あらすじ
31歳になった。遠距離恋愛中、年下の彼は何も言ってくれない。不安を募らせて、彼の住む町・稚内をこっそり訪れた真穂子は、地元の人たちの不思議なパワーを浴びて、なにやら気持ちが固まっていく――。30代独身女性のキモ焼ける(じれったい)心情を、軽妙に描いた小説現代新人賞受賞作を含む、著者の原点、全5編。
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Posted by ブクログ
自己中心的・自惚れ・自意識過剰・コンプレックス・頭でかち
愛情不足・恋愛下手・言葉遊びな感じ。
「田村はまだか」にもハマったが、こっちに鞍替え。
言葉のチョイスがとても面白い作者さんだと思う。
伊坂とか村上とかの「センスに自信ありです皆も感じ取って!」のと違って、
スッと自然にコトバが頭に響く。
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「肝、焼ける」と「春季カタル」が好き。
自分ではおよそ体験しないようなストーリーなのに、どの主人公の女性もなんとなく感情移入させてくれるのが面白い。認めたくないけどちょっとわかるよーその気持ちー。
ほわほわキラキラした飾り付けの無い、残暑のような恋愛小説だった。
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稚内が舞台なので読んでみました。稚内にしてはずいぶん汗がべっとり感じられる暑い日の話でした。他の話も色んなタイプの女性の焦ったい話でしたが、意識高い系気取りの今時の人ではないので落ち着いて読めました。「一番下の妹」は映画みたいな話で好きです。そして解説が良かったです。こんなに深く読み込めなかった。
それにしても豊富温泉はせっかくなのでちゃんと朝風呂まで堪能して欲しかったよ。
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面白かった。タイトル作は稚内の風景と方言が印象的。巻末の一編は豊富温泉が舞台で、道北に地縁がある者としては嬉しい。
すぐには理解しがたい登場人物の言動など、引っかかりを随所に感じさせながら読ませる。モヤモヤした言葉にならない感情を身体や小道具への微細な視点で表現し、明確には語らない。ハッとさせられることの多い、心に残る短編集。
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30~40代女性の心情を描いた短編5編。言葉選びが巧みで、もうそうとしか表現しようがないくらいに目に飛び込んでくる。脳内で映像化される。
標題作は心臓を鷲掴みされた感覚だったが、他にも毛色の違った良作が鎮座しております。
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豊﨑由美の書評を読んで、何が心に引っ掛かったのかは忘れたけれど、名前だけは忘れずにずっと気にしていた本を、やっと読んだ。
うん。やっぱり読みたかった本だ。
主人公はどれも30~40代の独身女性で、結婚をするかしないか、職場の位置関係(お局さまとの関係)で悩んでいたりするのだけれど、そういう表面的な部分ではなく、内側の形がすごく私に似ていると思ったのだ。
後ろ指を指されまいと善を身体じゅうに巻きつけて鎧にしているところ、こちらから頭を下げるなんてというプライド、誰かわかってくれる人がいるはずだという受け身で傲慢な自信。
いや、これ、私だわ。
特に、北海道新聞文学賞を受賞した「コマドリさんのこと」のコマドリさんは、まさしく若かりし頃の私だと言える。
痛いなあ。
なんでこんなに私にフィットする人物を作ることができるのだ?と、著者略歴を見たら、学校の先輩でした。
学校にいた時期は被ってはいないけれど、誤差の範囲でほぼ同世代。
同じ街並みを歩き、同じような体験をしてきたのかしらと思ったり。
それでも近親憎悪で二度と見たくないと思うのではなく、イタイな~と思いつつわかるわかると読み進められたのは、文章に遊びがあるから。
その遊び加減も実に好みで。
肩をすくめるだけの燃費の少ないお辞儀 とか
浴場は、浴場の「場」の字が泣くぜといいたい狭さだった とか
普段、そういうことあるよね、と見逃していることを、いちいち拾い上げているのに煩雑ではないそのバランスの心地よさ。
作品の配置順もよいと思う。
最初の「肝、焼ける」も最後の「一入」も、ハッピーになれることを私は祈るよ。
そして、これからも彼女の本を読んでいこうと思った。
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『田村はまだか』の朝倉かすみさんの、短編5作を含む処女単行本。表題作の「肝、焼ける」とは激しいじれったさを表す北海道方言。31歳の真穂子は、遠距離恋愛になってしまった24歳の彼・御堂くんのいる稚内の気持ちを確かめたくて、唐突に彼のいる稚内に訪ねてきてしまう。ところがいきなり行ってもすぐに会えるわけではなく、彼の部屋のポストに「電話下さい」とか突っ込んではうろうろ、また手紙いれてはうろうろを繰り返す。 「肝、焼ける」と言ったのは真穂子ではなく、彼女を轢いてしまいそうになったトラック運転手が言った言葉だが、もちろん彼女自身にもこの言葉が反芻されていくわけで。いろんな種類の「じれったさ」が錯綜しているこの作品の魅力は、最後のひと言にきゅっと凝縮されている。チャーミングな作品だと思う。
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生きるって痛いんだ。
生きている以上、たとえ自覚していても
直すことができない痛みを人は持っている。
切なくて、笑えて、なんだかいとしくて。
大人の女性、私にも、友人にも、大いに
当てはまるところがあると感じながら
読み終えた。
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うーん、レビューが難しい。
こういう日常生活の中のちょっとした感情のほころびみたいな話は実は苦手であんまり読まない系統の話。
だから、短編集のはじめのほうは、うーんという感じで読み飛ばしていたんだけど、コマドリさんのことに若干捕まる。
なんの変哲も特徴もない普通であり続けた女性のこれまでの人生の話なんだけど、普通であり続けることへのこだわりというかプライドというか思い入れが感じられます。
そうか、際立って特徴がない人もこういう思いの中で、個性?とこだわり?をもって毎日生きているのかという発見がありました。
そう思って、他の作品を読み返してみると、なかなか面白い。
春季カタルあたりは秀逸。
日常のほころびと日常への回帰がうまく描かれている。
こういう風にやさしく無理なく、日常のループから抜け、また戻れば、強いあわせなふつうの日常生活を送れるんだという感じ。
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デビュー作『コマドリさんのこと』を含む短編集。
表題作は31歳の主人公が、24歳の恋人が単身赴任中の稚内を突然訪ねる。
彼が自然消滅を狙っているかも、もしかしたらもう別の子と付き合っているのでは、というもやもやした気持ちを抱えて。
来たはいいものの郵便受けに置手紙を放り込むだけでチャイムも押さず電話もしない。
稚内の人々とささやかな交流があり、最後はやりたくなかった「みっともない」ことをする。
みっともなくても好きだから、というストレートな姿がいい。
『コマドリさんのこと』はコマドリさんのキャラクタに疲れた。
終わりはよかったけど、展開が行ったり戻ったりでぐるぐるしていてちょっとだるい。
『春季カタル』は婚約者の家から帰る途中に行きずりの男と寝てしまうなんだかファンタジーみたいな雰囲気。
でもこの作品には、朝倉さんの作品に頻出する「どう考えても最悪な男」を王子様だと信じる女像が色濃く出ている。
好きだなと思ったのは40代独身の同僚2人の間で上手く立ち回る主人公を描いた『一番下の妹』と、13年間付き合った恋人と別れそうな主人公が旧い友人と温泉に行く『一入』
この短編集は割と前向きになれる気がする。
いや、「みっともなくてもいっか」と開き直れるそんな感じ。
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なかなか良かった。
デビュー作のコマドリさんんことも肝、焼けるも。
どちらも三十路を越えた女の話。
真穂子の年下の恋人との関係にやきもきするさまはリアル。
コマドリさんの三十路を超えても処女な乙女おばさんもリアル
ぞっとするくらいに。
解説の豊崎さんのコメントも好きです。
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面白い。これはアラサー独身女が読むから面白いんだろうなあ。こんな小説書く作者ってどういう女なのだろう。友達になるのは怖い気がする。
だけど、こういう独り身のジリジリ感って男は感じないのだろうか。絶対感じてると思うんだけどな。そんな小説あるのかな…?
Posted by ブクログ
独特な文体で綴られる一冊。
文章なのに何か軽妙で、語呂がいいのかな? つい、口にしてしまいそうなんです。
微妙な年頃になった女性の心の機微というか、気持ちの揺れというか、打ち捨てられない頑なさを、どこかおかしく寂しく上手く表現している感じがします。
Posted by ブクログ
一番最初の「肝、焼ける」のラストが、わたしにはちょっと肩すかしだったので、苦手なタイプかなと思ったけれど、すぐに取り消し。おもしろかった!
「肝」も、情景が頭に浮かぶし、先を楽しみに、どんどん読み進めたい感じだったので、余計にラストで「あら?」と思ったのだけれど、他の話はどれも、読んでいるときも読み終わったときも、おもしろくて満足感に浸れた。
特に、「コマドリさん」。
今まであまり読んだことのないタイプ。
この作家さん自体、わたしには、今までにないタイプだけれど、もっと読みたいと思わせられた。
うれしい出会い◎
Posted by ブクログ
読んでいて居たたまれなくなりそうないい歳をした女性の痛々しさを、同世代の女性が描いているところが複雑です。同性が読むと笑い飛ばせるのか、苦笑いするのか。
オトコである自分には謎です。
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5つの短編が収められた作品。著者のデビュー作のほか、表題の『肝、焼ける』の2つが文学賞を取っていたようです。
巻末解説の豊崎女史は全作品を絶賛してましたが、個人的には『肝、焼ける』と最後に置かれた『一入』以外は、それほど面白いとは思えず。まぁ、すべての作品において主人公が妙齢の(時に妙齢以上の)独身女性なので、共感して読めということに無理があることを考えると、仕方ないか。
主人公とされている女性と同じような立場の方が読んだら、どんな印象を持つんだろう、というところが、ちょっと気になりました。共感なのか、同族嫌悪なのか、憐憫なのか。
それによって、この著者の作品が今後も読まれ続けるかどうかが決まるのかもしれません。なんせ、上に書いたとおり、男がこの手の作品を同調して読める可能性はあまり高くないだろうから。
Posted by ブクログ
短編集。
「コマドリさんのこと」は読んでいて辛いほど(でもくせになりそうな)乙女なおばさんの話。
イタイけど、最後はちょっとだけ未来を感じさせる終わりだったのでよかった。
「一入」は、コマドリさんの後だからか、妙に幸せな気持ちになった。
13年つきあった恋人にプロポーズをしたら「考えさせて」と言われ、ショックを受けつつ女友達と温泉旅館へ行く話。
Posted by ブクログ
タイトル買い。
帯には三十代独身女性のじれったさを軽妙、鮮烈に描いた小説現代新人受賞作を含む、全五編・・・ということでここも気になり購入。
解説の豊崎由美という書評家がこの小説家、朝倉かすみを大絶賛しているのであるが、それほど・・・というわけではないが、中年の入り口に立つ女性をなかなかに良く表現していると思う。というのも著者が40代ということもあるかもしれないが、それをうまく読者に伝えることができているのではないか。なかでも「コマドリさんのこと」は、何だか痛い痛いぐらいに伝わってくるものがあった。
ただ他の作品も絶対読みたいというような気にはさせられなかった。