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北町奉行所・同心の中根興三郎の生きがいは朝顔栽培、いつか黄色い朝顔を咲かせるのが夢だ。仕事は閑職、奉行所員の名簿作成係である。時は安政、井伊大老と水戸徳川家の確執や、尊王攘夷の機運が高まっているが、そんなことはこの“朝顔同心”には無縁、長身の身体を縮めるように暮らしている。だが江戸朝顔界の重鎮、鍋島直孝を通じて、宗観と呼ばれる壮年の武家と知り合ったことから、興三郎は思いも寄らぬ形で政情に巻き込まれてゆく。松本清張賞受賞作。
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朝顔に関わって
今年、ヒョンなことから朝顔に関わることになった。 その朝顔の用事で水戸に向かった日 たまたま乗ったタクシーの運転手さんからこの本の話を聞いた。 ページをくるのが幸せな時間だった。
Posted by ブクログ
幕末期江戸の朝顔ブーム。 品評会があったり、必死に交配を繰り返したり もしかすると今この世にある彩どりの朝顔は そんなブームがあったが故に発展していったのかもな〜とふと思った。 朝顔だけで、どこまでも話が膨らむ上に とても面白いしちゃんと歴史背景描かれてて フィクションだと分かっていても、あちらこち...続きを読むらに織り交ぜてあって 立場行く末違えど、友として苦しんでる主人公のセリフに泣いた。 一期一会、一朝。夢。
2年以上積ん読だったけどようやく。勧めていただいたのだけど、期せずして幕末のお話だった。ただただ朝顔を追究したい男の情熱を描きつつ、時流に翻弄される周りの人物の覚悟を描いていて、どちらもとても好きでした。
変化アサガオのブームは、第1次が江戸時代の文化文政(1804-1830)。その時期に浮世絵や歌舞伎が始まる。第2次が江戸時代末期(嘉永安政期:1850頃)で、交配の技術を持っていた。第3次が明治中期と言われる。 本書は、第2次ブームの時で、主人公は北町奉行所・同心の中根興三郎。興三郎は6尺あまりの長...続きを読む身であるが武術はほとんどダメで、3男坊。学問の道に行くように言われて、アサガオに興味を持っていた。ところが、2人の兄が死んでしまい、やむなく同心になった。うだつのあがらない仕事をしていたが、アサガオの話になると夢中になる。幼馴染の里美が飯屋で働いているのを見たことで話が展開して行く。里恵が不幸な人生をおくっていて、借金十両あり、興三郎は、自分の育種したアサガオ「柳葉采咲撫子アサガオ」をあげることで、里恵は窮地を脱するのだった。 時代的な背景が、きちんと押さえられていて、植木職人、成田屋留次郎が関わってくる。成田屋留次郎は変化アサガオ図譜の『三都一朝』の著者であり、アサガオの品評会を主催していた。成田屋留次郎は、柿色のアサガオ団十郎の育成者として有名であった。 興三郎は、『あさかほ叢』の「大輪極黄采」に惹きつけられて、黄色いアサガオを育種したいと思っていた。アサガオの花いろは、青から赤そして白はあるが黄色の色素がない。 留次郎は「黄色は夢の花ですぜ。咲かせたいと思っても咲かせられる花じゃないんですよ。懸命に育てて、アサガオが認めてくれたら、その時初めて咲いてくれる。一生に一度だけ、アサガオがくれる褒美の花」という。留次郎も黄色のアサガオは咲かせたことがないが、『三都一朝』にはボタン咲きの黄色いアサガオが描かれている。 そのころのアサガオで有名な育種家は、杏葉館と言われ、五千石の旗本、元北町奉行所の鍋島直孝だった。その鍋島直孝に興三郎は呼ばれて、茶人宗観に引き合わされて、大輪のアサガオを作って欲しいと依頼される。実は、宗観は井伊直弼だった。興三郎は、井伊直弼の暗殺事件に巻き込まれて行くのだが、その事実は知らないままだった。興三郎は、大輪の黄色アサガオを作ることに専念する。 なかなかできなかったが、鍋島からもらった「州浜葉」と「とんぼ葉」を掛け合わせて、黄色大輪の『一期一会』作出するのだった。 物語は、井伊直弼の暗殺を巡っての事件に巻き込まれる中根與三郎であるが、アサガオの育種に専念する。アサガオ同心とも呼ばれている。 大輪黄色アサガオを題材にして、物語を構成するチカラは並々でない。
いわゆるチャンバラものとは違って 同心でありながら、朝顔栽培が趣味という一風変わった興三郎のキャラが新鮮。でも朝顔栽培が縁で人脈ができていき、 あの桜田門外の変へとつながっていく。 里恵さんとは結ばれてほしかったなあ。。。
同心の中根興三郎は朝顔栽培を唯一の生き甲斐とする。 朝顔を通じて宗観と呼ばれる武家と知り合った事から興三郎は幕末という時代の波に飲み込まれていく。 自らの信念に基づき生きていく男達に涙しました。
幕末が舞台の時代小説ってあんまり読んでなかったなぁ。 朝顔の栽培がこんなに人を惹きつけていたとは。
202112/これがデビュー作とは!消極的でパッとしないタイプだけど、朝顔のことなら周囲がドン引きする程饒舌かつ一方的にマシンガントークしちゃう朝顔オタクな北町奉行同心・中根興三郎が主人公。尊王攘夷、安政の大獄など史実をベースに、政情に係わってしまう主人公、朝顔をうまいこと絡めつつ物語が進んでいく。...続きを読む個性豊かな登場人物達も魅力的で、特に主人公の下男で還暦間近の藤吉が良い。この物語での井伊直弼の描写も面白い。多数の人物や出来事が盛り込まれてるけど読みやすく、混乱することなくページを進められた。同作者の『いろあわせ』の主人公・摺師の安次郎がちらっと登場しててニヤリ。ラストの描写もグッときた。梶よう子の植物モノはどれも面白いなー。
朝顔の交雑の方に気がいってしまって、政情のトラブルが邪魔な気持ちで読んでしまう(笑) それぐらい主人公が朝顔に対しての気持ちが深かったけれど、後半は朝顔の陰が薄暗いなってしまいました。 それにしても、出てくる人皆隠しごとして出てくる話ですわ。
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