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吉川英治文学賞受賞、小池文学の最高峰! 亡き父が遺した日記には娘への愛、家族との不仲、そして恋人との心の交流が記されていた。生と死、家族を問い直す魂を揺さぶる傑作!
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Posted by ブクログ
大変深く心に響く小説でした。 パーキンソン病を患った父、認知症で施設に入った母、ひとり娘である主人公は家族を持つ事なく離婚している。 父が不倫の末に母と離婚して新しい妻との間に娘が2人生まれた。 父の遺品整理の中から心情を知り想いを巡らす日々、母の心情を想像しながらかつての平和だった家族風景を風景画...続きを読むを見つめるように思い出す。 自分には家族がいない経済的には自立していて晩年の暮らしの保証もある、それが何だと言うのだ。長く走り続けてきて自分がいかに独りであったのか悟る、誰も追いかけて来ない静寂に満ち音もせず目を惹かれるものもない長く果てしなく伸びる道があるだけ。失望、絶望、うめき声をあげても誰も聞いていない誰も気づきはしない、私はまた走り始める、それが私だと思う。 自分にも母のように愛した男から指輪を贈られ老いても決して外さない、奈落の底と天国を繰り返し味わう別の人生があったかもしれないと夢想する。 人は孤独と絶望の中で悟りを開き最後には受け入れるのかもしれない。 主人公の父のワープロ修理を引き受けてくれた男性に感謝の葉書と娘をよろしくと頼むところ、父親としての誠実さ娘に対する感謝と謝罪を感じた。良い小説でした。
最初から最後まで何度も泣かされます。 自分の父はこの小説に登場するパーキンソン病とは異なる病でしたが幾度となく自分の父を想い出し辛く、悲しく、そして泣けました。 いつもながらの丁寧な文章で一字一句読み漏らす事がない様にじっくり読みました。 最後の著者の短いあとがきを読んでそこで絶句しまし...続きを読むた。 著者のお父様がモデルであったと知り、更に感慨深い気持ちになりました。 読んでいる間、フィクションの様でありながらも、どこか実在する物語の様な感情に陥ったのも納得が行きました。
新聞の土曜版に連載されているエッセイに好感をもって初めて小池真理子さんの小説を読んでみた。もちろんフィクションだし、主人公の衿子は小説家ではなく文芸誌の編集者なんだけど、ご自身のことが色濃く反映された小説であることがわかる。 パーキンソン病をわずらい発話も満足にできなくなり介護施設に入っている父親を...続きを読む見舞う日々と過去の思い出が交錯しながら進んでいく。この父親、幼い頃をともに暮らしたわけではなく、衿子の母以外の女性のもとにはしったような人物。亡くなった後に遺品のなかからいかがわしいビデオが見つかったり、衿子の母とも再婚した現妻とも違う女性がいたりもする。でもそうした父親に対し衿子の確執らしき思いは現れず、異母姉妹が父の醜態を騒ぐのと対照的に、すべてを愛おしく受け入れるよう。父親へのひたすらな愛情が綴られる。 巻末の解説(持田叙子)で、森茉莉や円地文子に連なる「父恋いの文学」の系譜だと述べていて、その説にも納得させられる。確かに思えばそのような系譜があるようで、それは父と息子の関係や母と息子の関係からなる文学よりも、色濃さがある感じがする。この小説のなかで衿子自身も若い頃であれば許せなかったような父の所業が、50代半ばになるいまでは許せるというようなことを書いている。世間標準の娘たちであれば顔をしかめるであろうことを認められるのは、父への愛情でもあり、また衿子自身(ということは小池真理子さん自身)が世間体とは別の次元で物事をとらえる人だからだろう。そういう面が表れているような以下の衿子の心象が妙に目に留まった。 長く長く走って来て、ふと立ち止まってみれば、自分がいかに独りであったかを悟る。誰も追いかけてこない。誰かに追いつこうともしていない。まわりは静寂に満ち、音もせず、目を惹かれるものは何もない。目の前に、長く果てしなく伸びる道があるだけだ。 その道を走り続けていく以外、方法はない。だからまた走り出す。走りながら、時折、誰かがこちらに向かって走ってくる気配を感じはしないだろうか、と耳をすませてみる。走ってきてほしい、と願う。私に追いついて、後ろから声をかけ、歩調を合わせて隣に並び、手をとってくれはしないだろうか、と思う。 だが、そんな気配はまったくしない。失望する。時に深く絶望する。走るのをやめて道に四つんばいになり、呻き声をあげてしまったりもする。 だが、どんな時でも、乱れた感情はまもなく治まる。私の呻き声など、誰も聞いてはいない。私が泣いていても誰も気づきはしない。私はまた走り始める。 それが私だ、と改めて思う。(p.347) 小池真理子さんは藤田宜永さんとのおしどり夫婦ぶりが知られてもいたけれど、それでいながらこういうことが書けるのが、(小説家なのだから当たり前だといわれればそれまでだけど)自分や人を客観的に見ることのできる人なのだろうな。
父を早くに亡くし、母がゆるやかながらも進行性の病気にかかっている、そんな状況の私にはとても身につまされる小説だった。 そうでなくてもある程度の年齢になれば親が老いて介護が必要になったり、段々と死に近づいていく。そんなときどんな風に向き合うかを考えさせられる。 両親の離婚によってほとんど関わり合うこ...続きを読むとなく生きてきた父が、難病を患った末に亡くなった。 娘の衿子は父の遺品のワープロを持ち帰るが、そこには病気により口を利くことも出来なくなっていた父の心の叫びと後悔、そして衿子への愛情が綴られていた。 主人公の衿子は50代で独身(離婚歴あり、子どもなし)。編集社で働く、いわゆるキャリアウーマン。 子どもの頃両親の離婚によって別れた父とはたまに会う程度で、その後父は再婚し2女をもうけた。 そんな父がパーキンソン病にかかり、介護施設でその終末を送り、亡くなったところから物語はスタートする。 家族というものを信じず、濃密に関わることも避けてきた衿子が、父の死後に父の想いを知り、ドライに生きてきた自分のやり方が正しかったのかを見つめ始める。 父の後妻、そして衿子にとっての異母姉妹である2人の娘との付き合い方ややり取りに、女同士だからこその微妙な距離や少しの皮肉が含まれていて、読んでいてざわざわする感覚が。 衿子や姉妹はとりあえずは“大人”で、後妻だけは自分に正直に生きている(それが良いかどうかは別にして)。 父の死後に、父が遺した文章や手紙から、父の想いや秘密を知るということ。 晩年喋ることが出来なくなった父が思っていた真実、そして過去の愛の遍歴。 私も多少似たような経験があるけれど、親が生きているときにその人生を知るというのはとても難しくて、亡くなって初めて知ることのほうが多い。 そこには複雑さも当然あるけれど、何となく安心したり、不思議と穏やかな気持ちになれたりもする。 そしてそこで自分の失敗や後悔を見つめ直して、それをその先に生かせるかどうか。 登場人物の女たちの微妙な心情が、とくに会話からはっきり見える。 衿子の父を誰が愛していて、そして誰が愛していなかったのかも。 様々な選択の果ての死。簡単には取り戻せない失敗も、ときにはある。 最後“沈黙の人”になるしかなかった人生だからこそ、その想いは文章に姿を変えて饒舌に語られた。 普段寡黙な人こそ、その内にはたくさんの想いがあるのかもしれない。
複雑な家庭環境を背景に、病を患った父とキャリアウーマンの娘の交流と、父の死後明らかになった父の秘密。そして母の元夫である父の想いが綺麗に織り成せていると思います。 小池真理子先生の作品は初めて読んだのですが、難しいようでスラスラ読めて良かったです。
私にとっての父親と、小池さんにとっての父親は少し違う存在なんだろうと思いつつ、それでも読み終えると、娘と父という共通した関係性が、私にとってとても気持ちよく表現されていて、素直に父に思いを馳せることができた。 今年の1月に父を亡くした。結婚して実家を出てから30年以上経ち、たまに実家に行くことはあ...続きを読むっても面と向かって父とゆっくり話すことなどほとんどないままだった。 その生きざまを新聞記者の義弟が冊子にまとめてくれた。読んでみたけど、しっくりこないままだったのが、今日この沈黙の人を読み終えて腑に落ちた気がした。 父が私たちに言い残したかったのは何だったんだろう。病魔に侵されはしたが、最後まで意識はしっかりしていた。それでも、何一つ言い残すような言葉はないままだった。 父の口癖「もうええじょ」(もういいよ)。 私たちへの気兼ねではなかったのか? 悔いが残る。 せめて、父の死をしっかり悲しもうと今更ながら思う。
切なくて、哀しくて、でもどこか温かさの感じられる作品。 人生は思う通りにはいかない。いかないのにそれでも人は、こんなにも生に執着してしまうのだろうか。 必死に言葉を、想いを、伝えようとする姿が、リアルに伝わってくる。 上手く言葉に出来ないが、間違いなく心を揺さぶられた作品。
2012年刊行、小池真理子さんの長編小説。裏表紙の解説を見ると、離婚によって疎遠になっていた父が難病にかかって死に、娘が遺されたワープロ原稿などを発見しそこに父の心の叫びを知る、という話だというので、これこそ私が読むべき本、読んで号泣しなければ! と衝動的に買った。 私も2年前に離婚して家族を失い...続きを読む一人娘と離ればなれになり孤独になった状態なので、まさに「身につまされる話」なのである。 もっとも、本作では冒頭で死ぬ父親は85歳、娘は50代ということで、私にとっては30年以上未来の状況ということになる。 本作は全然エンターテイメントではないし、恋愛小説でもなく、際だったストーリーもない普通小説である。むしろ純文学に属していると言って良い。もともと地味な文体を持つ小池真理子さんの小説世界は、ホラーにおいてはむしろそれが効果的だったりしたが、本作は地味な物語を地味に語り続けているので、とても地味地味である。吉川英治文学賞を受賞しているが、あまり多くの読者を喜ばせなかったのではないかと推察する。 先妻と離婚したのは父が浮気したためで、彼は浮気相手と再婚して更に二人の娘を持つ。老いてパーキンソン病に罹患した父は歩けなくなり、またほとんど口をきけなくなって、やたらと冷たく意地悪な後妻に疎まれて老人ホームへと追いやられる。妻は絶対に老人ホームを訪れない。先妻の娘である主人公の「私」=衿子が、すでにじゅうぶん大人となりかつて母と自分を「捨てた」父のもとに足繁く通い始める。もともと父は3人の娘の内衿子を最も愛していたようだ。娘が来るたびにとても喜ぶ。 文学趣味をもつ父はワープロを使ってたくさんの手紙を送ってきたほか、ワープロ内に日記のようなものを書き綴ってきたことが、死後に分かる。短歌仲間である女性との親交や、密かな浮気のことなども判明していく。遺品の中から裏ビデオとともに、老女のビニ本が発掘されるところは笑った(そんなのあるのか・・・)。死後、生のありようの全てが、裸形となってあからさまになってしまうのである。しかしそれでも、故人の心的な真摯さや重みのある人生の軌跡は貶められることがない、 死の直前、もはやワープロも打つことが出来なくなった父は、娘衿子に「生きてきて後悔してることってある?」と問われ、彼女の考案した「文字表」を使って「かぞく」と答える。ここが最も哀切である。衿子もまた、離婚して孤独に生きており、家族を避けるようにしてきた人間なので、父と娘のふたつの孤独さがダブるのである。 孤独ななかにも灯され続けた「愛」が、晩年の父子のあいだに点滅するさまが、この小説の核心だ。 私は本書をずっと自分の境遇と比較しつつ読んだ。私がこれくらい長生きしたとして、何か病に冒されて娘が果たしてこんなに接近してくれるかどうか、心許ない。もっと徹底的に孤独に私は死んでいくのかも知れない。 本作中、チョイ出の或る作家が 「男はね、最後は家族に戻るんだよ。自分勝手と言われようと何だろうと、晩年になって家族に受け入れてもらえるかどうかが、男の最後の勝負どこなんだよ」 と言うのこ台詞は、私には刺さった。私にはその戻るべき家族がもうない、と思うからだ。しかも、本作の「父」は趣味でやっていた短歌を通して親身な異性の友人と交流しているのに対し、長年音楽をやってきたにもかかわらず私にはそんなリアルな友人は一人も居ないのだ。 地味なこの小説は身につまされることのない多くの読者にとっては退屈かもしれないが、私にとっては、自分の残りの人生を深く考え直させるような、重要な本であった。私も「終活」したくなってきた。
小池真理子さん。この人はなんて美しい文章を書くんだろう。謙虚で、上品で、過剰な装飾や誇張の一切ない洗練された文章がとめどなく続いていく。小難しい用語を使うわけでも、まくし立てるようにありったけの情報を文章に詰め込もうとするわけでもない。透き通った小川にさらさらと流れていく笹舟みたいに、滑らかに言葉...続きを読むが紡がれていく。ずっと読んでいたいと思う。あっという間に読み終わってしまって、もっとその文才の中に浸っていたかったという名残惜しさが募る。感想文を書くなんておこがましいと気が引けてしまうくらい。書くけどさ。 主人公は50代女性。幼い頃、女を作って自分と母を捨てた父と、付かず離れずの不思議な関係を続けてきた。そんな父がパーキンソン病を発症し、闘病の末に亡くなる。父の後妻とその2人娘と共に遺品整理をすることにした彼女は、段ボールの中に古いワープロを見つける。中には闘病中の父の、言葉にならない悲痛な叫びが書き綴られていた。自分が捨てた妻と娘への想い、憐憫、後悔。新しく作った家族とうまくいかない辛い心情。日記の他に、死の間際まで心の底から深く愛し合っていた女性とやりとりした手紙も残されていた。 それらを読むにつれ、父に対する気持ちや、自分を取り巻く人々への想いに変化が起こったり、新たな感情に気付いたりしていく主人公。物語の最初と最後では、私の中で彼女の印象が大きく変わっていた。死がテーマになっているけれど重苦しくなく、読み終わったあと心が暖かくなるような物語だった。
両親が元気なうちに読んで良かった。 最後、ハガキをもらった後の文章で号泣…いつかこんな風に、記憶が渦巻いて、という表現がぴったりな感じで自分の父親を思い出すことになるのかな…
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