高橋弘希の一覧
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ユーザーレビュー
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内容についてはケチのつけようがない、慄然とするほどに惹きつけられる。恐くなって読みたくないような気さえするが読むことをやめられない、臨場感が凄まじいからか。実体験なしにこれを書けたことは超人的だ。
そして何よりそのシリアスな内容を支える文体、文章力、豊富な語彙、身体感覚や精神の動きを書く表現力、
...続きを読む風景、情景を浮かび上がらせる描写力、これが何よりも素晴らしいし、凄い。この作者はこれからも読んでいこうと思えた。
Posted by ブクログ
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高橋弘希『送り火』文春文庫。
第159回芥川賞受賞作。標題作に加えて、『あなたのなかの忘れた海』『湯治』の単行本未収録の2篇も収録。
『指の骨』を読み、久し振りに凄い文章力と表現力のある新人作家が現れたものだと感心した。本作の標題作『送り火』でも冒頭から選びに選び抜いたであろう言葉を何度も噛み締
...続きを読むめたくなるような淡麗で毅然とした文章でつなぎ、読み始めると目の前にその光景が広がって来るようだ。
『送り火』。芥川賞受賞作。
強烈なインパクトを感じる作品。自分も田舎の町に転校した経験があるが、田舎では暴力や肉体闘争が日常だった。都会では勉強の出来不出来で個人の評価が決まるが、田舎では運動能力や腕力の方が個人評価の尺度となる。本作の暴力描写について賛否両論があるようだが、確かに終盤に描かれる暴力の描写は常軌を逸しており、序盤から中盤にかけての文学小説が終盤一気に残虐ホラー小説へと変貌する。
春休みに東京から青森の山間部の田舎町に引っ越した中学三年生の歩。転校先の翌年に廃校となる中学校は生徒の数も少なく、歩はすぐにクラスの中心人物の晃と仲良くなり、クラスの仲間とも馴染んでいく。しかし、歩は仲間内でゲームのように扱われる『暴力』に違和感を覚える。夏休みに晃から河に火を流す地元の習わしに誘われた歩は……のどかな田舎の全てが偽りだったのか……歩のその後が気になる。
『あなたのなかの忘れた海』。
結局は何も起きないが、人生の儚さを感じるブンガク、ブンガクした短編。最後に『あなたのなかの忘れた海』というタイトルの歌の歌詞が収録されている。この歌に着想を得た短編ということだろうか。
舞台は銚子市の海鹿島海岸。冒頭は鈴音の夫の視点で物語が始まるが、直ぐに鈴音の視点に切り替わり、その後、鈴音の夫は登場しない。9歳の時、鈴音は海鹿島海岸で水死体を発見する。12年後、東京から実家の銚子市に帰省した鈴音はまるで9年前の水死体に取り付かれたかのように水死体のことを調べる。
『湯治』。
大手の商社に勤める34歳の佐藤宏は左足の古傷の疼きを癒すために足柄下郡の民宿へ湯治に訪れる……
湯治の宿で見たことが綴られるだけで、山も谷も無い。
本体価格620円
★★★★★
Posted by ブクログ
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日曜日なので、文庫で再読しました。
高橋さんもっともっと読みたいですが、書くのしんどいのかなーと思ってしまいます。
日曜日の人々は読んでいる方もしんどくて、今も不眠症を患っている身としては吉村の言うことすごくわかる…となります。
「不眠は昼に肉体を蝕み、夜に精神を蝕む」拒食も過食も不眠も自傷の一種で
...続きを読むす。
言葉にすることですくわれたり、言葉にすることでますます呑み込まれていくのもわかる気がします。わたしはたまたま軽くなる方だっただけ。
「人生は少しずつ消費するものではなく、ぽろぽろ欠けていくものかもしれない」
高橋さんの文章は痛むのですが、痛みを伝えるために表現を徒に過剰にしてなくて好きです。淡々としています。
Posted by ブクログ
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90年代、ココロ系と呼ばれるウェブサイト群があり、BBSで悩み相談や薬の情報交換をしていた。
当時は確か匿名が当然という感覚は薄く、各々ハンドルネームをつけていた。
おそらくそんなふうな「REM」が、ゼロ年代になってセルフケア手前の集会を開いて……という。
まず押さえておくべきは、少し昔の話だという
...続きを読むことだ。
決してリアルとは感じなかった。
いちいちモノを書くなんてまだるっこしくて。
また話の運びも結構都合に拠るところがあるし。
しかし、漱石「こころ」(の草稿の分量!)や春樹の持って廻った台詞に、リアルではないと知りつつもリアリティを感じてしまう、感じ方がある。
要は小説内での確かな手ごたえというものがある。
この小説にも、ある。
春樹をつい引き合いに出してしまったが、道具立ては結構似ている。
語り手の流され具合。開幕直前に同年代の女の子を自殺で失くしている(「風の歌を聴け」や「ノルウェイの森」)。無闇に好かれる。
ただし書き方は違うのではないか。
春樹は暗い洞窟を手探りしながら書いていくので、まだるっこしいし停滞している、そこが良くも悪くも特徴。
高橋弘希はおそらく、きちっと全体を見通した上で、描写していく。
だから時に計算っぽくなるが、それもまた個性。
話の筋はまあそういうものとして、細部が好きなのだ。
送られたダイエットシェイクとか、摂食障害者がなぜか買ってきてくれたロースカツ弁当とか、ピザとか、あんぱんとか、なんでもないぬいぐるみとか、熱くなったアスファルトとか、数珠のような葡萄とか、チョコレートパフェとか、海苔に歯痕の窪みができたおにぎりとか、丸っこい小ぶりのおにぎりとか、傷痕に張った薄皮とか。
思い付く限り書いてみたが、うーん結構食べ物が多いな。
ということは、ひなのという女の子が、好きなんだな。
あとはなんでもない遊びをする場面が好き(「指の骨」では地面に絵を描くとか。「送り火」の花札はちと違うか)。
バドミントンとか、フリスビーとか、マイムマイムとか。
Posted by ブクログ
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大岡昇平や水木しげるの著した記録と似通うところは、後方での活動や逃避行の描写が圧倒的に多いところである。事実、戦争体験において戦闘行為は一瞬であり、時の多くを後方で過ごしているのだから。
一方で大岡らの著したものと大きく異なるところは、主人公が生還しえないところである。生還したものの手記は、事実とし
...続きを読むて生還したことを前提として、また意識的にか無意識的にか戦後の生活を価値判断として織り込んでいる。そこを出来うる限り排除した場合の思考実験として本書はあるように思う。
戦場体験者の記録を、想像としての死で蒸留したときに見える感覚。この追求こそが作品全体を通してリアル感を出している。
それと、死者に哀悼を捧げるかのような文庫の表紙が素敵。
Posted by ブクログ
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