「思い出した?」「なにを」「昨夜わたしにキスしたこと」ぼくは十七歳、北関東の街で、やたら生活力のあるお袋と暮らしている。けだるい夏休みのある日、つかみどころのない美少女・晶子に出会った。親友の田中くんと仲がいいのは気になるが、ぼくは晶子に惹かれてゆく。無茶なドライブをしたり、ビールをあおったり、大人の世界を覗き見したり…そんなゆるやかな日が、ずっと続くような気がしていたんだけど…。小さな街のリアルな青春を描き出した、傑作小説。
Posted by ブクログ 2009年11月07日
樋口有介の著書は琴線に合う(だから「あんた、変わっている」)なかで、この作品は気持ちのよさ、という点では順位が落ちる(人が死んだり怪我したりが多い)が、主人公研一の母が遺した「遺書」の一節が妙に心に残った。「発作が起きてから気を失うまでの間、どれくらいの時間があったのか知りませんが、多くて一秒から...続きを読む
Posted by ブクログ 2015年11月23日
私自身が暑いのが苦手なので、この作品全体の底から湧きたち、空気全体、そして樹上、上空まで覆う何とも言えない暑さが読んでいて体にこたえました。
爽快感と対極にある話。登場人物のすべてがすべからく鬱陶しい。晶子さんが少し涼やかかな。
透明感に満ちた青春小説、とカバーにあったけれど、どうだろう。混濁してい...続きを読む
Posted by ブクログ 2011年08月17日
北関東の盆地の蒸し暑さが行間からにじみ出て来るような作品。未成年者の飲酒、喫煙に寛容なのは半世紀前の時代設定の為だろうか。のどかな感じがする。プールに花火と夏の風物詩がすこしもさわやかでないのは見事だった。そんな描写は一つもないのに読後に五間道路に立つ陽炎だけがイメージに浮かぶ。けだるさと悲しい別れ...続きを読む
Posted by ブクログ 2016年08月07日
まずまずです。
やはり晶子と言う少女が魅力的ですね。蓮っ葉なようで、我儘なようで、でも別の面も持っていて、そうした二面性が魅力のようです。その他の登場人物もそれぞれ一癖あって、その辺りの造形は良いと思います。むしろ主人公が隠れてしまうくらい。
最後の急展開はどう受け取られるか。収まったとも見えるし、...続きを読む