無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで201万冊以上配信中!
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
「こういうの、こういうのが小説だよなぁ」
本を閉じ、思わずそんな言葉が口をついて出た。
私はこういう小説が、たまらなく大好きだ。
「そうそう、小説って本来、こんなものだったよな」と、思い出させてもらった。
昨今、時代を反映した、社会的メッセージ性の込められた小説がウケるけれども、もうそんなのはいいんだよ。
『なんだか少し頭がよくなったような気がする小説』、そんなのはもうよくて。
普段の仕事の中で、殺伐とした労働の中で、現実というものをしっかり体感している。私たちはすでに十分すぎるほど「現実」と対峙している。
時代を切り取った作品を読めば、そりゃ当然「現実」を知ることができる。でも私が小説に求めるのは、「現実」ではなく、「現実逃避」なのだ。作者の紡ぐ豊かな空想の世界に連れて行ってほしい。夢を見させてほしい――ただ、それだけなのだ。
ノスタルジー、ほんのり漂うホラーの気配、純真な子供の目線、集合住宅の空気感、クオリティの高い短編が紡ぐ、心温まるストーリー……。朱川作品を構成する要素のすべてが、この一冊に凝縮されている。
ポケットに忍ばせておきたくなるような短編集、私にとってご褒美のような一冊だった。
Posted by ブクログ
「花まんま」が面白かったので、朱川湊人をもう一冊読んでみた。これも短編集で、前半は花まんまと同じように少年少女の不思議な物語が二篇続く。この人は子どもたちの話しか書かないのかな?と思いながら読んでいたけど、その後の作品からは大人も登場してくる。
どの話もなんともノスタルジックで、幼さゆえの悲しさや歯痒さがうまく描かれていて、もの悲しさの中にファンタジーの要素が組み込まれている。そのバランスがとても上手くて、不思議と引き込まれる力があり、読後にも余韻が残る物語ばかりだった。これが朱川湊人の魅力なんだと思う。
それにしても、幼い頃に両親のどちらかが家を去ったのかな?と考えずにはいられない設定が多くて、読者にそんな推察までさせてしまうんだから、作家というのは業が深いよね。
作中で何度か「人生の黄金期」という言葉が出てくるんだけど、これはあくまで主人公たちのセリフなのか、それとも朱川湊人自身にもそう思える時期があるのか、そんなことも考えながら読んでいた。俺自身は、あの頃が黄金期だったとはあまり思わない。でも、そういう感覚を持っている人だから、こんな物語が編めるのかもしれないなと思った。面白かった。
Posted by ブクログ
どんなに幸せの絶頂にいても、先のことはわからないものだ。
一瞬で奪われてしまう人の命とは、なんて儚いものなんだろう。
それでも、幸せな記憶はずっと心に残っていく。
会ったことがない父親に、公園で会ったとうれしそうに話す娘。
自分もその場所にいたはずなのに、何も覚えていないことが切なくて哀しくて涙ぐむ母親。
この世の常識でははかれないことだってある。
こんな奇跡ならあってもいいじゃないか、と信じたくなってくる。
幸せに過ごした時間は戻らないけれど、大切に思える人がいた…その思いはきっと消えることはない。
ちょっと不思議な、だけどとてもあたたかで切ない物語。
おだやかな物語は、いつだって心を優しい気持ちで満たしてくれる。
Posted by ブクログ
「カンカン軒怪異譚」という話が、一番心に響いた。
ハラ減ると、ロクなこと考えない。
おばちゃんの考え方に、確かにその通りだなと思った。
どんなにやりたいことや、諦めたくないことがあっても、お腹が空いたままだと、なんだかどうでもよくなってしまうというような、経験をしたことがある人は、結構いるんじゃないだろうか・・・。
でも、お腹がいっぱいになってみると、もう少し頑張ろう。生きてて良かったと思うのだから、不思議なものだ。
肉や魚だけじゃなく、野菜、山菜、貝・・・。
どんな食べ物にも命があって、その命をもらうことで、生かされている。
どんな悩みも抱えている時は、深刻に考えてしまうものだけど、いつか、笑い話に、いい経験になったと思える時が来るはず。
悩みに覆い尽くされそうになってしまった時は、食事をしよう。そこから、全てはやり直せる。そう考えさせられた小説でした。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。