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江戸末期の市井の風俗の中で、芸術至上主義の境地を生きた馬琴に、自己の思想や問題を託した「戯作三昧」、仇討ちを果した赤穂浪士の心理に新しい照明をあてて話題を呼んだ「或日の大石内蔵之助」などの“江戸期もの”。闇空に突然きらめいて、たちまち消えてゆく花火のような人生を描いた「舞踏会」などの“明治開化期もの”。ほかに本格的な写実小説「秋」など、現代に材料をとった佳作を網羅した。(解説・中村真一郎)
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Posted by ブクログ
どの話も初見。古めかしい文体の上に言葉遣いが凝っているので、最初とっつきにくさはあったが、慣れると一気に引き込んでくれる手腕は相変わらずお見事。最後まで面白く読めた。 個人的に一番気に入ったのは「戯作三昧」。里見八犬伝を読んだことがないし馬琴についても何も知らないが、気難しい主人公が甥っ子の何気ない...続きを読む一言に励まされて涙ぐむ場面なんて、純粋すぎてこちらも思わず泣きそうになった。また、芥川も創作する上でこんな気持ちを抱くことがあったのかもと、勝手に親近感を覚えた。 「或日の大石内蔵之介」「お富の貞操」「庭」など他の話も良かった。共通するのは、芥川の登場人物に対する眼差しが中立であること。そして内省的なのにクドくない。人の心の表面をサラッと掬って見せてくれるところが芥川の良さ。
演習のため読みました。といってもほとんど以前読んだ岩波のものと内容被っておりますが。個人的に「あばばばば」ってどんな内容やねんと思ってたのでよかったですが、なんといっても「雛」泣きました。そんな泣くほどの内容じゃないかもしれないけど、バスの中で読んでてウルっときた。「年末の一日」も特にとりだたされる...続きを読むようなもんじゃないけど漱石のお墓参りについてだったので、ちょっと嬉しいような。
芥川龍之介は「鼻」や「羅生門」など平安に材を取った作品が知られているけれど、江戸から明治を舞台にした作品も魅力的です。 「或日の大石内蔵助」は討入後、肥後細川家にお預かりになった大石の心理に新しい解釈を与えるもの。「枯野抄」は芭蕉臨終の場に集まった弟子たちの心理を丹念に描いた作品。 いずれも松本清...続きを読む張の初期犯罪小説を読むように人間心理の複雑さ、玄妙さに触れ得た気持ちにしてくれます。 表題作の「戯作三昧」は、江戸天保期に活躍した戯作者、南総里見八犬伝の作者で知られる滝沢馬琴が主人公。日々の社交、自作への世間の毀誉褒貶、生活にまつわる様々な気がかりを描き出しながら、創作に打ち込む主人公に、芥川自身を重ね合わせています。 夜半、芸術のインスピレーションが馬琴に降りてくる場面のスピード感と迫真は鬼気迫るものがあります。 「始め筆を下ろした時、彼の頭の中には、かすかな光のようなものが動いていた。が、十行二十行と、筆が進むのに従って、その光のようなものは、次第に大きさを増して来る。 (中略) 頭の中にはもうさっきの星を砕いたようなものが、川よりも早く流れている。そうしてそれが刻々に力を加えて来て、否応なしに彼を押しやってしまう。 (中略) 光の靄に似た流れは、少しもその速力を緩めない。反って目まぐるしい飛躍の中に、あらゆるものを溺らせながら、澎湃として彼を襲って来る。彼は遂に全くその虜になった。そうして一切を忘れながら、その流の方向に、嵐のような勢で筆を駆った」 これは芥川の創作体験そのものでしょう。 芸術のミューズが降りてくる一瞬を捉えて離さない。「それ」が来た瞬間、その奔流に心身を預けきる。 生来の文学的センスを背景にさらりと書かれたかのように見える彼の作品の舞台裏で、このような心身を焼き尽くす時間があったことに驚きを禁じえません。芸術のもつデモーニッシュな側面。 だからこそ、時代を超えて人を惹きつけてやまない何かがあるのだと思います。
序盤に載ってるいわゆる『開化物』があまり楽しめず長らく放置してたけど、久々に読み進めたら後半は私好みの話ばかりで一気に読めた。 特に好きなのは、 『戯作三昧』 『秋』 『お富の貞操』 『あばばばば』 『一塊の土』 かな。 実生活における苦しさや切なさがひしひしと伝わってきて、読んでて悲しくもやる...続きを読むせなくもなるけどやはり引き込まれるものがある。
「或日の大石内蔵之助」 坪内逍遥の「小説神髄」から 近代日本文学は始まったとされるのだが それにおいてまず批判されたのは 江戸期の戯作文学 その中でも、「勧善懲悪」と呼ばれた 読んで字のごとく、いいもんがわるもんをやっつける 単純なお話だったという 武家社会においては、特に「忠義」というものが 善き...続きを読むこととして人々にすすめられたのだけど これは、日本人のナショナリズム・ナルシズムにも 密接にかかわる重大な問題である 「信じられるもの」のために、命をかけたいのだ しかし、そのような物語になんの疑問もなく熱狂することは あまりに信用ならない あまりに軽薄なことではないだろうか 「戯作三昧」 滝沢馬琴のスランプ時代を書いている 日和見主義や二枚舌や 浅はかな反骨精神の発露にあてられて すっかり人間がわからなくなってしまった馬琴は 大長編「南総里見八犬伝」を 書き進めることができなくなってしまう しかし、孫のからかい言葉にヒントを得て 危機を脱するのだった ちなみに、芥川龍之介じしんもそれを欲していたのだが ついに手にすることはかなわなかった 「開化の殺人」 文明開化によって、義憤と嫉妬は明確に区別されるものとなった それは、西洋文明が、その流入初期において 日本の風土に対するアンチテーゼとなりえたことを意味する それと同時に グローバリゼーションの本質こそ知にありと 進歩的な人々には信じられるようになったのだろう この四年後、「神神の微笑」は書かれるのだが 「枯野抄」 松尾芭蕉の臨終を書いたもの 芭蕉に、芥川の師匠(夏目漱石)を重ねていると言われる 「開化の良人」 理想とは、直観的に認識されるものである 価値とは、具体的に計量されるものである 進歩的な人々には、むしろこの両者を混同する傾向があった 「舞踏会」 社会的な二面性を使い分けなくてはならない人の ある種の悲哀である 三島由紀夫は絶賛したが ピエール・ロティの日本評を知らなければ ちょっとよくわからない作品となるだろう 「秋」「庭」「お富の貞操」「雛」 明治時代、かわりゆく世の中でむかしを懐かしむ人々の群像である 「あばばばば」 世の中も変わるが人間だって変わる 娘じみた雑貨屋の奥さんは、ずうずうしい母親に変わりました 「一塊の土」 ワーカーホリックの嫁に振り回される姑のはなし 女の独立を書こうとしたのか 「年末の一日」 夏目漱石の墓を訪問する話 墓参の帰り、箱車を押して坂道を登ってゆく芥川の姿は 「トロッコ」の子供たちに重ねて読むことも可能であろう 死の一年半まえに発表された作品である
自分が今まで抱いていた芥川作品のイメージとはちょっと変わったものが収録されている短編集でした。 表題作の『戯作三昧』がじわじわ来ます。美術の課題の現実逃避で読んだらぐりぐり刺激されました、謎の意欲が。 『舞踏会』と『秋』がすごく好きです。 『お富の貞操』とか結構な内容なのに、芥川先生の文章って登場人...続きを読む物より一歩引いててすっごい冷静だから内容がすっと入って来て、やっぱり芥川先生すごいな…。うまい。と思いました。 また忘れた頃に読み返したいです。
保吉は咄嗟に女の目の逡巡する容子を想像した。それから夜目にも女の顔の赤くなる容子を想像した。しかし女は澄ましてゐる。目も静かに微笑んでゐれば、顔も嬌羞などは浮かべてゐない。のみならず意外な一瞬間の後、揺り上げた赤子へ目を落とすと、人前も羞ぢずに繰り返した。 「あばばばばばば、ばあ!」 保吉は女を後ろ...続きを読むにしながら、我知らずにやにや笑ひ出した。女はもう「あの女」ではない。度胸の好い母の一人である。一たび子の為になつたが最後、古来如何なる悪事をも犯した、恐ろしい「母」の一人である。(p.17)
或る日の大石内蔵助、戯作三昧、開化の殺人、枯野抄、開化の良人、舞踏会、秋、庭、お富の貞操、雛、あばばばば、一塊の土、年末の一日を収録。 個人的には「庭」が好み。 如何にも高校の国語で扱われそうな雰囲気を感じたが、今回は国語の授業のような精密な分析無しにサラッと読み通してみた。 こういう作品は、解釈...続きを読むの仕方が色々ありそうで楽しい半面、解釈するのを面倒に感じることがある。 時間があるときにゆっくり味わって読みたい。
芥川の「江戸物」「開化物」更には自然主義的な作品集。 「或日の大石内蔵之助」 自己の実存を投じた自らにとって直接的な行為が、不特定多数の他者による手垢に塗れた解釈を蒙った上で媒介的に語られてしまうことに対する、違和感。 「戯作三昧」 "この時彼の王者のような眼に映っていたものは...続きを読む、利害でもなければ、愛憎でもない。まして毀誉に煩わされる心などは、とうに眼底を払って消えてしまった。あるのは、唯不可思議な悦びである。或は恍惚たる悲壮の感激である。この感激を知らないものに、どうして戯作三昧の心境が味到されよう。どうして戯作者の厳かな魂が理解されよう。ここにこそ「人生」は、あらゆるその残滓を洗って、まるで新しい鉱石のように、美しく作者の前に、輝いているではないか。・・・・・・" 「枯野抄」 芭蕉の死に際会した門弟の内面に去来する心情の陰翳を描く、師匠の死をそれ自体として感得できない門弟たちの屈折。 「舞踏会」「あばばばば」 人生の一瞬の光景を手で掬い取ってきたような掌編が好き。
近代文学演習の課題本。「舞踏会」の最後の場面にある老婦人の呟きが一番印象に残った。芥川の作品は論じるには難しそうなものばかり。 それにしても、「枯野抄」は以前にも読んだことあるのに気づいたけど、いつの機会だったかなぁ・・・。
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