Posted by ブクログ
2015年07月14日
何か不思議な味わいのある短編集だった。
読み終えたあと、「お別れの音」というこの小説全体のタイトルについて考えた。
別れと一口に言っても、関係性も長さも別れ方も理由もそれぞれで、本当に浅いところまで視野を広げてしまうと、知り合って親しくならないうちに別れてしまう(二度と会わなくなってしまう)関係も...続きを読むたくさんある。
何となく静かに別れの匂いが漂ってくることもあれば、自分の意思で別れを決めることもある。
この小説は劇的に愛し合った二人が劇的に別れた、みたいなお話はひとつもなくて、どちらかと言えば意識しなければただ通りすぎて終わってしまうような関係性のその別れがほとんどで、だからこそ味わい深いのだと思う。
はっきりと聞こえる何かの音、誰かの声、そして想像の中の音。様々なところに、「お別れの音」が潜んでいる。
「お上手」と「役立たず」がとくに印象に残った。
少しの情報だとか一方的な好意をもとに「あの人はきっとこういう人だろう」とか「きっとこんなことを思っているだろう」と勝手に思い込んでしまうことって実は日常にたくさんある。勝手に望んでしまうことがある。意識してないだけで。
それが違ったときはただひとつの現実が明るみになっただけの話。想像と違った相手が悪いわけじゃない。
自分の欲求を恨みに変えてはいけない。
そんなことを、改めて思った。
(そういう恐ろしいお話はないけどね!)