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北海道在住の元ブリキ職人の夏目清茂、74歳。ある日、若い友人とスナックで1杯やっていたところ突然脳梗塞の発作を起こし、昇天。その死を悼む娘・息子、遠い昔に別れた元妻、そしてさまざまな友人・知人たち……。葬儀の日まで、そして葬儀の際に彼らが思い出す清茂の姿は、機嫌がよく、優しく、世話好きで――謎の部分もあった。清茂の葬儀を中心に、いくつもの人生が追憶と回想の中で交差する。『田村はまだか』で吉川英治文学新人賞を受賞した著者の傑作長篇小説。
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Posted by ブクログ
「田村はまだか」で魅了され、以来、ずっと追いかけている、札幌在住の朝倉さんの近著。なんだか、抱きしめたくなるような小説です。 朝倉さんは端正な文章を書く作家ではなく、どこか素人っぽさを残しているのが持ち味でしょう。肩の力がいい感じで抜けていて、読む方も構えずに、朝倉さんが拵えた物語の世界に没入できま...続きを読むす。 「抱きしめたくなるような」感慨を持ったのは、登場人物たちが、とても身近に感じられるから。主人公の清茂はもちろん、直、素子、光一郎、その他大勢。 いずれも、どこにでもいるような普通の人々ですが、それぞれに秘密、というほど大げさではありませんが、心にやっかいなものを抱えています。 その心の中のやっかいなものは、恐らく、誰でも多かれ少なかれ抱えている種類のもの。 それを朝倉さんは、丁寧に丁寧に、借り物ではない自分の言葉で描写していきます。その手際が実に見事です。 本作の舞台は「葬儀」。登場人物それぞれが故人(清茂)を偲び、偲びながら自分の歩んできた人生を振り返ります。「ああ、分かる分かる」と何度も共感しながら読み耽りました。 私も何度か葬儀に出たことがあります。久々に顔を合わせる親戚たちは、みんな表面上は概ね平然としていますが、彼ら彼女らも心にやっかいなものを抱えながら、折り合いをつけたり、もがき苦しんだりして生活を送っているのだということに思い至りました。 人間って愛おしい。そう思わせる小説でした。いいなぁ、朝倉かすみさんは。
初めは、どう読み進めればいいのか ペースを掴めないところがあって。 読んでいくうちに、夏目家の三軒隣くらいから この家族を見ているような気持に。 それにしても、家族ってやっぱり厄介です。
元ブリキ職人・夏目清茂が亡くなって、その息子、娘、元妻、友人知人など、葬儀に集う人々の色々な思いを描いた連作小説。 関わりがあれば、必ず故人に対する思いはある。その思いにけりを付ける為に、通夜と告別式があるのかもしれない。残った者たちの人生が変わるわけではないが、考えることは多少変わるのが葬儀の日。
夏目清茂の死をきっかけに、お葬式に集った人びとがそれぞれに想いをめぐらせる。清茂との関わり通して描かれる人間模様が面白い。そしてそれぞれが抱える秘密、気持ちをこっそり覗き見ているような感覚は不思議。 死ぬまで毎日を生きる。それをどう生きるかか大切なんだろな。それにしても詩織ちゃんの大人達を見る観察眼...続きを読むはすごいね。
先々を謀ることなく、今できること、すべきことに一心に取り組む。そうすることで移ろう一瞬に気持ちを宿らせることができると詩織は理解する。 難しいことのようだが、でも、形は違えどけっこうみんなそうしているようにも思える。できなかったときには後悔することだってある。ゆえに清茂のことをうらやましくも感じるの...続きを読むだと思う。
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