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Posted by ブクログ
TB(テーベ)いう細菌に冒され入院している妻と、それを見舞う夫、病を前にした二人の静かな日々の記録。
とことん感情が抑えられた、淡々とした筆致で綴られています。だけどその代わり、情景描写や行動から「気持ちをいかに書かずに書くか」がひしひしと読みとれました。
印象的なのは食べ物がわりあい多くでてくるところで、特に二人が食堂で一緒に昼食をとるシーンなんかはとても穏やかで絵になるなぁとじんわり。
病気をしたときはサンヨーの桃缶か缶詰ミカンかで意見が分かれる会話もかわいい。
血液型がちがうせいで輸血してあげられない夫が、妻のためになにか形になることをしたいと、院内の調理場に飛び込みだし巻き卵を焼いてもっていったのも好き。
本来無機質であるはずの病院なのに、こういう食事や料理がとてもあたたかくて美味しそうに感じられるのは、この夫婦のお互いを労わりあう関係のおかげなのだと思えました。
物語の終わり方も優しくてやわらか。二色のびいどろの丸コップに咲くひとつの朝顔。
Posted by ブクログ
昭和16年12月。TB(結核)に侵された妻を療養所に見舞う夫が、道すがら回顧する妻の療養の日々。
現在では死病ではなくなった結核が、まだ、確固たる治療法もない時代。戦争の足音を通奏低音とし、時代の緊張感と、二人の愛情が静かに淡々と描かれていく。
少し前に言葉をかわした入院患者が、一人、またひとり亡くなっていく儚さ。
肌が白く透き通っていくにつれ、日に日に悪くなっていく妻の病。
その日々のなか、咽頭の安静のため声を出すことも禁じられた妻との筆談による会話が切ない。
デビュー作「指の骨」ほどのインパクトはないものの、言葉による描写の味わい、作品全体を包む静けさが共通してあって、その時代、その場面にいつの間にか引き込まれている。
ーー人間は親指と小指の間ほどしか生きられません。・・・それでも土に根を下ろして、花を咲かせることが、正しき自然の営みでありましょう。病に根を下ろしてはいけないのです。ーー
亡くなった入院患者の言葉が響いた。
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