あらすじ
31歳になった。遠距離恋愛中、年下の彼は何も言ってくれない。不安を募らせて、彼の住む町・稚内をこっそり訪れた真穂子は、地元の人たちの不思議なパワーを浴びて、なにやら気持ちが固まっていく――。30代独身女性のキモ焼ける(じれったい)心情を、軽妙に描いた小説現代新人賞受賞作を含む、著者の原点、全5編。
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Posted by ブクログ
「肝、焼ける」と「春季カタル」が好き。
自分ではおよそ体験しないようなストーリーなのに、どの主人公の女性もなんとなく感情移入させてくれるのが面白い。認めたくないけどちょっとわかるよーその気持ちー。
ほわほわキラキラした飾り付けの無い、残暑のような恋愛小説だった。
Posted by ブクログ
デビュー作『コマドリさんのこと』を含む短編集。
表題作は31歳の主人公が、24歳の恋人が単身赴任中の稚内を突然訪ねる。
彼が自然消滅を狙っているかも、もしかしたらもう別の子と付き合っているのでは、というもやもやした気持ちを抱えて。
来たはいいものの郵便受けに置手紙を放り込むだけでチャイムも押さず電話もしない。
稚内の人々とささやかな交流があり、最後はやりたくなかった「みっともない」ことをする。
みっともなくても好きだから、というストレートな姿がいい。
『コマドリさんのこと』はコマドリさんのキャラクタに疲れた。
終わりはよかったけど、展開が行ったり戻ったりでぐるぐるしていてちょっとだるい。
『春季カタル』は婚約者の家から帰る途中に行きずりの男と寝てしまうなんだかファンタジーみたいな雰囲気。
でもこの作品には、朝倉さんの作品に頻出する「どう考えても最悪な男」を王子様だと信じる女像が色濃く出ている。
好きだなと思ったのは40代独身の同僚2人の間で上手く立ち回る主人公を描いた『一番下の妹』と、13年間付き合った恋人と別れそうな主人公が旧い友人と温泉に行く『一入』
この短編集は割と前向きになれる気がする。
いや、「みっともなくてもいっか」と開き直れるそんな感じ。
Posted by ブクログ
5つの短編が収められた作品。著者のデビュー作のほか、表題の『肝、焼ける』の2つが文学賞を取っていたようです。
巻末解説の豊崎女史は全作品を絶賛してましたが、個人的には『肝、焼ける』と最後に置かれた『一入』以外は、それほど面白いとは思えず。まぁ、すべての作品において主人公が妙齢の(時に妙齢以上の)独身女性なので、共感して読めということに無理があることを考えると、仕方ないか。
主人公とされている女性と同じような立場の方が読んだら、どんな印象を持つんだろう、というところが、ちょっと気になりました。共感なのか、同族嫌悪なのか、憐憫なのか。
それによって、この著者の作品が今後も読まれ続けるかどうかが決まるのかもしれません。なんせ、上に書いたとおり、男がこの手の作品を同調して読める可能性はあまり高くないだろうから。