長岡弘樹『新・教場 2』小学館文庫。
木村拓哉主演の映画『教場』の原作。初めのうち、個人的には木村拓哉は風間公親の器ではないように思っていたのだが、テレビなどで何度か目にしているうちに木村拓哉の風間公親もありかなと思うようになった。本作の表紙イラストはかなり木村拓哉の風間公親に寄せている。
さて、本作であるが、プロローグとエピローグに加えて六話が収録されている。
何時ものように情け容赦無い風間公親の鋭い眼力は、警察学校に入校して来た門下生たちを次々と篩に掛けていく。ここで疑問に思うのは、全国にある警察学校で月に1ヶ月に1人が脱落するのは普通なのだろうかということだ。
ということもあるが、今回も非常に面白かった。卒業式の総代の座を狙い、しのぎを削る警察学校の生徒たち。かつての風間道場の門下生たちが如何にして風間公親の右目を奪った十崎波瑠を逮捕したのかが少しずつ明かされる。
映画では風間道場の門下生たちの活躍が描かれるようで、そのストーリーは、既刊の『映画「教場 Reunion」ノベライズ』と今月刊行予定の『映画「教場 Requiem」ノベライズ』に描かれる。
『プロローグ』。入校式の翌日、風間公親は校長の四方田秀雄に呼び出される。四方田から提案されたのは風間の右目を奪った十崎波瑠を逮捕した風間道場の門下生の中から月に1名を特別講師に呼ぶことだった。
『第一話 会意のトンネル』。そういう謎が隠されていたのかと、改めて風間公親の眼力に驚く。郷村秀初は、体格に優れた14歳年上の同期である岩国禾刀に事ある度に助けられていた。36歳の年齢制限ぎりぎりで警察学校に入校して来た岩国は、郷村の母親の中学時代の後輩だという。
『第二話 不作為の鏡』。長岡弘樹らしい仕掛けにまたも驚かされた。警察官を目指す者にサイコパスなど居ないというバイアス。醜形恐怖症のため、一度鏡を見てしまうと離れられなくなるという成瀬幹人は、度々招集に遅れることも多く、連帯責任を取らされることで、同班の若浦と宝条から苦情を言われていた。もしや、成瀬が風間から退校を勧められるのかと思えば……
『第三話 遺恨の経路』。解り易い伏線が巡らされているが、風間公親の恐ろしさと生徒への思い入れの強さを知る1作。一方で警察官を目指す者同士でこのような恐ろしい足の引っ張り合いをするのかと疑問を感じるところもある。同じ教場の真鍋辰貴と交際している木下百葉は、真鍋が1ヶ月前まで同期の洞口亜早紀と付き合っていたことを知る。そんな百葉は真鍋とクリスマスに会う約束をしていた。しかし、風間は百葉のミスを理由にクリスマスの日に全員の外出を禁止する。
『第四話 黒白の極性』。風間公親の鋭さは解るが、こうも警察官を目指す者に犯罪者が居るのだろうか。現実に悪い警察官も居るのは確かだ。細沼理仁はパチンコに大ハマりし、同期から借金までして土曜日の休日に勝負を賭けるが、軍資金全てを吐き出し、肩を落としながら寮に戻る途中で老女を狙ったひったくり事件に遭遇する。
『第五話 犯意の影法師』。こちらも解り易い伏線であった。そして、またまた警察官を目指す者に悪意を抱き、他人を蹴落とそうとする者が居ることには驚かされる。無論、世の中の会社でも同じようなことが良くある。南郷玲司と来栖研心の2人は『警察学校生研究発表会』の予選に県警代表として出場することになった。全国大会に進むことになれば卒配後はAランクの署に配属されることになり、警察官としては将来が大変有利になるのだ。
『第六話 金盞花の迷い』。最後に感動の1作を持って来た。最初は警察学校の総代になりたいがために脅迫を行う者など居るのだろうかなどと憤っていた自分が恥ずかしい。予想の遥か先をいく風間の言葉。善き警察官を創るというより、善き人を創る。卒業式が近づき警察学校では総代争いが激化していた。追掛冬和子はそのトップを走っているが、ライバルで新聞ベタ記事マニアの戌塚に図書室へ呼び出され、かつて追掛の父親が起こした死亡交通事故を皆に言わない代わりに卒業試験で手を抜いてくれるよう半ば脅迫めいたことを伝えられる。
『エピローグ』。無事、警察学校の卒業式が終わり、再び校長の四方田秀雄に呼び出された風間公親。風間は四方田に請われて四方田だけの特別講義を行う。6つの逸話の裏にあったのはそういうことだったのか。言われてみれば、その通りだ。
本体価格790円
★★★★★