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Posted by ブクログ
豊﨑由美の書評を読んで、何が心に引っ掛かったのかは忘れたけれど、名前だけは忘れずにずっと気にしていた本を、やっと読んだ。
うん。やっぱり読みたかった本だ。
主人公はどれも30~40代の独身女性で、結婚をするかしないか、職場の位置関係(お局さまとの関係)で悩んでいたりするのだけれど、そういう表面的な部分ではなく、内側の形がすごく私に似ていると思ったのだ。
後ろ指を指されまいと善を身体じゅうに巻きつけて鎧にしているところ、こちらから頭を下げるなんてというプライド、誰かわかってくれる人がいるはずだという受け身で傲慢な自信。
いや、これ、私だわ。
特に、北海道新聞文学賞を受賞した「コマドリさんのこと」のコマドリさんは、まさしく若かりし頃の私だと言える。
痛いなあ。
なんでこんなに私にフィットする人物を作ることができるのだ?と、著者略歴を見たら、学校の先輩でした。
学校にいた時期は被ってはいないけれど、誤差の範囲でほぼ同世代。
同じ街並みを歩き、同じような体験をしてきたのかしらと思ったり。
それでも近親憎悪で二度と見たくないと思うのではなく、イタイな~と思いつつわかるわかると読み進められたのは、文章に遊びがあるから。
その遊び加減も実に好みで。
肩をすくめるだけの燃費の少ないお辞儀 とか
浴場は、浴場の「場」の字が泣くぜといいたい狭さだった とか
普段、そういうことあるよね、と見逃していることを、いちいち拾い上げているのに煩雑ではないそのバランスの心地よさ。
作品の配置順もよいと思う。
最初の「肝、焼ける」も最後の「一入」も、ハッピーになれることを私は祈るよ。
そして、これからも彼女の本を読んでいこうと思った。
Posted by ブクログ
『田村はまだか』の朝倉かすみさんの、短編5作を含む処女単行本。表題作の「肝、焼ける」とは激しいじれったさを表す北海道方言。31歳の真穂子は、遠距離恋愛になってしまった24歳の彼・御堂くんのいる稚内の気持ちを確かめたくて、唐突に彼のいる稚内に訪ねてきてしまう。ところがいきなり行ってもすぐに会えるわけではなく、彼の部屋のポストに「電話下さい」とか突っ込んではうろうろ、また手紙いれてはうろうろを繰り返す。 「肝、焼ける」と言ったのは真穂子ではなく、彼女を轢いてしまいそうになったトラック運転手が言った言葉だが、もちろん彼女自身にもこの言葉が反芻されていくわけで。いろんな種類の「じれったさ」が錯綜しているこの作品の魅力は、最後のひと言にきゅっと凝縮されている。チャーミングな作品だと思う。
Posted by ブクログ
うーん、レビューが難しい。
こういう日常生活の中のちょっとした感情のほころびみたいな話は実は苦手であんまり読まない系統の話。
だから、短編集のはじめのほうは、うーんという感じで読み飛ばしていたんだけど、コマドリさんのことに若干捕まる。
なんの変哲も特徴もない普通であり続けた女性のこれまでの人生の話なんだけど、普通であり続けることへのこだわりというかプライドというか思い入れが感じられます。
そうか、際立って特徴がない人もこういう思いの中で、個性?とこだわり?をもって毎日生きているのかという発見がありました。
そう思って、他の作品を読み返してみると、なかなか面白い。
春季カタルあたりは秀逸。
日常のほころびと日常への回帰がうまく描かれている。
こういう風にやさしく無理なく、日常のループから抜け、また戻れば、強いあわせなふつうの日常生活を送れるんだという感じ。
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