長岡弘樹のレビュー一覧
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長岡弘樹『白衣の断罪者』角川文庫。
『殺人者の白い檻』を改題し、書き下ろし短編『恋人つなぎ』を加えて文庫化。
『傍え聞き』や『風間公親』シリーズなどちょっと変わったミステリー小説を上梓して来た長岡弘樹が、本作では医療ミステリー小説に挑戦している。しかも、これがまた面白い。何時ものように時折、読者を置いてけぼりにするような、直ぐには理解し難い描写もあるのだが、後で得心してしまうのだから全く不思議だ。
『白衣の断罪者』。思わず唸ってしまうほど非常に巧い医療ミステリー短編であった。途中、様々な罠がミスリードを誘い、最後まで真犯人の正体をぼかし続ける腕前は見事であり、主人公の脳外科医が葛藤の末に下した重い決断を最後のひと言で読者に悟らせてくれるのだ。
S刑務所の隣にある総合病院の脳外科医の尾木敦也は、6年前に自宅を襲った強盗により両親を殺害されてから無気力で酒浸りの日々を送っていた。いよいよ精神的にキツくなった敦也は退職を視野に入れ、ここ1週間ほど休職していた。
ある日、病院の上司から呼び出しを受けた敦也はS刑務所から回された服役囚のクモ膜下出血の緊急手術を依頼される。同じ病院で看護師を努める妹の菜々穂がオペ看を務め、敦也が執刀し、手術は無事成功する。敦也は患者が両親を殺害し、死刑判決を受けた定永宗吾であることを知り、愕然とする。
しかも、定永は一貫して殺人については無実を訴え続けていたという。やり切れない気持ちになった敦也は、妹の菜々穂と事件の真相を追い始めると、少しずつ事件の真相が浮かび上がってきた。
★★★★★
『恋人つなぎ』。『白衣の断罪者』のスピンオフのような掌編。タイトルの『恋人つなぎ』からは想像出来ないほっこりするようなストーリーが展開する。
敦也の勤務する病院の菜々穂の後輩看護師の多田朋美は自分の無力さに退職を考えていた。
★★★★★
本体価格900円
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Posted by ブクログ
お話の主要な場面に「猫」が登場するアンソロジー。
内容はミステリーだったり、エッセイだったり。。
どれも秀逸で、面白く読むことができました。
最初の作家さんの、親の影響で猫を飼っていて、仕事の中で余命いくばくの猫に遭遇して・・のお話も良かったし、ミステリー好きとしては、ロックの仲間割れを招いた猫の話、離婚話で持ち上がったある疑惑から、猫が切欠で現実味が帯びる話はゾクッとするものがありました。
その中でも、一番好きなのは、野良ちゃんを見守るご家族のエピソードが詰まった、感動&笑いのお話。とても良かったし、私がポチっとしたこの電子書籍代も、猫ちゃんの治療の還元に役立てば大変うれしいです笑 -
Posted by ブクログ
著者初読み。
「迷走」「傍聞き」「899」「迷い箱」の4編を収録した短編集。
どの話も50ページほど。 それなのに、人間ドラマがあり、違和感があり、伏線があり、最後にはそれまで見ていた景色をひっくり返すような真相がある。
そして何より印象に残ったのは、そこで働く人たちだった。
救急隊員、刑事、消防士、更生保護施設の職員。 立場も仕事も違うけれど、それぞれが自分の仕事に責任と誇りを持っている。
「何やってんだこの人」 「まさか、そんなことを?」 そう思わせておいて、行動の真意が分かった瞬間にその人物の見え方まで変わる。 中には決して褒められない行動もあるし、簡単に「いい話」で片づけられないものもある。それでも、そこに至った人間の感情を考えずにはいられない。
自分が今更なろうとしてもなれない、「仕事に誇りを持つ人」たち。
短い物語の中にミステリーと人間ドラマを詰め込みながら、どちらかが添え物になっている感じがしない。 一編ごとの完成度が高く、読み終えるたびに心を揺さぶられた。
著者初読み。 短編集でここまで刺さったことも含めて、文句なしの星5。 -
Posted by ブクログ
警察学校を舞台に、風間公親の教場で鍛えられる学生たちを描いたシリーズ第4弾です。
今回のテーマは“一人も辞めさせない”ですが、風間教官は相変わらず感情をほとんど見せない重い空気感は健在です。
学生たちの嘘や甘さを一つずつ暴いていくたびに空気がどんどん張り詰めていきました。
事件そのものより印象に残るのは、追い詰められた時に人間が見せる弱さや保身で、警察学校という閉じた空間だからこそ、小さな綻びが致命傷みたいに広がっていく感じがあります。
風間の厳しさの奥にある“人を簡単に警察官にしてはいけない”という覚悟がじわじわ伝わってきた一冊でした。 -
Posted by ブクログ
どんどんと引き込まれる、次へ次へと読み進めたくなる作品だった。
ジャンルはミステリ小説だが、謎解きでないミステリ。文の中に様々な伏線がところ狭しと潜んでいて、ラストで綺麗に回収される。ミステリであるので、様々な考察を挟む読み方をしても十分に楽しめると思うのだが、短編ということもあり、飽きることなくどんどん展開されるストーリーに、つい急ぎ足で読みたくなってしまう。そんな作品。
こういったタイプのミステリにはやはり短編が合っていると再確認できる作品だったが、それ以上に作者の筆力に圧倒される面が多かった。
作者自身が得意分野をしっかり理解しており、それを遺憾無く発揮した一冊であると感じる。
普段読書をしない人におすすめできるかと云われると必ずしもそうでない気もするが、ある程度読書に馴染みのある人であれば、例えミステリが好きでなくとも、多くの人が読後面白かったと思える作品に仕上がっていると思う。 -
Posted by ブクログ
どれも個性豊かな学校生が出てくる。こんなにも警察学校に入学してくる者にいろいろな事象が起こるのかと思うが、実際の事件も世の中にはあふれている。集まり過ぎていると感じるが、警察学校ならではの事情などがあり、そこから謎を生み出している作者の創作はすごい。何もかも見通した風間が謎を説き明かし、退校または卒業へと生徒を導いていく過程がミステリーとなり、教官としての厳しさや優しさがプラスされているところに本作の魅力を感じる。千枚通しの男十崎が逮捕される様子を風間の教え子達が講師となって生徒に示しながら、卒業までを描いていくところも見事だ。しかし、十崎の事件について妹や家族のことなどが出ているが、詳細が出てこない。最新作「教場Ω(オメガ) 刑事・風間公親」に期待したい。