Posted by ブクログ
2013年05月04日
昭和四十年代の宮城県を舞台に描かれる珠玉の短編集。いずれも懐かしく、心に訴えるものがあり、なかなか面白い作品に仕上がっている。
『酔いどれ砲手』は牡鹿半島を舞台に廃れゆく捕鯨をユーモアを交えながら描いており、ユーモアの中に潜む哀しさが何とも言えない。
『稲穂の海』は宮城県北を舞台に減反政策にあが...続きを読むらう若者の姿をユーモアを交えながら描く。
『梅太郎』は民話を収集する大学の若手助手と語り部の婆さんを描いているが、あくまでも純粋な婆さんに対して、物事を四角四面に捉え過ぎる大学助手の姿が滑稽である。
『屋台「徳兵衛」』は思わずホロリと来る人情話。今は見ることの無い屋台の描写が何とも言えない。
『てんとう虫の遍歴』も昭和の時代を上手く描いている。あの時代、自家用車は憧れであり、自家用車を持つことはものすごいステータスだった。
他三編も懐かしく、ユーモアの中にある人情味が心地良い。