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利発だが酷い痘痕の姉ふゆ。逆上せ癖で縹緻よしの妹りよ。幼くして父を亡くし、ふゆは手習師匠の手伝いに、りよは船宿の下女奉公に出された。師匠の養子で禍々しいほどに歪んだ性癖をもつ宗三郎から手籠めにされたふゆは懐妊するが、現人神と崇められる女医者と出逢い、彼女の人生は大きく変わっていく。自我に目覚めた主人公が、女の生と向き合う、時代小説の新しい扉! 第175回直木賞受賞作!
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Posted by ブクログ
まるで哲学書のようだった…!
本作に直木賞を受賞させるなんて日本の文学界もまだまだ捨てたもんじゃないなって思いました
読んでいる最中ずっと脳が爆速回転しているような感覚に陥りました
けんぐゎい=圏外、というタイトルもすごく良いです
この世の中で圏外扱いされてしまった者たちが自分らしく生きる場所を得るまでの物語でした
シスターフッド好きな人に刺さると思います
舞台は江戸時代
理不尽な男社会の中で権利など無いに等しい女性たちが、ルッキズムや差別に苦しみながらも自分自身をありのままの姿で受け入れ安心して生きていく場所を作り上げていくお話です
中盤から思いもよらぬ展開となり、しかしそれがあるべき姿へと進んでいく様は読んでいて気持ち良かったです
また、ジェンダー論ははるか昔からのテーマでもあったのだな、と改めて思わされました
人として生まれた者の宿命や使命などについて考えさせられ、アイデンティティとは何なのか、哲学的な思考も刺激されました
とても面白かったです
Posted by ブクログ
幼い頃に疱瘡で痘痕が残ってしまった賢い姉のふゆと、のぼせ(痙攣とか発作でもなく、突然取り憑かれた状態になる?)を抱える妹のりよという美人姉妹の物語。それぞれ親戚のおじの計らいで奉公先が決まるものの、1人はその若さ美しさゆえ、1人はその痘痕ゆえに男主人に強姦されるところから人生の歯車が違う方向へ走り始める。
私が思うに書かれているテーマは3つあって、一つ目は女の性は女が決めるという考え。これは産医を継いだふゆが目指す「子の星」となる考え方だが、my body my choiceを江戸時代という男尊女卑どころか長男のみが日の目を見ていた時代に実現したら…という話なのかなと思った(実際にこんな女性がいたのだったら素晴らしいなあ)
二つ目は運命とは、自分の人生とは、という主題で、とある登場人物はこれを籤引きに例える。しかし当たりくじを引いたのであれば、自分の運の良さ、引き寄せの力で片付けていいが、障害や病というものまで自己責任で「引き当てた」人のせいにして良いのだろうか。置かれた場所で咲きなさい、は置かれた場所がそこそこ良ければいいが、持病や障害の責任を本人に負わせすぎではないか。そんな考えもよぎって考えてしまう。
三つ目はこれはあまり私は作者の意図するところを十分理解できていないのだが、ふゆが「ガストホイス」(療養所)を設立するきっかけとなる洋書と、その背景にあるキリスト教的世界観だと思う…禁書であるはずのポルトガル語、スペイン語、そしてオランダ語の本をチュウ太という登場人物が諳んじることができるという文脈でその内容が出てくるのだが、神だろうか病というか運命だろうかの前においては、何人も平等で、何人も治療を受けられるという西洋の考えに作者は共感したのだろうか。それがこの時代では、勝手に孕まされて勝手に堕される立場であった貧富に拘らない女性に差し伸べられる手である、ということか。そこにはリンボという子供の死後の世界とinfiernoという地獄も描かれ、なまじカトリック的世界観は馴染みのない世界ではないので、ふむふむと思いながら読んだ。
Posted by ブクログ
読んだ後に本屋のカバーを外すと装丁が素晴らしいことに気がつく。けんぐゎい(圏外)である主人公のふゆ達を表現しているのだろうと思うが、ふと、ふゆを「けんぐゎい」と言い、ふゆを手籠にした彼こそ圏外で、宗三郎の事でもおかしくはないなと思う。
江戸時代の話。ふゆは縹緻(きりょう)良しで頭も良い子で、おっかあは玉の輿にのると思っていたが、6才の時に疱瘡に罹り、見た目が悪くなった。ふゆは手習い所に手伝いに行くようになり師匠にも認められるようになる。師匠は養子(後継)に美しい宗三郎を迎える。ふゆは宗三郎に恋焦がれるが、宗三郎はふゆを手籠にして、ふゆは妊娠する。
宗三郎は妻のほのをはじめとして「けんぐゎい」である見た目が悪い女たちにしか性的に興奮しない。しかも子どもは残したくない。
ルッキズム、社会的地位、ジェンダーなど、他からは「けんぐゎい」でも、たとえ自らもそう感じていたとしても、それに捉われることなく力強く誠実に生きることが素晴らしく、人生を成功させる鍵であることを噛み締めることができる作品。
Posted by ブクログ
圏外、とはじき出された女たちが、自分たちの居場所として駆け込み寺のように女たちを受け入れる「ガストホイス」をつくるまで。
「ガストホイス」は「病院」と訳されている。
産医となったふゆが自分の理想のガストホイスを作り上げていく過程は読んでいてワクワクした。
土地を買い、建物を調えていく。処置室のほか、入院する部屋(畳敷)、看病人が寝泊まりする部屋、台所、竈、井戸、厠、風呂も据えた。
裏庭には、生まれることのできなかった赤ん坊の「りんぼ」がある。
仲間として信用できる人手も呼び寄せていて、もう看病人を続けて10年。
4種の店も併設する。
①薬を商う生薬屋
②日用品、化粧品などを商う小間物屋
③衣類や布団、器物などを貸す、損料屋
④奉公口や赤ん坊を周旋する、口入れ屋
ワケありの女が多いので、関係者が乗り込んでこないとも限らず、安全のため用心棒も配置したい。
元、取的(とりてき/身分の低い力士)に小間物屋を任せることで用心棒を兼ねた。
ーー完璧ではないか!!ーー
朝倉かすみさんの著作は何冊か読んだことがあったけれど、『けんぐゎい』は最初の方はちょっと読みづらく感じた。
時代物なのはわかるが、わざわざそっちの漢字使うの?みたいな部分もあって。でも、その漢字でなくてはいけない理由があるのだろうと納得はしている。
お話が展開していくうちに、どんどん引き込まれて、文体は気にならなくなって行った。
「けんぐゎい」は、宗三郎という男が、疱瘡(ほうそう)の痘痕(あばた)が全身に残るふゆや、火傷の痕のあるほの、肥満体のつるなどに対して放った差別の言葉である。「おまえは、一生、外側(圏外)にいるしかないんだ。わたしらの側(がわ)には入れない」
現代でもこういう男は居そうであり、虐げられた女たちが立ち上がる物語も作れそうだが、それは全く違う色合いのお話になるだろうと思う。
法律も江戸時代と違っているし。
やはり、この物語は江戸時代が舞台であることによって、おどろおどろしさもファンタジー味もある作品として成立しているのだと思う。
「ゐんへるの」ヤバいし。
神隠しが通用する時代でないとね。
宗三郎も、自分が違う意味で「けんぐゎい」だという自覚があったのだろう。見た目は美しくても、存在としての圏外。
そして、女たちは堂々と、自分たちは「けんぐゎい」であり、「くゎいぶつ」であると胸を張る。
「怪物」という呼び名はしばしば、傑出した人物に対して使われることもあり、プラス面も持ち合わせていることも。
「ウニ坊」のグッズあったら私も欲しいな。
Posted by ブクログ
江戸時代後期
父を早くに亡くした姉妹
「圏外」に住む家族
アバタのふゆ(姉)は賢く優しい
母の家事の手伝い、妹りお想い
猫のようにクルクルかわる母親を心の中で諦めと赦し,の清々しい竹林に仕立てることのできる人、生まれた時から身体中にあるアバタを、嘲笑を寛容と堪忍で受け入れる心の竹林も管理する人…
だけれど、胸の真ん中には真白と真黒を持つふゆ
手習場で自分に合った生活をして、やっと幸せを感じ始めていた矢先、恋していた師匠の養子・宗三郎に希望しない妊娠をさせられてしまう
本妻のほの,は独自の考えを持ち、夫のタネはたくさん蒔かれ、子供は母親は誰であれ(宗三郎はふゆを含めて下女3人を手籠めにしていた)たくさん生まれるといい、と言う
宗三郎には堕ろせと脅され、実母は13歳年下と再婚・懐妊し,そんな中、宗三郎に紹介された産科の女医「おこまさま」に連れて行かれたふゆ…
ふゆは女医の屋敷に入ってすぐ、自然堕胎して気絶する…女医は実母の再婚相手を助手兼語り部として使い、ふゆに自分の産科の知識、技術、器具、精神を全てを伝えたいという…
昔は医学部入って…国家試験を受けて、研修医して,専門研修して,,というのではなく、医業は家族や弟子に伝える形で修行したのだ、、10年間ふゆは修行したのだ…
産科は難しい、、女は産まされてはいけない、産めないことがあってもいけない…その手伝いをする,この世に来れなかった赤ん坊に懺悔したい思いは書物から見つけたリンボ(死後の中間的な場所)に皆んないる,と考えて納得しようとする…
随分な時間をかけたが、アバタ、ぶつぶつへの引け目は拡張する,何に対しても申し訳なさを生む、と思っていたふゆはそれをやっと払拭できた…
彼女はとうとう理想的な産科クリニック「ガストホイス」を建てる、、手習所や図書室、のちに薬局、こまものやまである、、里子相談などもできる…困った者が無料で住める長屋まで、、「圏外」者の夢の国だ
妊婦と腹の双子、ブランコに乗っているように生死をさまよっている,ほのと同じく血筋を大事にいきむ14歳の出産場面、懐妊したほのを探しにガストホイスに乗り込んでくる宗三郎の最期…そしてそして…
この世に肉の塊として生まれ、素質や環境や誰かに選ばされたもの、選んだもの(定かではない)が肉に入って味になり,人が出来上がる…
神様みたいに崇められるようになった産科の女医ふゆの、自分を肯定するウニコールや真白と真黒を認知して、、産み落とされて生きることが出来る人、個人個人の味の形成に思いを馳せる、、そんな哲学に恐れ入りました…
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小説・文芸
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