児玉清さんの遺稿集『すべては今日から』を読んだ後、もう少し児玉さんの話を聞いていたいなぁと思って、本書を手に取りました。こちらは児玉さん最初の著書の文庫です。
タイトルからもわかるとおり、本への愛が炸裂しております。それもかなり濃密で、読みごたえがありました。児玉さんの大好きな作品、大好きな作
...続きを読む家のことが、具体的にこれでもかというほど語られています。ディック・フランシス、ジョン・グリシャム、マイクル・クライトン、ネルソン・デミル、トム・クランシー、ケン・フォレット、ジェフリー・ディーヴァー、スティーヴン・ハンター、パトリシア・コーンウェル、などなど。
少しだけ内容が『すべては今日から』とかぶる部分もありますが、本の話は何度読んでもいいものです。〈本は何物にも替えがたい貴重な宝であり、本は僕にとって命に次いで大事なもの〉とおっしゃる児玉さんの情熱と至福がこちらにまで移ってきて、読んでいる間ずっと楽しく幸せな気分でした。
とくに興味深かったのは、児玉さんがなぜアガサ・クリスティを読まないのか、ということと、映画と原作についての話。結局児玉さんはクリスティを一冊も読まなかったのかどうか、すごく気になります。それから、小説を読んでその映画を見ると失望することがほとんどというところでは激しく同意。『ジュラシック・パーク』などの原作者マイクル・クライトン自身も〈最初から諦めている〉と言うほどだから、ここはやはり児玉さんも書いているとおり、映画は原作とは別物だと思っていたほうが良さそうですね。
さて、児玉さんのおかげで、私も猛烈に本を読みたくなっております。火がつきました。すごい勢いで燃えております。この命ある限り、読み続けよう。児玉さんのように、面白い本を読み尽くす!
〈読むことも大好きだが、本そのものが大好きなのだ。だから本を買ったときの喜びは格別なものがあり、特に欲しかった本を手に入れたときなどは何度も手に取っては、矯めつ眇めつ手触りを愉しむことになる〉