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浮気の相手であった部下の結婚式に、妻と出席する男。おきゃんで、かわうそのような残忍さを持つ人妻。毒牙を心に抱くエリートサラリーマン。やむを得ない事故で、子どもの指を切ってしまった母親など――日常生活の中で、誰もがひとつやふたつは持っている弱さや、狡さ、後ろめたさを、人間の愛しさとして捉えた13編。直木賞受賞作「花の名前」「犬小屋」「かわうそ」を収録。
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Posted by ブクログ
久しぶりに読み返して驚いたのは、昔読んだ時とは全く違う手触りだったことだ。
ページをめくる手が止まらないほどのスリリングなサスペンスとして迫ってきた。
日常のほんのわずかな歪みや、何気ない一言の裏に潜む心理的な刃に、読後はしばらく胸の動悸が収まらなかった。
特に圧巻なのは直木賞受賞作の「かわうそ」だ。
脳卒中で倒れ、病床で孤独を深める夫・宅次。その横でせわしなく動き回り、座っている時はレースを編み続ける妻・厚子。訪問販売のセールスマンをうまくあしらう振る舞いや、宅次の病気をものともしない生き生きとした様子。厚子の突飛さが二人の歪んだ関係性を際立たせる見事な舞台装置として機能している。
厚子は日常と違う出来事があると調子づく。獲物を食らうためではなく、ただ獲る面白さゆえに大量の魚を殺し並べるという「カワウソ」の習性。厚子には悪意がない。ただの無神経さと好奇心で、病床の夫を追い詰め、その哀れな姿すら楽しんでいる。悪気がないからこそタチが悪く、恐ろしい。
向田作品を読み通して改めて感じるのは、業を抱えて内面に複雑な毒を溜め込むのはいつも女であり、男は欲望に忠実でどこかまっすぐで愚かな点だ。
エッセイ『父の詫び状』にも通じるが、威厳を張りながらも情けない父親という「まっすぐな男」への眼差しと、その陰で狡さや残忍さを育む女性像。そこには彼女自身の強烈な体験と父性が影を落としているのかもしれない。
登場人物たちの狡さや後ろめたさを突き放して裁くのではなく、トランプの札をめくるように静かに差し出してみせる手腕。人間の愛おしさと底知れぬ怖さがぎゅっと凝縮された、完璧な13編だ。
Posted by ブクログ
『思い出トランプ』
第83回 直木賞受賞
1980年短編連作
『花の名前』『かわうそ』『犬小屋』で直木賞受賞
本作「思い出トランプ」に 収録されている。
久しぶりの 向田邦子さん♡
今日 8月22日は 向田さんの忌日でもある
木槿(むくげ)忌 にあたります。
◉ かわうそ
〇 だらだら坂
〇 はめ殺し窓
〇 三枚肉
〇 マンハッタン
◉ 犬小屋
〇 男眉
〇 大根の月
〇 りんごの皮
〇 酸っぱい家族
〇 耳
◉ 花の名前
〇 ダウト
ひとつのお話が 15頁前後、13編収録されている。 短いのだけれど 良く描かれています。
浮気相手の部下の結婚式に、妻と出席する男の話だったり、かわうそ のような残忍さを持つ人妻、心に毒を持つサラリーマン、こどもの指を誤って切ってしまう母親……。
誰にでも ひとつやふたつは あるであろう…
弱さ、狡さ、後ろめたさ…それを向田邦子さんの
目線で描くとこうなるのね…( ͡ ͜ ͡ ) という
作品ばかり…贅沢な一冊だと思います。
◉ このマークの 三作品
・かわうそ
・犬小屋
・花の名前
……は、直木賞に選ばれた作品です( ᐙ و(و
この三作品の他にも 「大根の月」も私好み♡
作品の背景は昭和ですが…
昭和臭さは…ちょっぴり 感じますが…
読んでいて 心地がいいです(*´艸`)フフフッ♡
洗練された文章でいて、
それでいて気取らずに 描かれています。
今年は没後45年 ということです。
今もなお 愛され続けている 向田邦子さん。
直木賞受賞後 僅か一年も経たずに飛行機事故で
お亡くなりになるだなんて 悲しいです。
享年51歳は 若すぎる…( ・᷄-・᷅ )
向田さんの作品を
これからも大事に読んでいこうって
思っています( ↂ⃙⃚⃛ ωↂ⃙⃚⃛)
Posted by ブクログ
若い頃にNHKでやっていたドラマ「阿修羅のごとく」や「あ.うん」ちょっと理解出来ない辛辣な物語でよく母が見ていたと記憶している。TBS系で1974年頃から配信されたドラマ「寺内貫太郎一家」はまさか向田邦子さんが著者だとは思いもよらなかったです。
人間の残忍さや日常生活で誰もが持っている後ろめたさや弱さ。その一つ一つが13編の中に散りばめられていて読み終わった後向田さんがまだ生きていたこんな時代にどんな作品を産み落としてくれたのだろうかとちょっとぞーっとしたのは私だけではないだろう。
私が好きな一編は『大根の月』
英子が別れた夫と一緒に昼の月を見たのは指輪を誂えに出掛けた帰りである。母親の手一つで大きくなったひとりっ子の夫。健太が生まれ6年間は大過なく過ぎる。しかしお中元にもらったハムを切っている時健太の人差し指はまな板の端に転がりもとには戻らなかった。これが原因で英子は流産。姑も夫もそして健太ももういい。一番大切なものも、一番おぞましいものもあるあの場所に英子は戻るのか?
その次に好きな一編は『はめ殺し窓』
言われてみれば何故はめ殺しと言うのだろうか?物騒なネーミングではあるが巧妙に語ることで人々の心に残る事では納得である。両親の婚礼写真にしても翌朝の味噌汁に使う浅蜊が桶の中で鳴いていた。布団から出ていたタカの足はあれににていた。何気ない人間の闇を覗かせる向田さん。脱帽である…短編小説にしてはどれも向田さん独特の世界観がたっぷりと詰め込まれたものとなっている。
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