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その日に死んでしまふ気がするのです──。昭和十六年、青森。凜太はTB(テーベ)を患い隔離病棟で療養する妻を足繁く見舞っている。しかし病状は悪化、ついには喉の安静のため、若い夫婦は会話を禁じられてしまう。静かに蝕まれる命と濃密で静謐な時。『指の骨』で新潮新人賞を受賞した大注目作家のデビュー第二作。芥川賞候補作。
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Posted by ブクログ
妻に迫る"死"を静かに、綺麗に描かれていた。 一見淡々としているようだけれど、夫婦の会話などから感じる"愛"。それを感じると、やっぱり色鮮やかに描かれてるなあと痛感した。 いい意味で、インパクトがあった訳ではないが、この本から感じる温度がとても心地よかった。 ...続きを読むまた時間があれば読みたいし、部屋に置いておきたいと思える一冊でした。
とても静かで美しいお話でした。 戦争の影が差す時代、結核で療養している妻を見舞う夫のお話。 感情を全面に大袈裟に押し出していない冷静な語り口ですが、病が進行していくにつれて透明になっていく妻に接する夫の悲しみが静かにひたひたとしみこんでくるようでした。 情景や、筆談になった妻の書き言葉もとても綺麗。...続きを読む昔に書かれた物語だっけ…と途中思いました。 この作家さんの文章が好きです。痛々しい描写もありますが、静かで。
つい先日 芥川賞を得た高橋弘希さんの3年前 35歳時の作品。昭和15年年末から翌年年末に至る当時の不治の病 結核に見舞われた妻と寄り添う夫との日常の光景が家族や病院の人々と共に 静かに静かに流れるように語られており読者の心に染み入ってくる。こうした作品を35歳の方が当たり前の如く違和感なく極く自然に...続きを読む描けることに驚いた。何故だか不意に大昔に頭に残った文芸歌謡曲、三浦洸一の「純愛」が浮かんだ♪ この作品も芥川賞候補だったし、「指の骨」も芥川賞と三島由紀夫賞候補だったけど この作家の非凡さ半端ないって 笑。
ちょっと昔の小説を読んだような不思議な感覚。作者はまだ若い。結核病棟のそれも現代的ではない空気が感じられた。
あの「野火」に匹敵する…の帯にそんなわけがないだろう!と高を括っていたのだが読み終えて思ったのはこれは戦争など知る由もない30代の青年に旧日本軍の兵士が憑依したのではないのかと。その想像の世界の戦争はエンタテインメントに走ることもなく飢餓と病により死を目前にした人間の内面を淡々と描くものであるがそれ...続きを読むは遠く離れた南の島で戦病死した何十万人の兵士の生々しい声。忘れてはいけない、語り継ぐなどの大義はさておきスタバのコーヒー1杯分の値段で読めるわずか70年前に起こった歴史の事実を感じ取れるこの文庫本の価値は高い
「私の恋人」とは違い、含喩を深読みする必要の一切ない、真っ直ぐな純愛もの。 真珠湾攻撃前後という時代背景、抗生物質の発見前の当時は不治の病であった結核を道具立てとして、若い主人公夫婦の時間が静かに、濃密に、だが容赦なく過ぎていく。 佳作である。
秋に小春日和とは、さだまさしの悪影響。コスモスに秋桜という漢字をあてた張本人もさだまさしですし。昔ネアカ、ネクラという言葉がありましたがそれと同じように悲しい話を悲しく、楽しい話を楽しくではただの上っ面だけをなぞるようなもので奥行きがありません。些事でもメリハリ、濃淡で大きな表現が出来ると思う。古い...続きを読む漢字、文章表現で昔の話をしているだけに思えてしまいます。
TB(テーベ)いう細菌に冒され入院している妻と、それを見舞う夫、病を前にした二人の静かな日々の記録。 とことん感情が抑えられた、淡々とした筆致で綴られています。だけどその代わり、情景描写や行動から「気持ちをいかに書かずに書くか」がひしひしと読みとれました。 印象的なのは食べ物がわりあい多くでてくると...続きを読むころで、特に二人が食堂で一緒に昼食をとるシーンなんかはとても穏やかで絵になるなぁとじんわり。 病気をしたときはサンヨーの桃缶か缶詰ミカンかで意見が分かれる会話もかわいい。 血液型がちがうせいで輸血してあげられない夫が、妻のためになにか形になることをしたいと、院内の調理場に飛び込みだし巻き卵を焼いてもっていったのも好き。 本来無機質であるはずの病院なのに、こういう食事や料理がとてもあたたかくて美味しそうに感じられるのは、この夫婦のお互いを労わりあう関係のおかげなのだと思えました。 物語の終わり方も優しくてやわらか。二色のびいどろの丸コップに咲くひとつの朝顔。
昭和16年12月。TB(結核)に侵された妻を療養所に見舞う夫が、道すがら回顧する妻の療養の日々。 現在では死病ではなくなった結核が、まだ、確固たる治療法もない時代。戦争の足音を通奏低音とし、時代の緊張感と、二人の愛情が静かに淡々と描かれていく。 少し前に言葉をかわした入院患者が、一人、またひとり亡く...続きを読むなっていく儚さ。 肌が白く透き通っていくにつれ、日に日に悪くなっていく妻の病。 その日々のなか、咽頭の安静のため声を出すことも禁じられた妻との筆談による会話が切ない。 デビュー作「指の骨」ほどのインパクトはないものの、言葉による描写の味わい、作品全体を包む静けさが共通してあって、その時代、その場面にいつの間にか引き込まれている。 ーー人間は親指と小指の間ほどしか生きられません。・・・それでも土に根を下ろして、花を咲かせることが、正しき自然の営みでありましょう。病に根を下ろしてはいけないのです。ーー 亡くなった入院患者の言葉が響いた。
太平洋戦争になだれ込んでいく頃の日本。 難病に罹った妻と、見舞いに通う夫。 少しずつ弱りゆく妻、ささやかな色彩に彩られた日々。 時代の空気、二人に通う想いを感じながら読む。 静かな中に様々なものが去来する物語。
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