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Posted by ブクログ
旅をテーマにした八編の短編集。
とは言え本格的な旅の話ばかりではなく、学校をさぼることに決めた女子高生が見知らぬ駅で降りて過ごす話や、夫の浮気を突きとめるために妻が夫を追う表題作など、日常の延長にある突発的な旅めいた話もあって、一見すると旅がテーマだということは気づかない。
どの物語にも何かしらの男女の関係があって、それもどこか歪であるのが、全体的に寂しい感じを纏わせている。
「夜を着る」は一編の物語のタイトルだけど、全体のタイトルとしてもとても合ってると思う。
これからどうなるのだろう?と読みながら考え始めたところで物語がぷつっと途切れたものもいくつかあって、驚くのだけど不思議としっくり来る。
一言で言うと「こういう雰囲気、好き」。
Posted by ブクログ
「静子の日常」が自分の生き方を少し変えてくれる本だったので、
井上荒野という人に興味が出て色々調べてみたときに出会った本。
8篇の旅にまつわる短編集というところが気になった。
紹介の通り、日常からふっと離れる瞬間が8篇おさめられている。
人物の気持ちや、感じたことをいちいち細かく説明してくれる本ではないので、
はっきりすっきりと分かる気持ちの良い本ではない。
悪く言えば、なんだかごまかされている感じ。
「感じなさい」と強制されている感じがする。
私はうまく感じることができなくて、いつまでも釈然としない感じだった。
でもたぶん、あそこに書いてあったことが全てなんだ。
すっきりとしない、釈然としないものが残って、それが全てなのだと思う。
普段生きているときだって、
自分の中のモヤモヤとしたものの正体を見破るのはずいぶんと経ってからだ。
たぶん、本の中の登場人物だってモヤモヤしてるのだ。
彼らはそのもやもやを抱えて、また生きていくのだ。
物語の登場人物が、いつでもすっきりはっきり成長するわけではない。
むかし私は「おしなべて全ての物語は旅である」と習った。
主人公は、物語の中で自分の日常から非日常に旅立って、何かを得て帰ってくる。
そう習った。
何かは得るのだ。
でも、その何かがあいまいではっきりしないことだって、
あって当たり前なのだ。
Posted by ブクログ
作者・井上荒野(あれの、と読むらしい)の本は初めてです。
2008年に直木賞を受賞していることも知らずに買いました。
短編集。200ページにも満たない薄い文庫本。
女性が書いたハードボイルド、とでも言うのかなあ。
かなり「がんばっている」というか、「かっこつけてる」というか。
いや、「強がっている」という方が当たってるかな。
そんな都会的な女性の強さと寂しさを表現しながら、
背景であったはずの「旅」に主題が移ることで、
(作者にとってはもともとの主題が「旅」なのだろうが
読んでる方としては一旦主人公に心を奪われるので)
その「旅」の終わりとともにストン、と唐突にピリオドが打たれる。
女性的な生々しさが印象に残った。
あまり得意ではないけど文章のテンポはあうようなので、
直木賞受賞作も読んでみようかな。
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