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それは百年ほど前の、岡山でのこと。腐臭たちこめる茅屋に、行き場のない者たちが吹き溜まり、夜昼なくまぐわい続ける、禍々しい世界。男と女はもちろん、人とけだものから、死者と生者まで、相手かまわぬ嬲り合いの果て、幻想が現実を侵食し、すべては地獄へなだれこむ――。血の巫女・岩井志麻子が、呪力を尽くして甦らせた、蕩けるほど淫靡で、痺れるほど恐ろしい、岡山土俗絵巻。
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Posted by ブクログ
言わずもがな岩井志麻子。 あえて文庫版を選んだのは、あとがき(?)が久世光彦による「志麻子の行方」があるからです。 岩井志麻子と久世光彦。この二人の文章が一気に読めるなんてなんて豪華。
現実か夢か幻か、生きているのかいないのか、作者は巧妙にその混ざり合った中ほどに読者を誘う。程よい倒錯が、この作品群をうまい味付けに仕上げている。どぎつい言葉が散見される割に、そのどぎつさとはかけ離れた巧妙なプロットでなかなかの作品に仕上げている。
「魔羅節」というタイトルにふさわしく、淫靡な世界が広がった一冊。 官能的なシーンはたくさん出てくるのに、彼女が描くとグロく陰湿で恐怖になる。 一気に読むとちょっと飽きてくる感じはあるが、読みやすくて面白かった。 岩井志麻子は、民話を題材にしたような物語と、貧困とヒトの醜さを描き出すのが本当にうまい。
『魔羅節』 (岩井志麻子) 『ぼっけぇ、きょうてぇ』(※)で山本周五郎賞を受賞した岩井志麻子の新刊文庫。岩井志麻子は『ぼっけぇ』以来、岡山を舞台とした怪異小説を書き続けているが、いずれも読後感は怖いというよりひたすら暗い。岡山に行きたくなくなること間違いなしの逆村おこし小説家である。今回の短編集も...続きを読むその例に漏れないが、今まで「貧」「苦」「霊」「岡山」の4ワードで表現されていた世界観に今回は特に「淫」が加わった。最近流行の作劇上のタブーのためのタブーではなく、「もう勘弁してくれ」感漂う禁忌を描いている。 同作者は『岡山女』とか、どうもネーミングセンスに欠ける感があるが、何に開き直ったのか、この本では「乞食柱」、「金玉娘」、「おめこ電球」とすべての短編のタイトルに放送禁止用語が舞い踊っており、なんか一周回って面白い。 ちなみに本書に収録された短編「きちがい日和」の主人公は名前が「ヤヨ」っていうので、高橋ヲタは読むといいです。まぁ、ヤヨさん陰所いじられまくりですけど。
『ぼっけい、きょうてい』で岡山を舞台にした、陰鬱で、どこか夢物語のようでもある世界を確立した岩井志麻子による、同じく岡山に纏わる短編集。俗世から見放されたような村に根付いた、時代錯誤な土着の風習に翻弄されながらも、それに抗うことをしない登場人物の残酷な生と性が悲しい。『anan』でエッセイを持ってい...続きを読むる人物の小説とはとても思えないほど、陰惨な気持ちになれましょう。さっと本を開いて『乞食柱』、『淫売監獄』、『きちがい日和』などの題を見ただけですっかり憂鬱な気分です。中身を読むと少なくともその日は再起不能になるでしょう
岩井志麻子さん、スゴすぎ。これは特にエロでグロな短編を集めてるのかな。どの作品も貧乏で陰鬱で悲惨で底なしの闇。津山30人殺し事件をモチーフにしたといわれる岩井さんの著書『夜啼きの森』も読んでみたい。次はそれかな。
短編集。ねっとりとした闇と血と汗がどの作品からも匂ってきます。 朝の通勤に読むとさわやかさが一気に生臭さに変わること請け合い。(2003.3.4)
岩井志麻子の魔羅節を読みました。放送禁止用語の言葉狩りをしている人たちが目をむきそうな小説でした。使われている言葉は確かに過激ですが、私たちが小さい頃は普通に使われていた言葉なので違和感なく物語の世界に入っていくことが出来ます。ぼっけえ、きょうてえと雰囲気は同じですが、この短編集のほうが血のにおいが...続きを読むぷんぷんと匂ってくる感じがします。
妙なものを読んでしまいました。 タイトルが放送禁止用語なので…ラスト2話がなんだか好きでした。 それよりなによりくぜさんの解説。「それが風の強いある日、「ぼっけえ、きょうてえ」という奇妙な本を抱えて現れ、低い声で〈志麻子〉と名乗った。一目で、私の娘だとわかった。」ひきこまれました。
「片輪車」。作者の頭の中で浮かんだ情景を描いたのだろうか。真実っぽくて鳥肌がたった。12.10.21
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