数少ない作品! 過去の徴兵検査で第二乙種不合格、そして三十二歳となった今、兵隊にとられることはないと確信していた山尾に、召集令状が届く。この一枚の紙が、山尾のみならず家族の運命までも大きく狂わすことに。古兵の制裁にも耐え復員したが、すべてを失った山尾は、召集令状を作成した区役所兵事係への復讐を誓う――。
  • トオリヌケ キンシ
    4.2
    人生の途中、はからずも厄介ごとを抱えることになった人々。 でも、「たとえ行き止まりの袋小路に見えたとしても。根気よく探せば、どこかへ抜け道があったりする。」(「トオリヌケ キンシ」より) 他人にはなかなかわかってもらえない困難に直面した人々にも、思いもよらぬ奇跡が起きる時がある――。 短編の名手・加納朋子が贈る六つの物語。 (収録作品) ・高校に入ってから不登校・引きこもりになってしまったある少年。ある日彼の家に、一人の少女がやってきた。少女はかつて少年に助けてもらってもらったことがあるという――。『トオリヌケ キンシ』 ・「ある形」を見つけてしまう能力以外はごくごく平凡な女子高生。そのふしぎな力を生物の先生は「共感覚」と分析した……。『平穏で平凡で、幸運な人生』 ・やさしかった母がある日豹変、家の中でいじめられるようになってしまったタクミ。つらい日々の救いは、イマジナリーフレンド(想像のお友達)の存在だった。『空蝉』 ・人の顔が識別できない――「相貌失認」の「僕」は、高校入学を機にそのことをカミングアウトする。あろうことかその後「僕」はある女の子から「好きです」と告白される。不思議な始まりの恋の行方は? 『フー・アー・ユー』 ・長く連れ添った夫人を突然に亡くし、気落ちする亀井のおじいちゃん。家の中でひとりのはずが、ある日「座敷童がいる」と言い出した!『座敷童と兎と亀と』 ・前日に高熱を出して受験に失敗した「俺」は、ある場所に引きこもり、自分でコントロール可能な「明晰夢」を見る日々を過ごしている。そんな中で出会った女の子「ミナノ」、彼女は夢だったのか、それとも?『この出口の無い、閉ざされた部屋で』
  • 時が滲む朝
    3.7
    1巻468円 (税込)
    中国の小さな村に生まれた梁浩遠(リャン・ハウユェン)と謝志強(シェー・ツェーチャン)。大きな志を抱いて大学に進学した2人を、1989年の天安門事件が待ち受ける──。“我愛中国”を合言葉に中国を民主化しようと努力する貧しい学生たちの苦悩と挫折、そしてその後の人生。北京五輪前夜までの等身大の中国人を描ききった瑞々しい傑作。日本語を母語としない作家として、初めて芥川賞を受賞した楊逸(ヤン・イー)の代表作!
  • トコとミコ
    4.0
    6歳から96歳まで、歴史に翻弄された二人のヒロイン。 伯爵家の令嬢・燈子と、遊び相手に選ばれた使用人の娘、美桜子。 ふたりはトコとミコと呼び合い、友情を育みながら、大人への階段を上っていく。 だが、終戦を境に伯爵家は没落、才気煥発な美桜子は実業界で成功し、燈子とその家を支えていく。 時に慈しみ、時に妬み傷つけ合いながらともに歩んだふたりの90年を描く、感動の大河ロマン! ※この電子書籍は2016年12月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • とっぱくれ
    3.0
    喧嘩に明け暮れ、若くして極道の世界に飛び込んだ“とっぱくれ”(はねっ返り者)村上ギイチ。組織内でひたすらてっぺんを目指すが、自分を拾ってくれた兄貴分の美山と「親」である松原の極道者としての生き方に隔たりが見えはじめ、二人の間で微妙な立場に立たされる。「極道者がのしあがっていくのに必要なのはゼニと力。せやけど一番大事なのはハートや。男の気骨を大事にせえ」。正念場でギイチが選んだ道は…! 不器用だがまっすぐに生きる、一人の極道者を描く!
  • 隣りの女
    3.8
    夫の給料をつましくやり繰りして、家事と内職で毎日が過ぎていく平凡な主婦に訪れた恋。“人妻の恋の逃避行”(そして、気になるその後)をあざやかに描いた表題作。家族のために頑張って、気がついたらそろそろ30歳…な主人公の微妙な恋心を衝いた「幸福」と「胡桃の部屋」。大人になって出会った異母兄弟の愛憎をえがく「下駄」。突然の飛行機事故により、向田邦子の絶筆となった「春が来た」。いずれも読んだら忘れられなくなる、まさに珠玉の5篇。
  • 扉守 潮ノ道の旅人
    3.6
    古い井戸から溢れだす水は≪雁木亭≫前の小路を水路に変え、月光に照らされ小舟が漕ぎ来る。この町に戻れなかった魂は懐かしき町と人を巡り夜明けに浄土へ旅立つ(「帰去来の井戸」)。瀬戸の海と山に囲まれた町でおこる小さな奇跡。著者の故郷・尾道をモデルとし、柔らかな方言や日本の情景に心温まる、ファンタジックな連作短篇集。広島の魅力を描いた本を、地元書店員が中心になって選ぶ賞として立ち上げた広島本大賞、第1回受賞作。

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