新潮文庫作品一覧

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  • 山の音(新潮文庫)
    3.8
    尾形信吾、六十二歳。近頃は物忘れや体力の低下により、迫りくる老いをひしひしと感じている。そんな信吾の心の支えは、一緒に暮らす息子の嫁、菊子だった。優しい菊子は、信吾がかつて恋をした女性によく似ていた、だが、息子は外に女がおり、さらに嫁に行った娘は二人の孫を連れ実家に帰ってきて……。家族のありようを父親の視点から描き、「戦後日本文学の最高峰」と評された傑作長編。(解説・山本健吉、辻原登)
  • ヤクザの子(新潮文庫)
    3.8
    DV、ドラッグ、差別、貧困――暴力団の家庭には社会のあらゆる問題が詰まっている。両親は朝から注射を打ちセックスに耽り、クスリが切れた瞬間に血だらけになるまで殴り合う。学校では極道家庭と白い目で見られ孤立し、出自が影響して就職は不可能に近い。ヤクザの血を継ぐ人間は表の世界で生きられないのか。14人の「ヤクザの子」が証言する哀しい半生。「ヤクザ・チルドレン」改題。
  • プリンシパル(新潮文庫)
    3.8
    1巻1,155円 (税込)
    非情と外道がこの家の規律だった。1945年、東京。関東最大級の暴力組織、水嶽(みたけ)本家の一人娘・綾女(あやめ)は、父の訃報に呼び戻され「組長代行」となることを余儀なくされた。戦後混乱期を牛耳るヤクザたちの熾烈な抗争、利権を貪るGHQ、それらを利用しようとする大物議員。流血も硝煙も権力の策謀も懼れぬ究極の「悪女」と化した綾女が、最期に目にするものは。一気読み必至の超弩級ピカレスク・ロマン。(解説・末國善己)
  • 沈むフランシス(新潮文庫)
    3.8
    都会での仕事を三十五歳で辞め、北海道の小さな村で郵便配達をする女。川のほとりの木造家屋で世界中の「音」を集めながら暮らす男。偶然出会った両者は、急速に惹かれあっていく。からだでふれあうことでしか感じない安息と畏れ、そして不意に湧きあがる不穏な気配。その関係が危機を迎えた嵐の夜、決して若くはないふたりが選択した未来とは。深まりゆく愛と鮮やかな希望の光を描く傑作。(解説・山田真歩)
  • ヴェネツィア便り(新潮文庫)
    3.8
    1巻693円 (税込)
    「もし、あなたがこれを読む時、ヴェネツィアがもうないなら、これは、水の底から届いた手紙ということになります」「ヴェネツィアは、今、輝く波に囲まれ、わたしの目の前にあります。沈んではいません」――三十年の時を越えて交わされる〈わたし〉と若い〈あなた〉の「ヴェネツィア便り」。なぜ手紙は書かれたのか、それはどんな意味を持つのか。〈時と人〉を描く懐かしくも色鮮やかな15の短篇。(解説・荻野アンナ)
  • 紫姫の国(上)(新潮文庫)
    完結
    3.8
    俺はこんなにも、死に取り巻かれている――。酒浸りの父親が逝き、商いの船旅に出た青年ソナンは奴隷として売られそうになるも、寸前で海へと飛び込む。激しい波は一緒に逃げた親友の命を奪うが、ソナンは絶壁の岩棚に投げ出された。水も食料もなく死と隣り合わせのその地に、突然ひとりの少女が現れ……。心に陰なき男と、国を背負う女。過酷なふたつの運命が交わる圧巻のファンタジー長編。
  • 財布は踊る(新潮文庫)
    3.8
    「今よりもう少し、お金がほしい」専業主婦として穏やかに暮らす葉月みづほ。彼女はある夢を実現するために、生活費を切り詰め、人知れず毎月二万円を貯金していた。努力が実り、夢を実現した喜びも束の間、夫に二百万円以上の借金があることが発覚する。株での失敗、リボ払いの罠。日常に潜むお金の落とし穴からどう逃げる? 切実な想いと未来への希望を描く「お金のつくりかた」超実践小説。(解説・朱野帰子)
  • 飢餓俳優 菅原文太伝(新潮文庫)
    3.8
    菅原文太の人生には常に暗い影がつきまとう。幼少期に母親が出奔して家庭崩壊。大学は除籍。俳優業は脇役ばかり。じりじりするような焦りのなか、やっと掴んだ『仁義なき戦い』で不動の地位を築くも、独断でシリーズを打ち切ってしまう。誰も信用せず、盟友と決別し、約束された成功を拒んだ男が生涯をかけて追い求めたものとは。名優の内面に迫る傑作評伝。『仁義なき戦い 菅原文太伝』改題。(解説・杉田成道)
  • 河童・或阿呆の一生(新潮文庫)
    3.8
    芥川最晩年の諸作は死を覚悟し、予感しつつ書かれた病的な精神の風景画であり、芸術的完成への欲求と人を戦慄させる鬼気が漲っている。出産、恋愛、芸術、宗教など、自らの最も痛切な問題を珍しく饒舌に語る「河童」、自己の生涯の事件と心情を印象的に綴る「或阿呆の一生」、人生の暗澹さを描いて憂鬱な気魄に満ちた「玄鶴山房」、激しい強迫観念と神経の戦慄に満ちた「歯車」など6編。(解説・吉田精一)
  • 坑夫(新潮文庫)
    3.8
    恋愛事件のために家を出奔した主人公は、周旋屋に誘われるまま坑夫になる決心をし、赤毛布や小僧の飛び入りする奇妙な道中を続けた末銅山に辿り着く。飯場にひとり放り出された彼は異様な風体の坑夫たちに嚇かされたり嘲弄されたりしながらも、地獄の坑内深く降りて行く……。漱石の許を訪れた未知の青年の告白をもとに、小説らしい構成を意識的に排して描いたルポルタージュ的異色作。明治41年、『虞美人草』に次いで「朝日新聞」に連載された。(解説・三好行雄)
  • 道草(新潮文庫)
    3.8
    海外留学から帰って大学の教師になった健三は、長い時間をかけて完成する目的で一大著作に取りかかっている。その彼の前に、十五、六年前に縁が切れたはずの養父島田が現われ、金をせびる。養父ばかりか、姉や兄、事業に失敗した妻お住の父までが、健三にまつわりつき、金銭問題で悩ませる。その上、夫婦はお互いを理解できずに暮している毎日。近代知識人の苦悩を描く漱石の自伝的小説。(解説・柄谷行人)
  • 草枕(新潮文庫)
    3.8
    住みにくい人の世を芸術の力で打破できぬかと思案する青年画家。あるとき温泉場の出戻り娘・那美に惹かれ、絵に描きたいと思うが何か物足りない。やがて彼が見つけた「何か」とは――。豊かな語彙と達意の文章で芸術美の尊さを描く漱石初期の代表作。(「漱石の文学」江藤淳、「『草枕』について」柄谷行人)
  • カフカ断片集―海辺の貝殻のようにうつろで、ひと足でふみつぶされそうだ―(新潮文庫)
    3.8
    カフカは完成した作品の他に、手記やノート等に多くの断片を残した。その短く、未完成な小説のかけらは人々を魅了し、断片こそがカフカだという評価もあるほど。そこに記されたなぜか笑える絶望的な感情、卓越した語彙力で発せられるネガティブな嘆き、不条理で不可解な物語、そして息をのむほど美しい言葉。誰よりも悲観的で人間らしく生きたカフカが贈る極上の言葉たち。完全新訳で登場。(解説・頭木弘樹)
  • 最後に「ありがとう」と言えたなら(新潮文庫)
    3.8
    亡くなった夫に頭を撫でて欲しいと願った妻。亡き母の髪を泣きながら洗った美容師になりたての娘。お気に入りの洋服を着て何度も抱っこされた、小さな体の重さ……。故人を棺へと移す納棺式にひとつとして同じものはない。悲しく辛い時間。しかし、生と死のはざまのごく限られた時間に、家族は絆を結び直していく。4000人以上のお別れをお手伝いしてきたベテラン納棺師が出会った、家族の物語。
  • 友達・棒になった男(新潮文庫)
    3.8
    平凡な男の部屋に闖入して来た9人の家族。善意に満ちた笑顔で隣人愛を唱え続ける彼らの真意とは? どす黒い笑いの中から他者との関係を暴き出す傑作「友達」〈改訂版〉(谷崎潤一郎賞受賞)。日常に潜む底知れぬ裂け目を三つの奇妙なエピソードで構成した「棒になった男」。激動の幕末を生きた人物の歴史的評価に新たな光を当てた「榎本武揚」。斬新な感性で“現代”を鋭く照射する、著者の代表的戯曲3編を収録。(解説・中野孝次)
  • 笑う月(新潮文庫)
    3.8
    笑う月が追いかけてくる。直径1メートル半ほどの、オレンジ色の満月が、ただふわふわと追いかけてくる。夢のなかで周期的に訪れるこの笑う月は、ぼくにとって恐怖の極限のイメージなのだ――。交錯するユーモアとイロニー、鋭い洞察。夢という〈意識下でつづっている創作ノート〉は、安部文学生成の秘密を明かしてくれる。表題作ほか著者が生け捕りにした夢のスナップショット全17編。
  • 箱男(新潮文庫)
    3.8
    ダンボール箱を頭からすっぽりとかぶり、都市を彷徨する箱男は、覗き窓から何を見つめるのだろう。一切の帰属を捨て去り、存在証明を放棄することで彼が求め、そして得たものは? 贋箱男との錯綜した関係、看護婦との絶望的な愛。輝かしいイメージの連鎖と目まぐるしく転換する場面(シーン)。読者を幻惑する幾つものトリックを仕掛けながら記述されてゆく、実験的精神溢れる書下ろし長編。(解説・平岡篤頼)
  • 他人の顔(新潮文庫)
    3.8
    液体空気の爆発で受けた顔一面の蛭のようなケロイド瘢痕によって自分の顔を喪失してしまった男……失われた妻の愛をとりもどすために“他人の顔”をプラスチック製の仮面に仕立てて、妻を誘惑する男の自己回復のあがき……。特異な着想の中に執拗なまでに精緻な科学的記載をも交えて、“顔”というものに関わって生きている人間という存在の不安定さ、あいまいさを描く長編。(解説・大江健三郎)
  • 飛ぶ男(新潮文庫)
    3.8
    ある夏の朝。時速2、3キロで滑空する物体がいた。《飛ぶ男》の出現である。目撃者は3人。暴力団の男、男性不信の女、とある中学教師……。突如発射された2発の銃弾は、飛ぶ男と中学教師を強く結び付け、奇妙な部屋へと女を誘う。世界文学の最先端として存在し続けた作家が、最期に創造した不条理な世界とは。死後フロッピーディスクに遺されていた表題作のほか「さまざまな父」を収録。(解説・福岡伸一)
  • 風神の手(新潮文庫)
    3.8
    1巻1,045円 (税込)
    あの日、風が吹かなければ、私は生まれてこなかった――。藤下歩実は母の奈津実とともに遺影専門の写真館・鏡影館を訪れた。病を抱えた母の撮影のために。そこに飾られた一枚の写真を目にして、母はひどく動揺した様子を見せる。小学五年生の男子二人組、入院中の高齢女性。川沿いの町に暮らす人々が発した幾重もの嘘が、思いもよらぬ場所へと流れ込み……。奇跡の本当の意味を知るミステリ。(解説・香山二三郎)
  • 雷神(新潮文庫)
    3.8
    あの日、雷が落ちなければ、罪を犯すことはなかった――。埼玉で小料理屋を営む藤原幸人(ゆきひと)を襲った脅迫電話。電話の主が店に現れた翌日、娘の夕見(ゆみ)から遠出の提案を受ける。新潟県羽田上(はたがみ)村――幸人と姉・亜沙実の故郷であり、痛ましい記憶を封じ込めた地だった。母の急死と村の有力者の毒殺事件。幸人らが村を訪れると、凄惨な過去が目を醒まし……。最後の一行まで最上級の驚愕が続くミステリ。(解説・香山二三郎)
  • 出版禁止 ろろるの村滞在記(新潮文庫)
    3.8
    奈良県辺境のある奥深い山間部に、村はあった。心に深い傷を負い、積年の恨みを抱えた人々が最後に辿りつく「すくいの村」。だがそこには呪いで人を殺すという根強い噂が。二〇〇八年、近隣の廃村で陰惨な死体遺棄事件が発生。遺体は山奥の湖畔で、切断され樹木に釘で打ち付けられていた……。発禁となった手記、エグすぎる真相、二度読み必至の衝撃作! 『出版禁止 いやしの村滞在記』改題。
  • 近親殺人―家族が家族を殺すとき―(新潮文庫)
    3.8
    日本の殺人事件の半数が、家族を主とした親族間で起きている。「まじ消えてほしいわ」と罵倒し、同居していた病弱な母親を放置、餓死させた姉妹。夫の愛情を独占すると憎しみをつのらせ、我が子をマンションの高層階から突き落とした母親。人はどんな理由から最も大切な存在であった家族を殺すのか。事件が起こる家庭とそうでない家庭とでは何が違うのか。7つの事件が炙り出す、家族の真実。
  • 冬の日誌/内面からの報告書(新潮文庫)
    3.8
    君がまだ3歳か4歳だった頃、君と地面はもっと近かった。君の父親がついた小さな嘘。母親が打った特大のホームラン。心揺さぶられた映画。性の目覚め。学生運動。パリでの暮らし。妻との出会い。外見はまるで変わっても、君はまだかつての君なのだ――。人生の冬にさしかかった著者が、身体と精神の古層を掘り起こし、自らに、あるいは読者に語りかけるように綴った、温かで幻想的な回想録。
  • 大絵画展(新潮文庫)
    3.8
    バブル期に180億円で落札されたゴッホの『医師ガシェの肖像』。だがその十数年後、この絵は厳重に警備された倉庫の中で、モネやルノワールなど134枚の世界的名画とともに眠っていた。同じ頃、荘介と茜は投資詐欺に遭い、膨大な借金を背負う。追い込まれた二人は絵画強奪を持ちかけられ……。息つく暇ない騙し合いの末、最後に笑ったのは!? 痛快な大どんでん返しが待つ傑作美術ミステリー。 ※電子版には、カラー口絵はつきません。(解説・村上貴史)
  • 旅のつばくろ(新潮文庫) 電子オリジナル版
    3.8
    つばめのように自由に、気ままにこの日本を歩いてみたい――。世界を歩き尽くしてきた著者の、はじめての旅は16歳の時、行き先は東北だった。それから歳も経験も重ねた今、同じ土地を歩き、変わりゆくこの国のかたちを見て何を思ったか。本州「北の端」龍飛崎、太宰治の生家を訪ねた五所川原、宮沢賢治の足跡を追った花巻、美景広がる軽井沢や兼六園などを歩いて綴った、追憶の旅エッセイ。〈電子オリジナル版〉は沢木耕太郎撮影の写真が収録されています。
  • この気持ちもいつか忘れる(新潮文庫)
    3.8
    毎日が退屈だ。楽しいことなんて何もない。授業を受けるだけの日日を過ごす男子高校生のカヤは、16歳の誕生日を前に謎の少女チカと出会う。美しい目を光らせ不思議なことを話すチカ。彼女は異世界の住人らしいのだが、二つの世界では奇妙なシンクロが起きていた。そして、チカとの出会いを重ねるうちカヤの心にはある変化が起き……ひりつく思いと切なさに胸を締め付けられる傑作恋愛長編。(解説・菅波栄純)
  • あつあつを召し上がれ(新潮文庫)
    3.8
    1巻473円 (税込)
    この味を忘れることは、決してないだろう――。10年以上つきあった恋人との、能登へのお別れ旅行で味わった最高の朝食。幼い頃に、今は亡き母から伝授された、おいしいおみそ汁のつくり方。何年か前に家族みんなで並んでやっとありついた、天然氷でつくった富士山みたいなかき氷……。ときにはほろ苦く、ときには甘く優しく、身も心も温めてくれる、食卓をめぐる7つの感動の物語。(解説・松田哲夫)
  • 「線」の思考―鉄道と宗教と天皇と―(新潮文庫)
    3.8
    なぜ小田急江ノ島線沿線にはカトリック教会や女学校が多いのか。JR阪和線沿線にはなぜ古代から現代までの歴代天皇の足跡が豊かに残るのか。JR山陽本線沿線の内陸部に多くの新宗教が発生したのはなぜなのか――。鉄路という「線」に沿い、地を這うように移動し、考えることで、歴史の死角に隠された地下水脈が発掘される。旅情をそそり、知的興奮のとまらない歴史紀行ミステリー・ツアー。(解説・山本理顕)
  • 新任警視(上)(新潮文庫)
    3.8
    1~2巻935~990円 (税込)
    1999年8月。東大法学部卒の25歳新任警視・司馬達(しばとおる)は、とある県警の公安課長を命ぜられた。67人もの部下は年齢も経験も遥かに上。新米指揮官は日々戸惑うばかり。しかも、着任地は日本最大の武装カルト教団「MN」の本拠地だ。はたして来る大晦日までに、教団本部〈教皇庁〉を攻略し、2000年問題に乗じた未曾有の重大テロを封圧(ふうあつ)できるか。国家の安寧を守る公安警察の死闘の日々が始まった。
  • 全部ゆるせたらいいのに(新潮文庫)
    3.8
    夫は毎晩のように泥酔する。一歳の娘がいるのに、なぜ育児にも自分の健康にも無頓着でいられるのだろう。ふと、夫に父の姿が重なり不安で叫びそうになる。酒に溺れ家庭を壊した父だった。夫は、わたしたちはまだ、立ち直れるだろうか――。家族だから愛しく、家族だから苦しい。それでもわたしが夫に、母が父に、父が人生に捨てきれなかった希望。すべての家族に捧ぐ、切実なる長編小説。(解説・桜木紫乃)
  • 日出る国の工場(新潮文庫)
    3.8
    ある時は牛に蹴飛ばされそうになりながら「牧場」を歩き、またある時は新郎新婦になりきって「結婚式場」を取材する。その他、「人体標本工場」「消しゴム工場」「コム・デ・ギャルソン工場」「コンパクト・ディスク工場」に「アデランス工場」と、好奇心で選んだ7つの〈工場〉を、自称ノン・ノンフィクション作家、春樹&水丸コンビが訪ねます。イラストとエッセイでつづる、楽しい〈工場〉訪問記。
  • 月桃夜(新潮文庫)
    3.8
    薩摩の支配下にあった奄美。孤児のフィエクサは、父を失った少女サネンと兄妹の契りを交わす。砂糖作りに従事する奴隷のような身分の二人だが、フィエクサは碁を習い才覚を発揮、サネンは美しい娘に成長する。しかしサネンが薩摩の役人から妾に所望され、過酷な運命が動き出す――。濃厚な花の匂いの中、無慈悲な神に裁かれる禁断の絆。魔術的な魅力に満ちたファンタジーノベル大賞受賞作。(解説・吉田伸子)
  • ビロウな話で恐縮です日記(新潮文庫)
    3.8
    日記。それは自意識との戦いであり、記録に対する人間の執念であり、己の欲望の表明である――。弟に罵られ、母とケンカ、父の独り言を聞き流し、祖母とテレビ談議に花を咲かす。オタク仲間と萌え果たし、海賊になった夢を見る。山積みの仕事は捗らずとも、山盛りの趣味は無限に順調だ。妄想力の申し子にかかれば日常が一大スペクタクルへ! 豪華脚注と最新日記も収録した爆笑エッセイ誕生。(解説・ジェーン・スー)
  • きみはポラリス(新潮文庫)
    3.8
    どうして恋に落ちたとき、人はそれを恋だと分かるのだろう。三角関係、同性愛、片想い、禁断の愛……言葉でいくら定義しても、この地球上にどれひとつとして同じ関係性はない。けれど、人は生まれながらにして、恋を恋だと知っている――。誰かをとても大切に思うとき放たれる、ただひとつの特別な光。カタチに囚われずその光を見出し、感情の宇宙を限りなく広げる、最強の恋愛小説集。(解説・中村うさぎ)
  • 乙女なげやり(新潮文庫)
    3.8
    ひとはいつまで乙女を自称しても許されるものなのか。そんな疑問を胸に抱きつつも、「なげやり」にふさわしいのは、やっぱり乙女。熱愛する漫画の世界に耽溺し、ツボをはずさぬ映画を観ては、気の合う友と妄想世界を語り合う。気の合わない母との確執も弟とのバトルも、日常の愉楽。どんな悩みも爽快に忘れられる「人生相談」も収録して、威勢よく脱力できる、痛快ヘタレ日常エッセイ。
  • 夢のような幸福(新潮文庫)
    3.8
    欲望の発露する瞬間を考察し、友人と特異な「萌えポイント」について語り合う。伝説の名作漫画『愛と誠』再読でその不可解な魅力を再検証。世界の名作『嵐が丘』を読み乙女のテイストを堪能し、女同士でバクチクライブ旅。独自の見所発見の映画評、旅先の古書店の謎を探索。物語の萌芽にも似て脳内妄想はふくらむばかり――小説とはひと味違う濃厚テイストのエッセイをご賞味あれ!(解説・林望)
  • インスマスの影―クトゥルー神話傑作選―(新潮文庫)
    3.8
    ラヴクラフトは不遇のままその生涯を閉じた。だが、彼の創造したクトゥルー神話は没後高く評価され、時代を越えて世界の読者を虜にしている――。頽廃した港町インスマスを訪れた私は、魚類を思わせる人々の容貌の恐るべき秘密を知る(表題作)。漂流船で唯一生き残った男が握りしめていた奇怪な石像とは(「クトゥルーの呼び声」)。英文学者にして小説家、南條竹則が選び抜いた、七篇の傑作小説。
  • クジラアタマの王様(新潮文庫)
    3.8
    記憶の片隅に残る、しかし、覚えていない「夢」。自分は何かと戦っている?――製菓会社の広報部署で働く岸は、商品への異物混入問い合わせを先輩から引き継いだことを皮切りに様々なトラブルに見舞われる。悪意、非難、罵倒。感情をぶつけられ、疲れ果てる岸だったが、とある議員の登場で状況が変わる。そして、そこには思いもよらぬ「繋がり」があり……。伊坂マジック、鮮やかなる新境地。(解説・川原礫)
  • オペラ座の怪人(新潮文庫)
    3.8
    19世紀末、夜ごと流麗な舞台が繰り広げられるパリの花、オペラ座。その地下深くには奇怪な事件を巻き起こす怪人が棲み着いていると噂されていた。怪人は若く可憐なクリスティーヌに夜毎歌の手ほどきを授けていたが、歌姫に想いを寄せる幼馴染の子爵との仲に嫉妬しクリスティーヌを誘拐。結婚を迫り、拒否すればオペラ座を爆破すると脅すのだった……。ホラー小説の先駆けと名高い世紀の名作。(解説・岡田暁生)
  • 短歌と俳句の五十番勝負(新潮文庫)
    3.8
    荒木経惟、北村薫、谷川俊太郎、壇蜜、又吉直樹、中江有里、柳家喬太郎……。作家、詩人はもちろん、写真家、女優、タレント、芸人から、出版社社長、編集者、書店員、牧師、小学生まで。様々な職業の五十人から寄せられたお題で、歌人穂村弘と俳人堀本裕樹が真っ向勝負! 気鋭の二人は多彩なお題をどう詠むか。それぞれの短歌と俳句を自由に読み解く愉しみを綴るエッセイを各編に収録。(解説・壇蜜)
  • 成功は時間が10割(新潮文庫)
    3.8
    人間にとって最も大切なのは、金でも物でもない。時間である――。ベストセラー作家が教える最強の時間論とは。人生の成功者は時間の征服者。時間を買う人と時間を売る人の違い。仕事ができる人は時間を凝縮できる人。すべての道具は時間を生むために作られた。時間は金に交換可能だが、金を時間に変えることはできない……人生が変わる目からウロコの思考法。『百田尚樹の新・相対性理論』改題。
  • エストニア紀行―森の苔・庭の木漏れ日・海の葦―(新潮文庫)
    3.8
    首都に巡らされた不思議な地下通路。昔の生活が残る小さな島の老婆たち。古いホテルの幽霊。海辺の葦原。カヌーで渡る運河の涼やかな風。そして密かに願ったコウノトリとの邂逅は叶うのか……。北ヨーロッパの小国エストニア。長い被支配の歴史を持つこの国を訪れた著者が出会い、感じたものは。祖国への熱情を静かに抱き続ける人々と、彼らが愛する自然をつぶさに見つめた九日間の旅。
  • エンジェル エンジェル エンジェル(新潮文庫)
    3.8
    コウコは、寝たきりに近いおばあちゃんの深夜のトイレ当番を引き受けることで熱帯魚を飼うのを許された。夜、水槽のある部屋で、おばあちゃんは不思議な反応を見せ、少女のような表情でコウコと話をするようになる。ある日、熱帯魚の水槽を見守る二人が目にしたものは――なぜ、こんなむごいことに。コウコの嘆きが、おばあちゃんの胸奥に眠る少女時代の切ない記憶を呼び起こす……。
  • からくりからくさ(新潮文庫)
    3.8
    祖母が遺した古い家に女が四人、私たちは共同生活を始めた。糸を染め、機を織り、庭に生い茂る草が食卓にのる。静かな、けれどたしかな実感に満ちて重ねられてゆく日々。やさしく硬質な結界。だれかが孕む葛藤も、どこかでつながっている四人の思いも、すべてはこの結界と共にある。心を持つ不思議な人形「りかさん」を真ん中にして――。生命の連なりを支える絆を、深く心に伝える物語。
  • 放浪大名 水野勝成―信長、秀吉、家康に仕えた男―(新潮文庫)
    3.8
    1巻737円 (税込)
    十六歳での初陣から七十五歳で参陣した島原の乱まで六十年、戦国の乱世を鑓一本で駆け抜けた水野勝成。刈谷城城主の父から勘当された勝成は、豊臣秀吉から知行を授かるが、諍いを起こし逃亡するはめに。西国を放浪する勝成は、佐々成政、黒田孝高、小西行長ら名だたる武将に仕えるが……。敵から「鬼日向」と恐れられた勝成が、福山藩十万石開祖の名君として称えられるまでを描く歴史小説。(解説・木村行伸)
  • いもうと(新潮文庫)
    3.8
    本当に、一人ぼっちになっちゃった……。大好きな姉・千津子に続いて母も亡くし、父は別の家庭へ。高校を出て就職し、中堅社員として働く実加の前に突然現れたのは、見知らぬ女の子だった! 『ふたり』から11年、27歳の実加は危うい恋に吸い寄せられ、社の一大プロジェクトに奮闘、果ては結婚式場まで探す羽目に! そして、ある夜、懐かしい姉の声が再び――。姉妹小説の金字塔、奇跡の続編。(解説・中江有里)
  • 護衛艦あおぎり艦長 早乙女碧(新潮文庫)
    3.8
    1~2巻649~781円 (税込)
    ようやく、海に戻れる――。デスクワークに頭を悩ませる日々を経て、艦長に抜擢された、早乙女碧二佐。あおぎりはヘリを搭載する本格的な護衛艦で、艦乗りとして胸の高鳴る職場である。だが、いよいよ待ち望んだ初出港、というときに、電測員一名が姿を消したことを知る。このまま出港すべきか、否か。三尉として海上自衛隊に身を置いた著者が、女性指揮官の誇りとリアルを描く。新たなる組織小説の誕生。(解説・村上貴史)
  • 最初の人間(新潮文庫)
    3.8
    戦後最年少でノーベル文学賞を受賞したカミュは1960年、突然の交通事故により46歳で世を去った。友人の運転していた車が引き起こした不可解な事故の現場には愛用の革鞄が残されていた。中からは筆跡も生々しい大学ノート。そこに記されていたのは50年代半ばから構想され、ついに未完に終わった自伝的小説だった――。綿密な原稿の精査によって甦った天才の遺作。補遺、注を付す。
  • 一晩置いたカレーはなぜおいしいのか―食材と料理のサイエンス―(新潮文庫)
    3.8
    一晩置いたカレーはなぜおいしいのか? 子どもたちはどうしてピーマンが嫌いなのか? ワサビがツーンとする理由は? 味、食感、香り、栄養素……すべての謎を解くカギは、食材が生きていたときの姿にあった! 数々のベストセラーを送り出してきた研究者が鋭く考察。料理や食事が楽しくなる「おいしさの秘密」をご賞味あれ。ジャガイモを煮崩れさせない方法など、調理の裏ワザも多数紹介。
  • 白いしるし(新潮文庫)
    3.8
    女32歳、独身。誰かにのめりこんで傷つくことを恐れ、恋を遠ざけていた夏目。間島の絵を一目見た瞬間、心は波立ち、持っていかれてしまう。走り出した恋に夢中の夏目と裏腹に、けして彼女だけのものにならない間島。触れるたび、募る想いに痛みは増して、夏目は笑えなくなった──。恋の終わりを知ることは、人を強くしてくれるのだろうか? ひりつく記憶が身体を貫く、超全身恋愛小説。(解説・栗田有起)
  • 窓の魚(新潮文庫)
    3.8
    温泉宿で一夜を過ごす、2組の恋人たち。静かなナツ、優しいアキオ、可愛いハルナ、無関心なトウヤマ。裸の体で、秘密の心を抱える彼らはそれぞれに深刻な欠落を隠し合っていた。決して交わることなく、お互いを求め合う4人。そして翌朝、宿には一体の死体が残される――恋という得体の知れない感情を、これまでにないほど奥深く、冷静な筆致でとらえた、新たな恋愛小説の臨界点。(解説・中村文則)
  • またあおう(新潮文庫)
    3.8
    1巻649円 (税込)
    お江戸は日本橋。長崎屋の跡取り息子、若だんなこと一太郎の周りには、愉快な妖たちが沢山。そんな仲間を紹介しようとして楽しい騒動が起きる「長崎屋あれこれ」、屏風のぞきや金次らが『桃太郎』の世界に迷い込む「またあおう」、若だんなが長崎屋を継いだ後のお話で、妖退治の高僧・寛朝の形見をめぐる波乱を描く「かたみわけ」など豪華5編を収録した、文庫でしか読めない待望のシリーズ外伝。
  • 1R1分34秒(新潮文庫)
    3.8
    デビュー戦を初回KOで華々しく飾ってから、3敗1分けと敗けが込むプロボクサーのぼく。そもそも才能もないのになぜボクシングをやっているのかわからない。ついに長年のトレーナーに見捨てられるも、変わり者の新トレーナー、ウメキチとの練習の日々がぼくを変えていく。これ以上自分を見失いたくないから、3日後の試合、1R1分34秒で。青春小説の雄が放つ会心の一撃。芥川賞受賞作。(解説・町田康)
  • 片眼の猿―One-eyed monkeys―(新潮文庫)
    3.8
    盗聴専門の探偵、それが俺の職業だ。目下の仕事は産業スパイを洗い出すこと。楽器メーカーからの依頼でライバル社の調査を続けるうちに、冬絵の存在を知った。同業者だった彼女をスカウトし、チームプレイで核心に迫ろうとしていた矢先に殺人事件が起きる。俺たちは否応なしに、その渦中に巻き込まれていった。謎、そして……。ソウルと技巧が絶妙なハーモニーを奏でる長編ミステリ。(解説・佐々木敦)
  • 養老孟司の大言論I 希望とは自分が変わること(新潮文庫)
    完結
    3.8
    人は死んで、いなくなる。ボケたらこちらの勝ちである。人生に多少の危険はつきものだ。若者に独創性を説くのは害であろう。教育の本質は「人を変える」こと。自分がどういう面で変わり、どういう面で変わらないか、歳を取ってもわからない。そこに、希望がある。世界が変わるのではない、自分が変わるのである――。9年間40万字を費やした連載の集大成、「大言論」シリーズ第1巻。
  • はるか(新潮文庫)
    3.8
    賢人は小さな頃、海岸で一人の少女と出会い恋に落ちる。彼女の名は、はるか。大人になり偶然再会した二人は結婚するが、幸せな生活は突如終わりを告げた。それから月日は経ち、賢人は人工知能の研究者として画期的なAIを発明。「HAL‐CA」と名付けられたそのAIは、世界を一新する可能性を秘めていた――。『ルビンの壺が割れた』で大反響を呼んだ著者による、更なる衝撃が待つ第二作。
  • 玄鳥さりて(新潮文庫)
    3.8
    富商の娘を娶り、藩の有力派閥の後継者として出世を遂げる三浦圭吾。その陰には、遠島になってまで彼を守ろうとした剣客・樋口六郎兵衛の献身と犠牲があった。十年後、島から戻った六郎兵衛。だが、二人は敵同士として剣を交えざるを得なくなる……。派閥争いに巻き込まれ、運命に翻弄されていく男たち。彼らは、何を守るために刀を振るうのか。真に大切なものを問う、葉室文学の円熟作。(解説・島内景二)
  • 風林火山(新潮文庫)
    3.8
    疾(はや)きこと風の如く、徐(しず)かなること林の如く、侵掠(しんりゃく)すること火の如く、動かざること山の如し――。自ら謀殺した諏訪頼重の娘・由布姫を武田信玄の側室とし、子供を生ませることによって諏訪一族との宥和を計る独眼の軍師・山本勘助。信玄の子を生みながらも、なお一族の敵として信玄の命をねらう由布姫。輝くばかりに気高い姫への思慕の念を胸にして川中島の激戦に散りゆく勘助の眼前に、風林火山の旗はなびき、上杉謙信との決戦の時が迫る……。ロマンあふれる華麗な戦国絵巻。
  • 出雲世界紀行―生きているアジア、神々の祝祭―(新潮文庫)
    3.8
    子供から老人までが熱狂する神楽、「荒神様有り」と記された不思議な不動産広告。神話を信じて卵を食べない町や、なぜか観光客が絶えない謎の町。出雲・石見・境港。旅するうちに見えてきたのは……。目に見えない存在を信じる暮らしや、伝統を支える持続可能な知恵、遠く東南アジアにまでつながる文化の〈地下茎〉だった。そして旅は、温かい涙が流れるクライマックスへ。『どこにでも神様』改題。(解説・志川節子)
  • 君たちに明日はない(新潮文庫)
    3.8
    「私はもう用済みってことですか!?」リストラ請負会社に勤める村上真介の仕事はクビ切り面接官。どんなに恨まれ、なじられ、泣かれても、なぜかこの仕事にはやりがいを感じている。建材メーカーの課長代理、陽子の面接を担当した真介は、気の強い八つ年上の彼女に好意をおぼえるのだが……。恋に仕事に奮闘するすべての社会人に捧げる、勇気沸きたつ人間ドラマ。山本周五郎賞受賞作。
  • ハイドラ(新潮文庫)
    3.8
    出会った瞬間から少しずつ、日々確実に、発狂してきた――。有名カメラマン新崎の専属モデルを務める早希は、私生活でも密かに彼と同棲している。付き合って三年を過ぎ、セックスの時以外は体に触れてこない新崎。不均衡な関係に深い倦怠感を覚えるなか、ずっと早希のファンだったというバンドマンの松木と出会う。ひずみのない愛を求めては傷つく女性の心理に迫る、傑作恋愛小説。
  • さよならは仮のことば―谷川俊太郎詩集―(新潮文庫)
    3.8
    「僕はやっぱり歩いてゆくだろう……すべての新しいことを知るために/そして/すべての僕の質問に自ら答えるために」(「ネロ」)。19歳でデビュー以来、70年にわたって言葉の可能性を追求し続けてきた国民的詩人。国語教科書の定番「朝のリレー」「春に」、東日本大震災で話題となった「生きる」等、豊饒かつ多彩な作品群から代表作を含め独自に編集。その軌跡をたどり、珠玉を味わう決定版詩集。(解説・小津夜景)
  • 仮想儀礼(上)(新潮文庫)
    完結
    3.8
    全2巻1,045円 (税込)
    ゲーム作家に憧れて職を失なった正彦は、桐生慧海と名乗って、同じく失業者の矢口と共に金儲け目当ての教団「聖泉真法会」を創設する。悩める女たちの避難場所に過ぎなかった集まりは、インターネットを背景に勢力を拡大するが、営利や売名目的の人間たちの介入によって、巨額の金銭授受、仏像や不動産をめぐる詐欺、信者の暴力事件、そして殺人など続発するトラブルに翻弄される。
  • かんじき飛脚(新潮文庫)
    3.8
    江戸老中松平定信から、内室同伴という前例のない宴に招かれた加賀藩主前田治脩。それは治脩の内室が病床にあることを知った定信が、藩を意のままにしようと企てた陰謀だった。窮地に陥ったお国の命運を救うため、選ばれたのは16人の飛脚。彼らの任務は、病の特効薬「密丸」を運ぶこと。行く手には、大雪、荒海、刺客が立ち塞がる――戦う男たちの心意気に圧倒される、骨太の傑作時代長編!(解説・児玉清)
  • いっぽん桜(新潮文庫)
    3.8
    仕事ひと筋で、娘に構ってやれずにきた。せめて嫁ぐまでの数年、娘と存分に花見がしたい。ひそかな願いを込めて庭に植えた一本の桜はしかし、毎年咲く桜ではなかった。そこへ突然訪れた、早すぎる「定年」……。陽春の光そそぐ桜、土佐湾の風に揺れる萩、立春のいまだ冷たい空気に佇むすいかずら、まっすぐな真夏の光のもとで咲き誇るあさがお。花にあふれる人情を託した四つの物語。(解説・川村湊)
  • 愛さずにはいられない(新潮文庫)
    3.8
    1巻1,155円 (税込)
    1960年代後半。芳郎は東京で下宿生活を送る高校生だ。酒や煙草、夜遊びに耽る毎日だが、その心には母への憎悪が深く影を落としていた。童貞を捨てた彼は性にのめりこみ、やがて運命の女、由美子に出会う――。無軌道な少年時代と実母との確執とを赤裸々に描き、「この作品こそ自分自身」と著者に言わしめた唯一の自伝的作品であり、遺された数多の作品世界の原点ともいうべき特別な長編小説。(解説・小池真理子)
  • リバース&リバース(新潮文庫)
    値引きあり
    3.8
    大切なものは、些細なことで壊れてしまう――。ティーン向けファッション誌の編集者・禄(ろく)は、お悩み相談ページに投稿してきた渚との間にトラブルを抱えていた。地方に暮らす中学生の郁美は親友の明日花とともに同誌を愛読中。だが、東京からの転校生・道成の存在が二人の関係を次第に変えてゆき……。出会うはずのない人生が交差するとき、明かされる真実とは。心揺さぶる新時代の青春小説。(解説・朝井リョウ)
  • 結婚のためなら死んでもいい(新潮文庫)
    3.8
    1巻737円 (税込)
    わたしはね、55歳になったあんた自身、そして今でも独身だよ――。彼氏なし、売れない小説家の「わたし」は、勤め先のエレベーターの片隅に佇む女からそう告げられる。気迫に満ちた未来の自分に促され、死に物狂いの婚活を開始するが。自分語りが大好きな皮膚科医、24歳のかわいいDJ、趣味は合うほぼ童貞のSE……。〈運命の人〉は実在するのか。過激で赤裸々で切ない10年を描く実録小説。『婚活1000本ノック』を全面改稿の上、改題。併せてお読みください。(解説・清田隆之)
  • 鳥居の密室―世界にただひとりのサンタクロース―(新潮文庫)
    3.8
    その朝、最高の幸せと最悪の不幸が少女を見舞った。枕元にあったのは、期待もしていなかった初めてのクリスマスプレゼント。だが信じがたい事件も起きていた。別の部屋で母が殺されていたのだ。家にはすべて内鍵が掛けられ、外から入れるとしたらサンタくらいだった。周辺で頻発していた怪現象と二重三重の謎。京都を舞台に、若き御手洗潔が解き明かす意外な真相と人間ドラマ。心温まる名編。(解説・青柳碧人)
  • 蟻地獄(新潮文庫)
    3.8
    二村孝次郎(にむらこうじろう)は、親友の修平(しゅうへい)と共に一攫千金を目論み、裏カジノに乗り込む。大金を手に入れたかと思いきや、イカサマは見破られていた。5日後までに300万円を差し出さなければ、人質にとられた修平は殺される。金をつくるため、孝次郎が向かった先は、青木ケ原樹海。19歳の青年は奔る! 地獄から生還するために――。圧倒的筆力で読む者を欺く、超弩級ノンストップ・エンタテインメント!(解説・道尾秀介)
  • 草薙の剣(新潮文庫)
    3.8
    1巻825円 (税込)
    草を薙いで野火の大難を防いだといわれる神剣――草薙の剣。12歳から62歳まで、6人の男たちとその父母、祖父母が経験した、戦前、戦後、学生運動、オイルショック、バブル、オウム事件、2回の震災、そして現代まで、そこに生きる人間の姿をつぶさに描くことで、「時代」という巨大な何かを立ち上がらせた奇跡の長編小説。知の巨人にして時代の感性だった橋本治の文業40年の結晶。野間文芸賞受賞。(解説・末木文美士)
  • 文字渦(新潮文庫)
    3.8
    1巻781円 (税込)
    「昔、文字は本当に生きていたのじゃないかと思わないかい」。始皇帝の陵墓づくりに始まり、道教、仏教、分子生物学、情報科学を縦横に、変化を続ける「文字」を主役として繰り広げられる連作集。文字を闘わせる遊戯に隠された謎、連続殺「字」事件の奇妙な結末、本文から脱出し短編間を渡り歩くルビの旅……。小説の地平を拓く12編、川端康成文学賞・日本SF大賞受賞。(解説・木原善彦)
  • 幻世の祈り―家族狩り 第一部―(新潮文庫)
    完結
    3.8
    全5巻572~781円 (税込)
    高校教師・巣藤浚介は、恋人と家庭をつくることに強い抵抗を感じていた。馬見原光毅刑事は、ある母子との旅の終わりに、心の疼きを抱いた。児童心理に携わる氷崎游子は、虐待される女児に胸を痛めていた。女子高生による傷害事件が運命の出会いを生み、悲劇の奥底につづく長き階段が姿を現す。山本賞受賞作の構想をもとに、歳月をかけて書き下ろされた入魂の巨編が、いま幕を開ける。
  • 絶唱(新潮文庫)
    3.8
    五歳のとき双子の妹・毬絵は死んだ。生き残ったのは姉の雪絵――。奪われた人生を取り戻すため、わたしは今、あの場所に向かう(「楽園」)。思い出すのはいつも、最後に見たあの人の顔、取り消せない自分の言葉、守れなかった小さな命。あの日に今も、囚われている(「約束」)。誰にも言えない秘密を抱え、四人が辿り着いた南洋の島。ここからまた、物語は動き始める。喪失と再生を描く号泣ミステリー。(解説・中江有里)
  • 豆の上で眠る(新潮文庫)
    3.8
    小学校一年生の時、結衣子(ゆいこ)の二歳上の姉・万佑子(まゆこ)が失踪した。スーパーに残された帽子、不審な白い車の目撃証言、そして変質者の噂。必死に捜す結衣子たちの前に、二年後、姉を名乗る見知らぬ少女が帰ってきた。喜ぶ家族の中で、しかし自分だけが、大学生になった今も微(かす)かな違和感を抱き続けている。――お姉ちゃん、あなたは本物なの? 辿り着いた真実に足元から頽(くずお)れる衝撃の姉妹ミステリー。(解説・宇田川拓也)
  • 東京奇譚集(新潮文庫)
    3.8
    肉親の失踪、理不尽な死別、名前の忘却……。大切なものを突然に奪われた人々が、都会の片隅で迷い込んだのは、偶然と驚きにみちた世界だった。孤独なピアノ調律師の心に兆した微かな光の行方を追う「偶然の旅人」。サーファーの息子を喪くした母の人生を描く「ハナレイ・ベイ」など、見慣れた世界の一瞬の盲点にかき消えたものたちの不可思議な運命を辿る5つの物語。
  • 螢・納屋を焼く・その他の短編(新潮文庫)
    3.8
    秋が終り冷たい風が吹くようになると、彼女は時々僕の腕に体を寄せた。ダッフル・コートの厚い布地をとおして、僕は彼女の息づかいを感じとることができた。でも、それだけだった。彼女の求めているのは僕の腕ではなく、誰かの腕だった。僕の温もりではなく、誰かの温もりだった……。もう戻っては来ないあの時の、まなざし、語らい、想い、そして痛み。リリックな七つの短編。
  • か「」く「」し「」ご「」と「(新潮文庫)
    3.8
    みんなには隠している、少しだけ特別な力を持った高校生5人。別に何の役にも立たないけれど、そのせいで、クラスメイトのあの子のことが気になって仕方ない――。彼女がシャンプーを変えたのはなぜ? 彼が持っていた“恋の鈴”は誰のもの? それぞれの「かくしごと」が照らし出す、お互いへのもどかしい想い。甘酸っぱくも爽やかな男女5人の日常を鮮やかに切り取った、共感必至の青春小説。
  • なんとなくな日々(新潮文庫)
    3.8
    春の宵には、誰もいない台所で冷蔵庫の小さな鳴き声に耳を澄まし、あたたかな冬の日には、暮れに買い置いた蜜柑の「ゆるみ」に気づく。読書、おしゃべり、たまの遠出。日々流れゆく出来事の断片に、思わぬふくよかさを探りあてるやわらかいことばの連なりに、読む歓びが満ちあふれます。ゆるやかにめぐる四季のなか、じんわりしみるおかしみとゆたかに広がる思いを綴る傑作エッセイ集。
  • どこから行っても遠い町(新潮文庫)
    3.8
    捨てたものではなかったです、あたしの人生――。男二人が奇妙な仲のよさで同居する魚屋の話、真夜中に差し向かいで紅茶をのむ主婦と姑、両親の不仲をみつめる小学生、そして裸足で男のもとへ駆けていった女……。それぞれの人生はゆるくつながり、わずかにかたちをかえながら、ふたたび続いていく。東京の小さな町を舞台に、平凡な日々の豊かさとあやうさを映し出す連作短篇小説。
  • 古道具 中野商店(新潮文庫)
    3.8
    東京近郊の小さな古道具屋でアルバイトをする「わたし」。ダメ男感漂う店主・中野さん。きりっと女っぷりのいい姉マサヨさん。わたしと恋仲であるようなないような、むっつり屋のタケオ。どこかあやしい常連たち……。不器用でスケール小さく、けれど懐の深い人々と、なつかしくもチープな品々。中野商店を舞台に繰り広げられるなんともじれったい恋と世代をこえた友情を描く傑作長編。
  • 太陽と乙女(新潮文庫)
    値引きあり
    3.8
    少年の頃から物語を描いていた。我が青春の四畳半時代。影響を受けた小説、映画、アニメーション。スランプとの付き合い方と自作への想い。京都・東京・奈良をぶらり散策し、雪の鉄道旅を敢行。時には茄子と化したり、酔漢酔女に戸惑ったり。デビュー時の秘蔵日記も公開。仰ぎ見る太陽の塔から愛おしき乙女まで、登美彦氏がこれまで綴ってきた文章をまるごと収録した、決定版エッセイ大全集。
  • 鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。(新潮文庫)
    3.8
    鳥類学者、それは神に選ばれし存在である。スマートな頭脳に加え、過酷なフィールドにいつでも出張できる体力が必要なのだから。かわいいメグロからの採血。噴火する孤島への上陸。ある日は吸血カラスの存在に驚き、ある夜は蛾の襲来に震え……。美女たちよ、わたしに近づくな。やけどするぜ。生き物を愛する人にも、そうでもない人にも、絶対に楽しめる、汗と笑いの自然科学エッセイ。(解説・谷村志穂)
  • 新任刑事(上)(新潮文庫)
    3.8
    1~2巻693~737円 (税込)
    駅前交番から突然、刑事一課強行係に異動となった原田貢(みつぐ)は慌てていた。次々と舞い込む変死体の見分、作成する図面や調書の膨大さ、ツルハシの使い道……。“初めて”だらけの刑事見習いを懸命にこなす中、貢は一本のタレコミを受ける。十年間逃げ続ける指名手配犯「警察官殺しの美彌子(みやこ)」に瓜二つの女が駅前でホステスをしていると。時効完成まで僅か二箇月。刑事らの執念の追及捜査が今始まる。
  • カンパニー(新潮文庫)
    3.8
    あなたって、どこでも傍観者なのね。家を出た妻にそう告げられ、47歳の会社員・青柳誠一は呆然と佇む。そして災厄は会社でも――。窓際部署に異動か、社が後援するバレエ団への出向、どちらかを選べと迫られた青柳は「白鳥の湖」公演の成功を目指すことに。スポーツトレーナーの瀬川由衣や天才バレエダンサー・高野悠らと共に突き進むが、次々と困難が……! 読めば力湧く崖っぷちお仕事小説。(解説・藤田香織)
  • 万葉恋づくし(新潮文庫)
    3.8
    万葉歌人は、じつは恋愛下手でした――。若い大伴家持から恋歌を贈られた年上女性の、理性と情熱の揺らぎを描く「年下の男」。夫に愛想を尽かした妻が出した結論「しゑやさらさら」。恋の歌が苦手な女の前に現れた庭を愛する男との、不意の出来事が胸を焦がす「恋の奴」。その他、下級役人の滑稽な同棲「紅はかくこそ」など全七編。歌人たちのおおらかで不器用な恋の一瞬を、みずみずしく描く傑作。(解説・上野誠)
  • 子規の音(新潮文庫)
    3.8
    三十五年という短い生涯ながら、明治期、俳句に短歌に果敢な革新運動をしたと評される正岡子規。彼が詠った詩句のなにげない情景は、いまなお読む者の五感を喚起する。松山から上京、神田、本郷、上野、根岸と東京を転々としたのち、東北旅行、日清戦争の取材を経て、晩年の十年を病に苦しみつつ「根アカ」に過ごした全生涯を、日常を描いた折々の句や歌とともにたどるユニークな正岡子規伝。(解説・角田光代)
  • 新・しゃばけ読本(新潮文庫)
    3.8
    ※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 病弱だけれども、優しくて知恵の働く若だんなと、彼を見守る不思議で愉快な妖(あやかし)たちが、お江戸に起こる難事件珍事件を解決! 大人気しゃばけシリーズのガイドブックが登場です。物語紹介から妖と人物解説、作者&絵師の創作の秘密にも迫ります。巻末に絵本『みぃつけた』を特別収録。初心者からマニアの方まで、シリーズの魅力を楽しみ尽くすための豪華な一冊。『しゃばけ読本』増補改訂版。
  • ひりつく夜の音(新潮文庫)
    3.8
    46歳の下田保幸は、プロのジャズクラリネット奏者。演奏に全てを捧げた若い日の情熱は潮が引くように褪せ、いまは音楽教室講師の僅かな収入で過ごす。そんな暮らしがギタリストの青年・音矢との出会いで動き出す。どうしても困ったら下田を頼るよう、亡き母に言われたという音矢の名字は佐久間。下田が昔愛した女性と同じだった……。人生の折返し点で迷う大人たちの心をはげます感動作。(解説・北上次郎)
  • 朝が来るまでそばにいる(新潮文庫)
    3.8
    火葬したはずの妻が家にいた。「体がなくなったって、私はあなたの奥さんだから」。生前と同じように振る舞う彼女との、本当の別れが来る前に、俺は果たせなかった新婚旅行に向かった(「ゆびのいと」)。屋上から落ちたのに、なぜ私は消えなかったのだろう。早く消えたい。女子トイレに潜む、あの子みたいになる前に(「かいぶつの名前」)。生も死も、夢も現(うつつ)も飛び越えて、こころを救う物語。(解説・名久井直子)
  • 巡礼(新潮文庫)
    3.8
    1巻539円 (税込)
    男はなぜ、ゴミ屋敷の主になり果てたのか? いまはひとりゴミ屋敷に暮らし、周囲の住人達の非難の視線に晒される男・下山忠市。戦時中に少年時代を過ごし、昭和期日本をただまっとうに生きてきたはずの忠市は、どうして、家族も道も、見失ったのか――。誰もが顔を背けるような現在のありさまと、そこにいたるまでの遍歴を、鎮魂の光のなかに描きだす。橋本治、初の純文学長篇。
  • 平凡(新潮文庫)
    3.8
    妻に離婚を切り出され取り乱す夫と、その心に甦る幼い日の記憶(「月が笑う」)。人気料理研究家になったかつての親友・春花が、訪れた火災現場跡で主婦の紀美子にした意外な頼みごと(「平凡」)。飼い猫探しに親身に付き添うおばさんが、庭子に語った息子とおにぎりの話(「どこかべつのところで」)。人生のわかれ道をゆき過ぎてなお、選ばなかった「もし」に心揺れる人々を見つめる六つの物語。(解説・佐久間文子)
  • アカペラ(新潮文庫)
    値引きあり
    3.8
    身勝手な両親を尻目に、前向きに育った中学三年生のタマコ。だが、大好きな祖父が老人ホームに入れられそうになり、彼女は祖父との“駆け落ち”を決意する。一方、タマコを心配する若い担任教師は、二人に振り回されて――。奇妙で優しい表題作のほか、ダメな男の二十年ぶりの帰郷を描く「ソリチュード」、独身の中年姉弟の絆を見つめた「ネロリ」を収録。温かくて切ない傑作小説集。
  • サービスの達人たち―おもてなしの神―(新潮文庫)
    3.8
    「予約が取れない」銀座の寿司屋を切り盛りするベリーショートの女子親方、「声のマッサージ」で運転手を癒す高級車レクサスのオペレーター、「二十四時間、年中無休」で毎日千人の客が来る大繁盛の立ち食いそば屋の店主……。10人のプロフェッショナルの働く姿勢と素顔から、サービスの最前線が見えてくる。大切なのは“感動”を提供すること――。大好評シリーズ。(解説・松浦弥太郎)
  • サービスの達人たち―究極のおもてなし―(新潮文庫)
    3.8
    日本には、たとえ対価が払われなくとも、サービスに命を賭けている人間がいる。「飛び込み営業」でベンツを年間100台も売る辣腕営業マン。「戦後最高」と称される伝説のウェイター。クレームを受けたことがないカリスマ美容部員……。彼らはなぜ客の心を虜にできるのか。人知れず真髄を極める職人たちの技と心意気を描くノンフィクション。『プロフェッショナルサービスマン』改題。(解説・松本大)
  • 思い出の作家たち―谷崎・川端・三島・安部・司馬―(新潮文庫)
    3.8
    日本の古典文学を愛する一方で、常に現代文学の目撃者たらんとしたドナルド・キーン。深い愛情と冷徹な眼差しが同居する特異な批評精神を発揮し、日本文学を世界文学の域に高めるべく巨大な足跡を残した。『細雪』の秘密を語る谷崎の思い出。川端の前衛主義者としての意外な横顔。自決直前の三島から受け取った手紙。安部や司馬とののびやかな友情。珠玉の追想集にして稀有なる文学論。(解説・尾崎真理子)
  • 五つ星をつけてよ(新潮文庫)
    3.8
    PC上で輝く星(レビュー)だけが、進むべき道を照らしてくれる――。離婚して実家に戻った恵美は、母の介護を頼んでいるホームヘルパー・依田の悪い噂を耳にする。細やかで明るい彼女を信頼していたが、見る目がなかったのだろうか。動揺する恵美に、母が転んで怪我をしたと依田から連絡が入り……。ネットのレビュー、ブログ、SNS。評価し、評価されながら生きる私たちの心を鮮やかに描き出す6編。(解説・彩瀬まる)
  • 泥の銃弾(上)(新潮文庫)
    3.8
    1~2巻693~781円 (税込)
    都知事、狙撃――。新国立競技場で起きた事件は日本を震撼させた。誰が。なぜ。狂騒の中、日就新聞社会部の天宮理宇はチームを率いて真実を追うが、捜査は唐突に打ち切られる。「犯人はクルド人難民」その警察発表は国策として難民を受け入れた日本において、瞬く間に浸透した。結論ありきの手法に違和感を覚えた天宮は社を去るが……。この国の未来を予見する圧倒的エンターテインメント!
  • 水葬の迷宮―警視庁特捜7―(新潮文庫)
    3.8
    1~2巻737~781円 (税込)
    ベテラン警官が拳銃を奪われ、両腕を切られた姿で発見された。遺体損壊の謎を追い、特別捜査班の岬怜司は、似顔絵をメモ代わりにする里中宏美とコンビを組む。連続する銃撃事件、現場に残された不可解な数字。浮上する過去の未解決事件と闇に消えた男とは……。つながる点と線、迷宮の核心、そしてクライマックスは東京駅へ! 緻密な伏線が冴える、本格捜査ミステリー。『特捜7 銃弾』改題。

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