無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで201万冊以上配信中!
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
1958年、第39回直木三十五賞受賞作。『白い巨塔』『大地の子』『華麗なる一族』など代表作がたくさんある山崎豊子さんの出世作であり、傑作小説。大阪に生まれ、若くして夫に先立たれ、商売に命を捧げた女性・多加のど根性の生涯を描いている。
明治末期、堀江の米問屋の次女として生まれた多加は、お見合いにより船場の呉服問屋・河島屋に嫁ぐ。義父が急死してしまい、夫の吉三郎が二代目の店主となったが、商売に身が入らず、多加が店を切り盛りしていた。吉三郎は「借金返済のための金策に行く」などと言って常に外出し、寄席を見に行っていた。寄席小屋で落語を見て笑い、終わると芸人を連れて飯を食いにいく生活。しだいに借金が返せなくなり、持っていた株も暴落し、河島屋を潰してしまう。
多加は愛想をつかすが、生活が苦しく、育児もままならなくとも、別れを選ぶことはない。むしろ「そんなに笑いが好きならば、寄席小屋を経営したらどうか」と提案するのだった。戸惑う吉三郎に「やる前から失敗することを考えるもんがあるか!」とピシャリ。それから天満の寄席小屋を買い取り「天満亭」と名づけた。初めは有名な落語家を呼ぶことができずに集客に苦戦するが、多加の発案で、店先で冷やし飴を売るなどして、次第に人気を得るようになった。
しかし、商売が軌道に乗るのとは裏腹に、夫の吉三郎の不倫が発覚。恥ずかしいことに、吉三郎は愛人宅で情事の途中で心臓麻痺で死んでしまう。葬式では気丈に振る舞った多加は、ここからさらに商売を加速させていく。そろばん片手に、多くの寄席を買収し、芸人の販路を拡大し、その頃はやっていた「安来節」を出雲まで出向いて買い付ける。大阪の寄席小屋の多くには、多加が経営していることを示す花菱模様の『花のれん』が付けられていた。さらに話を持ちかけられ、なんと通天閣まで買収する。多角経営の果てに笑いが根差した土地のシンボルまで手に入れ、落語だけでなく漫才の公演も多く手がけるようになる。しかし戦争が始まってしまい……。
大阪の町を笑いで包み込むことに人生を賭けた、豪快な浪速女の一生。めちゃくちゃ面白かった。もちろんこの創業物語にはモデルとなった女性がいて、名前を吉本せいという。夫が創業し、彼女が成長させた会社は弟に引き継がれ、吉本興業として今も残っている。(小説なのでフィクション部分や時系列が違うところもあるみたい)
Posted by ブクログ
花のれん。
古き時代の心かよわき女性が、旦那の度重なる失態に呆れながらも、三行半をしたためることはせず、旦那を健気に信じ、共に商いを営んできた。
人との出会い、繋がり、絆。そのすべてを商売に賭け、自分の人生をも担保にした主人公は、自分が決意した幕引きを遂げた。
幸せだっただろう。商売繁盛、一世風靡、時の大阪で大円団を築いたのだから。けれど、満たされるどころか、虚無と不乱の入り混じる感情の中で、一人ぽっちだったのではなかっただろうか。
そよ風にたなびく、藍染を白抜きし、季節の花を散りばめた花のれんをくぐる、白い喪服を羽織った女性。
脇目も振らず歩いていく。
その目は、表情は、誰にも見えない。
けれどきっと、その先で待ってくれている誰かを夢見て、少女のように爛々としていると思う。
「花のれん」は、はっきり言えば切ない物語りだった。だけど、紆余曲折、波瀾万丈の人生も、主人公からしてみれば、百花繚乱にきらめいていたのではと、私は思った。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。