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父・井上光晴、母、そして瀬戸内寂聴をモデルに、逃れようもなく交じり合う3人の〈特別な関係〉を、長女である著者が描ききる。愛とは、〈書くこと〉とは何か。各誌で話題沸騰となった問題作、いよいよ文庫化!
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「あちらにいる鬼」
2022年11月公開 出演:寺島しのぶ、豊川悦司、広末涼子
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Posted by ブクログ
善き。 やっと読めた。映画になった時からの積読… 瀬戸内寂聴と井上荒野のチチ、井上光晴とその妻、1人の男を巡る女達の生涯の物語。 実話?とも、小説?とも言われ、どちらで読んでも深い。娘の立場で取材し文章にし、そして解説でもあったが、そうやって初めて小説家はそのテーマとの訣別ができるのではないだろう...続きを読むか…と。 なんともダメ男に思えるが、常に女が周りにいるオス。どこまでも男な父と同じ職業になり、父もそれを喜びながらも病魔に襲われて亡くなる。人間らしく生きた、昭和の時代だな、とも思わされる。 ドロドロした内容だが、清々しさも感じる文章で、他作も読んでいきたい。
井上光晴とその妻と、瀬戸内寂聴と、そして井上荒野によってできた世界でした。 他の著を全て読んでいなくとも、井上荒野はこの本を書くために井上荒野として生まれ、作家になったのではないだろうか?と思えるほど。 川上弘美の解説にあるように、井上荒野の「文章の清潔さ」がこの物語をぎりぎりのところで保っている。
おもしろかった。瀬戸内寂聴さんのイメージがすでにあるからかもしれないが、主要な登場人物3人がそれぞれ互角に強い輝きを放っている感じが滲み出ていて、ずっと内容が濃かった。作者にそれぞれへの思い入れ、愛情が強いからだろうか。 3人とも非凡で魅力的だが、2人の強くて魅力的な女性と1人の弱くて魅力的な男...続きを読む性とも思える。女性2人が強いのは、それぞれの葛藤や苦しみを内に抱えて生き方を作り、最後まで関係を持続するから。男性が弱いと思うのは、抱えることができず全て放出する生き方をしているように見えるから。女性達は自ら選んだわけではないが、3人は魂のレベルで繋がってしまった感じがする。 人生をかけた、大切な人との関係性について考えさせられる。
瀬戸内寂聴さんが好きです。 「子宮作家」と言われた寂聴さんだけど、私は尼さんとしての姿しか知らないし、寂聴さんの恋愛遍歴をあえて知りたいとは思っていませんでした。でも「私小説」を読んだりして、出家前のことも少し知りたいと思っていたところでした。 小説家同士の不倫。しかもそれを一方の娘が書いたとなる...続きを読むと、是非読みたいと思いました。 何年も続く不倫というのは、あると思います。多少の実感を持って、そう思います。 非難されることを覚悟して言うと、公にできない間柄であっても、大人になると離れがたくそれぞれにとって必要な絆が生まれることはあると思うのです。 だから不倫自体は別に珍しいこととは思わず、貴重なのは笙子さんだと思うのです。あんな夫婦ってあるんですね。 美しく、料理の腕もプロ顔負けで、夫の小説を清書しつつ、夫の子を堕胎した愛人の見舞いに行く妻。 寂聴さんと笙子さんの関係が特別というより、そういった夫の浮気に付き合ってたどり着いた先が寂聴さんだったから、特別な信頼関係が築かれたということなのでは。 最初(あるいは唯一)の不倫相手が寂聴さんだったら、笙子さんとてあのようには振舞えなかったのでは。 等、いろいろたらればを考えています。
自分の母親と、父親の愛人。2人の視点から小説を書くというのはどんな心境だったのか⋯想像できない。全てを受け容れたから?恨みつらみ、気持ち悪さはもうない?自分とは違う人間の所業として割り切っている?しかもその語り口が冷静で、淡々としていて、感情的に乱れたりどちらかに肩入れしたり逆に非難したりすること...続きを読むはなく、あくまで容観的な立場を貫いている。だから読んでいて、長内みはるにも、笙子にも、同じくらい共感するというか、その言動を理解できる。不思議。 白木という中毒性のある魅力的な男を深く愛した末、自分のものにはならないと思い知った彼女たち。逢引を重ねても、結婚しても、どれだけ愛してもつかみどころのない白本は自分の元から離れていく。それでも添い遂げると決めた笙子と、出家という強行手段で白木と決別すると決めたみはる。そこまでしないと離れられないような男性だったんだなあ。時間とともに薄れていく愛しか私は知らない。どれだけ好きという気持ちが強くてもいつの間にか薄れて消えていったし、一度消えたら元に戻ることはなかった。でもそういうんじゃなくて、どう頑張っても離れられない関係というか感情というか、そういうものもこの世にはあるんだなあ。 なんか、フツーは、というか多くの人は、その深い段階に到達する前に、危険を感じたり傷付くのを恐れたりブライドが許きなかったりで踏み止まるんだろうなあ。でもみはるも笙子もその域を超えることを選んで、ある意味で完全に諦めて、ハッピーエンドは存在しないとわかっていながら白木のそばにいる道を選んだんだろうなあ。そんなことができる人そうそういない。自分は絶対にできないし、あんまりやりたいと思わない。でも二人の生き方は悪くないなと思う。それだけ我を忘れて愛せる人に出逢えて、たとえ自分ひとりに向けられたものではなくても、その人から愛してもらえて、幸せを感じることもたくさんあったんだろうなあと思う。 私は自分のことが大事すぎるのかなあ。だから手放しに人を愛することができないのかなあ。傷付いたり惨めな思いしたりするの嫌だし。でもそこでブレーキをかけちゃうから、本当に深い関係にはなれずに終わっちゃうのかなあ。どっちが幸せなのかわからないや。自分のこと大切にしてくれる人を同じくらい大切にできたらいいのに。自分が大切に想う人が同じくらい自分を大切にしてくれたらいいのに。それで、それがすり減ることなくずっと消えずにあり続けてくれたらいいのに。全部そうはいかない。なんでだろうね、辛いなあ。
前情報なしで読んで、あとがきを読んでびっくり。作者への興味が高まり、この人の作品を手に取ってみたくなった。内容としてはひたすら男女の愛の軌跡が描かれている。しかし、なぜだか飽きずに読めてしまう。男のつかみどころのなさ、どこか夢中になりきれていないのにやめられない女の性。自分にはこんな体験ないのに、所...続きを読む々共感してしまう不思議。言語化の難しい生き苦しさ(決して何が不幸なことがあるわけではなくむしろ幸せなのに)を感じた時に読みたくなるような作品でした。
嘘つきで女好きで有名な白木という小説家をめぐり、妻と愛人の視点でそれぞれ語られる物語 途中で出家し尼になった愛人が住職をつとめるお寺に納骨するなど、ほとんど実話ということが信じられなかった
ほぼ私小説のような題材で、しかも実の娘が自身の両親とその愛人をモデルに書いた小説に興味があり、映像(映画)→原作の順で読みました。 何でこんな作品を書いたのかな~とだけ疑問だったけど、原作最後の方や解説にもあるように、ずっと感じていた考えを文字でまとめることで、ハッキリ訣別したかったのかなと思いま...続きを読むした。 作中でもあった、 "いつまでも父親や母親の付属品みたいには生きていない"は作者の本心な気がした。 登場しているモデルの両親、愛人ともに現在は亡くなっており、『あちらにいる鬼』とはあの世にいる鬼神(たち)ということなのかなと感じた。
父・井上光晴と瀬戸内寂聴をモデルに、父と母、そして寂聴の特別な関係性を描いた小説。 「恋多き人」の真髄を見た気がする。 強いなあ。自分に対する自信、というか。自信ではないけれど、揺らがない何か。 恋は多いけれど、恋に執着はしていない。 白木の妻、笙子さんがとても魅力的だ。 ひとりの、どうしようも...続きを読むない男を愛してしまったふたりの女。 どうしようもない男の正妻として生きた笙子さんの最後の言葉が全てを持っていった。 「ただ篤郎のことだけを考えている。」
男と女、その一挙一動そのひと言に隠れた意味がある、深い洞察による緊張感のある不倫物語。出家の辺りからこれって瀬戸内寂聴物語?ちょっと褪めた。
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