トルストイの一覧
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ユーザーレビュー
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小説と哲学書の間にあるような感じ。よく考えればすぐにおかしいと分かることが、どうして平然と行われ、またそれを自分も行ってきたのか。随所にトルストイの主張が張り巡らされていて本当に面白い。1899年の本なのに読んでいてこんなにも共感できるのは不思議な程だと思った。
Posted by ブクログ
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全巻読み終わりましたが、今まで読んだ小説でベストと言える作品でした。
この光文社版は、登場人物が解説されたしおりがついていて、とてもわかりやすかったです。
一方で解説には少し物足りなさを感じました。
歴史的背景が少し頭にあると、面白さが何倍も変わる作品なので、解説で触れてほしかった、と残念に思う点が
...続きを読むありました。
一つは、ナポレオンの生い立ちについて。
彼は、コルシカ島という、フランスとイタリアの間の島の、比較的身分の低い家庭に生まれました。
コルシカは彼が生まれる直前までイタリア領だったので、ナポレオンはギリギリフランス人というところで、幼少期は方言などで苦労したようです。
フランス革命で身分制度が崩れたことにより、ナポレオンは実力を以て立身出世、ついに皇帝の地位に上り詰めました。
そのナポレオンが、生まれながらにロマノフの血統であるロシアのアレクサンドル皇帝と決戦するのが今回の物語ですが、二人の「皇帝」の出自の対比が、ナポレオンの心理に影響を与えています。
この点が解説には触れられておらず、分かりづらいのではないかと思います。
物語後半に出てくる、ナポレオンがイタリア人という記述にも注釈がついていなかったので、少し不親切と感じました。
もう一点は、サンクトペテルブルクとモスクワの対比について。
サンクトペテルブルクは、18世紀初頭にピョートル皇帝によって建設された、モスクワよりも新しい街です。
「ヨーロッパへの窓」というコンセプトで、当時文明の先行していたヨーロッパのいくつかの都市を真似て作られました。
街だけでなく、人々の振る舞いやフランス語による会話なども、ヨーロッパにならうことが洗練とされました。
一方、モスクワはロシアの伝統を象徴する都市です。
そのモスクワを目指したナポレオンのロシア戦役は、軍事的及び精神的両方の意味で、ヨーロッパの侵略からロシアを守るという戦いです。
フランス語とロシア語を取り混ぜた社交界の会話から、戦争の展開まで、ヨーロッパ的なサンクトペテルブルクと、ロシア的なモスクワという都市の対比が、より深い理解への鍵となります。
もう少しこれらの背景について解説があれば、トルストイのメッセージが伝わるのに、というところが悔やまれました。
しかし、ストーリーだけ読んでも面白い作品であることは間違いありません。
Posted by ブクログ
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キリスト教の人とそうではない人を物語風にした一冊。信仰を薦めるような一冊ではないが、世の中で望ましいと持っているものを全て手に入れた人生と自分の価値観に従った人の考え方の違いがわかり、自分も絶対的な価値観を構築する必要があるなと感じた
Posted by ブクログ
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全て読み終えて、自分が読んだ小説の中でほぼ一番となるほど面白かった。
以下二点がこの物語の印象だ。
一つは、この対ナポレオン戦争がロシアを防衛する戦闘的な意味での愛国戦争というだけでなく、当時ヨーロッパの文明や文化に支配されつつあった伝統的ロシア自体を取り戻すという象徴的な役割を持った出来事であり
...続きを読む、ピエールがその移りゆく様を体現する役割であったということ。
ロシア的な都市であるモスクワからナポレオンが追われる様子や、エピローグでピエールの語る結社が、この物語の後のロシアの反動へと繋がる。
もう一つは作者自身の歴史観だ。
従来の歴史学が扱ってきた一人の意志が歴史を動かすという英雄的歴史観を否定し、より俯瞰的に見れば出来事は長い流れの中で必然であり個人の自由意志ではないと主張する。
特に、人の行為は自由意志と必然の組み合わせだという記述では、他人であるトルストイと自分の考えとがあまりにぴたりと重なることに驚かされた。
今は英雄的歴史観で語られる歴史も、更に長い時を経れば個人意志が見えづらくなり必然として語られる、という主張も真実だと思う。
この巻で、歴史的に英雄視されるナポレオンに対して、歴史的評価の低いクトゥーゾフ将軍をトルストイが称賛しているのは、まさに上記二点によるところだろう。
ナポレオンが英雄であるという通念を捨てさえすれば、ただ一人でロシア軍の保持という信念を貫いたクトゥーゾフ将軍の一貫性が際立つ、と言う記述は、この戦争の総括に相応しいと感じた。
構成として、エピローグの後半、小説たる本編の終わったあとで、延々と論文のような作者の主張が続いたのにはやや唖然とした。
その主張を小説本編を通じて読者に染み込ませるのが、作家の仕事なのでは?とも思う。
本編の外で直接的な言葉で主張を盛り込んでくる手法に、良くも悪くもトルストイのロシア的な一面を見せられた気分だ。
手法の洗練よりも本質を伝えることに重きを置き、率直でてらいがない。
自分としては、お気に入りのキャラクターであるデニーソフが最後まで登場したことに嬉しく感じた。
思い返せば彼は、全編を通じてことあるごとに役割を与えられてきた。
最初に登場したときは、洗練された貴族将校の中にあって彼は、方言でラ行が正しく発音できないがそれを気にも留めていないという、明るく豪快なキャラクターで描かれた。
その後、飢える自部隊の補給のために上司の命令を無視して他部隊から奪い取るという、部下への思慮と権力への反発という人間性を見せ、恩赦を願い出でればアレクサンドル皇帝に「法は世よりも強い」の言葉を言わしめ(現代的な社会制度を重んじたリベラル派の皇帝を象徴するシーンだ)、ナターシャにプロポーズする最初の人物となってその後の物語の伏線を敷き、ニコライを死臭漂う病院へと誘って戦地の病院の窮状を読者に知らしめ、戦争終盤ではパルチザンを率いて戦い、若いペーチャの死を目撃して嗚咽する。
脇役ながら要所で登場したこのデニーソフという人物が、最後まで人間味あふれる場面を演じるために駆り出されたことも、この物語らしいと感じた。
最後に。
この作品を周囲の数人に勧めてみたところ、誰からもその膨大さゆえに着手できない、と言われた(自分もそうだったのでよくわかる)。
そのような理由で読者を失っていることがあまりに勿体ないため、苦肉の策として、或いはもし今読むことを躊躇っている人の背中を押すためには、私としてはこの光文社版の第6巻を読むだけでもいいのではないかと思う。
アンドレイとナターシャの物語は、アンドレイが「汝の敵を愛せ」に行き当たるシーンで宗教的美を見ることができたが、それでもなおこの「戦争と平和」の構成には必須でないと感じる。
また、ナポレオンとアレクサンドル皇帝及びクトゥーゾフ将軍が対戦するこの戦争については勿論必読であるのだが、これは史実であるため、最悪の場合、この作品意外でも知ることができる。
そうなれば、ピエールの経験を通したロシアのヨーロッパ化からの反動や作者の歴史観は、この光文社第6巻に集約されている。
あとがきによれば、トルストイ自身も、「この作品は個々の部分ごとに出版されても面白みを失わない」と言っているので、有限な時間と精神力の都合上この第6巻だけ読むことは、必ずしも作者への不敬に当たらないだろう。
人に本を贈るのが好きだが、この「戦争と平和」第6巻も、誰かに贈ってみたくなった。
Posted by ブクログ
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1812年のフランス軍のモスクワ侵攻を受け、5巻前半は市民たちの逃走劇、そして後半はいよいよナポレオンの入城と敗走を描く。
この巻では、これまで見られなかったほどにトルストイの愛国心と、ナポレオンへの憎悪が垣間見える。
或いは、侵略する側を非難するがためにナポレオンを批判し、事実の勝者側としてロシ
...続きを読むアを持ち上げているのかもしれない。
いずれにしても、フランスの離島生まれという身分から指導力でのし上がりヨーロッパを征服していったナポレオンが、このロシア戦役で遂に力尽きた、というドラマを存分に味わえる記述であった。
何度も主張される、「フランス軍は、モスクワ入城前のボロジノの会戦で致命傷を追った獣であり、待っていればやがて死にゆく」の例えが的を射てわかりやすかった。
自分としては、この巻のクライマックスはアンドレイ公爵の死の場面である。
重傷を負った彼が、かつて自身を裏切ったナターシャと再開する場面に、「汝の敵を愛せ」という耳慣れたフレーズが現実感のある画として捉えられた。
その後の、「全ての人を愛することは、つまり誰も愛さないこと、すなわち生の放棄だ」という心理的発展は物語としては悲しくまた意外に思われたが、死を目前にした人の心理がどのように展開するものか興味深く感じたし、折に触れて読めば、その時時で違ったことを感じるのだろうと思った。
自分の日常生活の中では味わうことのない、宗教的寓意や信仰の美しさを感じられるのも、この物語ならではだ。
いよいよ物語は佳境。
読むほどに、トルストイの主張に自分の考えと似たところを見つけらるのは、少し嬉しく感じる。
Posted by ブクログ
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