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「ことさら深刻ぶるのはよそうぜ」などとカッコいいせりふを吐いてぼくたち二人はおたがい納得して「離婚」したのです。ところがどこでどうなってしまったのでしょうか、ぼくはいつのまにか、「もと女房」のアパートに住みついてしまって……。男と女のふしぎな愛と倦怠の形を、味わい深い独特の筆致で描き出した第七十九回直木賞受賞作品。さらに表題作の続篇の形で書かれた「四人」「妻の嫁入り」、前篇ともいえる「少女たち」の三篇を併録した。
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Posted by ブクログ
いつだったかの夜、いい雰囲気の寝床で、唐突に女の子から「私もあなたも、今は誰とも付き合っていないんだから、こんな夜があっていい」などと耳元で囁かれ、強烈に萎えてそのまま泥のような眠りに落ちたことがあった。今となっては、あの頃はいろいろと青かったんだから仕方ないと整理している。 ダラダラと離れられな...続きを読むい男と女。誰とも付き合っていないんだから、離婚していようが同居したって構わない。凹凸のない生活を抑揚のない文体で示す、名作。
離婚をすることになったにもかかわらず、結婚していたころとあまり変わりばえのしない、おたがいにもたれあうような生活をつづける男女をえがいた連作短編集です。 ライターの羽鳥誠一は、彼のもとに出入りしていた女性のひとりであるすみ子から「お妾にしてくんない」ともちかけられ、ともに暮らしはじめます。視力が悪...続きを読むいためもあっておよそ生活能力が高いとはいえないすみ子と、先行きが見通せない職業のためにその日暮らしの意識が抜けない羽鳥は、たがいに不満をいだきながら結婚生活を送りますが、ついに羽鳥は「別れようじゃないか」ということばをもちだし、すみ子もその提案におうじます。 羽鳥は、あたらしくマンションに暮らしはじめたすみ子の生活費を払うために、これまで以上に多くの仕事を引き受け、身のまわりに気をくばる時間はありません。一方すみ子も、自立した生きかたをいろいろと思いえがくものの実現はむずかしく、けっきょく両者は離れることができません。やがてベティという女性が羽鳥の秘書となりますが、そのことがすみ子の心の平安をうしなわせ、羽鳥は彼女に応対せざるをえません。 誠一の視点から物語が進行するせいもあって、すみ子の幼さが強調されている描写がやや気になるものの、おたがいに依存しあってあまり立派とはいえない生きかたをつづけていく人間のすがたを、どことなくユーモアを感じさせるかたちに表現した作品といえるように思います。 巻末の短編「少女たち」は、出版社を辞めて独立することになった男が、やはり前の職場でいっしょに働いていた佐久間瑞子をはじめ若い女性たちを次々に雇うことになり、「遊園地のオーナー」のような気持ちで自由にふるまう彼女たちの生態を目の当たりにするという物語です。
初めて題名を耳にした時の悪印象と打って変わって文章が非常に巧い!面白い!と短期間で読み進みました。 主人公の内省が独りよがりじゃないのが、素敵だなぁと思いました。 男性側の考え方(一般的じゃないかもしれないけれど)の種類が増えたので良かったです。
1978年の直木賞。少年マガジンの「哲也」主人公のモデルともなった著者は、麻雀の世界では伝説の人。その人が書いた大衆向け小説。今となっては半世紀前の古典文学。 個人的には、受験生時代のセンター型模擬試験でこの人の小説が出た時、「あの哲也じゃん!」と喜んで解いたら、普段はなんとか平均点に届くレベルだっ...続きを読むたのが、50点満点をその時だけ取った思い出。 めでたく離婚しました、から始まる男女の縁。なんとなく昭和レトロで、どこかアウトローな、それでもよくありそうな、不思議な雰囲気。
納得ずくで離婚したのに、ぼくはいつの間にかもと女房のところに住みついているのです─奇妙な男と女の世界を、独特のほろ苦いユーモアで活写した直木賞受賞作
第79回直木賞。 登場人物はたったの2人。夫・誠一と、妻・すみ子。話は2人のなれそめから、6年経って離婚したのに、以降もずるずる付き合っているという話。 話自体はなんともへんちくりんで滑稽だが、両者の人間味が出ていて密度の高い作品。 著者・色川武大といえば、別名・阿佐田哲也。麻雀小説でおなじみの作家...続きを読むがこういう作品で直木賞を獲るんだから、きっと器用なんでしょうね。
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