小説 - 新潮文庫作品一覧

  • カタストロフ・マニア(新潮文庫)
    3.0
    治験のアルバイトに参加したミロク(26)が病院で目を覚ますと、地上から人の姿が消えていた――。コロナ質量放出が地球規模の大停電を引き起こし、ライフライン停止、原発危機、新型ウイルスによる感染症の蔓延が同時発生。あっというまに近代文明は失われ、人工知能が新世界の構築を推進している。人類はこのまま滅びゆくしかないのか? 前代未聞の大淘汰に、一人のゲーマーが立ち向かう。宮内悠介氏との刊行記念対談も収録。(解説・小島秀夫、どぶろっく 江口直人、ゴールデンボンバー 歌広場淳、吉川浩満)
  • 疫病神
    4.0
    建設コンサルタント・二宮啓之が、産業廃棄物処理場をめぐるトラブルに巻き込まれた。依頼人の失踪。たび重なる妨害。事件を追う中で見えてきたのは、数十億もの利権に群がる金の亡者たちだ。なりゆきでコンビを組むことになったのは、桑原保彦。だが、二宮の〈相棒〉は、一筋縄でいく男ではなかった――。関西を舞台に、欲望と暴力が蠢く世界を描く、圧倒的長編エンターテインメント!
  • 旧約聖書を知っていますか
    4.2
    「旧約聖書」を読んだことがありますか? 天地創造を扱う創世記あたりはともかく、面倒なレビ記申命記付近で挫折という方に福音です! 預言書を競馬になぞらえ、ヨブ記をミュージカルに仕立て、全体の構成をするめにたとえ――あらゆる意味での西欧の原点「旧約聖書」の世界を、枝葉末節は切り捨て、エッセンスのみを抽出して解説した、阿刀田式古典ダイジェストの決定版。

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  • 串刺し教授
    2.0
    崖から転落して鉄柵の尖端に串刺しにされた大学教授を目撃したガソリン・スタンドのサーヴィスマンが最初にしたことは?写真週刊誌時代の未来を予見した作品として「東海道戦争」などと並ぶ表題作。やくざが女学生の言葉で会話し、女学生が中年紳士の言葉で会話し、中年紳士が主婦の言葉で…会話する「言葉と〈ずれ〉」。人間がきつねをだます奇怪至極の「きつねのお浜」など全17編。
  • 黒革の手帖(上)
    4.2
    1~2巻616円 (税込)
    7500万円の横領金を資本に、銀座のママに転身したベテラン女子行員、原口元子。店のホステス波子のパトロンである産婦人科病院長楢林に目をつけた元子は、元愛人の婦長を抱きこんで隠し預金を調べあげ、5000万円を出させるのに成功する。次に彼女は、医大専門予備校の理事長橋田を利用するため、その誘いに応じるが……。夜の紳士たちを獲物に、彼女の欲望はさらにひろがってゆく。

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  • 天授の子
    -
    川端康成は、2歳から14歳までに、両親と姉と祖父母とを亡くし、天涯の孤児の感情を知った。養女を迎える話に、著者の孤独な少年時代を回顧する「故園」、上洛する古人の旅の心情を描く「東海道」、養女の民子への慈しみと戦後まもないペンクラブの活動を綴る「天授の子」など4編を収録する。1968年、日本で最初のノーベル文学賞を受賞した著者の、魂の奥の奥にふれる貴重な作品集。

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  • さらば雑司ヶ谷(新潮文庫)
    4.0
    中国から久しぶりに戻った俺を出迎えた友の死。東京、雑司ヶ谷。大都会に隣接するこの下町で俺は歪んだ青春を送った。町を支配する宗教団体、中国マフィア、耳のない男……。狂いきったこのファックな人生に、天誅を喰らわせてやる。エロスとバイオレンスが炸裂し、タランティーノを彷彿とさせる引用に満ちた21世紀最強の問題作。脳天、撃ち抜かれます。
  • あしながおじさん(新潮文庫)
    4.5
    孤児院で育ったジュディの人生に、とびきりのチャンスと幸せが舞い込んできた。名を名乗らない裕福な紳士が、奨学金を出して彼女を大学に通わせてくれるという。ただし条件がひとつ。毎月、手紙を書いて送ること。ジュディは謎の紳士を「あしながおじさん」と呼び、持ち前のユーモアがあふれた手紙を書き続けるのだが――。最高に素敵なハッピーエンドが待ち受ける、エバーグリーンな名作。
  • 杏奈は春待岬に(新潮文庫)
    3.6
    少年の日、健志は恋をした。桜の咲く頃だけ春待岬の洋館で会える、美しい少女・杏奈に。なぜ、彼女が現れるのは一年のうち数日だけなのか。なぜ、館に暮らす老人を「兄さん」と呼ぶのか。杏奈の秘密を知った健志は、彼女をいつか救い出そうと決意する。月日は流れ健志は年を重ねていくが、杏奈はずっと少女の姿のまま……。幼い初恋はやがて究極の純愛へ。切なすぎるタイムトラベルロマンス。(解説・笹本祐一)
  • カーテンコール!(新潮文庫)
    4.3
    閉校が決まった私立萌木女学園。単位不足の生徒たちをなんとか卒業させるべく、半年間の特別補講合宿が始まった。集まったのは、コミュ障、寝坊魔、腐女子、食いしん坊……と個性豊かな“落ちこぼれ”たち。寝食を共にする寮生活の中で、彼女たちが抱えていたコンプレックスや、学業不振に陥った意外な原因が明らかになっていく。生きるのに不器用な女の子たちの成長に励まされる青春連作短編集。(解説・岩田徹)
  • 仙丹の契り―僕僕先生―(新潮文庫)
    3.8
    長らくの仲間と別れ、新たな旅路へ出発した僕僕一行。国境を守る街で、王弁は吐蕃(チベット)の医師ドルマと再会した。どうやら同地の城の主ダー・バサンが病に倒れ、医師と薬師を募集しているらしい。二人はタッグを組んでチャレンジするが、患者に触れずに診断してみろと妙な条件を出され……。奇怪なおねえキャラも登場し、王弁と僕僕の仲も進展、か? 「僕僕先生」シリーズ、ドキドキの第八弾!
  • 地球星人(新潮文庫)
    3.9
    恋愛や生殖を強制する世間になじめず、ネットで見つけた夫と性行為なしの婚姻生活を送る34歳の奈月。夫とともに田舎の親戚の家を訪れた彼女は、いとこの由宇に再会する。小学生の頃、自らを魔法少女と宇宙人だと信じていた二人は秘密の恋人同士だった。だが大人になった由宇は「地球星人」の常識に洗脳されかけていて……。芥川賞受賞作『コンビニ人間』を超える驚愕をもたらす衝撃的傑作。(解説・小林エリカ)
  • 動物たちのまーまー(新潮文庫)
    3.5
    耳を澄ませ。何かが聞こえる――。テノリネコが膨らむ音が。徘徊するネコビトたちの呟きが。貝殻プールのラッコの水音が。盗んだトウモロコシをゆでる熊のご機嫌な鼻歌が。そして、吸血鬼(バンパイア)の奏でる陽気なラグタイムピアノが……。混沌と不条理の中に、世界の裏側へと読者を誘う魅惑的な企みが潜む。デビュー作『レプリカたちの夜』で大ブレイクした鬼才による、異彩を放つ傑作オリジナル短篇集。(解説・杉江松恋)
  • ひとつむぎの手(新潮文庫)
    4.3
    大学病院で激務に耐えている平良祐介は、医局の最高権力者・赤石教授に、三人の研修医の指導を指示される。彼らを入局させれば、念願の心臓外科医への道が開けるが、失敗すれば……。キャリアの不安が膨らむなかで疼く、致命的な古傷。そして緊急オペ、患者に寄り添う日々。心臓外科医の真の使命とは、原点とは何か。リアルな現場で、命を縫い、患者の人生を紡ぐ熱いドラマ。傑作医療小説。
  • キリストの誕生
    4.1
    愛だけを語り、愛だけに生き、十字架上でみじめに死んでいったイエス。だが彼は、死後、弱き弟子たちを信念の使徒に変え、人々から“神の子”“救い主(キリスト)”と呼ばれ始める。何故か?――無力に死んだイエスが“キリスト”として生き始める足跡を追いかけ、残された人々の心の痕跡をさぐり、人間の魂の深奥のドラマを明らかにする。名作『イエスの生涯』に続く遠藤文学の根幹をなす作品。

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  • 神の子どもたちはみな踊る(新潮文庫)
    3.9
    1995年1月、地震はすべてを一瞬のうちに壊滅させた。そして2月、流木が燃える冬の海岸で、あるいは、小箱を携えた男が向かった釧路で、かえるくんが地底でみみずくんと闘う東京で、世界はしずかに共振をはじめる……。大地は裂けた。神は、いないのかもしれない。でも、おそらく、あの震災のずっと前から、ぼくたちは内なる廃墟を抱えていた――。深い闇の中に光を放つ6つの黙示録。
  • 春の嵐
    4.1
    少年時代の淡い恋が、そりの事故を機に過ぎ去り、身体障害者となったクーンは音楽を志した。魂の叫びを綴った彼の歌曲は、オペラの名歌手ムオトの眼にとまり、二人の間に不思議な友情が生れる。やがて彼らの前に出現した永遠の女性ゲルトルートをムオトに奪われるが、彼は静かに諦観する境地に達する……。精神的な世界を志向する詩人が、幸福の意義を求めて描いた孤独者の悲歌。
  • パニック・裸の王様
    4.0
    1巻572円 (税込)
    とつじょ大繁殖して野に街にあふれでたネズミの大群がまき起す大恐慌を描く「パニック」。打算と偽善と虚栄に満ちた社会でほとんど圧殺されかかっている幼い生命の救出を描く芥川賞受賞作「裸の王様」。ほかに「巨人と玩具」「流亡記」。工業社会において人間の自律性をすべて咬み砕きつつ進む巨大なメカニズムが内蔵する物理的エネルギーのものすごさを、恐れと驚嘆と感動とで語る。
  • 大博打
    値引きあり
    3.8
    無茶苦茶な誘拐事件だった。身代金が金塊二トン(時価32億)。受け渡しはどうするのか、大阪府警は驚愕するが、犯行計画は緻密だった。大阪湾に繋留中の漁船に金塊を積み、オートジャイロをセットしろという。金塊を積み無人の漁船が闇をゆく。だが、奪取寸前、漁船は偶然にもタンカーと衝突炎上してしまう。万事休すと思いきや、犯人の真骨頂はここからだった。大胆不敵な誘拐サスペンス。
  • 駅路
    3.5
    平凡な永い人生を歩き、終点に近い駅路に到着した時、耐え忍んだ人生からこの辺で解放してもらいたいと願い、停年後の人生を愛人と過ごそうとして失踪した男の悲しい終末を描く「駅路」。邪馬台国の謎を追究する郷土史家を描きながら、“邪馬台国論争”に関する著者の独創的見解を織り込んだ力作「陸行水行」。他に「ある小官僚の抹殺」「万葉翡翠」など全10編を収めた傑作短編集。

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  • それでも俺は、妻としたい(新潮文庫)
    2.9
    1巻693円 (税込)
    同棲から始まった結婚。あの頃はチカと毎晩抱き合っていた――。40歳を迎えたのにいまだに売れない脚本家の俺。家事や息子の保育園への送り迎えをこなしているのに、働きに出ている妻にゴミ扱いされ、セックスは「ヤダ」の一言で拒否される始末。だが俺はチカの巨乳に触れたいのだ。いじましい欲望。ちっぽけなプライド。そして、愛。男と女を笑いの渦に叩き込んだ傑作夫婦小説(ほぼ実録)。(解説・北上次郎)
  • 日蝕・一月物語
    3.7
    錬金術の秘蹟、金色に輝く両性具有者(アンドロギュノス)、崩れゆく中世キリスト教世界を貫く異界の光……。華麗な筆致と壮大な文学的探求で、芥川賞を当時最年少受賞した衝撃のデビュー作「日蝕」。明治三十年の奈良十津川村。蛇毒を逃れ、運命の女に魅入られた青年詩人の胡蝶の夢の如き一瞬を、典雅な文体で描く「一月物語」。閉塞する現代文学を揺るがした二作品を収録し、平成の文学的事件を刻む。
  • 謎の毒親(新潮文庫)
    4.3
    命の危険はなかった。けれどいちばん恐ろしい場所は〈我が家〉でした――。母の一周忌があった週末、光世は数十年ぶりに文容堂書店を訪れた。大学時代に通ったその書店には、当時と同じ店番の男性が。帰宅後、光世は店にいつも貼られていた「城北新報」宛に手紙を書く。幼い頃から繰り返された、両親の理解不能な罵倒、無視、接触について――。親という難題を抱える全ての人へ贈る相談小説。
  • おせっかいな神々
    3.8
    1巻649円 (税込)
    神さまたちはおせっかい。人間どもをからかったり、意地悪をしたり、時にはいたずらをしかけたり。あなたのそばで起る事件もひょっとしたら神さまの仕業かもしれない……。畑で拾った“笑い顔の神”の正体は? ブロンズの“商売の神”のご利益は?――ふとした偶然からまき起される数々の事件を斬新・奇抜なアイデアで描き、異次元の笑いの世界に誘うショート・ショート40編。
  • かもめのジョナサン【完成版】
    4.0
    「飛ぶ歓び」「生きる歓び」を追い求め、自分の限界を突破しようとした、かもめのジョナサン。群れから追放された彼は、精神世界の重要さに気づき、見出した真実を仲間に伝える。しかし、ジョナサンが姿を消した後、残された弟子のかもめたちは、彼の神格化を始め、教えは形骸化していく……。新たに加えられた奇跡の最終章。帰ってきた伝説のかもめが自由への扉を開き、あなたを変える!
  • 小公子(新潮文庫)
    4.3
    アメリカに生まれた少年・セドリックは、大好きな母や周囲の人々の細やかな愛情に包まれ幸せに暮らしていたが、名も知らぬ貴族の祖父の跡継ぎになるためイギリスへ渡ることとなった。祖父は意地悪で傲慢で、アメリカという国を嫌っていたが、セドリックの純真さに心動かされ、次第に変化していく。だがそこへ真の跡取りを名乗る者が現れて――。川端康成の名訳でよみがえる児童文学の傑作。(解説・鴻巣友希子)
  • じゃじゃ馬ならし・空騒ぎ
    3.7
    美人だが、手におえないじゃじゃ馬むすめカタリーナが、男らしいペトルーキオーの機知と勇気にかかって、ついに可愛い世話女房に変身──。陽気な恋のかけひきを展開する『じゃじゃ馬ならし』。青年貴族クローディオーと知事の娘ヒーローのめでたい婚礼の前夜、彼女に横恋慕するドン・ジョンの奸計(かんけい)から大騒動がまきおこる『空騒ぎ』。明るい情熱と機知の横溢する喜劇の傑作2編を収録。
  • ぼくの死体をよろしくたのむ(新潮文庫)
    3.9
    うしろ姿が美しい男に恋をし、銀色のダンベルをもらう。掌大の小さな人を救うため、銀座で猫と死闘。きれいな魂の匂いをかぎ、夜には天罰を科す儀式に勤しむ。精神年齢の外見で暮らし、一晩中ワルツを踊っては、味の安定しないお茶を飲む。きっちり半分まで食べ進めて交換する駅弁、日曜日のお昼のそうめん。恋でも恋じゃなくても、大切な誰かを思う熱情がそっと心に染み渡る、18編の物語。※本書の解説は紙の本にのみ収録されています。電子書籍版には収録がございませんのでご注意ください。
  • 火の島
    -
    台風観測の最前線に位置する絶海の孤島・鳥島は、昭和40年11月、火山爆発の危機にさらされていた。無気味な地の鳴動、鼻をつく異臭、そして大噴火を目前にした鳥島観測所。絶体絶命の状況で、死の恐怖と観測の使命の間に苛立つ所員たちの緊迫した心理と行動を迫真の筆にとらえた長編表題作。ほかに、『毛髪湿度計』『ガラスと水銀』の2短編を併録する、著者ならではの科学小説集。

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  • 万葉の人びと
    4.0
    日本の揺籃期を生きた有間皇子、額田王、大海人皇子、大津皇子、柿本人麻呂、大伴家持、山上憶良など、万葉びとのみずみずしい心が、千三百年余もの時を超えて、いま新たによみがえり、わたしたち現代人の胸に共鳴する。「万葉集」に歌われた全国の故地を自らの足で歩く著者が、万葉の歌を生きた心の音楽として捉え、その風土と、そこに息づく人びとを生き生きと描き出している。
  • 絶唱(新潮文庫)
    3.8
    五歳のとき双子の妹・毬絵は死んだ。生き残ったのは姉の雪絵――。奪われた人生を取り戻すため、わたしは今、あの場所に向かう(「楽園」)。思い出すのはいつも、最後に見たあの人の顔、取り消せない自分の言葉、守れなかった小さな命。あの日に今も、囚われている(「約束」)。誰にも言えない秘密を抱え、四人が辿り着いた南洋の島。ここからまた、物語は動き始める。喪失と再生を描く号泣ミステリー。(解説・中江有里)
  • あとかた
    3.9
    1巻539円 (税込)
    実体がないような男との、演技めいた快楽。結婚を控え“変化”を恐れる私に、男が遺したもの(「ほむら」)。傷だらけの女友達が僕の家に住みついた。僕は他の男とは違う。彼女とは絶対に体の関係は持たない(「うろこ」)。死んだ男を近くに感じる。彼はどれほどの孤独に蝕(むしば)まれていたのだろう。そして、わたしは(「ねいろ」)。昏(くら)い影の欠片が温かな光を放つ、島清恋愛文学賞受賞の恋愛連作短編集。
  • クロイツェル・ソナタ 悪魔
    4.1
    嫉妬のため妻を殺した男の告白を通して、惨劇の理由を迫真の筆に描き、性問題に対する社会の堕落を痛烈に批判した『クロイツェル・ソナタ』、実在の事件に自身の過去の苦い経験を交えて懺悔の気持をこめて書いた『悪魔』。性的欲望こそ人間生活のさまざまな悪や不幸、悲劇の源であるとして、性に関するきわめてストイックな考えと絶対的な純潔の理想とを披瀝した中編2作。
  • せんせい。
    4.3
    1巻539円 (税込)
    先生、あのときは、すみませんでした──。授業そっちのけで夢を追いかけた先生。一人の生徒を好きになれなかった先生。厳しくすることでしか教え子に向き合えなかった先生。そして、そんな彼らに反発した生徒たち。けれど、オトナになればきっとわかる、あのとき、先生が教えてくれたこと。ほろ苦さとともに深く胸に染みいる、教師と生徒をめぐる六つの物語。『気をつけ、礼。』改題。
  • デミアン
    4.1
    ラテン語学校に通う10歳の私、シンクレールは、不良少年ににらまれまいとして言った心にもない嘘によって、不幸な事件を招いてしまう。私をその苦境から救ってくれた友人のデミアンは、明るく正しい父母の世界とは別の、私自身が漠然と憧れていた第二の暗い世界をより印象づけた。主人公シンクレールが、明暗二つの世界を揺れ動きながら、真の自己を求めていく過程を描く。
  • 妖精配給会社
    3.6
    1巻616円 (税込)
    他の星から流れ着いた《妖精》は従順で遠慮深く、なぐさめ上手でほめ上手、ペットとしては最適だった。半官半民の配給会社もでき、たちまち普及した。しかし、会社がその使命を終え、社史編集の仕事を残すだけとなった時、過去の記録を調べていた老社員の頭を一つの疑念がよぎった……諷刺と戦慄の表題作など、ショート・ショートの傑作35編を収録した夢と笑いの楽しい宝石箱。
  • 女たちの避難所(新潮文庫)
    4.1
    九死に一生を得た福子は津波から助けた少年と、乳飲み子を抱えた遠乃は舅や義兄と、息子とはぐれたシングルマザーの渚は一人、避難所へ向かった。だがそこは、“絆”を盾に段ボールの仕切りも使わせない監視社会。男尊女卑が蔓延(はびこ)り、美しい遠乃は好奇の目の中、授乳もままならなかった。やがて虐げられた女たちは静かに怒り、立ち上がる。憤りで読む手が止まらぬ衝撃の震災小説。『避難所』改題。
  • 恋せよ魂魄―僕僕先生―(新潮文庫)
    4.1
    連れ去られた両親を救うために、一行を離れて長安へ向かった劉欣。彼を追う美少女仙人・僕僕と王弁はその旅の途中でタシという少女に出会う。不治の病と診断された彼女はなぜか、王弁の傍にいると症状が和らぐのだった。一方、劉欣の仙骨を狙う胡蝶の頭目は、ついに劉欣を追い詰め、最後の戦いを仕掛けようとするが。クライマックス目前! 大人気中華ファンタジー、出会いと別れの第九巻。
  • 塩狩峠
    4.4
    結納のため、札幌に向った鉄道職員永野信夫の乗った列車は、塩狩峠の頂上にさしかかった時、突然客車が離れて暴走し始めた。声もなく恐怖に怯える乗客。信夫は飛びつくようにハンドブレーキに手をかけた……。明治末年、北海道旭川の塩狩峠で、自らを犠牲にして大勢の乗客の命を救った一青年の、愛と信仰に貫かれた生涯を描き、生きることの意味を問う長編小説。

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  • 絶叫城殺人事件
    値引きあり
    3.6
    「NIGHT PROWLER(夜、うろつく者)」と記された小さな紙片を、口の中に押し込まれ、次々と殺害される若い女。残酷な無差別殺人事件の陰には、カルトなホラー・ゲームに登場するヴァーチャルな怪物が――。暗鬱の「絶叫城」に展開する表題作ほか、「黒鳥亭」「壺中庵」「月宮殿」「雪華楼」「紅雨荘」と、底知れぬ恐怖を孕んで闇に聳える六つの迷宮の謎に、火村とアリスのコンビが挑む。

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  • 日々の泡
    3.8
    愛を語り、友情を交わし、人生の夢を追う、三組の恋人たち――純情無垢のコランと彼の繊細な恋人のクロエ。愛するシックを魅了し狂わせる思想家の殺害をもくろむ情熱の女アリーズ。料理のアーティストのニコラと彼のキュートな恋人のイジス。人生の不条理への怒りと自由奔放な幻想を結晶させた永遠の青春小説。「20世紀の恋愛小説中もっとも悲痛な小説」と評される最高傑作。
  • ミッキーマウスの憂鬱ふたたび(新潮文庫)
    4.1
    東京ディズニーランドで清掃のアルバイトをしている、永江環奈。ある日、彼女はテーマパークの顔として活躍するアンバサダーになれることを知り、挑戦を決意する。不可能だと言われながらも、周囲の応援を受け、夢に向かって前進する環奈。迎えた選考会当日は雨、さらに園内で大騒動が発生して。知られざる〈バックステージ〉を舞台に、仕事、家族、恋、そして働く者の誇りを描く、最高の青春小説。(解説・藤田香織)
  • ここから世界が始まる―トルーマン・カポーティ初期短篇集―(新潮文庫)
    4.1
    差別の激しい土地に生まれ、同性愛者として長じ、「八歳で作家になった」と豪語したという天才はデビュー前から天才だった。ニューヨーク公共図書館が秘蔵する貴重な未刊行作品を厳選した14篇。ホームレス、老女、淋しい子どもなど、社会の外縁にいる者に共感し、仄暗い祝祭へと昇華させるさまは、作家自身の波乱の生涯を予感させる。明晰な声によって物語を彫琢する手腕の原点を堪能できる選集。(解説・村上春樹)
  • 空が青いから白をえらんだのです―奈良少年刑務所詩集―(新潮文庫)
    4.3
    受刑者たちが、そっと心の奥にしまっていた葛藤、悔恨、優しさ……。童話作家に導かれ、彼らの閉ざされた思いが「言葉」となって溢れ出た時、奇跡のような詩が生まれた。美しい煉瓦建築の奈良少年刑務所の中で、受刑者が魔法にかかったように変わって行く。彼らは、一度も耕されたことのない荒地だった――「刑務所の教室」で受刑者に寄り添い続ける作家が選んだ、感動の57編。
  • 天国旅行
    3.8
    現実に絶望し、道閉ざされたとき、人はどこを目指すのだろうか。すべてを捨てて行き着く果てに、救いはあるのだろうか。富士の樹海で出会った男の導き、命懸けで結ばれた相手へしたためた遺言、前世の縁を信じる女が囚われた黒い夢、一家心中で生き残った男の決意──。出口のない日々に閉じ込められた想いが、生と死の狭間で溶け出していく。すべての心に希望が灯る傑作短編集。(解説・角田光代)
  • 吉野葛・盲目物語
    3.9
    大和の吉野を旅する男の口を通して、失われた古きものへの愛惜と、谷崎生涯のテーマ、永遠の理想の女性たる母への思慕の情を謳った随筆的小説『吉野葛』。夫浅井長政を兄織田信長のために滅ぼされるお市の方の悲劇的生涯を中心に、戦国時代を生きた人間の喜怒哀楽を美しく描き出した『盲目物語』。ともに、日本的なものへの傾斜を深めた谷崎中期の代表作である。

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  • 郷愁
    3.8
    豊かな自然に囲まれて育ったペーターは故郷を離れ、文筆家を目指すため都会生活を始める。彼はそこで多くの人と出会い、多くの事を学ぶが、心の底では常に虚しさを感じていた。文明の腐敗に失望し、故郷に戻った彼を待っていたのは、シンプルな暮らしと新たな出会いだったが……。叙情にあふれた美しい自然描写、青春の苦悩、故郷への思いを見事に描いた、著者の処女作にして出世作。
  • ヘッセ詩集
    3.8
    ひたすら詩人になりたいと願い、苦難の道のりをひとり歩み続けたドイツ最大の抒情詩人ヘッセ。仮借ない自己探求の賜物である淡々とし飄々とした風格は、われわれ日本人の心に深く共鳴するものを備えている。18歳のころの処女詩集より70余歳の晩年に及ぶ彼の全詩集から、その各期にわたる代表作をすべて抜萃し、ノーベル賞に輝く彼の小説に勝るとも劣らぬヘッセの詩境を紹介する。
  • リルケ詩集
    4.1
    現代抒情詩の金字塔といわれる「オルフォイスへのソネット」をはじめ、二十世紀ドイツ最大の詩人リルケの独自の詩境を示す作品集。
  • きよしこ
    4.2
    1巻594円 (税込)
    少年は、ひとりぼっちだった。名前はきよし。どこにでもいる少年。転校生。言いたいことがいつも言えずに、悔しかった。思ったことを何でも話せる友だちが欲しかった。そんな友だちは夢の中の世界にしかいないことを知っていたけど。ある年の聖夜に出会ったふしぎな「きよしこ」は少年に言った。伝わるよ、きっと──。大切なことを言えなかったすべての人に捧げたい珠玉の少年小説。
  • 怪盗ジバコ
    4.0
    1巻583円 (税込)
    史上最強の怪盗が現れた! 全世界を股にかけ、これまでに盗んだ額は一国の国家予算をはるかに超える。南海の孤島のヤシの実から共産圏の金の延棒まで、盗めるものは何でも盗む。48を越える国語を自由にあやつり、老若男女どんな人間にも姿を変え、その正体を誰も知らない――ジェームズ・ボンドや明智小五郎もお手上げの、「怪盗ジバコ」のユーモアあふれる活躍を描く連作8編。
  • こころ
    4.2
    鎌倉の海岸で、学生だった私は一人の男性と出会った。不思議な魅力を持つその人は、“先生”と呼んで慕う私になかなか心を開いてくれず、謎のような言葉で惑わせる。やがてある日、私のもとに分厚い手紙が届いたとき、先生はもはやこの世の人ではなかった。遺された手紙から明らかになる先生の人生の悲劇――それは親友とともに一人の女性に恋をしたときから始まったのだった。

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  • 幸福論
    3.6
    多くの危機を超えて静かな晩年を迎えたヘッセの随想と小品。はぐれ者のからすにアウトサイダーの人生を見る「小がらす」など14編。
  • 空の怪物アグイー
    3.9
    60年安保以後、その大きな影響下に書かれた“現代の恐怖”にかかわる一連の作品を収める。「個人的な体験」と同一の設定のもとにそれとは全く逆の結末を導き出し、共通のテーマをめぐる著者の文学的格闘をうかがわせる『空の怪物アグイー』ほか、「万延元年のフットボール」につながる『ブラジル風のポルトガル語』、核時代の苦いユーモア『アトミック・エイジの守護神』など7編。
  • 西日本鉄道殺人事件(新潮文庫)
    -
    福岡から大牟田に向かう9000系西鉄特急の車内で、91歳の町工場元社長が殺された。老人は、60年前、その三連覇に熱狂した西鉄ライオンズゆかりの聖地を巡り、大牟田で九州新幹線に乗り換え、鹿児島に向かう旅の途中だった。事件解決の鍵は、老人が「人生最後の旅」で目指した、「最も悲しみと怒りが強い場所」にあるのか? 終わりなき戦後の闇に十津川警部が挑む、好評の「地方鉄道」シリーズ。
  • 鋼の魂―僕僕先生―
    3.7
    唐、吐蕃、南詔の三国が支配を狙う雲南の国境地帯。この地を訪れた一行は、孤児を引き取って暮らす男女、宋格之と呉紫蘭に出会う。やがて大国の争いは激化し、子ども達に危機が迫る中、僕僕らは村に伝わる守り神「鋼人」の封印を解くため、湖底へと向かう。迫りくる軍勢。進まぬ国家間の和解。裏で糸を引く「胡蝶」。戦争前夜の狂騒を前に、王弁は何を思う? 緊迫のシリーズ第六弾!
  • イヤシノウタ(新潮文庫)
    4.0
    なんていうことのない日々に宿る奇跡のような瞬間、かけがえのない記憶。土地がもたらす力、自然とともに生きる意味。運命的な出会い。男女とは、愛とは。お金や不安に翻弄されず生きるには? そして命と死を見つめるなかで知った、この世界の神秘とは──。研ぎ澄まされた文章と人生を見つめるまなざしが光る81篇。父・吉本隆明との対談「書くことと生きることは同じじゃないか」収録。
  • 悟浄出立
    3.7
    おまえを主人公にしてやろうか! これこそ、万城目学がずっと描きたかった物語――。勇猛な悟空や向こう見ずの八戒の陰に隠れ、力なき傍観者となり果てた身を恥じる悟浄。ともに妖魔に捕えられた日、悟浄は「何も行動せず、何も発言せず」の自分を打ち破るかのように、長らく抱いてきた疑問を八戒に投げかけた……。中国古典の世界を縦横無尽に跳び、人生で最も強烈な“一瞬”を照らす五編。
  • 白いしるし(新潮文庫)
    3.9
    女32歳、独身。誰かにのめりこんで傷つくことを恐れ、恋を遠ざけていた夏目。間島の絵を一目見た瞬間、心は波立ち、持っていかれてしまう。走り出した恋に夢中の夏目と裏腹に、けして彼女だけのものにならない間島。触れるたび、募る想いに痛みは増して、夏目は笑えなくなった──。恋の終わりを知ることは、人を強くしてくれるのだろうか? ひりつく記憶が身体を貫く、超全身恋愛小説。(解説・栗田有起)
  • 愛のひだりがわ(新潮文庫)
    4.0
    幼いとき犬にかまれ、左腕が不自由な小学六年生の少女・月岡愛。母を亡くして居場所を失った彼女は、仲良しの大型犬デンを連れて行方不明の父を探す旅に出た。暴力が支配する無法の世界で次々と事件に巻き込まれながら、不思議なご隠居さんや出会った仲間に助けられて危機を乗り越えていく愛。近未来の日本を舞台に、勇気と希望を失わずに生きる少女の成長を描く傑作ジュヴナイル。
  • 工場(新潮文庫)
    3.8
    大河が南北を隔てる巨大工場は、ひとつの街に匹敵する規模をもち、環境に順応した固有動物さえ生息する。ここで牛山佳子は書類廃棄に励み、佳子の兄は雑多な書類に赤字を施し、古笛青年は屋上緑化に相応しいコケを探す。しかし、精励するほどに謎はきざす。この仕事はなぜ必要なのか……。緻密に描き出される職場に、夢想のような日常が浮かぶ表題作ほか2作。新潮新人賞、織田作之助賞受賞。(解説・金井美恵子)
  • 道頓堀川
    4.0
    1巻484円 (税込)
    両親を亡くした大学生の邦彦は、生活の糧を求めて道頓堀の喫茶店に住み込んだ。邦彦に優しい目を向ける店主の武内は、かつて玉突きに命をかけ、妻に去られた無頼の過去をもっていた。――夜は華やかなネオンの光に染まり、昼は街の汚濁を川面に浮かべて流れる道頓堀川。その歓楽の街に生きる男と女たちの人情の機微、秘めた情熱と屈折した思いを、青年の真率な視線でとらえた秀作。
  • パーマネント野ばら(新潮文庫)
    4.0
    ※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 港町にひとつの美容院、「パーマネント野ばら」。ここは女のザンゲ室。まいにち村の女たちが、恋にまつわる小さな嘘や記憶を告白していく。昨日男に裏切られ泣いたとしても、明日また男を愛しくおもう女の不思議。ずっと好きより、いま大好きの瞬間を逃したくない女の謎。俗っぽくてだめだめな恋にもひそむ、可愛くて神聖なきらきらをすくいあげた、叙情的作品の最高傑作。
  • 荻窪風土記
    3.7
    関東大震災前には、品川の岸壁を離れる汽船の汽笛がはっきり聞えたと言われ、近年までクヌギ林や麦畑が残っていた、武蔵野は荻窪の地に移り住んで五十有余年。満州事変、二・二六事件、太平洋戦争……時世の大きなうねりの中に、荻窪の風土と市井の変遷を捉え、親交を結んだ土地っ子や隣人、文学青年窶(やつ)れした知友たちの人生を軽妙な筆で描き出す。名匠が半生の思いをこめた自伝的長編。
  • 山椒魚
    3.6
    老成と若さの不思議な混淆、これを貫くのは豊かな詩精神。飄々として明るく踉々として暗い。本書は初期の短編より代表作を収める短編集である。岩屋の中に棲んでいるうちに体が大きくなり、外へ出られなくなった山椒魚の狼狽、かなしみのさまをユーモラスに描く処女作「山椒魚」、大空への旅の誘いを抒情的に描いた「屋根の上のサワン」ほか、「朽助のいる谷間」など12編。
  • 青春の蹉跌
    4.2
    生きることは闘いだ。他人はみな敵だ。平和なんてありはしない。人を押しのけ、奪い、人生の勝利者となるのだ――貧しさゆえに充たされぬ野望をもって社会に挑戦し、挫折した法律学生江藤賢一郎。成績抜群でありながら専攻以外は無知に等しく、人格的道徳的に未発達きわまるという、あまりにも現代的な頭脳を持った青年の悲劇を、鋭敏な時代感覚に捉え、新生面を開いた問題作。

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  • 太陽の塔(新潮文庫)
    3.9
    私の大学生活には華がない。特に女性とは絶望的に縁がない。三回生の時、水尾さんという恋人ができた。毎日が愉快だった。しかし水尾さんはあろうことか、この私を振ったのであった! クリスマスの嵐が吹き荒れる京の都、巨大な妄想力の他に何も持たぬ男が無闇に疾走する。失恋を経験したすべての男たちとこれから失恋する予定の人に捧ぐ、日本ファンタジーノベル大賞受賞作。
  • 夜と霧の隅で
    3.8
    1巻539円 (税込)
    第二次大戦末期、ナチスは不治の精神病者に安死術を施すことを決定した。その指令に抵抗して、不治の宣告から患者を救おうと、あらゆる治療を試み、ついに絶望的な脳手術まで行う精神科医たちの苦悩苦闘を描き、極限状況における人間の不安、矛盾を追究した芥川賞受賞の表題作。他に『岩尾根にて』『羽蟻のいる丘』等、透明な論理と香気を帯びた抒情が美しく融合した初期作品、全5編。
  • リア王
    4.0
    老王リアは退位にあたり、三人の娘に領土を分配する決意を固め、三人のうちでもっとも孝心のあついものに最大の恩恵を与えることにした。二人の姉は巧みな甘言で父王を喜ばせるが、末娘コーディーリアの真実率直な言葉にリアは激怒し、コーディーリアを勘当の身として二人の姉にすべての権力、財産を譲ってしまう。老王リアの悲劇はこのとき始まった。四大悲劇のうちの一つ。
  • あすなろ物語
    3.9
    1巻572円 (税込)
    天城山麓の小さな村で、血のつながりのない祖母と二人、土蔵で暮らした少年・鮎太。北国の高校で青春時代を過ごした彼が、長い大学生活を経て新聞記者となり、やがて終戦を迎えるまでの道程を、六人の女性との交流を軸に描く。明日は檜になろうと願いながら、永遠になりえない「あすなろ」の木の説話に託し、何者かになろうと夢を見、もがく人間の運命を活写した作者の自伝的小説。
  • 5年目の魔女
    3.3
    3回コールの後に切れる不気味な電話。この電話は……。艶やかで奔放、計算高く身勝手。魔性を秘めた女、貴世美。関係を持った妻帯者の上司を狂わせ、友達だった景子は退職を余儀なくされた。5年という歳月が過ぎて、景子はインテリアデザイナーとして、新しい一歩を踏み出したその矢先だった、景子の部屋の電話が3回鳴った──。女という性の持つ深い闇を暴く長編心理サスペンス。
  • 童子の輪舞曲―僕僕先生―
    3.7
    道士・司馬承禎と暮らす那那と這這の大活躍。変幻自在な旅のお供・第狸奴(だいりど)の生態。劉欣の苦悩と、秘められた優しさ。シリーズ第七弾は、僕僕ワールドのキャラクター総登場の豪華短編集! そして、最後に明かされるのは、美少女仙人・僕僕の秘密。ふと気づけば、先生によく似た女性と結婚していたが、彼女は老衰で死にかけていて……。謎が謎を呼ぶ、魅惑のファンタジー六編。
  • オセロー
    3.9
    ムーア人の勇敢な将軍オセローは、サイプラス島の行政を任され、同島に赴く。副官に任命されなかったことを不満とする旗手イアーゴーは、策謀を巡らせて副官を失脚させた上、オセローの妻デズデモーナの不義をでっちあげる。嫉妬のあまり、妻を自らの手で扼殺したオセローは、すべてが、イアーゴーの奸計であったと悟り自殺する。シェイクスピアの後期の傑作で、四大悲劇の一つ。
  • 新約聖書を知っていますか
    3.8
    新約聖書の冒頭で、マリアの夫ヨセフの系図を長々と述べているのはなぜでしょう。処女懐胎が本当ならば、そんなことはイエスの血筋と無関係のはずです。ところで、聖書の中に何人のマリアが登場するか知っていますか? ではヨハネは? そして、イエスの“復活”の真相は? 永遠のベストセラー『新約聖書』の数々の謎に、ミステリーの名手が迫ります。初級者のための新約聖書入門。

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  • 新編 銀河鉄道の夜
    4.0
    貧しく孤独な少年ジョバンニが、親友カムパネルラと銀河鉄道に乗って美しく悲しい夜空の旅をする、永遠の未完成の傑作である『銀河鉄道の夜』や、『よだかの星』『オツベルと象』『セロ弾きのゴーシュ』など、イーハトーヴォの切なく多彩な世界に、『北守将軍と三人兄弟の医者』『饑餓陣営』『ビジテリアン大祭』を加えた14編を収録。賢治童話の豊饒な味わいをあますところなく集めた一冊。

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  • 幻の光
    4.0
    1巻440円 (税込)
    人は精がのうなると、死にとうなるもんじゃけ――祖母が、そして次に前夫が何故か突然、生への執着を捨てて闇の国へと去っていった悲しい記憶を胸奥に秘めたゆみ子。奥能登の板前の後妻として平穏な日々を過す成熟した女の情念の妖しさと、幸せと不幸せの狭間を生きてゆかねばならぬ人間の危うさとを描いた表題作のほか3編を収録。芥川賞受賞作「螢川」の著者会心の作品集。
  • 万葉のいぶき
    3.0
    千三百余年の歴史を超えてよみがえる、万葉のロマン。――〈万葉のこころ〉を愛し求め続ける著者が、読者をおおらかな古代人の世界へと誘う。万葉の歌を《愛》《旅》《四季》という角度から捉えた本書は、全国の万葉故地をくまなく訪れた著者ならではの語りかけで、風土のなかに生まれ、息づいた歌ごころを、もっとも古くて、もっとも新鮮な生のいぶきとして伝える。
  • 檸檬夫人
    4.3
    1巻440円 (税込)
    「ああっ、何をなさいますっ、これ以上、私に恥をかかせるのはおやめ下さい」――親の仇である憎き男と、使用人であった下郎に、お志津は全裸に剥がされ後手に緊縛された。割り裂かれた両足首を棒杭に繋がれ、2人の男に上半身と下半身とを執拗に愛撫される。屈辱感と汚辱感、しかしそれと並行して突き上げて来るこの快美感は一体……「卑怯な、自由を奪った女を辱めるなど――」血走った声はやがて甘美な喘ぎ声に……武士の妻が2人がかりで嬲られる『卑怯者』など、緊縛の文豪による全5篇。

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  • 怪盗ジバコの復活
    -
    1巻517円 (税込)
    あの心優しい大怪盗ジバコが帰ってきた。謎多き男、年齢不詳、国籍不明etc. その正体を誰も知らない。南海のヤシの実10個から大国の金の延棒、宝石の数々を難なく頂戴する。だがジバコの変装をいとも簡単に見破るひとがいる。その名はジバコの愛しい恋人ルネ嬢。今や巨大組織を解散したジバコが彼女のために世界の名探偵=コロンボ、ポアロ、ホームズらを相手に奇抜な挑戦をする。
  • 孤独な夜のココア
    4.0
    察しの悪い恋人にいつもイライラしている〈かおり〉、からかい半分の同僚の言葉を信じ、男性に大きなバースディーケーキを贈るケチな32歳の〈ちさ〉、年下の男性に恋をし、エープリルフールに妊娠を告げる〈和田サン〉。大人の女性の恋愛を、辛くも優しく描写した12の珠玉短編集。
  • 苦役列車(新潮文庫)
    4.1
    劣等感とやり場のない怒りを溜め、埠頭の冷凍倉庫で日雇い仕事を続ける北町貫多、19歳。将来への希望もなく、厄介な自意識を抱えて生きる日々を、苦役の従事と見立てた貫多の明日は――。現代文学に私小説が逆襲を遂げた、第144回芥川賞受賞作。後年私小説家となった貫多の、無名作家たる諦観と八方破れの覚悟を描いた「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」を併録。(解説・石原慎太郎)
  • 古都
    3.9
    捨子ではあったが京の商家の一人娘として美しく成長した千重子は、祇園祭の夜、自分に瓜二つの村娘苗子に出逢い、胸が騒いだ。二人はふたごだった。互いにひかれあい、懐かしみあいながらも永すぎた環境の違いから一緒には暮すことができない……。古都の深い面影、移ろう四季の景物の中に由緒ある史蹟のかずかずを織り込み、流麗な筆致で描く美しい長編小説。

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  • 少年(新潮文庫)
    3.6
    お前の指を、腕を、舌を、愛着した。僕はお前に恋していた――。相手は旧制中学の美しい後輩、清野少年。寄宿舎での特別な関係と青春の懊悩を、五十歳の川端は追想し書き進めていく。互いにゆるしあった胸や唇、震えるような時間、唐突に訪れた京都嵯峨の別れ。自分の心を「畸形」と思っていた著者がかけがえのない日々を綴り、人生の愛惜と寂寞が滲む。川端文学の原点に触れる知られざる名編。(解説・宇能鴻一郎)
  • 夢見通りの人々
    3.8
    1巻539円 (税込)
    その名前とはうらはらに、夢見通りの住人たちは、ひと癖もふた癖もある。ホモと噂されているカメラ屋の若い主人。美男のバーテンしか雇わないスナックのママ。性欲を持て余している肉屋の兄弟……。そんな彼らに詩人志望の春太と彼が思いを寄せる美容師の光子を配し、めいめいの秘められた情熱と、彼らがふと垣間見せる愛と孤独の表情を描いて忘れがたい印象を残すオムニバス長編。
  • 少将滋幹の母
    4.1
    八十歳になろうとする老大納言は、若い妻を甥の左大臣に奪われるが、妻への恋情が断ちきれず、死んでしまう。残された一人息子の胸にも幼くして別れた母の面影がいつも秘められていた――。平安期の古典に材をとり、母への永遠の慕情、老人の美女への執着を描き、さらに、肉体の妄執が理性を越えて、人間を愛欲の悩みに陥れるという谷崎文学の主要なテーマを深化させた作品。

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  • ジュリアス・シーザー
    4.0
    “おれはシーザーを愛さぬのではく、ローマを愛したのだ” 高潔な勇将ブルータスは、自らの政治の理想に忠実であろうとして、ローマの専制君主シーザーを元老院大広間で刺殺する。民衆はブルータスに拍手を送ったが、アントニーの民衆を巧みに誘導するブルータス大弾劾演説により形勢は逆転し、ブルータスはローマを追放される……。脈々と現代に生きる政治劇。
  • ハムレット
    3.9
    城に現われた父王の亡霊から、その死因が叔父の計略によるものであるという事実を告げられたデンマークの王子ハムレットは、固い復讐を誓う。道徳的で内向的な彼は、日夜狂気を装い懐疑の憂悶に悩みつつ、ついに復讐を遂げるが自らも毒刃に倒れる――。恋人の変貌に狂死する美しいオフィーリアとの悲恋を織りこみ、数々の名セリフを残したシェイクスピア悲劇の最高傑作である。
  • リチャード三世
    3.9
    身体に障害を負った野心家グロスター公リチャードは、兄のエドワード四世王が病に倒れると、王権を狙い、その明晰な知能と冷徹な論理で、次つぎに残忍な陰謀をくわだて、ついに王位につく──。魔性の君主リチャードを中心に、薔薇戦争終結へといたる権謀術数の暗部を描き、口を開いた人間性のおそろしい深淵に、劇詩人シェイクスピアが、真っ向からいどんだ傑作史劇である。
  • 幸福な朝食
    3.5
    女優を目指して上京した少女は、運命の悪戯に全ての夢を打ち砕かれ、孤独のうちに歳月を過ごしてきた。だがその男との出会いを境に、心の底に凍てついた狂気がゆっくりと溶けはじめる。……なぜ忘れていたのだろう。あの夏から、私は妊娠しているのだ。そう、何年も、何年も、この子は待っていてくれたのよ……。濃密な心理描写が絶賛された直木賞作家のデビュー作。
  • 先生の隠しごと―僕僕先生―
    3.8
    ボクはラクスの妻になることにしたよ──。蛮族と蔑まれ、虐げられる人々にとっての理想郷・ラクシア。その国を治める英雄王の突然の求婚に、僕僕が応じてしまった。なぜ。どうして。王弁は混乱するが、劉欣の助力を得て、光の国の謎に迫る。明かされる僕僕とラクスの関係。秘められた過去。先生、俺とあなたの旅は、ここで終わりですか……? 急転直下のシリーズ第五弾!
  • 格闘する者に○
    3.7
    これからどうやって生きていこう? マイペースに過ごす女子大生可南子にしのびよる苛酷な就職戦線。漫画大好き→漫画雑誌の編集者になれたら……。いざ、活動を始めてみると思いもよらぬ世間の荒波が次々と襲いかかってくる。連戦連敗、いまだ内定ゼロ。呑気な友人たち、ワケありの家族、年の離れた書道家との恋。格闘する青春の日々を妄想力全開で描きます。直木賞受賞作家の才気あふれる小説デビュー作。(解説・重松清)
  • 野獣死すべし
    -
    敗戦で満洲から引揚げた伊達邦彦少年は、大戦の惨害に人間性の根底まで蹂躙され、大学生の頃には計算しつくされた完全犯罪を夢見るようになる。大学入学金の強奪に成功した彼は、戦時中父の会社を乗っ取った京急コンツェルンに対し執拗な復讐を開始する。怜悧な頭脳、端正な容貌と猛獣のような体躯を持つ非情の男伊達邦彦を描くハードボイルド小説の傑作。大藪春彦のデビュー作となる正編に加え、「週刊新潮」に連載された続編となる復讐編を収める。
  • 性的人間
    4.1
    性に耽溺し、政治に陶酔する右翼少年の肖像『セヴンティーン』。痴漢をテーマに“厳粛な綱渡り”という嵐のような詩を書こうとする少年と青年Jを主人公に、男色、乱交などあらゆる反社会的な性を描き、人間存在の真実に迫る問題作『性的人間』。現代社会の恐るべき孤独感を描いた『共同生活』。政治的人間と性的人間との交錯に、60年安保闘争前後の状況を定着させた3編を収める。
  • 私家版 日本語文法
    4.1
    文部省も国語の先生も真っ青!あの退屈だった文法がこんなに興味津々たるものだったとは。もはや教科書ではつかみきれない日本語の多様なる現実がここにある。一家に一冊話題は無限。古今の文学作品は言うに及ばず、法律文書、恋文、歌謡曲、新聞広告、野球場の野次まで、豊富かつ意表を突く実例から爆笑と驚愕のうちに日本語の豊かな魅力を知らされる空前絶後の言葉の教室。
  • アントニーとクレオパトラ
    3.6
    シーザー亡き後、ローマ帝国独裁の野望を秘めるアントニーはエジプトの女王クレオパトラと恋におちる。妖女の意のままになったアントニーはオクテイヴィアスとの大海戦に敗れ、クレオパトラ自殺の虚報を信じて自殺する……。多様な事件と頻繁な場面転換を用い、アントニーとクレオパトラの情熱と欲情を描いて四大悲劇と並び称される名作である。
  • お気に召すまま
    3.8
    弟に領地を奪われた侯爵は、アーデンの森に移り住んでいる。侯爵の娘ロザリンドは、叔父の娘シーリアと大の仲良しのため邸内にとどまっていたが、ついに追放される。男装したロザリンドは、シーリアとともに森に向ったが、一方、侯爵の功臣の遺子オーランドーも、兄の迫害を逃れて森にやって来る……。幾組もの恋人たちが織りなすさまざまな恋を、明るい牧歌的雰囲気の中に描く。
  • ノックの音が
    3.9
    1巻473円 (税込)
    ノックの音とともに、二日酔いの男の部屋にあらわれた見知らぬ美女。親しげにふるまう彼女の正体は? いったい、だれのところへ、どんな人が訪れてきたのか。その目的は。これから部屋の中で、どんなことがおこるのか……。サスペンス、スリラーからコメディーまで、「ノックの音」から始まる様々な事件。意外性あふれるアイデアと洒落たセンスで描く15のショートショート。
  • 若きウェルテルの悩み
    4.0
    ゲーテ自身の絶望的な恋の体験を作品化した書簡体小説で、ウェルテルの名が、恋する純情多感な青年の代名詞となっている古典的名作である。許婚者のいる美貌の女性ロッテを恋したウェルテルは、遂げられぬ恋であることを知って苦悩の果てに自殺する……。多くの人々が通過する青春の危機を心理的に深く追究し、人間の生き方そのものを描いた点で時代の制約をこえる普遍性をもつ。

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  • 愛する人達
    3.6
    母の死後、母の初恋の人、佐山に引きとられた雪子は佐山を秘かに慕いながら若杉のもとへ嫁いでゆく――。雪子の実らない恋を潔く描く『母の初恋』。さいころを振る浅草の踊り子の姿を下町の抒情に托して写した『夜のさいころ』。他に『女の夢』『燕の童女』『ほくろの手紙』『夫唱婦和』など、円熟期の著者が人生に対し限りない愛情をもって筆をとった名編9編を収録する。

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  • 新文章読本
    -
    「つねに新しい文章を知ることは、それ自身小説の秘密を知ることである。同時にまた、新しい文章を知ることは、古い文章を正しく理解することであるかも知れぬ。明日の正しい文章を……生きてゐる、生命ある文章を考へることは、私たちに課せられた、光栄ある宿命でもあらう」(まえがきより)。戦後まもなく発表された、文豪の文章論。

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