国内小説 - 文春文庫作品一覧
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3.4あなたのワケあり写真は、心のワケを写している── 天然なイケメン講師がカメラと迷える心を指南します! 書き下ろしカメラ女子小説 東京で働いていたが、最近地元にもどった風味(ふうみ)は、幼馴染の頼みで、初心者のためのデジカメ教室に通うことに。 いつもボケた写真を撮ってしまう老人、寂しくない写真を撮りたい中年女性、楽しそうに見えない記念写真に悩む喫茶店経営者などが集まった教室で、講師は、カメラマンとして挫折した、天然なイケメンの知念大輔。 それぞれの生徒たちが写真に対して抱えている問題は、実は心が大きく反映したものだった。 大輔は、技術的なアドバイスをしながら、図らずも生徒たちの心の迷いにも踏み込んでいく。 ちょっと役立つ、風味の「カメラ撮影用語解説」も収録。 イラスト・高橋由季
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3.41巻764円 (税込)あなたは走っていますか? 人生には、走るシーンがつきものだ。 中田永一、東山彰良、柴崎友香など、十四人の多彩な作家が「走る」をテーマに競作した異色のラン小説アンソロジー。 【収録作品】 中田永一「パン、買ってこい」 柴崎友香「ベランダと道路」 王城夕紀「ホープ・ソング」 佐藤友哉「熊の野戦」 遠藤徹「桜の並木の満開の下」 前野健太「いびきが月に届くまで」 古川日出男「藤村加奈芽のランニング・ストーリー」 岩松了「走る男」 小林エリカ「飛田姉妹の話」 恒川光太郎「リスタート」 服部文祥「小さな帝国」 町田康「ずぶ濡れの邦彦」 桜井鈴茂「誰にだって言いぶんはある」 東山彰良「或る帰省」
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3.4生と死とエロス――。著者の真骨頂! 刹那の欲望、嫉妬、別離、性の目覚め……。 著者がこれまで一貫して描き続けてきた人間存在のエロス、 生と死の根幹に迫る圧巻の短篇集。 ピアニストの佐江は、教え子の少女のホームコンサートで、 少女の叔父だという男と出逢う。 音楽堂の暗い客席で、少女の弾くソナチネのメロディに合わせるように、 佐江と男は視線を、指先をからませていく……。(「ソナチネ」) 「鍵」「木陰の家」「終の伴侶」「ソナチネ」「千年萬年」「交感」「美代や」の7編を収録。 「恋愛とはきっとこういうものなのだ。人生のあらゆる出来事に繋がっている。」(千早茜、解説より)
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3.3満開の桜も素晴らしいけれど、散り際にも楽しみはある――。 『今宵も喫茶ドードーのキッチンで。』『伝言猫がカフェにいます』の 著者が贈る、かけがえのない人生の物語。 庭にヤマザクラの大きな古木がある〈キャフェ チェリー・ブラッサム〉。 祖母と母から受け継いできた洋館で、緋桜(ひお)は、 季節の和菓子と茶を提供している。 訪れるのは、犬を連れて散歩にくる老人、 長年連れ添う国際結婚の夫婦、 保育園からの帰り道に通りがかった親子、 自分が進むべき道に迷う少女……。 桜の木は、今日もゆったり、行きかう人々を眺めながら、 各々が抱える悩みや秘めた思いに耳を傾け、静かに寄り添う。 四季の移ろいと人々の交流を、優しくゆったりと描く再生の物語。 文庫書き下ろし。
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3.3文学と医業という二足の草鞋を綱渡りのように穿いて四十余年。 総合病院を定年退職し、今は非常勤医師として働く著者が、近年の己を題材に編み上げた四篇。 「畔を歩く」:定年退職を機に、うつ病を発症してから負担の軽い健康診断担当になり、 時に肩身が狭い思いもしながらも、しかし生き延びるためには文筆を止める訳にはいかなかった日々を回想する。 おさまらぬ気持ちを、畔をしっかりと歩いて宥める。 「小屋を造る」:同年配の地元の男らと山から木を伐り出し、簡素な小屋を建て、焼酎で乾杯する。 「四股を踏む」:定年間際の診療で、超高齢の女性患者から、処女懐胎の体験談を聞く。 「小屋を燃す」:六年前に小屋を建てたのと同じメンバーで、老朽化した小屋を壊す。 といっても、二人の男は先に逝ってしまっていた。 解体跡で飲み食いを始めると、死んでいるはずの者たちが次々と現れる。 ※この電子書籍は2018年3月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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3.3もういちど、ガリヴァーを呼び戻すために――。 名手・吉田篤弘が贈る、おかしく哀しく奇妙で美しい、色とりどりのおもちゃ箱のような短編集。 それは、「テントン」と名乗る男から来た一本の電話が事の起こりだった。男の誘いに乗り、新聞記者のSはある島へ向かう。出迎えたのはミニチュアの家が連なる街と、赤児ほどの背丈しかない男。「ようこそ我らの王国、リリパットへ……奇妙な味わいの表題作「ガリヴァーの帽子」 元作家と元シェフが暮らし始めた洋館に現れた王子の奇妙な顛末を描く「孔雀パイ」 奇妙な夢の中で、川を下りながら鰻屋を経巡る「ご両人、鰻川下り」 シャンパンの泡たちの短い一生を描いたおかしな寓話「かくかくしかじか」 ほかに、コーヒーカップを持つと手がなぜか震えてしまう「手の震えるギャルソンの話」、彼女の残していったトースターをめぐる奇妙な出来事を描いた「トースターの話のつづき」など。 読む人々を、不思議な世界へといざなってくれる、物語好きの大人のための8編。
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3.3東村アキコ氏絶賛「不倫の漫画を描くのに、とても参考になりました」 女が本当に怖くなる11の物語。 理由あって、都会から実家に戻った「私」は、年老いた母とペットのマルチーズと暮らしている。 時どき立ち寄るペットショップの女主人・中山圭子は、犬や猫をあやしながら、さり気なく飼い主から話を聞き出すのが得意。 圭子のもたらす情報が、「私」のどす黒い過去を甦えらせる――。 表題作ほか、婚期をのがした娘の子宮切除手術の前夜、娘の傍らで眠る父の悲哀と甘やかな妄想を描く「初夜」。 バーで独り飲む女にバーテンダーが語った奇妙な体験「眠れる美女」。 可愛かった妹の人生が低迷してゆくのを見守る兄の心理「いもうと」。 初めての不倫にふみだす妻のためらい「春の海へ」。 故郷の町に戻ってきた三人の女たちに渦巻くねたみと憎しみ「帰郷」など、10篇の恋愛官能小説集。 解説・東村アキコ *本書は2005年6月に文藝春秋より刊行された文春文庫『初夜』を改題し、解説を加えた新装版です。収録している短篇は同じです。
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3.1第159回芥川賞受賞作。単行本未収録の2篇を加えて、待望の文庫化。 春休み、東京から東北の山間の町に引っ越した、中学3年生の少年・歩。 通うことになった中学校は、クラスの人数も少なく、翌年には統合される予定。クラスの中心で花札を使い物事を決める晃、いつも負けてみんなに飲み物を買ってくる稔。転校を繰り返してきた歩は、この小さな集団に自分はなじんでいる、と信じていた。 夏休み、歩は晃から、河へ火を流す地元の習わしに誘われる。しかし、約束の場所にいたのは数人のクラスメートと、見知らぬ作業着の男だった――。少年たちは、暴力の果てに何を見たのか――。 「圧倒的な文章力がある」「完成度の高い作品」と高く評価された芥川賞受賞作。 「あなたのなかの忘れた海」(「群像」2016年8月号)、「湯治」(「文學界」2020年6月号)の、2篇を文庫化にあたり収録。 ※この電子書籍は2018年7月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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3.0【逝去直前まで推敲を重ねた津島文学の到達点】 「津島さんはまだこの小説の中に生きていて、読む私たちとともに、奮闘している」――星野智幸(解説) でもあのことばだけは消え去らない。 忘れていたはずなのに、ひどいことばを聞かされたという感触だけは残されていた。 その痛みだけは忘れられなかった。(本文より) 15歳で早逝したダウン症の兄との思い出、ヒトラー・ユーゲントの来日。 「あこがれ」、障害、病気、戦争、差別、「不適格者」……大家族二世代の物語はこの国の未来を照射する。 『火の山―山猿記』で第34回谷崎潤一郎賞・第51回野間文芸賞を受賞した著者による、絶筆長編。 ※この電子書籍は二〇一六年八月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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3.0大手出版社を定年退職後、カルチャースクールで小説講座を持つ澤登志夫、69歳。 女性問題で妻子と別れて後も、仕事に私生活に精力的に生きてきた。 しかし、がんに侵されて余命いくばくもないことを知るとスクールを辞め、人生の終幕について準備を始める。 講座の教え子・26歳の宮島樹里は、自分の昏い記憶を認めてくれた澤を崇拝し、 傍にいることを望むが、澤はひとり冬の信州へ向かった。 澤は、最後まで自分らしく生きることができるのか。「ある方法」を決行することは可能なのか…。 プライド高く情熱的に生きてきた一人の男が、衝撃的な尊厳死を選び取るまでの内面が描きつくされ、 深い問いかけを読者に与える傑作長編。 解説・白石一文 ※この電子書籍は2018年3月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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3.0ウーパールーパー、カエル、蛾、蝶と、ちょっと不思議な生き物を飼う人々が、いつしかその生き物たちに依存するかのごとく、不穏な領域に踏み込んでいく姿を描いた異色連作集。 全米図書賞受賞で話題の作家の最新作。 夫との生活に疲れた中年女は、家にいた毛虫に「トーマス」という名前をつけて飼うようになった。トーマスへの愛着が深まることで、なじんでいると思っていた夫のことが、いままでとは違って見えてくる。夫の本心とは何なのか。夫の好きなものは何か。夫は何に関心があるのか。夫は何も関心を持っていないかもしれない。じゃあ、わたしは夫の何に関心があるのか。何もないかもしれない。わたしは自分に対しても関心を持つことができない。どうしてこんなことになってしまったんだろう。何がいけなかったんだろう? 疲れた。ほんとうに疲れた……。中年女の心情をリアルに描く――「イボタガ」。 ウーパールーパーに「アポロ」という名前をつけたコンビニで働く青年の話――「ウーパールーパー」。 シングルマザーの母親との軋轢にもめげず、健気に生きていこうとする少年の話――「イエアメガエル」。 「トーマスは羽化しませんでした」という謎のメッセージと共に妻に去られた中年男の話――「ツマグロヒョウモン」。 ※この電子書籍は2017年12月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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3.0パルコ系クリエーターとして、バブルをど真ん中で経験したヒキタクニオが 自らの仕事と恋愛、青春の日々を回想するドキュメンタリーノベル。 1967年、故郷の福岡を出て東京へ。大学在学中にイラストレーターとしてデビューし、 やがて大規模なグラフィック展覧会「80 sグラフィックパワー展」の顔ぶれに20代で抜擢され、 パルコ系クリエイターの仲間入りを果たす。 それがきっかけで、汐留の国鉄跡地に造られることになった 大型ライブハウス&ディスコ「サイカー PSYCHER」の内外装を任され、 さらにゲームファンタジア渋谷の外壁や店内アートを担当する。 時はバブル全盛時代。数々の変人たちと出会いながら、 充実した仕事の毎日を送る一方で、同郷の恋人と別れてモデルと結婚。 絶頂の日々を過ごしつつも、確実に時代の変化を感じていた――。 解説 日比野克彦 バブル当時、著者が出会った人々 空間プロデューサー、コンセプチャー、デザイナー、 女性のアート系プロデューサー、新進気鋭の映画監督、 広告代理店の営業マン、超能力者、老舗ホストクラブの男、 ヤクザの3人組、銀座で豪遊するキング・オブ・バブル社長、 アニメ「ちびまる子ちゃん」を平成のサザエさんに仕立てた男……
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3.0忘れえぬ記憶の中で、男は、そして女も、生きたい時がある。 あれは夢だったのだろうか――大切な人々に思いを馳せる珠玉の十話。 誰もいない家に入って、花を替えテープレコーダーのスウィッチを入れてくる、それだけのこと。小百合が依頼された不可思議な仕事はいったい誰のため?(家族の風景) アンブラッセという言葉を教えてくれたのは、相沢さんだった。フランス語で「抱擁する」という、その意味も――。(めぐりあいて) 夫に怪しい女がいるらしい、何か相談がなかったか、と友人の妻から詰め寄られたが。(ローマへ行こう) たわむれに田舎に向かう幸一が出会ったひとりの行商。見たい夢を見せてくれるという男の誘いに思わず乗った彼の脳裏に現れたのは……。(夢売り) 上記ほか、「第三の道」「文学散歩人」「くちなしの夢」「鈍色の記憶」「夢は嘘つき」「赤い月の夜に」収録。 解説:内藤麻里子 【本書は単行本『アンブラッセ』を文庫化にあたり改題したものです】
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3.0感動の実話!? 廃部寸前のおちこぼれ野球部員が一念発起、エリート大学とカレー対決! 乾作品の新境地は、読めば腹ペコな青春小説!不祥事で廃部寸前の小樽経営大学(通称・樽大)に残ったのは、 主将・森一郎…甲子園の北海道予選で伝説のエラー。ネット上でも笑い者。 ファースト・恵山光…小太りで童顔。貧乏育ちでいい奴。 コーチ兼マネージャー・白石苗穂…一番野球がうまいアイドル。 入部希望者・砂原健介…36歳で新入生。熱血なだけの空回り男。 というポンコツな面々。 廃部を免れるために教授が持ち込んできたのは エリートの北海道総合大学(道大)とのカレー対決!?ヤル気も希望もゼロのメンバーに、エリート大学生達が火をつける? 3回の対決を経て、樽大のダメダメ部員たちはどのように成長していくのか――。 笑って泣ける、カレーなる青春小説です。 夏といえばカレーの季節! おまけに今年は甲子園100周年。 夏休みの読書に最適の、ピリッとスパイスの効いた青春カレー小説!
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3.0「とりあえずニュースを出せ」 東西スポーツで、スクープを連発し異彩を放つ一匹狼の野球面デスク・鳥飼義伸。 異常ともいえるほどスクープに飢えたその姿勢、編集局長から新人まで関係なく叱り飛ばす尊大な態度……。 周囲の人たちは、彼の口癖にひっかけて軽蔑と畏敬の念を込めて「トリダシ」と呼ぶ――。 各球団の人事情報にまで口をだし「影のGM(ゼネラルマネージャー)」と呼ばれ、他紙から恐れられる存在のトリダシは、「なぜ、彼はそこまで〈スポーツ新聞〉、そして〈スクープ〉にこだわり続けるのか? トリダシには、以前、上司に煙たがられ、一般紙の社会部に転属した過去があった。 上からは煙たがられ、下からは恐れられるトリダシとは、いったい何者なのか。 そして、トリダシは、なぜ選手や監督の信頼を勝ち取り、かつ安心して口を開かせて、スクープを取りつづけることができるのか。 女性部下、元野球選手の記者、ライバル紙のエース、球団関係者、一般紙時代の過去を知る同僚、デスクなどの視点から、トリダシの実像とともに、丁々発止の知られざるスポーツ記者の世界の裏を炙り出していく連作短編集。 『ノーバディノウズ』でサムライジャパン野球文学賞、『サイレントステップ』で馬事文化賞候補と、玄人筋から絶賛される本城雅人が、満を持して自らの職業だったスポーツ記者ものに挑んだ勝負作。 横山秀夫氏も絶賛! 「この作者は巧みな投手だ。球筋の読めない心理戦に翻弄された。」 解説・内田剛
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3.0宮城谷ファン必読! 若き日に書いた貴重な現代小説を初公開! 歴史小説家として世に出る以前に書いた現代小説がいま甦る! 未発表作品も含む現代小説五編と詩一編を収録。 小学生の時に身のまわりの世話をしてくれた年上の女・ツルと、故郷・蒲郡の生家の商事会社に勤める美緒。二人の魅惑的な女を描く「バラの季節」。 蒲郡の芸者置屋を舞台にした、川端康成や泉鏡花のスタイルを思わせる若き日の作品だが、師・立原正秋からは「陳腐だ」と赤エンピツで書かれて送り返されたという「秋浦」。 温泉町で土産物店を営む母と新婚夫婦三人の日々を、勤めを止めて母との同居を選んだ夫の視点から描いた中篇「発見者」は、執筆当時四十歳を過ぎ、最後に書きたいことを自由に書いてから筆を折ろうと決心して書いた作品。同じ時期に書いた「買われた宰相」(『侠骨記』に収録)が、後の中国歴史小説に繋がったという。 解説・湯川豊
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3.0佐藤愛子九十歳・奇跡の話題作、待望の文庫化! 老作家・藤田杉のもとにある日届いた訃報――それは青春の日々を共に過ごし、十五年間は夫であった畑中辰彦のものだった。 「究極の悲劇は喜劇だよ」 辰彦はそういった。 それにしても、どうして普通じゃ滅多にないことばかり起るのか。 当時の文学仲間たちはもう誰もいない。 共に文学を志し、夫婦となり、離婚の後は背負わずともよい辰彦の借金を抱え、必死に働き生きた杉は、思う……。 あの歳月はいったい何だったのか? 私は辰彦にとってどういう存在だったのか? 杉は戦前・戦中・そして戦後のさまざまな出来事を回想しながら、辰彦は何者であったのかと繰り返し問い、「わからない」その人間像をあらためて模索する。 枯淡の境地で、杉が得た答えとは。 『戦いすんで日が暮れて』『血脈』の系譜に連なる、かつて夫であった男と過ぎし日々を透徹した筆で描く、佐藤愛子畢生の傑作長編小説。
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3.0自分がまがいものであることは承知の上で、スーパースターになって2010年代を疾走することを夢想する堂上弥子(どうのうえやこ)。 耳の中で鳴る音に連れられ、どこかに行きたいというきもちがつねにうねっていた鈴木笑顔瑠(すずきにこる=ニコ)。 北海道の小さな町で運命的に出会ったふたりの中学生は、それぞれ「ここではないどこか」に行くため、一緒に「仕事」で有名になることを決める。その方法は弥子が後ろに回り、ニコが前面に出るというもの。最初の仕事は読書感想文コンクールでの入選。弥子が書いてニコの名前で応募した感想文は見事文部科学大臣奨励賞を受賞、授賞式にはニコが出席した。 ふたつめの仕事は、史上最年少で芥川賞を受賞すること。ニコの曽祖父の遺品の中にあった小説を弥子がアレンジして応募した小説「あかるいよなか」は、芥川賞の登竜門となる文芸誌の新人賞を受賞する。作品はその後順当に芥川賞にノミネートされるが、それは「てらさふ」仕事を続けてきた、ふたりの終わりのはじまりだった――。 てらさふ――とは「自慢する」「みせびらかす」こと。「てらさふ」弥子とニコがたどり着いた場所とは? 女の子の夢と自意識を描きつくした、朝倉かすみの野心作。 解説・千野帽子
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3.0来日三年目、居酒屋で時給900円のバイトをしながら法律の勉強にはげむ中国人女子大生の林杏(りんきょう)は、ふとしたきっかけで、カード犯罪で逮捕された中国人の通訳を務めることになる。 4時間弱の労働で得た報酬は、15000円! 夕食にいつもより高いデザートをコンビニで買う。林は謝礼のお札をしげしげと眺め、一万円札の福沢諭吉に「万太郎」、5000円札の樋口一葉に「おせん」と名付ける。 コンビニで支払われた「おせん」はあっという間に海を渡り、人間の欲まみれの世界を裏側から見つめることになるが――。 貨幣は世の中を便利にする画期的な発明だけれど、それによって人生を狂わされたりもする。ユニークな構成と奇想天外な展開で好評を博した、傑作〈お金〉小説。
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