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桐生駿と野田夏が出会ったのは5歳のとき。夏の父に恋した駿の母が、密会のため夏の家に通ったからだ。親同士の情事の間、それとは知らず階下で待っていた幼い二人は、やがて親たちの関係を知る。以来二人は、互いに「できれば思い出したくない相手」と感じながらも、なぜか人生の曲がり角ごとに出会ってしまう。まるで、互いの恋愛の証言者のように。男と女の「愛ではないけれど、愛よりもかけがえのない関係」を描く長編小説!
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Posted by ブクログ
それぞれの父と母の逢瀬に連れていかれていた幼い少女と少年。 大人になった2人は、なるべくなら思い出したくない関係、でもときどき思い出してしまう関係になった。 夏と駿、2人の異常とも言える関係、そこに絡めた2人の人生が、とても興味深く、好みの作品でした。 2人が成長していく過程で出会った人たちとの...続きを読む繋がり、それぞれへの思い、根底あるのは親の存在。 幼少期の親の影響力の強さを思い知らされる思いでした。 最後まで一気読み。 面白かったです。
お得意の不倫ものだけれど、今回はちょっと趣向が違った。 主役は不倫をしている男女それぞれの子供、駿と夏。 大人が秘密の時間を持つ間一緒に過ごした二人。 ほんの小さな子供だった二人は人生の時折ふと交わる。 それは愛なんかじゃない、情でもない。 共犯者に近いと思う。 そんな二人の関係性が妙にリアルだった...続きを読む。 親のしていたことが何だったのか理解する年頃になっても、親を責めたり反抗したりしない二人の姿が痛々しかった。 どうしようもない親をじっと見てきた二人は、どうしようもない大人になる。 人生の道々で時折交わる二人は因縁から抜け出せないようにも見えるし、それが必然のようにも思える。 いい人ばかり出てくる小説はどうも好きになれない。 空々しくて。 むしろこの作品のように欠陥を抱えているけれどなんだか憎めない人達にどうしても共感してしまう。 よくよく考えてみるとまともな人が誰一人出てこない。 それぞれの親も、恋人も、その子供たちも。 だめな人間だからこそ愛おしいんだと思う。 井上さんの作品は好き嫌いが分かれそうであまり勧められないが、この小説はよかった。お勧めできるかも。 独特のざらざらした感覚を残しつつ、サラッと読める。 そして何といっても最後の最後が切なくて。 余韻がじわーっと残る作品だった。
この物語は嫌いと答えるひとのが多いと思う。けど、わたしは始めから吸い込まれ、終わった時には好きだなって思った。 なにもかもがスッキリしない物語。曖昧な。肝心な描写を避けていて、で、結局どうなったの? の連鎖的な。5歳のときに駿は母親に連れられ線路を超えた先にある夏の家を度々訪れることになる。駿の母...続きを読むは夏の父に猛烈に恋をしていた。夏の母は他界しており、駿の父は外科医だった。 それから場面は小学生中学年になり、夏はすでに不良と呼ばれ大学生の彼氏がいた。駿はガリ勉的な子。 さらに中学年になり、高校、大学、結婚…と進んで行くのだけど、どうもすべてが釈然としないのだ。それが嫌な感じではなく妙な心地よさがあるからまた厄介で。断言的なことがない。 たとえば夏が小学生のときから付き合っていて、愛し合う行為をしていた相手の大学生との別れまでの詳細とか、処女喪失を捧げ愛しくてしかたなかった千秋に他ならぬ駿とセックスをしたと嘘を吐いてわざと恨まれるような別れ方をしたくせに、偶然、や、必然かもしれない再開時に婚約者を棄てて千秋にアプローチしたところ、そこから場面は一気に飛び結婚までこぎつけたその空白。さらには結婚生活を飛ばして娘がいてさらには千秋には他の女がいること、とか。 その微妙に曖昧で、けど計算しつくされた完璧な曖昧加減が実にわたし好み。 駿と夏の決して愛ではない、むしろ怯むくらいの繋がりが物悲しかったな。
展開としては、まあ、あれですが、そんなことはあまり関係ないのです。小川洋子さんの作品の中に「作家の声が聞こえる」という話がありましたけれど、まさに井上荒野さんの文章は声、ため息、息遣いが感じられるのです。ずっといっしょにおしゃべりしていたような。 不倫関係の互いの息子と娘という駿と夏。一度も男女の...続きを読む関係になったことはなく、親の身勝手さに翻弄された仲という関係です。濡れ場を描かずにこれを書けるのってすごいです。映像化したらすべておじゃんになってしまうから、井上さんはこのままそっとしておいてください。
すごくすごく井上荒野らしい作品で、愛に溺れなくっちゃ生きられないダメな男と、同じようにダメな女が、母だったり父だったり、自分だったりして。まっすぐすぎて歪んでしまうジレンマや、のんびりと描かれているおかしな日常や、荒んだ景色がなぜか懐かしく感じるところや、それでも憎めない人々や関係性が、溢れすぎてい...続きを読むて、じんわりと切ない。
何人もの人生が一冊につまってしまうのが小説。 愛の記憶というには、動物的で時に嫌悪感を感じずにはいられない。 性ほど生々しいものはないが、人の核になりうる。 人が亡くなったら、その人を巡った感情はどこに消えていくのだろう。人にはすすめないけど、好きな本です。
なんかふわっと読み始めてふわっと終わってしまって、夏と駿が誰の子なのかよく分かんないままだった。 でも夏と駿の子の代まで話が続くのって、珍しい気がした。 ぐちゃっとしたひとかたまりの人生たちを見たな、という感じかな。
小さい頃から大人になる過程を書いてました。 鬱々としていて、両親と子供の複雑な関係の話です。 斜め読みでしたが、途中で不倫や浮気で面白くなったので、また読み返したいです。
鬱々としたものを抱えて屈折しながら成長してゆく過程が生々しい。 過去のトラウマが、長い年月をかけていつしか身体の一部のような暗い穴になっている。 ふたりの間に好意はなかっただろうけど、そこに空虚なものを感じている者同士、愛情に似た親近感があったのかなと思う。 むしろそこが似ていたからこそ、恋にはなら...続きを読むないのか。求めるものを、自分と同じように相手は絶対に持っていないと確信してるから。
表紙にひかれて手に取ってみたけれど、登場人物にいまいち感情移入できなかったのが残念。ラストも余韻が残ると言えばそうなんだけど、投げっぱなしって言った方が正しいように思う。 最初から最後まで、すっきりしないまま終わってしまった。
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