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老成と若さの不思議な混淆、これを貫くのは豊かな詩精神。飄々として明るく踉々として暗い。本書は初期の短編より代表作を収める短編集である。岩屋の中に棲んでいるうちに体が大きくなり、外へ出られなくなった山椒魚の狼狽、かなしみのさまをユーモラスに描く処女作「山椒魚」、大空への旅の誘いを抒情的に描いた「屋根の上のサワン」ほか、「朽助のいる谷間」など12編。
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Posted by ブクログ
孤独と孤高と孤立。この作品を読むたびに、これらの違いをうまく伝えられない自分に気づく。 たった数年籠っていただけで家から出られなくなってしまった山椒魚は、外の景色を馬鹿にしてみたり、闇雲に憎んだり恨んだりする。それにしてはその目に映る景色は色鮮やかに美しく、光が満ち満ちている。そこに憧れや輝きを求め...続きを読むている彼はやがて嘆く。自分を省みるのではなく、ほとんど神に嘆くのだ。これは現代においても覚えがありそうだ。 最後のやりとりを読み、時々ふと考えてしまう。彼らの幸せはどこかにあった気がしてならない。
「山椒魚」だけで星5つけられる。 短編集の中で面白い話はいくつかあったが、「山椒魚」だけは別格なように感じた。読後感がスゴイ。2025年7月までに読んだ本で今年1番面白かった。 「山椒魚」は以前から気になっており、井伏鱒二の本は今回初めて読んだが、なんとなく独特な雰囲気が伝わった。特に作中のさまざ...続きを読むまな地方の方言や、余韻のある読後感がすごかった。終わり方が独特なので、「え、ここで終わるの?」という終わり方のやつも多かった。長編の一章しか読めてない感覚。 好きな作品をメモっておく 「山椒魚」 「屋根の上のスワン」 「夜ふけと梅の花」 「寒山拾得」
内容云々よりもただただ作者の文章が好きすぎる。 いい意味で庶民感覚のある素朴な風景の描写が好きです。 物語系に疲れた人にぜひ読んでほしいです。 内容でいえば「へんろう宿」「女人来訪」「寒山拾得」が特に好きです。 1/28追記 「屋根の上のサワン」「岬の風景」も大好きです。作者の文章にはかわいらしい、...続きを読むくすっと微笑んでしまう所があり、素朴な描写に加えてそうした点が好きなのかなと思います。
山椒魚。山椒魚は悲しんだ。から始まるわけだけれども最後のかえるの台詞を受けての山椒魚の気持ちがわからなくて、これ国語のテストに出たら0点だっただろうな。現在46歳。
なぜいま井伏鱒二を読もうと思ったのか、それが全然思い出せない。 2、3ヶ月まえに青木南八との交流をテーマにした「鯉」を読んだけれど、この『山椒魚』はそれより随分前から積読されていたから、「鯉」を読む前から何かが気になっていたのだろうと思う。それが一体何だったのか。 ただ何となく思うのは、何か「手触...続きを読むり」のある小説を読みたかったのではないかということだ。 歳をとって小説が読めなくなってきた。 原因はよく分からないけれど「世界を立ち上げる力」が弱くなってきたんじゃないかという気がする。 物語を読んでも昔のように世界が現れてこない。だから最初から確かな世界が描かれている、そんな小説を読みたかったのではないだろうか。 井伏鱒二の小説はその点で非常に優れているように思う。山椒魚にせよ、鯉にせよ、サワンにせよ、あるいは朽助にせよ、彼が住んでいる谷間にせよ、そこに描かれているものが、何か固形の重みを持って感じることができる気がする だから書かれていることが分からなくても読むことができるのではないか。 そんな気がした。
井伏鱒二の懐の大きな文章が堪能できる短編集。ストーリーとか小説の意味とか関係ないというのは乱暴すぎるかもしれないけどとある視点で絵画的に世界を優しく切り取るというようなふうに感じる。その結果「これは何を言いたいんだろう」という感想を持ってしまうものもあるけど、それが世界というものかもしれない。 代表...続きを読む作とされる山椒魚はそんな観察が浮き出る印象。朽助のいる谷間はストーリー感が強めに出る印象。屋根の上のサワンは全体的なバランスのよさを感じた。そのほか、へんろう宿、掛け持ち、女人来訪が印象に残った。女人来訪の文章は面白すぎる。大空の鷲はすごく実験的な作りの小説のようにも思えるけど語り口は井伏鱒二的で不思議な感触。 女人来訪の一番印象に残った部分。 「あなたも岡アイコさんも、どちらも愚劣です。不自然なロマンスはむしろ猥褻です。あなたは榛名山の譬え話で、ふんわりしてしまったんでしょう?」彼女はそれから笛の音に似た声でピイという声をあげて泣き出した。
井伏さんは人も動物も、ユーモアと切なさの入り混じった視線で見つめているのだろうなと、そんな風に感じさせる短編集だった。 収録作の内だいたいの作品で主人公は旅に出ている。井伏さんは旅が好きだったのだろうか。旅情が良いアクセントになっている。 ベストは「屋根の上のサワン」。空という名の自由を渇望...続きを読むする鳥のサワンと、サワンの気持ちが痛いほど分かりつつ、迫る別れを淋しく感じる想いに葛藤する「わたし」の姿に心揺さぶられた。文体が敬体なのも好みだ。
小さなプライドを持ち、虚勢を張りながらいきていく。でもやっぱり最後はそこを捨てていかなければならない。そんなことを、気づかせてくれる作品
改めて読んでみた。表題作は幾通りもの解釈ができそう。『掛け持ち』が最高。屋根の上のサワンも好きです。自然描写が細かいとおもったら、作者は絵をよくする人だったそうなので納得。太宰治が有名だが、多くの現代作家も憧れる人らしい。新潮文庫は表紙が安西水丸。すてきです。
滑稽な ほのぼの 朗らか ユーモア 庶民的な 生き生き 可笑しみ 飄々 ↑読んでいて思い付いた言葉 文章に愛嬌があって 本人の性格が出てる気がする 古本トワサンにて購入
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