Posted by ブクログ
2018年05月17日
かつて、プロのピアニストとして活躍しながら、事故により妻を亡くし、今はピアノの調律師として生きる主人公・鳴瀬 玲司。
彼は、共感覚の持ち主であった。
共感覚とは、例えば、音に色を感じる「色聴」や、音に匂いを感じる「嗅聴」など。
事故に遭う前は「色聴」であったが、事故後、亡くなった妻と同じ「嗅聴」...続きを読むとなった。
様々な出会いを経て、彼の調律師としてのキャリアが高まっていくが、十年経っても妻の思い出が、離れない。
そんな中、仙台市で遭遇した東日本大震災。
その巨大な爪痕は、彼の共感覚の力を奪ってしまう。
しかし、それは、妻との本当の別れでもあった...(涙)。
最後、彼の新たな旅立ちに、幸多かれと祈るしかなかった。
小説としては、途中から大きく展開が変わる(転調)が、後書きの「解説」を読み、作者である熊谷氏の境遇に、納得がいった。
ぜひ、続編を期待したい。