あらすじ
浮気の相手であった部下の結婚式に、妻と出席する男。おきゃんで、かわうそのような残忍さを持つ人妻。毒牙を心に抱くエリートサラリーマン。やむを得ない事故で、子どもの指を切ってしまった母親など――日常生活の中で、誰もがひとつやふたつは持っている弱さや、狡さ、後ろめたさを、人間の愛しさとして捉えた13編。直木賞受賞作「花の名前」「犬小屋」「かわうそ」を収録。
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Posted by ブクログ
昭和の物語りだが、人間の根底に根付く物事はいつの時代も同じ。
清らかに生きたくても、墓場まで持っていかなくてはならない事情は誰しもが抱えて、平然と生きている。
騙してる訳では無い、隠している訳では無い...
今の私、あなた、家庭、家族を保つ為にはそうする事が一番であるのだ。
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初、向田邦子さん
こんなにもグッと没入させてくれる文章は中々ない様な気がする。とにかく凄みえぐみ。
共感できる狂気さ、という独特な世界観
犬小屋という話が特に好き。
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ありふれた日常の中に現れる人間の「闇」の部分を描いた短編が13枚、シャッフルされて入っている。
向田邦子の文章は一行が短く簡潔。また、一見余分に思える文章が多々あるが、それらが静謐さに深みを与えていて非常に面白い。
何を食べたらこんな視点から人間関係を捉えられるようになるのか?読めば読むほど興味が湧くばかり。
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15ページほどの短編の中にここまで夫婦関係の微妙な闇が描き出せるものなのかと感心させられた。男の愚かさ、女の狡賢さ…みんな腹にイチモツを持っているものなのだ。
どの作品も秀逸。人間の奥底に秘めた闇をチラ見せしてくれる。自分の中にもあるような、わかる気がして、次の話はどんな人が出てくるんだろうかと読み進める手が止まらなかった。
昭和の時代を感じさせる素晴らしい短編集。向田邦子さんが長く生きてくださったら、もっとたくさんの素晴らしい作品に出会えたのに…と残念でならない。
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ここ最近、向田邦子さんに係る本を読み漁っているがハズレがなく、その全てを面白く感じている。
その印象は本書を読み終えた今も続いている。思い出トランプは短編集で、全部で13話収録されているが、その全てが個性的な魅力にあふれている。それも、これは明るい話あれは暗い話、と宝石のようにシンプルに形容しやすい魅力ではなく、見方によって暗くも明るくも、沈んでいるようにも輝いているようにも見える不思議な魅力。石は石でもパワーストーンのような感じで、向田さんの文章は自分にとって他の人とはどこか明確に違うと再確認した。
話は逸れるが、私は数ヶ月前に「あうん」で初めて向田邦子さんの小説を読んだ。その一冊の持つ衝撃は凄まじく、これを皮切りに、ネットで向田邦子作品を内容も見ずに片っ端から購入していった。そんな経緯もあって、今思えばこんな間抜けな話があるかとも思うが、本書の最初に収録されている「かわうそ」を読み終えるまで思い出トランプが短編集であることを知らなかった。
正確には次話の「だらだら坂」の途中で「短編集かよ!」と気付き、「かわうそ」の不穏な終わり方にドキドキしながら続きを知りたい思いでページをめくった私の期待と興奮は見事に打ち砕かれたのだが、読み終える頃にはテンポの良い多種多様な短編に満足し、そんなガッカリ感はどうでも良くなっていた。
向田さんの持つ文章の上手さ、楽しさは個人的に他のレビューで散々書いてしまったので、もう語ることも今更ないけれど、その上手さはこの本でも健在で、本書では特に「かわうそ」「三枚肉」「りんごの皮」「酸っぱい家族」がお気に入り。
Posted by ブクログ
日常の中に潜むスリリングな情景を心理描写たっぷりに描く短編集。「花の名前」は男の目盛りは大きくなる、という表現が印象に残る。25年の夫婦生活で少しづつ変わるお互いの関係性に、つい自分の場合は、と考えてしまう。
「かわうそ」の不安げな尾を引く終わり方も想像力をかき立てられる。庭に薄い墨がかかってきた、という表現を想像して怖気を感じる。
この作品に関わらず、上梓されてからやがて50年経過するであろう小説は至る所に古さを感じるが(特に登場人物達の名前)タイム・スリップした感があって殊更楽しく読んでしまう。
Posted by ブクログ
向田邦子といえば、ワタシにとっては、やっぱり「寺内貫太郎一家」
幸か不幸か、リアルタイムで観てる。水曜劇場。
まあ、懐かしい。面白かったね。
ジュリー〜〜!
樹木希林、もとい当時は悠木千帆さん。これが受けた受けた。
あと、なぜか横尾(忠則)さんなんかも出てる。
久世(光彦)さんと組んで、思い切ったことをやられたのでしょうね。
貫太郎一家のあとは、ほとんど観ていない。
名作の誉高い「阿修羅のごとく」とかも拝見していない。
でも、向田さんの飛行機事故のニュースはよく覚えている。
その向田邦子が直木賞を受賞したのが、この思い出トランプ
((作品紹介))
日常生活の中で、誰もがひとつやふたつは持っている弱さや、狡さ、後ろめたさを、人間の愛しさとして捉えた13編。直木賞受賞作「花の名前」「犬小屋」「かわうそ」を収録
びっくり。思い出トランプなんて題名だから、もうちっとホンワカムードもある短篇集かと思ってた。
全く、あにはからんや、違ってた。
全編シニカルな筆致。登場人物たちは、皆こころの空漠を抱えたひとたちばかり。
そのひとたちが、各々苦い思い出を回想していく...
なんとも、現在の自分にも、登場人物たちの心象が突き刺さる。
冒頭の短篇「かわうそ」
脳卒中で倒れ、身体の自由が効かない中年の男。その男が、九つ年下の妻厚子への想いを綴っている。
〜「なんじゃ」
わざと時代劇のことば使いで、ひょいとおどけて振り向いた厚子を見て、宅次は、あ、と声を立てそうになった。
なにかに似ていると思ったのは、かわうそだった。〜
これ、なんじゃ、なんておどけて返してくれる女性なんか、ワタシは可愛いらしいと思う。
が、それを"かわうそ"と形容するとは....
この男にしかわからない、妻に対する複雑な、愛憎が内まぜになった感情。そのこころの吐露が、このかわうそに表れているんだろうな。
いきなり、この一篇で、読者のこころ鷲掴み。
あとは、もう読み進めること、あっという間。
どれも心に残る短篇ばかり。
向田さんの描写が、また結構辛辣
「三枚肉」における"安いお雛様"とか、
「男眉」の"男眉に生まれついた人間は、(中略)女は亭主運のよくない相"とか。。。
また、書かれている言い回しで、もう私達にはわからないものが多い。
"お前は曲(きょく)がない"
"時分どき"
"御座(おざ)に出せない"
"節約(しまつ)なたちで"
"葬壇の前で夜伽(よとぎ)をしながら" etc
とにかく、小説の面白味が満載。
キョンキョンの帯が欲しい、という邪な気持ちから買い求めた、思い出トランプ。
結果、向田さんの小説の虜になった。
他の作品も読みたくなった。
Posted by ブクログ
短編小説枠として読んだことがなかったのでチョイス。日常に潜む知り得ない世界や営みにこれほどのものがあるのかと、なんだかリアルでありつつも怖さやブラックさとはまた違う世界観のある一冊だった。
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読んでるとこの人は家族とか夫婦とかの関係を信用してないんだなあと思う半面、どこか自分にも当てはまる感情というのもあって納得もさせられる。文章の上手さもあるがどの話もとにかく構成と最後のまとめかたが上手い。
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細かい情景や心情の、描写と表現が美しい。
人の光が当たる部分を描くのは簡単そうに思えるが、人の影の部分を簡素でいて鮮やかに描く事が出来るのは、やはり向田邦子しかいないのではないかと思う。
Posted by ブクログ
多分ずっと以前、10代の頃に読んだ気がする。その時は特に何も思うことはなかったんだと思う。自分が歳を重ねて、いろんな人を見ていろんな経験をして、変わったんだなと読みながら実感した。
それにしてもわかりやすく美しい文章。登場人物の暗さや嫌らしさを悪いモノにはしてしまわない。こういうことも若いときには考えなかったな。
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いわば向田さんにしか撮影できない独自のフレームに収められた家族写真を眺めた気分。一見普通の家族の裏に、ゆっくり静かに流れ込む暗の部分を、決して大袈裟ではなく独特の比喩表現で描く天才だとおもう。エッセイからも分かるが日常生活で見たり感じたりする視点が違う方だったんだろうなと。世界観に浸りたい短編集だった。
Posted by ブクログ
短編集、どれもはっきりした結末はない。
他の方のレビュー通り、とてつもない昭和感、こんな時代もあったな…今はハラスメントを恐れるあまり何も口に出せなくなってることを感じた。
どれも展開が読めず最初のかわうそ、ユーモアがありかわいい妻は、脳卒中で不自由になってきた夫の知らないところで何を企んでいるのか、そんなことを考え中、妻が外から戻り同時に
『写真器のシャッターが下りるように庭が急に闇になった』これを51歳で亡くなるまでの間に執筆したとは驚く。
りんごの皮の入場券の話、全く分からず調べた。
Posted by ブクログ
初 向田邦子。落ち着いた文章で頭にスッと入ってきた。
数年前に弟からもらった本。
人の裏側、黒さ、性など、人間らしさがとても良かった。
『かわうそ』がお気に入り。
向田邦子ワールドが好きだなぁ!
Posted by ブクログ
ウン十年ぶりの再読です。ちょうど私が学生の頃、直木賞をとった作品として話題になり手に取ったのでした。そして、ウン十年後の今、読み返してみるとどう感じるのか?試してみたくなったのです。13作品の短編集です。
当時の日本の一般的な家庭の風景。ごく普通に流れていく家族の生活。夫婦、親子を通した日常。一見何もおかしな所はないのだけれど、その中の個々人の心の中には様々な思い、記憶、経験。嬉しいこと悲しいこと、憎らしいこと。様々な思い、感情が表面には出てこないけれど内面に渦巻いている。そういった内面を掴み取り、暴き出して端正な言葉と文章で鋭く描写している。
私は向田さんの家族愛に基づいたキレキレの描写が好きなのだけれど、人間の心の闇に切り込んでくるところも流石だな!と思ってしまいます。
例えば今回再読していて、「獺祭」という言葉の意味を改めて認識しました。今の私には「美味しい日本酒」というイメージしか頭の中になかったのだけれど、「かわうそ」という作品の中で、妻である一人の女性のシタタカな一面を見せつけられた様な気がしました。「獺祭」という言葉を通じて、、、少し怖かった。
やはり、家族や人の心象が向田さん独自の多彩な輪郭で描かれている。場面展開の素早さも心地いい。途中で止められなくなります。
ウン十年前に読んだ時は「何だか不気味な作品集」というイメージを持っていたのだけれど、今回再読して過去とは異なる印象を持つことができました。
もちろん背景はウン十年前の昭和の情景です。しかし、人の心の有り様というのは変わらないものですね。
向田さんの作品は歳をとりません。
Posted by ブクログ
お互いに何かしら文句を言いながらも夫婦でい続ける、昭和の夫婦間、家族間。
特に女性については容姿に関する描写が多い。
だらだら坂なんかは太った女性(トミ子)を白いピカピカに光った大きな鏡餅と表現。ある時、なぜ濃いサングラスをかけているのかと思ったら、二重まぶたの整形をしており、「どうして、俺に黙ってそういう真似をしたんだ」と小突かれて泣き出す。
その後、表情も増えて自信がついてきたようで、きっとこれから他の箇所も整形して痩せていって、前みたいな安らぎのある女の子ではなくなるんだろう〜と嘆く。
男性の気持ちもわかる。無理して自分を変えることはないし、それはそれで良さがあるということ。しかしトミ子もはっきり言われずとも陰で鏡餅だの馬鹿にされているのもわかるものである。
大根の月の、
戻ろうか、どうしようか。一番大切なものも。一番おぞましいものもあるあの場所である。p148
というのが本作全体のことで言える。
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結構ドライに見える人間関係がさらっと描かれているけれど、肯定も否定もされてないのがいい
「人間なんてそんなもの」と突き放すだけじゃなく、どこか温かい目線があって、読んでいるうちに自分の弱さもまあいいか、と思えてくる
「家族は仲良くすべき」みたいな理想に縛られてしまったときに読むと、心がふっと軽くなる一冊です
Posted by ブクログ
直木賞受賞作ってことで入手したんだったか、どこかの書評で気になったんだったか、そのあたり。各方面で言及されることの多い作家さんで、ブックガイドでも色んな作品が取り上げられているのをちょいちょい見るんだけど、がっつり読むのは多分初めて。ちょっと不穏な気配が漂う日常についての短編集。なるほど、こういう感じでしたか。自分的には、是非とも他作品をどんどん読みたい、っていう風ではなかったかな。
Posted by ブクログ
向田邦子サン祭りの2冊目。
うーーーん。短編がやっぱり苦手なせいなのか
私には読みにくいと言うか、ちょっと口では
表せない薄気味悪さ(良い意味で。だと思う)
を感じてしまった.
向田さんの文章って、日常のヒトコマなんだけど
誰も気づかないような視点を捉えて
向田節と言うか掘り下げるのが巧みだと
思っているのだけど、なんだろう。
不気味さが感じられたり、心の奥底の本心を
ありありと描かれ過ぎてて
『あ、そこまで言っちゃう?』的な。
まだまだ向田作品を理解するには
読みまくるしかない気がします。
Posted by ブクログ
ひと昔ふた昔前の空気を感じる作品だなと思い、巻末で確認したら昭和58年発行の本だと知り納得した。
ただどの時代の話であろうと、人の心の闇、他人の目には見えづらい影の部分、最も人間らしいドロドロとしたものが存在することには変わりはない。
そんな普段は心の底深くに沈んで目にする事のない、どす黒い澱のようなものをまざまざと見せつけられるので、読後感は決してよくない。卵の殻の混じったオムレツを食べたような不快感を覚えた。
しかし、裏側からみた人間像が時として、普段の目にする表側よりも何倍も鮮やかにはっきりとその人間を浮き上がらせる。
Posted by ブクログ
向田邦子さんの作品は初めて。
時代のせいか、昭和の香りと表現力が現代にない懐かしさとハラスメントでは?と感じる場面もちらほら。
短編それぞれが日常の夫婦間における些細な事件に笑えたりゾッとしたりホッとしたり。
目まぐるしい人間らしさと狡賢さ腹黒さがこれでもかと凝縮された短編でした。
Posted by ブクログ
タイトルの理由は、13個の短編から成り立つ物語だから。
愛する人の裏切りに関する話が中心で、そのほかもどことなく陰のあるエピソードが多かった。一つ一つはとても短いが、どれも濃密に登場人物の心情が描かれている。まるで実在する人物の、とある生活の一瞬を切り抜いたかのように、描かれたその先の余韻を感じさせた。また、日常の匂いに関する表現がどても具体的であり、それも自らが話の中に存在しているかのような錯覚を感じさせた。
Posted by ブクログ
短編集で読みやすい
直木賞受賞作品も挿入されている
つわ子のくだりがとても面白かった。
石蕗が由来なのかとあの人も言ったでしょ?いえ、つわりがひどかった時の子なのかいと言いました。
知識をつけたと思いきや根底はやはり変わらず、ただ背中では男の成長を感じる。
犬小屋もセンセーショナルな内容で、しかも本人がトラウマになっていない不思議さ。
カワウソ、もゾワっと虫唾が走る話。妻の曲がった性格が垣間見れる。
Posted by ブクログ
旅先で手に取って読み始めた本。向田邦子の作品は初めて読みました。
家族、夫婦、身近な人の人間性や感情の機微が繊細に描かれていると感じました。「大根の月」が、自分の中では一番忘れられない作品です。健太を怪我させてしまう場面は、情景が生々しく伝わってきて、心が苦しくなりました。冒頭の指の文字を英子が追ってしまうところは、辛く忘れられない出来事やトラウマに対して、人がどうなるのか、どう向き合っているのかを的確に描いていると思いました。
直木賞を受賞した「かわうそ」、「犬小屋」など、ホラーや怪談、ミステリーでは味わえない独特の怖さを感じて、背筋がぞっとしました。