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「ぼくはこの病院を捨てるよ。何もかも全部捨てる。オレはマキと北海道へ逃げる。決心したんだ」。「よく見ておきなさい。あれが恋という病気よ」。人望ある52歳の病院長が陥った恋の病。若い恋人に振り回され、次第に常軌を逸していく姿が、秘書の朝子の目を通して描かれる表題作ほか、旧家の一人娘の意外な男遍歴が明かされる「離れの人」、妻をなくした謹厳実直な男が家政婦に生活を乱される悲喜劇「沢村校長の晩年」他、円熟の傑作ユーモア小説五篇。
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Posted by ブクログ
4月16日~20日 人望ある52歳の病院長が陥った恋の病。若い恋人に振り回され、次第に常軌を逸していく姿が秘書の朝子の目を通して描かれる表題作ほか、旧家の一人娘の意外な男性遍歴が明かされる「離れの人」、妻を亡くした謹厳実直な男が家政婦に生活を乱される悲喜劇「沢村校長の晩年」等、円熟の傑作ユーモア小...続きを読む説五編。
佐藤愛子さんが自身の心霊体験を作品に生かして書かれた小説だということを踏まえて読めば、とてもよく理解できる作品である。 佐藤愛子さんのルーツの中に東北地方に縁があることをにおわせる津軽弁で書かれた作品
五編の短編集。 佐藤愛子さんの小説は初めて読んだけど、ユーモアと毒気と哀しみが相まって、独特の世界観を作り上げている感じがした。それは全編に共通していた。 表題作は52歳の院長の恋を20歳の秘書(院長の恋の相手ではない)が客観的に見て語る作風で、綺麗な妻と可愛い娘がいてお金もたくさん持っていて恵ま...続きを読むれた暮らしをしている院長が、端から見るとどこが魅力なのかわからないバツイチ女に惹かれて堕ちていく様が描かれている。 それがまた女性特有の視点で毒気たっぷりに描かれていて、不思議な哀愁もある。 頭ではわかっていても止められない恋心。イコール病気。恋をしたことがある人ならば、思い当たって少し胸が痛むかも。そういうのはきっと、状況も年齢も関係ない。 少しオカルトちっくな話もあり、それも何か実際にありそうでけっこう怖い。現実と地続きのオカルトな世界。 幽霊話であり、寓話の空気を含んだ民話のようであり。 「ケヤグの秋」は津軽が舞台で津軽弁がふんだんに使われていて、私は理解出来たけど津軽以外の人はどうなんだろう?と思ったりした。笑 大阪出身の佐藤さんがどうしてここまで津軽弁に明るいのかも不思議。 男同士の悲喜こもごも。やっぱり哀愁がある。 充実した内容でシンプルに面白かった。 大正生まれの作家さんなのでたぶんけっこう古い作もあるのだろうけど、面白い小説に時代は関係ないな、と思った。
品の無さでいうと、えっ、それ書いちゃうの?というところまで描かれているのがなぜか嫌味には感じないのがちょっと不思議。一文一文に力強さを感じる。
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