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祖父の危篤の報せを受け、僕は海をわたり北へと向かった。辿りついたのは父が捨てた町・紋別。そこで伯父から失踪した父を探すように言われた僕は、記憶をたどるうち「北海道とナイチ(内地)」で父が見せた全く別の面を強く意識しだす。海峡を越えて何を得、何を失ったのか、居場所はあったのか。それは30を過ぎても足場の定まらない自身への問いかけへと重なってゆき……。関西に生まれ育ったナイチ2世の僕が、家族と自らの存在に向き合う傑作長篇。
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Posted by ブクログ
洋は、おじいさんのお見舞いに紋別へ渡ります。 父親不在のまま、彼の生まれ故郷に辿りつきその影を追っていきます。 そんな洋に付き添ってきた、はとこの歩美。 恋人というわけではないのですが、洋にいい感じで寄り添っています。 父と息子の関係って面白いですね。 ちょっと回りくどさを感じますが、微妙な距離...続きを読む感が微笑ましくもあり、苛立たしくもあり…。
伊藤たかみの文庫新刊。文庫が出ていると読む作家となったが、今回の作品はまだ消化できていない。後ほどレビューを書きます。
「海峡の南」というタイトルを見た時、私は北海道なら津軽海峡だろう、その南となると本州・青森であると思った。しかしあらすじには北海道紋別とあるから、まさか宗谷海峡…!?この話はまさか、樺太から撤退した話とか??と想像が膨らんでしまった。ちなみに全く関係がない。 閑話休題。 さて、この作品は正直起承転結...続きを読むの分かりやすい話ではないし、ハッピーエンドなど簡単に分類できるものではない。 まず人間関係然り、現在と過去の関係しかり距離感がつかみにくい。小説の中で若干触れられていたが、確かに北海道にいる時の本州はどこか非現実的存在だし(気候とか文化的に違うので)、道内を移動する感覚に慣れてくると、東京名古屋間もまぁまぁ近い距離判定になってしまう。主人公たちが内地育ちで、それも内地でも移動をした経験があって、北海道に来たのだとしたら、精神的な時空間の広がりが土地に影響されそうだ。ずっと音信不通の父が想起され始めるのは距離感のアンバランスな環境に来たのがきっかけだろう。 戻れない時の中で父を遡り、自分もまた移動していく。そしてまた南の本州に戻る。そういえば鮭は母川回帰といって、生まれた川の匂いを覚えて最後に戻ってくるという。鮭に似て、洋の父も洋も何かしらに惹かれるように邂逅し分かれていくのかもしれない。最後に日本海経由ではなく太平洋経由で帰るのも、名前が洋だからなのか、北から南へ回遊していく様にも思われた。 内地と北海道という距離感、北海道内の距離感、船と飛行機の感覚…流浪するから渡るからこそ知り得て、知り得るが故に土地に根を下ろすことなく寄るべなく生きている感覚は、地元を出たあとに流されゆく自分自身にも当てはまる気がする。 故郷であって故郷でなく、根を下ろすこともできず揺蕩う。揺蕩うから自由で、孤独で、だから人の存在が確かに私がいたことを教えてくれるのも、本当だと思った。 こちらの作品を読んだ方、もしできるなら新日本海フェリーや太平洋フェリーで北海道に来てみて欲しい。青森まで行って津軽海峡フェリーに乗るでもいい。飛行機よりはるかに時間がかかるし、 船酔いもするかもしれない。でも、海の姿も天気もさまざまなことがわかるかもしれない。春先ならイルカの群れが見れるし、海鳥の群れもタイミングが合えば見えるだろう。そうした時、或いは北海道に着いて歩いてからでもいいが、もういっかいこの作品を思い出して欲しい。 国際海峡を越え、ブラキストン線を越えて、隣国との国境が迫る感覚は、遠くに来た事実以上に、本作品におけるミナミを感じられるかもしれない、と思う。
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