あらすじ
「ほんとうにうつくしいものは、目に見えないものかもしれない」。美しい容姿からは想像もつかないほどガサツな叔母の意外な秘密について描く表題作、雨の日だけ他人の心の声が聞こえる少女を描く「雨つぶ通信」、日暮里の奇妙な中華料理屋を巡る奇譚「カンカン軒怪異譚」など、『花まんま』『かたみ歌』の著者が、昭和の東京下町を舞台に紡ぐ「赦し」と「再生」の七つの物語。
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Posted by ブクログ
昭和ファンタジーホラー。そんな勝手なジャンル分けをしております。どれも昭和ノスタルジア満載で、不思議な幽霊譚ばかりです。怖い話はありません。ほんのり悲しくて明るくて、心のひだにちゅぴちゅぴと温かい液体を垂らして貰っているような心地よさがあります。好きだな〜この作家さん。
Posted by ブクログ
異論があること大前提、あくまで俺の好みとしてなんだけど、朱川作品にホラーは求めていない。
夕暮れ時の赤い空、地面には曼殊沙華、泣きながら空を飛ぶカラス、日暮れまで15分とない時間なのに家に帰る道を忘れ迷子…サーカスの子飼いにさらわれそうな不安感
この程度の怖さがあれば、朱川ワールドは十分に広がってくれるはず。ほんまにTみたいな展開や、誘拐犯がででくる必要はないのだ。
この作品集は、ホラー感を極力排して、ノスタルジーとファンタジー感をしっかり味合わせてくれるのがよい。「夕暮れ時は寂しそう、とっても一人じゃいられない」こそが朱川小説の真骨頂だと、俺は勝手に思っている。
Posted by ブクログ
どんなに幸せの絶頂にいても、先のことはわからないものだ。
一瞬で奪われてしまう人の命とは、なんて儚いものなんだろう。
それでも、幸せな記憶はずっと心に残っていく。
会ったことがない父親に、公園で会ったとうれしそうに話す娘。
自分もその場所にいたはずなのに、何も覚えていないことが切なくて哀しくて涙ぐむ母親。
この世の常識でははかれないことだってある。
こんな奇跡ならあってもいいじゃないか、と信じたくなってくる。
幸せに過ごした時間は戻らないけれど、大切に思える人がいた…その思いはきっと消えることはない。
ちょっと不思議な、だけどとてもあたたかで切ない物語。
おだやかな物語は、いつだって心を優しい気持ちで満たしてくれる。
Posted by ブクログ
心が温かくなるような、ちょっと切ない不思議な話を集めた短編集。ファンタジーではあるけど、このくらいの不思議なら起こるかもしれないと思えるので、仰々しくなく素直に受け取りやすいのかも。雨つぶ通信、カンカン軒怪異譚、花散ったあとが面白かった。でも他の話も面白かった。
Posted by ブクログ
全編ハズレ無しの短編集。読後感はとても良く優しい気持ちにさせてくれる。同じ時代背景では無く大阪万博の頃やバブル期等バラバラではあるが特に違和感は無い。『わくらば日記』の様なちょっと不思議な能力を持った人や不幸な生い立ちを持った子、グレて道を外しかけた子、魂持ったフライパンを煽る中華屋のおばちゃん等出てくるキャラもそれぞれ立っていて面白い。別れがテーマなのだが無償の愛情を分けてくれる人と出会う事により再生への1歩を踏み出せる。どれもラストはホロリとくる秀逸な作品ばかり。これはオススメだ。
Posted by ブクログ
「ツカサもチィちゃんも、よう覚えときや。この世にはな、死ぬほどのことは何もあらへん。辛いのも苦しいのも、時間がたったら忘れられるもんやで。だから何があっても、自分で命を捨てるようなことをしたらアカンのや。」
「弘美ちゃん・・・正しいと思ったことをする時は、変にためらっちゃダメだよ。人の命に関わるような時は、なおさらね」
きっと世の中には、自ら進んでのら犬になった犬はいない。ほんのわずかでも、愛されていること-自分が誰かに必要とされていることが実感できれば、踏み外しかけた道を戻ることもできるのではないかと思う。
Posted by ブクログ
朱川さん、大好き。でもどれもノスタルジーあふれる内容で、ちょっと寂しくなった。表題作、「あした咲く蕾」、おばさん、本当手加減下手だったんだなぁ。猫又になっちゃったじゃないの・・・。
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「カンカン軒怪異譚」という話が、一番心に響いた。
ハラ減ると、ロクなこと考えない。
おばちゃんの考え方に、確かにその通りだなと思った。
どんなにやりたいことや、諦めたくないことがあっても、お腹が空いたままだと、なんだかどうでもよくなってしまうというような、経験をしたことがある人は、結構いるんじゃないだろうか・・・。
でも、お腹がいっぱいになってみると、もう少し頑張ろう。生きてて良かったと思うのだから、不思議なものだ。
肉や魚だけじゃなく、野菜、山菜、貝・・・。
どんな食べ物にも命があって、その命をもらうことで、生かされている。
どんな悩みも抱えている時は、深刻に考えてしまうものだけど、いつか、笑い話に、いい経験になったと思える時が来るはず。
悩みに覆い尽くされそうになってしまった時は、食事をしよう。そこから、全てはやり直せる。そう考えさせられた小説でした。
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阿刀田高の後継者候補かなと思う。
オチがあって、ブラックかホラーの短編が好きですけど、
本書は暖かい話が多かったです。
「雨つぶ通信」「虹とのら犬」が特に良くて涙が出そうでした。
この作者の本をもっと読もうと思う。
Posted by ブクログ
昭和の東京の下町を舞台にした、ちょっと不思議でいい話七編。
朱川さんは、こういうシチュエーションの物語を作ると本当に巧い。浪花節にならず、お涙頂戴でもないのに、ホロッときてクスッとくる。特に今回の作品はラストのスパイスに味わいがある。
お気に入りは表題作、「カンカン軒怪異譚」「花、散ったあと」。
Posted by ブクログ
昭和の東京下町が舞台の少し不思議な短編集。「湯呑の月」でやるせない気分になった。まぁ、いいとこどりされてるような気分になるよね……。
そういえば、『わくらば日記』って続きまだかな。2冊目まで読んだけど。
Posted by ブクログ
少し不思議に包まれた物語でした。
電車内で読み始めてしまったのですが、
表題作でおばさんを思う男の子と
お姉さんの気持ちに重なってしまい、
半泣我きで我慢するはめになりました。
美味しい元気のでるチャーハンを食べたいし、
虹の香りも、嗅いでみたいです。
Posted by ブクログ
夢中になって読みました
時代は昭和、語り部のそれぞれの主人公はほぼわたしと同年代
住んでいる場所は違えども、情景は手に取るようにわかるのも
この小説にのめり込んだひとつの理由かもしれないです
それぞれの短編の中の少し不思議な話が違和感なく
人の心のさびしさやむなしさ、やさしさが淡々と流れている感じ
朱川さんの小説は「かたみ歌」以来でしたが
この小説の方がとっても好きです
短編それぞれが、いとおしくって大切に思われます
いい本読んだなぁ
Posted by ブクログ
柔らかく、暖かく、そこにほんの少しのホラー。そして"昭和"のノスタルジー。
朱川さんという事で分類的にはホラーにしましたが、ホラーと言うより"不思議"と言うレベルです。
暗さを感じさせる短編は少なく、むしろ明るく軽やかです。別離や悲しみもあるのですが、全体に透明感があり、希望がぶら下がって居るからなのでしょうが。
表題作「あした咲く蕾」の美知恵叔母、「カンカン軒怪異譚」の女性料理人など特異なキャラも面白く。
なにかもう一味欲しい気もするのですが。。。
Posted by ブクログ
『大阪万博』『仮面の忍者赤影』『公団住宅』『ワイルド7』『カルメン・マキ』そういった 時代背景に7つの短編が収録されている。
これらの物語には、わずかなものでもよく見ることができる、かすかな声でもよく聞くことができる、小さな幸せを、より感じることのできる心を持っている。そういった人たちが生活している。
読み終わったとき、温かな気持ちになる。
Posted by ブクログ
命を分け与える力を持つ女性.雨の日だけ,人の想いが聞こえる少女.昭和の下町を舞台に,ちょっとだけ不思議で温かい7つの物語.朱川作品は初かも.とても読みやすく,面白かったです.一番好きなお話は「カンカン軒怪奇譚」.鍋を振る陽気な女主人がとても魅力的でした♪