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Posted by ブクログ
共感覚を持つピアノの調律師の鳴瀬玲司を主人公にした喪失と再生を描いた7編を収録した連作短編集。
東日本大震災という決して忘れられない喪失の日を挟んで描かれた作品であるせいなのか、東日本大震災の前に書かれた最初の2編と後半の5編とでは明らかに味わいが変わる。特に主人公が過去に決別するという最終話には、強い怒りやもどかしささえ感じる。もしかしたら、それは著者が自分自身に向けた想いなのかも知れない。
『少女のワルツ』はオープニングを飾るのに相応しいハートウォーミングな短編。この連作短編集の方向性を示したかに見えたのだが…
『少女のワルツ』、『若き喜びの歌』、『朝日のようにやわらかに』、『厳格で自由な無言歌集』、『ハイブリッドのアリア』、『超絶なる鐘のロンド』、『幻想と別れのエチュード』を収録。
Posted by ブクログ
本書を読みながら、宮下奈都さんの『羊と鋼の森』(ピアノ調律師の青年の成長物語 2016年本屋大賞受賞作)を思い出していました。
本書の単行本は2013年刊なので、『羊と鋼の森』より少し前ということになりますね。
7話からなる連作短編集で、ピアノ調律師・鳴瀬の再生の物語です。
元ピアニストの鳴瀬は、10年前、事故により妻とピアニストとしての将来を失い、以来、音から匂いを感じ取る「嗅聴」という共感覚を得ています。
連続する作中、異なる状況下での微妙な音や匂いの繊細さが上手く表現されています。
鳴瀬は、亡き妻がもっていた「嗅聴」と調律の仕事を辿ることになります。様々なピアノ・依頼主と出会いながら自分と向き合い、少しずつ〝妻の幻影からの解放〟に向かうはずでしたが‥。
執筆(連載)中に東日本大震災が発生し、仙台在住の著者は、途中中断しながらも、第6話から物語を転調することにしたようです。個人的には、震災を物語に取り込むことが、「唐突」ではなく「必然」だったのだろうと思います。
余韻の残る、不思議ととても清々しい読後感でした。暗い印象になりがちな物語に、義理妹の存在が健気で可愛らしく、救われる思いがしました。不謹慎かもですが、ある意味〝胸キュン〟の側面もあり、震災云々を抜きにしても良質の物語だとおすすめできます。
Posted by ブクログ
かつて、プロのピアニストとして活躍しながら、事故により妻を亡くし、今はピアノの調律師として生きる主人公・鳴瀬 玲司。
彼は、共感覚の持ち主であった。
共感覚とは、例えば、音に色を感じる「色聴」や、音に匂いを感じる「嗅聴」など。
事故に遭う前は「色聴」であったが、事故後、亡くなった妻と同じ「嗅聴」となった。
様々な出会いを経て、彼の調律師としてのキャリアが高まっていくが、十年経っても妻の思い出が離れない。
そんな中、仙台市で遭遇した東日本大震災。
その巨大な爪痕は、彼の共感覚の力を奪ってしまう。しかし、それは、妻との本当の別れでもあった...(涙)。
最後、彼の新たな旅立ちに、幸多かれと祈りました
小説としては、途中から大きく展開が変わります(転調)が、後書きの「解説」を読みますと、作者である熊谷氏の境遇に納得が出来ました。
ぜひ、続編を期待したいです。
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