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Posted by ブクログ
最初はサロンでのやり取りが延々と続く。人物造形に特徴は出ているが、物語に動きが少なく、退屈に感じる。遺産を受け取ることになるピエールの存在がちょっと面白い。
第二編に至って、集団が軍隊に移ると俄然、物語は動き出す。激しい戦闘シーンが続くわけではないが、戦争の位置付けをめぐって、様々な視点が交錯するのが興味深い。兵士であるアンドレイと外交官であるビリービンのやり取りなど。
最後のニコライの高揚感、負傷、惨めさ。アンドレイ侯爵のやりきれなさ。戦い抜いた、また、人間性を失わなかったトゥーシン大尉(砲兵隊長)の姿にしみじみしたものを感じた。
戦争の諸相を今回だけでも、思う存分描いていた。
Posted by ブクログ
全巻読み終わりましたが、今まで読んだ小説でベストと言える作品でした。
この光文社版は、登場人物が解説されたしおりがついていて、とてもわかりやすかったです。
一方で解説には少し物足りなさを感じました。
歴史的背景が少し頭にあると、面白さが何倍も変わる作品なので、解説で触れてほしかった、と残念に思う点がありました。
一つは、ナポレオンの生い立ちについて。
彼は、コルシカ島という、フランスとイタリアの間の島の、比較的身分の低い家庭に生まれました。
コルシカは彼が生まれる直前までイタリア領だったので、ナポレオンはギリギリフランス人というところで、幼少期は方言などで苦労したようです。
フランス革命で身分制度が崩れたことにより、ナポレオンは実力を以て立身出世、ついに皇帝の地位に上り詰めました。
そのナポレオンが、生まれながらにロマノフの血統であるロシアのアレクサンドル皇帝と決戦するのが今回の物語ですが、二人の「皇帝」の出自の対比が、ナポレオンの心理に影響を与えています。
この点が解説には触れられておらず、分かりづらいのではないかと思います。
物語後半に出てくる、ナポレオンがイタリア人という記述にも注釈がついていなかったので、少し不親切と感じました。
もう一点は、サンクトペテルブルクとモスクワの対比について。
サンクトペテルブルクは、18世紀初頭にピョートル皇帝によって建設された、モスクワよりも新しい街です。
「ヨーロッパへの窓」というコンセプトで、当時文明の先行していたヨーロッパのいくつかの都市を真似て作られました。
街だけでなく、人々の振る舞いやフランス語による会話なども、ヨーロッパにならうことが洗練とされました。
一方、モスクワはロシアの伝統を象徴する都市です。
そのモスクワを目指したナポレオンのロシア戦役は、軍事的及び精神的両方の意味で、ヨーロッパの侵略からロシアを守るという戦いです。
フランス語とロシア語を取り混ぜた社交界の会話から、戦争の展開まで、ヨーロッパ的なサンクトペテルブルクと、ロシア的なモスクワという都市の対比が、より深い理解への鍵となります。
もう少しこれらの背景について解説があれば、トルストイのメッセージが伝わるのに、というところが悔やまれました。
しかし、ストーリーだけ読んでも面白い作品であることは間違いありません。
Posted by ブクログ
19世紀初頭、ナポレオン率いるフランス軍との戦争を背景に、国難に立ち向かうロシアの人々を描く長編小説。
全6巻ある本訳の第1巻は、社交界を舞台に5つの家族の人物紹介が行われる第1編と、ロシア軍とフランス軍との交戦が描かれる第2編を収録。
第1編では、社交界を描いた小説ではありがちだが、とにかく登場人物の数が多くて把握するのが大変。本作では500人以上の人物が登場すると事前に聞いていたので、最初からメモを取って読んでいくと、混乱することなく楽しめた。個性的なキャラクターと興味をひく人間関係、そして井戸端会議的な会話がリアルで面白い。群像劇的でもあるが、未だ将来を決められない青年ピエールくんの棚ぼたラッキーに、なろう小説的な主人公補正を感じる。
第2編では、総司令官の副官アンドレイ公爵と見習士官ニコライを中心に、行軍と戦場における策謀が描かれる。迫りくるナポレオンの強大な軍隊が恐ろしく、退却するロシア軍とその時間稼ぎのために足止めに行くバグラチオン隊の克明な描写は緊張感にあふれている。そのなかでここでも多様な人物が登場し、その人間模様が興味を引く。「栄光を求めて戦争に参加したけど思ってたんと違う」という二人の運命は如何に。第1編では家族というミクロの世界で幸福と不幸を味わっていた彼らが、戦争というマクロの世界でどう変わっていくのか、今後も目が離せない。
お硬いタイトルで敬遠しがちな大長編である本作、意外にも大河ドラマ的で読みやすかった。地図も載っていて歴史的背景に詳しくなくても問題なし。しかしこのご時世でロシアの人々に共感できないという意見もあるようで、そんなことはないと思うがまずは論争を避けて物語に没頭したい。
Posted by ブクログ
フランスから帰ったばかりのピエールと悪友たちは、酔った勢いで警察署長に乱暴を働き、ペテルブルクを追放される。ここで、ピエールの「軸がしっかりとしていない危うさ」を感じた。ピエールが周囲の空気を読めない、浮いた存在であることも相まって余計に不安になる。
ピエールが現時点で優れていないのにも関わらず、庶子から嫡子へ昇格し、莫大な財産を1人で相続することとなる。これもまた不安要素である。
『戦争と平和』(2016年、英国放送協会製作)のテレビドラマを先に見たことがあって、ピエール役(ポール・ダノ)の印象が強く、少し太った感じ、根暗そうな雰囲気のイメージがどうしてもある。
Posted by ブクログ
いやー長かった。今年の1月から読み始めて約4か月、文庫本にして3000ページ超えの大長編をようやく読み終えた。実は私、恥ずかしながら本作のことを小説であると思っていなくて、思想書か批評の類だと思っていた(だって普通『戦争と平和』なんて大仰なタイトル、小説につけないでしょ?)のだが、昨年ふとしたきっかけで小説であると認識。帯にある「世界文学の最高峰」との言葉に惹かれ、いつかは読もうとずっと思っていた次第だ。(実は最後まで読むと、最初のカンは一部当たっていたことが分かったんだけど)
1805年のロシア・ペテルブルクでの華やかな社交界の描写で幕を開けた本作。第一部・第一編では大体の主要登場人物が顔をだし、一癖も二癖もある登場人物たちのやり取りが今後の展開に期待を抱かせる。第二編ではナポレオンとロシアの最初の戦い(アウステルリッツの戦い)の様子が描かれるが、やはり戦場の描写は躍動感があって面白い。ところがタイミングの悪いことに、読んでいる途中にウクライナとロシアの間で戦争が…。ロシアにとっては侵略する側とされる側で立場が異なるとはいえ、登場人物はほぼロシア側なので、彼らへの感情移入は正直難しかった。ちなみにトルストイは本作を読む限り、戦争を含めた暴力に対しては総じて批判的なようだ。
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