文藝春秋作品一覧
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-はたして日本人とは世界でもまれな精神構造をもった特異な民族なのか。近代夜明けの明治期を象徴するふたりの人物に焦点をあて、彼らの行動を支配した思考に迫る。この本は歴史というよりは、歴史を歩いたルポルタージュであり、いわば「タテの紀行文」だ。日本人の精神構造の中核を形成している「忠誠心」の源流をたずねて、乃木大将の殉死から筆をおこし、その死をめぐるさまざまな評価から、さらに赤穂浪士の仇討ちまでさかのぼって、日本的特性をさぐっている。
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4.5新大阪の銀行に押し入った強盗は居合せた客の一人を人質にとって逃走した。まもなく犯人から人質の家族あてに、一億円を要求する脅迫状が届く。その指示は、徹底的に巧緻で悪意に満ちたものだった。大阪府警捜査一課、黒田・亀田両刑事、通称クロマメ・コンビに出番がきた……。「キャッツアイころがった」で第四回サントリーミステリー大賞を受賞した筆者が、第一回同賞で佳作賞を受けたこの作品は、軽快なテンポと秀抜なトリックの本格長篇ミステリーである。 ※本作品はKADOKAWA/角川書店、東京創元社、文藝春秋で同一タイトルの作品が販売されております。本編内容は同じとなりますので予めご了承下さい。既に同作品をご購入されているお客様におかれましてはご注意下さい。
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3.840年の時を超えて大きな話題になった表題作「アメリカの壁」を含む傑作短編集。 1977年に発表された「アメリカの壁」に登場する孤立主義者のアメリカ大統領が、トランプ大統領を想起させることから、「トランプ政権 予言の書?」と新聞に取り上げられたり、ネット上で「いま読むべき作品」「現実がSFに近づいた」といった声が相次ぐなど、大きな話題に。 ●「アメリカの壁」あらすじ● ときは冷戦時代。ベトナム戦争以降のアメリカは国外問題への関心を急速に失いつつあった。「輝けるアメリカ」「美しいアメリカ」というスローガンを掲げて当選した大統領は、国内問題には熱心だが、対外政策はどこか投げやり。 そんなときアメリカは突然、出現した「壁」に囲まれ、外部との交通、通信が一切、遮断されてしまう。しかし、なぜか大規模なパニックは発生せず、「アメリカは生きつづけるだろう」と語る大統領のもと、アメリカ国民は意外に落ち着いていた。 「どう考えたって・・・・・・これはおかしい」 アメリカ国内に閉じ込められた日本人ライターは、そんな状況に不審に感じて調査を始める。 「アメリカは、“外”の世界に、ひどくいやな形で傷つき、萎縮(シュリンク)しはじめた。そいつは認めるだろ? 今の大統領は、その方向をさらに強め、妙な具合にカーブさせた。彼は “幸福な新天地時代”のアメリカのノスタルジイに訴え、そこからの再出発を考えているみたいだった」 「たしかにアメリカにとっては、“すてきな孤立”だ」 そして男がたどりついた真相とは。 表題作の他に、アンデスのマヤ文明遺跡から出土した棺のなかのミイラがいざなう不思議な時間旅行「眠りと旅と夢」や、「鳩啼時計」「幽霊屋敷」「おれの死体を探せ」「ハイネックの女」といった傑作SF5篇も収録。 電子版オリジナル解説では、小松左京の家族である小松実盛氏が各作品の背景を詳細に紹介。テーマにこだわらず1977~78年に発表された作品を集めた結果、ミステリあり、コミカルタッチあり、ホラーありとバラエティにとむ本書収録作の位置づけや、同じテーマを扱った他の作品を案内。日本が生んだ最高のSF作家、小松左京の豊潤で広範な作品世界に関する格好の入り口となっている。 また、初めて公開される自筆メモや、プロの漫画家として活躍した時期もある著者の一コマ漫画を特典画像として収録。
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-「私が選手たちに本書の趣旨、狙いどころを話すと、彼らの反応はさまざまであった。ぽーんと返事のはねかえってくる者、30秒ほど考えてから、ぽつり、ぽつりとしゃべり出す者、うなりながら記憶をよびおこそうとする者──。しかし、これだけははっきりいえると思った。すらすらと、しゃべる男でも、脂汗を浮かべながら、記憶をたどる男でも、みんな他人にはいえない、自分だけの悲しみ、自分だけのよろこびを持っていた」(あとがきより)人間に焦点を合わせた感動のスポーツ・ルポ!
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-小学生の頃は強肩強打の左翼手。サラリーマン時代は投手兼三塁手にして四番打者。そして後に監督と豊富な経験をもつ筆者が、ウンチクをかたむけて語る、江分利満氏の華麗にして優雅なベースボールの楽しみ方。プロ野球なら長嶋茂雄論から熱涙の巨人・阪神戦観戦記まで、草野球なら選手起用法から監督のありようまで、あらゆる局面にふれたこの本は、根っからの野球好きが愛情をこめて書いた野球論であると同時に、ユニークな人生論にもなっている。
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-川上監督ひきいる巨人軍は、九たび連続して日本一の栄光の座についた。空前絶後の輝かしい記録である。V9はいかにして達成されたか。当時の名参謀が絶対に勝つための巨人式野球術を、人事管理の面から明らかにしたユニークなV9秘録である。初めてあかす巨人戦法、新人の鍛え方、スーパースターを生み出す条件ほか、無敗の巨人をささえた主要人物の素顔を紹介、全盛時代の長嶋、王の知られざるエピソードをふんだんに織りこんだ野球ファン必読の書。
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-長州閥に陸軍を追われた父の無念を胸に、軍内抗争をかいくぐった陸軍軍人・東條英機は首相の座に就いた。そして日米開戦を数日後にひかえた昭和十六年十二月の某夜、彼は官邸別館でひとり号泣していた。その涙は何であったのか? 東條英機への嫌悪感を心に抱きながらも、自らの生理感覚を解明することが、戦後民主主義の脆弱さの克服への道だという視点から、新発見資料と関係者への徹底取材をもとに、昭和史最大の「悪役」として葬り去られた男の六十四年の軌跡を克明に検証する。
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3.0昭和五十六年、東京の深川で白昼、女性・幼児六人が通り魔に殺傷され、一人が人質となった。元すし店の板前川俣軍司の犯行までの軌跡と初公判から刑の確定までの全記録を克明に描いた犯罪小説。犯行にいたるまでのおいたちを当時の証言よりさぐりだし、裁判のやりとりを再現。裁判官、検察官、弁護士、精神医などが犯人の「狂気」性について全力を傾注したが、解明できなかった。昭和五十八年、無期懲役が確定。「キレる」現代人による動機の見えにくい犯罪増加の一端が、垣間見える。
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-ノモンハン戦失敗の図式は三年後のガダルカナル戦失敗の図式に酷似している。特に作戦指導部の考え方において、そうである。作戦指導の中枢神経となった参謀二名が両戦に共通しているからでもあろうが、当時の軍人一般、ひいては当時の日本人一般の思考方法が然らしめたものであろうか。先入主に支配されて、同じ過誤を何度でも繰り返す。認識と対応が現実的でなく、幻想的である。観測と判断が希望的であって、合理的でない。反証が現われてもなかなか容認しない。(あとがきより)
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3.0昭和三年、広島で起こった養母殺しの容疑者山本老は、実に五十数年間に渡って無実を訴え続けて再審を請求、「第二の加藤老事件」といわれている。昭和四十九年、千葉で起きた両親殺しの容疑者は「史上稀に見る残忍な凶悪事件」として死刑を言い渡された……。陪審制度支持の立場から、長年に渡って日本の司法・裁判制度の問題点を追及してきた著者が、周到綿密な取材をもとに、冤罪事件に取り組む弁護士たちの、地道で真摯な闘いを描いた異色の裁判ドキュメンタリー。
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5.0“最後の文士”高見順が、第二次大戦初期から死の直前まで、秘かに書き続けた精緻な日記は、昭和史の一級資料たるのみならず、日記文学の最高峰の一つとなった。ここに収録されたのは昭和20年1月から12月までの記録で、自己をも押し流しながら破局へと突き進む空襲下の8月までと、すべて価値観が変わってしまった、連合軍の占領下にある年末までの日本の悲劇を、冷徹で仮借ない文学者の目をもって率直に活写した、ハイライトの部分である。
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4.0かつて世界最強を謳われ、連合国に「幻の大戦艦」と恐れられた巨艦に何が起ったのか。名著『戦艦大和ノ最期』の著者吉田満と大和研究の第一人者原勝洋が、六十人を超える大和乗員の生存者と関係者の証言を丹念に集め、さらに日米の資料を駆使し、昭和二十年春の沖縄大和特攻作戦を再現する。「作戦準備」「作戦発動」「米攻撃隊来襲」「戦艦大和沈む」「戦いのあとに」と、五部に分けて克明に時間経過を追った本書は、無謀無策といわれた大和特攻の真実に迫る。
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3.0昭和十五年十一月二十五日朝、元老西園寺公望死去を報じる新聞には、野村吉三郎海軍大将の「超大型」駐米大使就任の記事が載った。その朝、引き揚げ日本人客を乗せアメリカから横浜に帰港した新田丸から、二人の米国人神父が上陸する。出迎えたのは予備役海軍少将山本信次郎だった……。対日輸出禁止、渡航制限など、最悪の時期を迎えた日米関係を打開すべく水面下ではさまざまな動きが進むが、現実に進行したのは、相互理解の拒否、善意の拒絶、強圧と屈服要求だった。
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5.0アジアモンスーンの恵みをうけた肥沃な土地、おっとりとした国民性で知られるカンボジアを突然襲った「赤いクメール」の嵐。ポルポト政権下の粛清と強制農村隔離政策は百万人といわれる犠牲者をだし、国土を荒廃に追いこんだ。なぜ悲劇は起きたのか? 現地で外交官の夫とふたりの息子をつぎつぎと喪い、数年におよぶ強制労働に従事した日本女性の体験談から事実を、また、証言を考察可能な距離まで一度切り離したうえで政変の深奥を掘り起すことを試みる。
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-東京の街が、まだ東京であったころ……。東京屈指の繁華街として大きく変貌した渋谷を再訪し、著者の幼年期をはぐくんだ大正初年の渋谷界隈の地理、風物、時代の感触を、精緻な記憶力と端正な文体で再現する異色自叙伝。優しく厳しかった母の追懐、思い出深い小学校生活、時間の経つのを忘れた幼な友達との遊び、数回にわたる引っ越し、そしてヰタ・セクスアリスまでを、のびやかだった渋谷の変遷を背景に旧友との再会をまじえて、回想する。本書は懐しき大正年間の東京案内でもある。
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